(本記事は、石井彰男氏の著書『不動産投資のお金の残し方 裏教科書』ぱる出版、2018年8月3日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

「儲かる物件」4種とその長所・短所

不動産投資のお金の残し方 裏教科書
(画像=Jintapostock / Shutterstock.com)

儲かる物件をどのように探していけばよいのかというのは、皆さんとても興味のある話だと思いますが、その前に、ご自身が将来、どのようになっていたいのかを明確にする必要があるのではないかと思っています。

というのも、ご自身が将来どのようになっていたのかが明確になっていないとどのような物件のタイプを選んでいけば良いのかも分かりませんし、なによりご自身の将来を具体的にイメージできないと思います。

例えば、副収入は欲しいが手間は絶対にかけたくないという考えの人もいれば、手間はかかってもいいからキャッシュフローを追求していきたいという人もいると思います。

そのため、物件をタイプごとに分けて、それぞれどのような特徴があるのかを確認していきたいと思います。

●区分マンション

区分マンションにもいくつかあります。

単身者向けのワンルームだったり、ファミリー向けの区分だったりがあります。

利回りで言えばワンルームの方が高くなります。

そして、区分マンションはワンルーム、ファミリー共に一般的に積算価格が売り値の半分くらいだと言われています。

そのため、販売価格と積算価格の差額部分が発生しますが、その分は個人の信用枠で補填し融資が行われていると思われます。

結果、貸借対照表を作ると債務超過になっていることが多くなります。

ファミリー向けを運よく安く買うことが出来れば、売りたいとなった時、実需向けに販売できるので売りやすさはあるかもしれません。

区分マンションは部屋が1つしかないので資産形成やキャッシュフロー形成に時間がかかるというのが難点です。

●戸建て

戸建ては流通している物件のほとんどがマイホーム用として流通しています。

そのため、元々賃貸用として作られているアパートやマンションと比べて作りがしっかりしているのが特徴です。

また、数百万円で販売されていますので、初心者には始めやすい金額となっている点も魅力です。

ネット上で販売されているものを見ても、大抵、耐用年数を超えているものが多いため、土地値で買っていくという方法を取れば非常に手堅い投資になると思います。

戸建ても区分マンションと同様に部屋が1つしかないので資産形成やキャッシュフロー形成に時間がかかるというのが難点です。

戸建てを選好されている投資家さんは高利回り物件が多いため、キャッシュフローが多いという傾向があります。

●木造アパート

木造アパートは新築派と中古派に分かれます。

新築の利回りは通常8%~10%、中古であれば10%~15%くらいでしょうか。

新築でも工夫を凝らして利回り12%以上出されている方もいらっしゃいます。

中古でも割安なものは利回り20%で販売されているものもあります。

傾向としては新築の方が客付けしやすく銀行融資も通りやすいですが、中古は客付けはまあまあで銀行融資は通りにくいというのがわたしの感触です。

新築の方が融資が通りやすいのは、耐用年数をまるまる使えるという点と減価償却されていないため建物の積算価格が高く出るというのが大きな理由です。

木造アパートも価格帯が安いものが多いので、初心者が始めるにはもってこいの物件タイプだと思います。

中古アパートであれば土地値で購入していく方法を取れば債務超過になりにくく銀行からの評価も高くなるでしょう。

●一棟マンション

一棟マンションの種類にはRC(鉄筋コンクリート造)とSRC(鉄骨鉄筋コンクリート)があります。

一棟マンションは新築で建てるという人は少なく、中古で買っていく方が多いです。

新築時の建築費が高いため、中古でも物件価格は高い傾向にあります。

RC、SRCは建物の持ちも良いため法定耐用年数も47年と長くなっています。

積算価格が高い傾向にあるので、銀行評価が出やすく融資を受けやすいという特徴があります。

キャッシュフローも出やすいため収益性は良いと思います。

一棟マンションであれば売却時の売却益で大きくサヤを得ることも可能なため、その点、魅力があります。

ただし、修繕費が高くなりますので、大規模修繕が発生した際には数千万の出費となることもあります。

このような物件ごとの特徴を踏まえて自分に合った物件タイプを決めて、ネットや不動産業者から物件を探して見つけていくという流れになります。

周辺家賃や間取り、駐車場の有無をチェックしGoogle ストリートビューも活用しながら購入に値する物件かどうかを精査していきます。

超カンタンな積算価格の計算法

ネットや不動産業者から物件情報が手に入り、目ぼしい物件が見つかったら、積算価格を出していきます。

土地の価格を出すには、国税庁から公表されている相続税路線価を使って出していきます。

具体的には、対象物件の相続税路線価を調べて平米数をかけることで土地の値段を出していきます。

