(本記事は、石井彰男氏の著書『不動産投資のお金の残し方 裏教科書』ぱる出版、2018年8月3日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

繰上げ返済をするなら新規に物件を取得するべき理由

不動産投資のお金の残し方 裏教科書
(画像=wutzkohphoto / Shutterstock.com)

不動産投資をしていく上で判断に迷うことはたくさんありますが、その1つに繰り上げ返済をすべきかどうかという話があります。

家賃に手を付けずにちゃんと取っておけば通帳の残高は自然と増えていきます。

そのお金の使い道を繰り上げ返済に使うべきか、どうするべきかというご相談をいただきますが、わたしは繰り上げ返済をすべきでないと考えています。

その理由は金利と物件の利回りの関係にあります。

銀行金利は通常であれば1~2%台が普通です。

物件の利回りはどのくらいあるでしょうか。

首都圏の新築区分マンションであれば4~5%台がほとんどですが、首都圏の新築アパートであれば7%前後が今のところ相場です。

地方に行けば、アパートの利回りは10~15%が相場です。

地方の戸建ての利回りは15~20%が多いのではないでしょうか。

それでは、通帳に残った銀行残高を繰り上げ返済に使った場合、どれだけ得をすることになるでしょう。

それは、銀行の借入金利である1~2%分だけ得をすることになります。

一方、その通帳残高を新たな物件取得に使った場合は、どれだけ得をするでしょう。

それは購入した物件の利回りと金利との差額分だけ得をすることになります。

仮に金利が高いスルガ銀行で借りたとすると、首都圏の新築区分マンションであればほとんど差額はゼロ。

首都圏の新築アパートであれば2.5%前後。

地方のアパートは5.5~10.5%。

地方の戸建ては10.5~15.5%。

金利1~2%で借りたとすれば、この差額分はさらに多くなります。

仮に1%としてみましょう。

首都圏の新築区分マンションであれば3~4%。

首都圏の新築アパートであれば6%前後。

地方のアパートは9~14%。

地方の戸建ては14~19%。

差額分がかなり大きくなってきましたね。

つまり、これを見ても分かるように、繰り上げ返済するよりも新たな物件を取得した方が得をすることが明らかなのです。

購入する物件の利回りが高ければ高いほど、差額分も大きくなり得する金額も大きくなっていきます。

ただ、スルガ銀行から金利4.5%で借りている状態で、かつ購入しようとしている物件の利回りが3%ぐらいだと、逆に繰り上げ返済した方が得になるということになります。

収益物件から話はずれますが、持ち家の住宅ローンで言えば、さらに繰り上げ返済の必要性は薄れます。

なぜなら、住宅ローンの金利は通常1%以下の場合が多いためです。

今借りている金利が安ければ安いほど、繰り上げ返済は非効率な支出となります。

細かいところで他にも議論すべき点があるかもしれませんが、大筋の考え方としてはこのように考えて問題ありません。

●繰上げ返済は次の融資に悪影響を与える?

ここで、もう1つ別の論点があります。

借入した以上は、銀行にもある程度は儲けさせてあげないと次の融資の時に影響するかもしれないという点です。

というのも、繰り上げ返済をすれば銀行側としては、本来得られたであろう利息を取り損ねた状態になるわけで、その分、利益が減るわけです。

銀行側が融資すると判断した当初は、100の利益が見込まれていたにもかかわらず、繰り上げ返済をすることで90の利益に減ってしまうのです。

投資家の方は、経済的合理性を追求するのが正義ですから、自分が得をして相手がその分だけ損をするのはしょうがないではないかと考える方も多くいらっしゃるかもしれませんが、現金で買う場合は別として、融資で購入するのであれば購入できるのは銀行の協力があってこそ他なりません。

そういったことからも、今後の協力関係を築くために繰り上げ返済でなく、節税など他の方法で利益を上げる方が得策ではないかと個人的には考えております。

近江商人の言葉に、「売り手よし、買い手よし、世間よし」という三方良しの言葉がありますが、この言葉の意味は商売において売り手と買い手が満足するのは当然のことであるが、それだけに留まらず、社会に貢献できてこそよい商売といえるのだという考え方を示したものです。

この三方の中に、銀行さんも加えてあげても良いのではないでしょうか。

融資を申し込む際に、銀行同士を競わせて金利の引き下げを狙うという方法は一般的に行われており、それは正しい方法だと思いますが、いったん融資を受けてからはその条件で約束を守ってあげるのが、銀行との良い付き合い方なのではないかと思います。

イチバン得する最適な出口戦略

不動産投資をやっている方であれば、必ず聞いたことがある言葉で出口戦略という言葉があります。

「不動産投資は出口戦略が大事だ」、「最終的に売却してこそ利益が確定されるのだ」という話ですね。

株式投資では必ず最後は売却で終了することになるかと思いますので納得できるのですが、不動産投資においては必ずしもそうとは限らないのではないかというのが今のところのわたしの考えです。

