このコーナーでは毎週原則木曜日に実施しているMarket Talk(動画セミナー)のサマリをお届けします。

2018年8月30日(木)Market TalkのSummary

日経平均23,000円の壁を超える条件とは?

日経平均は23,000円の壁が意識されて、なかなか上に抜けない状況だが、抜ける条件が揃ってきた。ひとつは業績。予想EPSがじりじりと上がって、現在今年で一番高いところにある。これまでは5月上旬の本決算発表のときが最高だったが、このときは今期と来期が入り混じってるようなところ(発表が終わったものから2019年3月が今期となって、終わってないもの(2018年3月期)は今後、といったところ)で、これがすべて今期(2019年3月期)の見通しにそろったあと、逆にEPSは下がる状況だった。その後第一四半期決算が終わって高くなっている。日経平均は今年1月に年初来高値24,000円台をつけてその後急落し、5月に好業績を確認して戻り高値で23,000円を付けた。その後は、貿易摩擦やトルコショックなどが重なって第一四半期の好決算を評価できない状況になっていたが、ようやくファンダメンタルズ的にみても、EPSが一番高い水準になってきた。株価もこれから水準訂正してくるだろう。また、海外の環境もアメリカの金利があまり上がらず、それを受けて米国株の最高値更新が続いているなど、いよいよ転機が近づいているように思う。

日経平均が一時的に23,000円を超えるようになってきましたが、23,000円超えをキープできないのは、東証の売買高や売買代金が少ないことや、外国人の売り越しが続いていることが大きく影響していますか。

そのとおり。23,000円の壁がかなり意識されてしまっていると思う。

日経平均は薄商いの中、CTAやマクロ系ヘッジファンドの買いが先物に入って7連騰しているという話もありますが、こういう相場はいつまで続きますか?

CTA(プログラム売買のファンド)以外の人たちがいつ参加してくるかということになるが、そろそろ機は熟していて23,000円を抜けると買いが入ってくるのではないか。ファンダメンタルズの条件が今までと違ってきているので、見直し買いが入ってきてもおかしくはないところ。あとは「セルインメイ」とセットで言われる「9月に戻ってくるのを忘れるな」。9月になると投資家も戻ってくるといった季節性もある。また、9月の自民党総裁選も起爆剤のひとつとなるだろう。今年の相場の最大のポイントだった貿易戦争も、最悪な状況は避けられるといった兆しが出てきている。そろそろ貿易戦争のリスクも終盤戦といったところではないか。そういったことを見越して23,000円を抜けたら一気に加速してくるであろう。

イギリスがEUから離脱するルールについて合意する期限は今年10月。ポンドが荒れやすい状況が続くと思われますが、今後のポンド円の展開は?

これまでハードブリグジットを意識して売るだけ売って相当安くなっている部分があるので、そろそろこのタイミングで買戻しが入ってきていると思う。今後は逆に底堅い展開になってくるのでは。

8月は海外投資家がブラックマンデー以来の額の売り越しだがそれでもこの程度の下げだから強いとみるのか近々大暴落する要素や兆候があるのか?

今日本株にこれだけの売りが入っている理由は分からないが、この程度の下げであるから強いとみるべきではないか。暴落はいつくるか分からないが、少なくとも今そういう要素はあまりないのでは。あるとすれば米中間選挙で共和党が下院で負けて大統領弾劾、というシナリオだが、そうなればそこでマーケットがぐらつくこともあるだろう。結局上院では共和党が優勢で(弾劾が)却下されるという最終的な落としどころは見えているわけだが、それまではマーケットは振らされる部分もあるだろう。

9月以降の相場見通しと注目業種は?

「セルインメイ」とセットの「9月に戻ってくるのを忘れるな」で、9月には投資家が戻ってくる。また自民党総裁選で安倍3選、アベノミクス継続となれば外国人が買ってくる。そして9月末の国連総会で恐らくトランプ大統領と安倍首相の会談がセットされるであろう。そこで日米通商摩擦は決着すると思われる。これらを織り込んで9月中には24,000円をつけるのではないか。 また、アメリカでも中間選挙が終わればトランプ大統領も過激な貿易戦争をやるモチベーションがなくなり、2期目の当選をにらんで国内の景気を良くするような大判振る舞いが始まる、そして米国株がもう1回吹いて - といったシナリオが、11月から12月にかけて出てくるだろう。そうなれば12月は25,000円オーバーとなって今年は終わるのではないか。注目業種は半導体、電子部品で、TDK(6762)、村田(6981)、アルプス電(6770)といったところ。結局強いところに戻ってくるだろう。あとは米中貿易戦争が決着すればコマツ(6301)、ファナック(6954)などの機械株を買うのも良い戦略だと思う。

広木隆(ひろき・たかし)
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト

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