このコーナーでは毎週原則木曜日に実施しているMarket Talk(動画セミナー)のサマリをお届けします。

2018年8月16日(木)Market TalkのSummary

現在のマーケット状況、年後半のシナリオ

月曜の下げは夏休みで市場参加者がいないところに、投機筋が売り仕掛けたところで下にもっていかれた。ボラティリティの高さ自体がリスク、ととらえる機関投資家がいて、配分を落とされてしまう。ただ、相場は理屈どおりに動かない、感情で動くこともあり、色々な要因で荒い値動きになることがあるが落ち着くところに落ち着く。今は弱いのか強いのか、織り込んでいるのか織り込んでいないのかわからない動きだが、ただこう動いているうちに居所というのがわかってくる。ここからはショックで下に持って行かれることはあっても、移動平均が収れんしているなかで、200日線を一時的に下回ってもすぐに奪回する、という動きになるのではないか。この水準が続けば、今は横ばいだが右肩上がりで下値が切り上がっているのでトレンドとしては上向きだろう。

これだけ企業業績がいいのにもかかわらず、EPSと日経平均のギャップが開いているが、中間決算期になってEPSが上振れて、株価が低迷したままだとさらにギャップが拡大することになる。これをキャッチアップするだけで25,000円水準、秋の中間決算でさらにEPSが1800まで上方修正されてくると、26,000円、27,000円まであっても不思議ではない。その頃には米中間選挙も終わるので、過剰な貿易戦争の演出、エスカレートもなくなるだろう。そうなれば一気にギャップを埋めに走る。これが年後半のシナリオだ。

この先見通しずらくて不安はあるが、日本の企業が不利益を被るような環境にあるのか?トルコショック、貿易戦争など色々あるが、日本の上場企業がダメージを受けてしまうような状況に果たしてなるのか?というと、そこまでのことにはならないであろう。少なくともこれだけの最高益を評価できていない市場のプライスが修正されるという可能性のほうが高いと思う。

200日移動平均線を明確に割った日経平均ですが、今後の展開を教えて下さい。

3月、7月に安値をつけたときも割ったがすぐに戻した。今回も割ってすぐ戻すといったつかず離れずの状態で下値を切り上げて揉み合いになっている。この状態で8月を乗り切り、9月には貿易戦争の着地で上に行く、という見方だ

トルコリラショックですが、新興国通貨が全般的に安くなることで、今後、どの程度、どのくらいの期間、株価や円高に悪影響が出ると見ていますか

トルコのケースはアメリカとの対立によるもので特別なケースだ。他の新興国通貨安、例えば中国の人民元安は貿易戦争の関税掛け合いを通貨の変動で調整しているということで、これは合理的なことだ。他の新興国の通貨安もアメリカが利上げをして強いドルになっているからで、これは当たり前の話だ。アメリカが利上げをやっている以上仕方がないことだが、これで他の国の通貨が安くなったところで「ショック」という感じのものではない。アメリカの貿易戦争のエスカレーションがこれ以上無いとわかれば、リスクオフが和らぐのではないか。

ニトリ、良品計画、オムロンの今後は?

ニトリが売られたのは夏物不振によるものだが、今後は猛暑で夏物の売り上げが伸びれば戻してくるのではないか。良品計画も窓を空けて下がって、200日線付近で固めてきて、次の決算あたりから窓を埋める動きになってくると思う。 オムロンは良い会社だが、今は短期的にこういった優良株はずしの動きが出ているものの、今後、AI、データ、センサーといった時代に活躍できる企業だと思うので、長期目線、長期保有でよいのではないか。

日経平均の下値の目途はいくらくらいでしょうか。また何か浮上のきっかけはあるでしょうか。

今はほぼ下値に達していると思う。今後短期的なショックで下にもっていかれることもあるだろうが、すぐに戻すだろう。浮上のきっかけは9月にトランプ政権が貿易戦争勝利宣言のようなものを出して、これ以上中国に対してふっかけるようなことをしない、日本とも9月末の安倍首相との会談で合意する、といったところだ。

広木隆(ひろき・たかし)
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト

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