一時期、出口戦略という言葉をよく耳にするようになったので、わたしも気になりシュミレーションしてみたことがあります。

今持っている物件を売った場合と、そのまま持ち続けて家賃収入をもらい続ける場合で計算してみたのですが、どう計算してもそのまま持ち続ける方が利益が多いし儲かる計算になるのです。

結構膨大な計算量になるので、ここに紹介することは控えますが、何度やってみても、(途中の修繕費やその他の支出を考慮したとしても)やはり持ち続ける方が儲かる計算になりました。

そのようなこともあり、わたしの考えは出口戦略=売却ではなくても良いと考えるようになりました。

今現在、わたしが考えている出口戦略としては、子供や孫の代までもずっと持ち続け、永続的に家賃収入を得ていくにはどうすればよいのかというものです。

つまり、わたしにとってのもっとも最適な出口戦略とは、子供へ物件を引き継がせ、引き続き賃貸物件として末永く運営することだと考えています。

確かに、資産の買い替えや入れ替えという考え方もあって、物件を売却する代わりに他の物件を取得するというやり方もありますが、高く売却しようと思えば景気の良い時期や株価の高い時期に売却時期を合わせる必要があります。

その後、代わりの物件を購入していくのだと思いますが、売った時期が価格の高い時期なのであれば、新しく購入する時期も価格の高い時期になってしまうので、効果が薄れるものと思います。

また、安い時期まで待って買おうとすれば、その間、得られたであろう家賃をもらい損ねることになるので、たいした意味がない。

悩ましいことに売却すればしたで、税金がかなりかかります。

個人で売却すればなおさらですが、法人で売却しても対策を講じなければ多額の税金がかかってきます。

そういったことを考えると、思ったより売却益が手元に残らないので売らない方が楽だという結論に至りました。

●物件売却で一番トクをするのは業者?

そして、一番大事なのが、出口戦略を声高に叫んでいるのがたいてい不動産業者であるという点です。

彼らは物件の流通がなければ利益がないので、買いと売りを勧めてきます。

証券会社も同じようなものです。

さらに、出口戦略を論じる人の多くがRCなどの大型物件を所有する人達であるという点です。

RCは築年数が古くなってくると、修繕費が多額に膨らんできます。

そのうち、キャッシュフローだけではまかないきれないくらいの金額になってきます。

RCでは、そういったことがあらかじめ予想できるので、出口戦略を考える必要が出てくるものと思います。

キャッシュフローが一番出て、修繕費も少ない時期にだけ所有してあとは売却し、次の物件を探すというやり方になってきます。

ただ、RCは木造などと違い売却時の利益が数千万円や1億以上という金額になってくる場合もあるため、その点、魅力がありますね。

話は戻りますが、頻繁な売買を避けたいという思いもあり、建て替えを繰り返すことで永続的な保有を目指すというように考えています。

高利回り&ローリスクな物件は探せばあります!

投資家さんたちとお話していて気になることがよくあります。

それは利回り=リスクと考えている点です。

一般的に見ると、リスクとリターンは比例するというのが当たり前なのですが、不動産投資においてはその関係が当てはまらないと考えています。

というのも、利回り5%だからといって安全かというと決してそうではないからです。

利回りが低いということはそれだけ収益性が低いですから、何かの出費があった際に家賃だけで補填できない可能性があります。

ですが、利回りが高ければ毎月のキャッシュフローがしっかりしていますので、突然の出費に対しても対応することができます。

確かに高利回り物件は、表面利回り通りに運用できない場合が多いですが、それを加味しても高利回り=ハイリスクだとはどうしても考えにくいと思っています。

実際、わたしの物件で利回り24%のアパートがありますが、ハイリスクかというとまったくそんなことはありませんし、今でもしっかり稼いでくれています。

むしろ、運営していて感じるのが、高利回りだからこそローリスクなのではないかと考えてしまいます。

利回りがリスクをカバーしてくれているように感じるのです。

ですので、不動産投資の世界においては高利回り=ハイリスクではなく、むしろ高利回り=安全な投資先であると考えてもらっても良いのではないかと思っています。

不動産投資のお金の残し方 裏教科書
石井彰男(いしい・あきお)
会計事務所ロイズ会計代表。成功する大家さん塾主宰。税理士大家さん。業界では異色の経歴を持つ税理士大家。「大家さんで幸せに起業する」をモットーに自身でも不動産投資の塾を主宰。失敗しない物件選びの講座や会計を学びキャッシュフローの増大を図る講座を開催しており、セミナー講師としても活躍中。 ※画像をクリックするとAmazonに飛びます