倍率地域となっている場合は、固定資産税評価額にその土地ごとに定められた倍率をかけることで土地の値段を出していきます。

建物価格については、おおむね木造、軽量鉄骨であれば平米14万円、鉄骨であれば平米15万円、RCであれば平米20万円が銀行の見方になります。

その単価を建物の延べ床面積にかけることで建築時の建物価格を出していきます。

その価格から減価償却分を減価して建物価格を出します。

あとは土地と建物の金額を足せば、積算価格を出すことができます。

銀行が融資する際には、その積算価格に対して70%をかけた金額が通常、融資額となる場合が多いでしょう。

指値がすっごく通りやすい物件

流通物件においては、競売と違い販売価格は売主の言い値か業者の言い値がそのまま反映されています。

そのため、価格は交渉次第で下げることが出来ます。

最近では大幅な指値をする人も増えましたが、指値が通りやすい場合というのがありますのでご説明します。

指値が通りやすい物件は相続で売り急いでいる物件が最も指値が通りやすいです。

売主は相続があったことを知った日から10ヵ月以内に申告をする必要がありますし、延納をしないのであれば納税も10ヵ月以内となります。

そのため、急ぎでお金が必要ですから早く現金化する必要があるため、指値が通りやすいわけです。

また任意売却物件も指値が通りやすい物件となります。

ただし、すでに持ち主に売り値の権限がなく、仲介業者を経由して銀行とのやり取りとなります。

そのため、銀行の許可が必要ですが、指値が通りやすい物件であることには変わりありません。

他には、全部空室となっている物件や修繕費用がかさむ物件であればリスクが高いですから、指値をしてみる価値があるでしょう。

賃貸需要をサクッと判断する5つのポイント

市場の相場よりも安く買えて、このまま貸せば利回り最低でも20%はいくぞ!

そう意気込んで物件を購入したまでは良かったのですが、実際に購入して運営した際、入居が一切決まらない、入居希望者の問い合わせすらない、そんな危機的な状態に陥らないようにするためにはエリアを上手に選定していく必要があります。

いくら利回りが高い物件を手に入れたとしても、郊外のポツンとしたところにたった1軒だけが建っていればその利回りは絵に描いた餅になりかねません。

不動産は一度買ってしまえば、場所を移動できないので場所選びこそが肝だとも言えます。

人によっては市街化区域しか投資エリアとして考えていないという場合もあれば、市街化調整区域や非線引き区域まで含めて果敢に攻めていくという人もいらっしゃると思います。

また、ターミナル駅から5分の好立地でしか買っていきませんという人もいれば、駅から30分以上離れた土地でも取得を進めていくという人もいらっしゃることでしょう。

このように、エリア選定は人によって様々な考え方があり、どれが正解だということはないものと思います。

辺鄙な土地でもしっかり入居者が付いていればそれはそれで正解だったというわけですから。

ただ、博打の要素を極力省き、成功する確率の高い不動産投資をしていくという観点から見れば、入居者の付きやすいエリア選定の考え方というのは存在するものと思っています。

では、「どのような場所を選んで買っていけば良いのか」という問いの答えとしては個人的には「賃貸需要のある地域」と考えています。

そんなの当たり前でしょ、と思うかもしれませんが、利回りの高い物件を探していると、目の前の利回りに目がくらんで、ついつい初歩的なポイントが頭から離れたまま物件選びをしてしまう投資家さんたちもいるのです。

賃貸業として入居者に貸し出すことで家賃という報酬を得ていくわけですから、賃貸需要のある地域に物件を購入していく必要があるというのは最も大事な点ではあるのですが、正直これだけではイメージが湧かないと思いますので、より具体的に掘り下げていくとこのような感じになるかと思います。

(1)「周辺に生活基盤があるか」

周辺の生活基盤として存在する施設としては、近くにスーパーがあるのかどうか、また近くに小学校や中学校があるのかどうか、郵便局、市役所、銀行があるのかどうか、最低限このような施設が近くにないと生活に支障が出ますのでこれが近くに存在するのかどうかという点が判断要素として大事になってきます。

たとえば、ファミリータイプの物件だとすると、スーパーは車で行けるので良いとしても、小学校や中学校に関しては徒歩圏でないとなかなか賃貸需要はないのではないでしょうか。

また地方物件で、駅から離れているのに駐車場のない物件も同様といえます。

加えて、生活基盤という点でいえば、上水道が通っているのかどうか、下水管は近隣まで伸びているのかどうか、ないのであれば浄化槽で処理しているのかどうか、これらの設備面についても賃貸需要に影響してくるため、必要な視点だと言えます。

戸建てを探しているとよく見つかるのが井戸の物件です。

その近隣一帯が井戸で生活しているのが一般的なのであれば、井戸の物件も投資対象として含めてよいものと思いますが、その物件だけが井戸であるなら投資対象から外すべきです。

