平成30年から介護保険制度が見直される。柱は「地域包括ケアシステムの深化・推進」と「介護保険制度の持続可能性の確保」の2本だ。前者は誰にとっても、ウエルカムに違いない。後者は「持続可能性」とオブラートに包んでいるが、要は負担増の話だ。

税金,富裕層
(画像=Freedomz/Shutterstock.com)

収入が高いほど介護保険料が負担増に

現役世代の第2号被保険者(40歳~64歳)が負担する介護保険料は、サラリーマン・公務員の場合は勤め先(健康保険・共済保険)、自営業者や非正規労働者は市町村(国民健康保険)が拠出してきた。

健康保険・共済保険と国民健康保険は加入者数に応じて総負担額を按分してきたが、国保の加入者は低所得層が多くどうしても負担が重くなってしまう。そこで厚生労働省は、「総報酬制」を導入する。収入の多いサラリーマン・公務員の負担は重くなる。激変緩和のため、平成30年から3年かけて少しずつ負担を増やす予定だ。

負担増は、現役を退き年金生活に入ってからも続く。年金収入が年間340万円以上の層は利用者負担割合が2割から3割に引き上げられる。ちなみに受給者全体496万人のうち、3割負担は約12万人、3%に過ぎない。

医療保険はより高年収サラリーマンに厳しく

「総報酬制」は、すでに医療保険制度では平成17年から導入されている。少子高齢化に伴う医療費負担の膨張もあり、後期高齢者保健への拠出はサラリーマンの肩に重くのしかかる。平成7年に7.3%だった料率が、直近では9.1%にまで膨らんだ。

さらに、サラリーマンの中でも高年収層には、より負担感が増している。健康保険料は毎月の給料(標準報酬月額)に料率を乗じて負担額を計算するが、この標準報酬月額には上限が設けられている

10年前には、月収98万円以上なら、そこで負担増は打ち止めだった。その上限が平成19年には121万円、平成28年には139万円にまで引き上げられた。影響を受けるのは、年収にすれば1500万円以上クラスだ。

所得税も高年収サラリーマンねらい撃ち

ある意味でサラリーマンに認められた必要経費とも言える給与所得控除は、所得税計算の際に給料から差し引ける。その控除額が、平成25年には上限が設けられた(年収1500万円で245万円)。それだけでは済まない。上限は平成28年に230万円、翌年には220万円までに引き下げられた。

出世のゴールにまで上り詰めた役員たちにも課税当局は厳しい。通常退職金に対しては、1/2計算という優遇措置が適用される。ところが勤続年数が5年以下の役員は、この優遇措置を受けることができない。

本当のお金持ちは株で稼ぐ

一方で、そんな増税策などどこ吹く風のお金持ちもいる。国税庁の発表によると、2016年に年間所得1億円超クラスは約2万人、そのうち半数は株式譲渡所得や配当収入で稼いだ人たちだ。ここ5年間で倍にまで増えている。

安倍政権発足以来、日銀は黒田総裁指揮のもと、異次元緩和を積極的に推し進めた。日銀が国債を買い上げ続けた結果、世の中には360兆円ものマネーが流れ込んだ。年6兆円に上る上場投資信託購入も追い風となり、不動産価格や株価を押し上げた。

新興富裕層の金遣いは、今までの常識が通用しない。プライベートジェットをチャーターした旅行の企画(4泊5日の香港旅行が200万円もする)、ランボルギーニ・ベントレーなど超高級車の販売など、新しい富裕層ビジネスが有卦に入っている。

さて、こうしたニューリッチたちへの税負担は驚くほど軽い。所得階層別の税負担率は1億円をピークに右肩下がりのカーブを描くことがよく知られる。株式の譲渡所得・配当所得には累進税率ではなく、約20%の一定税率が適用される(上場企業の3%以上の株式を保有する個人を除く)ので、こうした現象が起こる。

ただし、国会では財務省が「税率引き上げも検討中」とも答弁している。今後の動向からは目が離せない。(ZUU online 編集部)