前日の海外時間では、ドル円は一時111.35円付近まで続伸する動きがみられ、引き続きドル円については堅調な推移が継続するかと思われましたが、NYクローズ前に「米当局は2000億ドル相当の対中関税リストを公表の予定」との一部報道が伝わると売りが優勢となりました。その後、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が「2000億ドル相当の対中関税リストを公表」「米国は中国と交渉する用意がある」「対中関税リスト、2カ月間の意見公募期間」などと発言したことから米中貿易摩擦の一段のエスカレートへの警戒感が市場心理の悪化を招く可能性が出てきています。

今後の見通し

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(画像=PIXTA)

米政権が対中追加関税措置を発表したこともリスク回避の動きをサポートしそうですが、今週のメイントピックスとなるとやはりポンドの動きは重要になってきそうです。英国では、EU離脱後のソフト・ブレグジット路線に舵を切り始めたメイ政権から、デービス離脱担当相やジョンソン外相など、EU懐疑派の重要閣僚が相次いで辞任しました。政権の方針転換に不満を強める保守党内のハード・ブレグジット派が、いよいよ党首降ろしの動きを開始する可能性や、支持率で拮抗する最大野党・労働党の内閣不信任要求に同調する恐れが高まっています。可能性としては低いものの、相次ぐ辞任報道を背景にメイ首相の不信任投票が行われる可能性も否定できないため、明確に状況が好転するまではポンドの上値は引き続き重くなるのではないでしょうか。

本日は安値圏から日経平均がやや切り上げてきたこともあり、ドル円やポンド円などのクロス円の買い戻しの動きが強まっているものの、米中報復合戦に対する懸念が再度浮上してきた以上、積極的にリスク選好の動きになるのは難しそうです。先週金曜に米国は中国からの輸入に対する関税を発動し、これに対し中国は直ちに報復関税を実施しました。以前から米国は中国が報復措置を取れば、追加で2,000億ドル相当の中国からの輸入に関税を発動すると述べていましたが、先週金曜から昨日までこの追加関税に関する言及がなかった事から市場で安心感が広がったことでドル円などは堅調に推移したこともあり、今後は上値が限定的になってくるのではないでしょうか。

引き続き147.50円のポンド円の売りは継続

前日の戦略を継続するかたちで、147.50円での売りを本日も継続します。損切りについては、148円を上抜ける水準である148.10円、利食いについては、前日同様に146.30円を想定しています。

海外時間からの流れ

本日の東京午前のドル円については、米中貿易摩擦の一段のエスカレートへの警戒感が強まり、日経平均が300円超の下落幅を示現しているものの、111.10円付近まで買い戻されています。ただ、株価の下げ幅が縮小したことによる買い戻しの動きの可能性が高く、本格的に米政権が対中追加関税措置を発表したことへの不安払拭という流れではなさそうです。引き続き、クロス円を中心に上値が重い動きになるのではないでしょうか。

今日の予定

本日は米・6月生産者物価指数、加中銀(BOC)政策金利発表などが予定されています。要人発言では、カーニー・英中銀総裁、ウィリアムズ・NY連銀総裁が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

高野やすのり
慶應義塾大学卒。チェース・マンハッタン銀行(現J.P.モルガン・チェース銀行)、スイス・ユニオン銀行(現UBS銀行)などでインターバンクディーラー業務等に従事。現、(株)FXプライムbyGMOお客様コンサルタント。Twitterでも情報発信中 高野やすのり@takano_fxp