その地域の下水道普及率を調べるには、「○○市 下水道普及率」で検索すればすぐに調べることができます。

似たような話で、汲み取り式のトイレに遭遇することもよくあります。

汲み取り式トイレの普及率というのは、公共下水道普及率と浄化槽普及率を足せば残りのパーセンテージが概ね汲み取り式のトイレ率だと思われますが、そもそも汲み取り式トイレは賃貸物件として人気がないので投資対象から外してしまった方が良さそうです。

(2)「近くに賃貸物件があるか」

また、近くにアパートやマンションなどの賃貸物件が存在するのかどうかという点も大事な点だと考えています。

そもそも賃貸需要のない地域にアパートやマンションは存在しないと考えられますので、近くにアパートやマンションが存在していれば賃貸需要はあるものと考えられます。

そして、アパートやマンションが存在していれば、次に近隣のアパートやマンションの入居率も見ていく必要があります。

近隣の入居率が半分を切っているようなエリアであれば賃貸需要は低いものと考えられますが、戸建てをメインに攻めていくのであればそのようなエリアであったとしても客付けは十分行えるものと思います。

(3)「駅からの距離はどうか」

他にも、賃貸需要があるかどうかを判断する上で、最も大事な点が駅からの距離です。

東京の中心部は別として、ある程度郊外や地方物件であれば駅から2km前後を1つの目安にされると良いと思います。

駅から2㎞であれば自転車で行ける距離ですし、歩いてでも通勤することは可能な距離です。

それ以上、離れるとバスを使うことになるかと思いますが、バスを毎日駅まで通う手段として使うにはとてもストレスを感じるのが普通の感覚でしょうから、やはり駅から2㎞というのが良い目安になるものと思います。

(4)「災害危険エリアに指定されてないか」

あとはハザードマップを利用するのも有効です。

災害危険エリアに指定されている地域であれば、賃貸需要にも影響してくるでしょうし、もし実際に災害が起きて被害が発生したとすれば入居者の命にかかわる問題にもなりかねません。

「○○市 ハザードマップ」で検索すればすぐに調べることができます。

洪水(浸水)、土砂災害、津波といった災害が起こりうる可能性を秘めた地域をすぐに 調べることができます。

(5)「地元の不動産業者の評判はどうか」

これ以外にも賃貸需要の有無を見極める方法として、地元の不動産業者に聞き込みを行うという方法も非常に有効です。

実際に訪問して聞き込みを行う方法でも良いのですが、わたしは電話で済ませることがほとんどです。

わたしの場合、投資する地域は土地勘のないエリアばかりです。

そのため、ネットで情報を集めるか、人から聞いて集めるしか方法がないわけです。

人から聞いて賃貸需要があるかどうかの情報を集める方法としては、地元の不動産屋さんに聞くのが一番確実な情報源です。

物件を売り込む際には情報を隠してあとは知らん顔をする業者が多い中、地元の賃貸需要については本当のことを話してくれる不動産業者が多いというのが私の感触です。

具体的な聞き方としては、

「○○の地域で収益用で物件を探しているのですが、賃貸需要はありますか?」
「○○アパートを収益用として購入しようとしているのですが、近隣の入居率はどのくらいありますか?」
「○○地域の客付けは最近いかがですか?」

といった聞き方で、地域の賃貸需要に関する情報を集めるのです。

もし、狙った物件のエリアで賃貸需要が低いという答えが返ってくれば、

「どの地域だと賃貸需要が高いですか?」
「人気のエリアはどの辺りになりますか?」

といったように再度、質問を投げかければ賃貸需要の高いエリアを教えてくれます。

ついでに、そのエリアで売り物件はないか聞いてみると良いでしょう。

ちょっとした一言で掘り出し物が見つかることもあります。

不動産業者は常に買い手を探していますから、どんどん積極的に情報収集していくべきです。

業者に対して遠慮はいりません。

そういったことを繰り返していけば、そのうち仲の良い不動産業者もできてくるでしょうし、割安の地下物件情報をいち早く教えてくれることにもなるでしょう。

このような感じでわたしも業者に連絡を取って情報収集をしています。

収益物件は欲しいけれど、どういう場所に物件を購入していいかわからないという人は大勢いらっしゃるかと思います。

そのために、行動するための最初の一歩が踏み出せないという人もいるかと思いますが、そのようなときには、こちらに記載した内容をご参考にしていただけたらと思います。

不動産投資のお金の残し方 裏教科書
石井彰男(いしい・あきお)
会計事務所ロイズ会計代表。成功する大家さん塾主宰。税理士大家さん。業界では異色の経歴を持つ税理士大家。「大家さんで幸せに起業する」をモットーに自身でも不動産投資の塾を主宰。失敗しない物件選びの講座や会計を学びキャッシュフローの増大を図る講座を開催しており、セミナー講師としても活躍中。 ※画像をクリックするとAmazonに飛びます