資産管理会社は、世間一般の企業とは異なり、資産家向けの会社として存在しています。資産のある方が資産管理会社を所有すると、節税や家族間の給与、また相続対策などさまざまな面でその恩恵を享受できます。本稿では、資産管理会社を持つとどのような税制面での優遇があるのか、また、なぜ相続時に利点があるのかなど、資産管理会社の概要について解説します。

資産管理会社とは

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(写真=Fabrik Bilder/Shutterstock.com)

資産管理会社とは、不動産や株などの資産を所有している人が、その資産を管理することを目的として設立する会社法人です。設立手続きや契約面など基本的には通常の会社と同じですが、通常の会社とは違って営業活動をせず、オーナー自身の資産管理を目的としています。そのため「プライベートカンパニー」と呼ばれることもあります。

どのような節税のメリットがあるのか

節税の観点から、不動産等の資産から個人として利益を得る場合と、資産管理会社を設立して利益を得る場合を比較してみましょう。所有している資産から得られる利益が同じ額であったとしても、「個人」として利益を得るか「法人」として利益を得るかで課される税が異なります。

「個人」で課される所得税の最高税率は45%となります。この「個人」と「法人」に課される法人税率の23.2%とでは、最大で20%以上の税率の差が開くことがあるのです。(2018年現在)。所得が大きくなる場合、この税率の差が節税効果を生む一つのメリットになります。

損益通算と繰越控除

資産管理会社を設立した場合のメリットとして、損益通算と繰越控除があります。損益通算とは、複数の事業の損失と利益を合算する、という意味です。例えば不動産所得の黒字が大きくなりすぎたとしても、株や他の事業で赤字が出たときには、その赤字の分だけ黒字を圧縮できます。この損益通算は個人でも可能ですが、法人化することでその対象が広がります。

一方、繰越控除とは、その年に生じた損失を翌年以降に繰り越して、生じた利益と相殺していくことができる制度のことです。繰越控除は個人でも認められており、時期によって異なるものの、最長3年間であるのに対し、法人は最長10年間まで可能です。このように損失と利益を長期に渡って平準化できることが、資産管理会社設立のメリットになります。

相続対策としても有効

個人で資産を保有した場合、その収入は本人のみが得ることになります。一方で資産管理会社を設立した場合、家族を役員として役員報酬を支払うことが可能となるため、本人のみが得ていた収入を家族に分散させていくことができます。そうすることで、家族は最高55%の高い税率である贈与税の課税対象にならず、より税率の低い所得税の課税対象としてオーナーから現金を受け取ることができます。同時に、報酬として経費計上することで黒字を圧縮できるというメリットもあります。

家族に報酬を払って現金を蓄積させることは、相続問題が発生したときにも有効な手段になります。オーナーの資産規模によっては相続税が発生しますが、相続税は亡くなった時点で課税されるため、予期せぬタイミングで納税のための現金が必要になります。そのようなときに資産管理会社を活用して、あらかじめ家族に現金を蓄積させていれば、大事な土地や家を手放すような「物納」のリスクを軽減できます。

また、不動産を所有していた場合、その不動産を複数人に分けるには、土地の分筆や金銭代償など手続きが非常に厄介です。そうなると争いが続く、いわゆる「争続」になりかねません。ところが資産管理会社を設立して資産を移転させていれば、相続資産が資産管理会社の株式になって数字で計算できるため、資産の分割が容易になります。資産管理会社には、相続時の手間と争いのリスクを軽減できるというメリットがあります。

大きな資産のある方は資産管理会社を活用してみよう

一般的にはあまり知られていない資産管理会社ですが、上述のように上手に活用することで多大なメリットを享受することができます。とくに税制面での優遇や相続時の手続きなど、大きなリスクが生じやすい事態を回避できるのは大きな魅力といえるでしょう。資産を多く所有している方や相続の悩みを抱えている方は、資産管理会社の活用を検討してみてください。(提供:みらい経営者 ONLINE


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