家族が亡くなった場合、役所などでさまざまな手続きを行わなければなりません。被相続人(亡くなった人)が個人事業主(自営業者)だった場合には、役所に提出する国民年金や国民健康保険の手続きのほかに、税務署に対して「準確定申告」の手続きが必要になります。準確定申告の概要やスケジュールについてまとめました。

個人事業主の確定申告とは?

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(写真=otnaydur/Shutterstock.com)

そもそも確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について計算し、その所得に応じた所得税を算出して、翌年2月16日から3月15日までの間に申告と納税を行うことをいいます。

確定申告が必要な人は、事業所得や不動産所得などの所得がある人で、「各種の所得金額の合計額から所得控除額を差し引いて計算された所得税額」が「配当控除と年末調整で控除を受けた住宅借入金等特別控除の額」より多い人です。

そのほか、「青色申告」という制度を利用している場合には、所得の額とは関係なく確定申告をしなければなりません。一般的な個人事業主であれば、税金面でさまざまな優遇制度がある青色申告を選択していることが多いでしょう。

準確定申告とは?

確定申告の対象となっている人が亡くなった場合、相続人は、被相続人が亡くなった日までの所得金額を計算して、税務署に書類を提出しなければなりません。このことを「準確定申告」といいます。

残された相続人は、被相続人が確定申告の対象者だったのかどうかで迷うかもしれませんが、個人事業主であれば、基本的に確定申告をしているはずです。もし、きちんと確かめたいなら、前年の確定申告書がないかどうか、仕事関係の書類を調べてみるとよいでしょう。

準確定申告と納税の期限は基本的に、「相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヵ月以内」と定められています。相続税の申告期限(相続開始から10ヵ月以内)よりも期限がだいぶ早いので注意が必要です。また、被相続人が1月1日から3月15日までに死亡して、前年分の確定申告書をまだ提出していなかった場合には、前年分と本年分の2年分の準確定申告を行う必要があります。

準確定申告書の提出先は、被相続人が住んでいた地域(納税地)の所轄税務署です。相続人が住んでいる地域の所轄税務署ではないので注意しましょう。書類の提出は、直接持っていっても郵送でも構いません。

準確定申告の注意点

準確定申告をする際にはいくつかの注意点があります。相続人が2人以上いる場合、準確定申告書には各相続人が連署したうえで、各相続人の氏名・住所・被相続人との続柄などを記入した準確定申告書の付表を添付する必要があります。連署を行わず、各相続人が別々に提出することもできますが、この場合、申告内容を他の相続人に通知しなければなりません。

また、準確定申告における所得控除の適用が少々複雑です。例えば、医療費控除の対象となるのは、「死亡の日までに被相続人が支払った医療費」となります。「死亡後に相続人が支払った医療費」については、準確定申告の医療費控除に含めることはできません。ただし、相続人の確定申告において医療費控除の対象にすることはできます(同一生計の場合)。

医療費控除と同様に、社会保険料、生命保険料、地震保険料控除等の対象となるのは、死亡の日までに被相続人が支払った保険料のみとなります。

準確定申告と関連した手続きに、青色申告の承認申請があります。亡くなった人の事業や不動産経営を相続人が引き継ぎ、自分も青色申告の制度を利用したい場合は、税務署に対して「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。青色申告承認申請書の提出期限は、亡くなった日によって異なります。準確定申告書の期限と違う場合があるので、事前に調べておきましょう。

準確定申告の作成には、一般的な確定申告書を作成できる程度の知識が必要であり、用意すべき書類はたくさんあります。その後に必要となる相続税の申告に絡んでくる部分もあるので、ミスのないように処理しましょう。もしわからないことがあれば、なるべく早く税務署や税理士に相談することをおすすめします。(提供:相続MEMO


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