テレビや映画を見ていると、エンドロールに「〇〇製作委員会」という言葉が流れてくるのを見たことはないでしょうか?この製作委員会というのは、1つの会社の中で作品の製作チームがあるのではなく、コンテンツビジネスにおける「製作委員会方式」を採用して作られた作品であることを意味しています。今回はこの製作委員会方式について、映画制作を例に紹介します。

コンテンツビジネスにおける製作委員会方式とは

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(写真=fabiodevilla/Shutterstock.com)

コンテンツビジネスとは、映画、アニメ、音楽、漫画、ゲームのような知的生産物に関して、その制作や管理、提供にかかわるビジネスのことを指します。

例えば、アニメや映画などを制作する場合、作品がヒットすれば多額の利益を得ることができますが、制作するためには多くの人材や技術などを使うため、多額の資金が必要になります。また、制作した作品が不振に終われば、大きな損失を抱えることになるかもしれませんし、グッズや関連商品の不良在庫を大量に抱えてしまうリスクもあります。これらのリスクを分散するために考案されたのが「製作委員会方式」です。

この方式の特徴は、中心になって制作を行う企業が複数のスポンサー企業に出資を募り、資金を集めることから始まります。この出資比率に応じて作品から得られる利益を最終的に分配します。このため、スポンサー企業は、単独で作品に出資する場合よりもリスクを減らすことができ、制作サイドは制作費の調達がしやすくなります。

クラウドファンディングやコンテンツファンドとの違い

同じように、複数の企業、または不特定多数の人々から資金を調達する方法として、クラウドファンディングやコンテンツファンドと呼ばれる方式もあります。

クラウドファンディングとは、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語で、不特定多数の人がインターネットを通じて人や組織に資金の提供や協力を行う方法です。この方式も日本で広まってきており、映画やアニメなどのエンターテイメントだけでなく、ソフトウェアや製品の開発、研究、ベンチャー企業への出資、アーティストの支援など、幅広い分野に活用され始めています。金融商品に近い面があるため、内容によっては金融商品取引法の適用対象となります。

一方、コンテンツファンドとは、映画やテレビ、ドラマなどの情報資産の製作・運営に対して投資を行い、利益に応じて配当を受ける資金になります。より金融商品の色彩が強い資金調達方法であるため、金融商品取引法の適用対象となります。

これらの資金調達方法と製作委員会方式の違いは、上記2つがあくまで出資者による資金提供と利益の収受をメインにしているのに対し、製作委員会方式では資金提供したスポンサー企業が何らかの形でコンテンツビジネスに関わっているというところにあります。

映画制作における製作委員会方式

映画制作の現場では、この製作委員会方式を採用するケースが多くみられます。それはなぜでしょうか。大きな理由の一つに、スポンサー企業が、その作品において各種の権利ビジネスを行うことができる点が挙げられます。

映画制作では、劇場での放映だけでなく、DVD販売、テレビ放映、キャラクターグッズ展開など、さまざまなコンテンツ事業が付随します。例えばA社が劇場放映に協力し、B社がDVD販売に協力、C社はキャラクターグッズ展開を担当というように、複数の企業が事業の一部に従事することが少なくありません。そうすることによって、映画制作の支援をしつつも、映画制作で得た権利の一部を使ってビジネスを展開したり、映画とのタイアップで自社をPRしたりすることができます。

製作委員会方式の弱点は

良いことずくめに見える製作委員会方式ですが、弱点もあります。その一つが、作品の著作権がスポンサー企業に分散され、権利の処理が複雑になることです。また、作品の制作について多くの関係者が関与するため、クリエーターの意思が反映しづらかったり、意思決定に時間がかかったりする、という面もあります。こうしたことから、先に示したクラウドファンディングのような手法を模索する動きもあります。

今後、映画制作がどのような資金調達方式を採用していくのか? そんな視点でエンドロールを見るのも、おもしろいかもしれません。(提供:マネーLife Style


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