ビジネス「断捨離」のススメ

ビジネス断捨離,やましたひでこ
(画像=The 21 online)

「できる人」はどんな机で仕事をし、どんな整理術を心がけているのだろうか。ここでご登場いただくのは「断捨離」で知られるやましたひでこ氏。不快な環境で仕事をすることは生産性を下げるだけでなく、疲労感や倦怠感にすらつながると指摘するやました氏に、オフィスを見せていただくとともに、その「整理術」をうかがった。

「引き出し」を見れば仕事ができるかがわかる

「デスクが整理整頓できていない人は仕事もできない」とは、よく言われることだ。ただ、「断捨離」の概念を世に広めたやましたひでこ氏は、むしろ「引き出しの中」にこそ仕事力が表われると語る。

「仕事は選択と決断の連続です。モノの要不要を判断できずに先送りする人は、まさに仕事ができない人の典型。しかし、実際は引き出しの中に不要なモノを溜めこんでいる人がなんと多いことか。これでは、デスク上が整然としていても意味はありません。

私たちは、今自分が持っているモノを収納することばかりを考えがちですが、それは不要なモノを捨てて持ち物を減らした後の話です。これを怠ったまま収納しても、引き出しの中はただのゴミ溜めになります。

まずは、『断』=不要なモノが入ってくるのを断つと同時に、『捨』=今あるモノの中から不要になったモノを捨てることで、『離』=モノへの執着から離れる『断捨離』が必要なのです」

やました氏は、オフィス空間は人の身体と同じだと指摘する。必要なモノは取り入れなければならないが、不要なモノはすぐに出さなければならない。

「便秘が続けば、老廃物が溜まっていきます。それが続くと、新陳代謝が滞って身体が淀み、病気になるリスクが高まります。オフィス空間も同じです。入れるべきモノを厳選する一方で、捨てるべきモノを捨てないと、不要なモノが溢れ、残ったわずかなスペースで仕事をすることに。これでは探し物が見つからないのはもちろん、不要なモノが目に入り集中力が削がれ、生産性が落ちていく。すると忙しさから疲れを感じるようになる。ついには仕事への悪影響だけでなく、生きていくエネルギーまで消耗させてしまうのです」

「断捨離」を進める3つのステップとは?

では実際に、何をどのように捨てていけばいいのか。

「モノを捨てるには、3つのステップでふるいにかけていく必要があります。

ファーストステップは、現状を把握すること。引き出しの中は外からは見えません。そこで、引き出しの中身を洗いざらいデスクの上にぶちまけます。すると『自分はこんなにモノを溜め

ていたのか』『何年も使っていないモノがたくさんあるな』ということに気がつくはずです。そこで、明らかに必要のないゴミやガラクタは即、捨てていきましょう」

残ったモノに関しては、時間軸を意識してさらに捨てるべきモノを選別していく。

「捨てるのが苦手な人は、『まだ使えるか、使えないか』で判断しようとします。でも、それ以前にそもそも使う必要がなければ、使えたとしても仕方がありません。『使えるか、使えないか』ではなく、『今の自分にとって必要か、必要ではないか』という基準で取捨選択していきます。昔必要だったモノが、今同じように必要だとは限りません。むしろ、今の自分にとって重荷になっている可能性すらあります。歳を取って視力が衰えたのに、いつまでも同じ眼鏡を使っているようなもので、捨てたほうが効率が上がることもあるのです」

「不安の証拠品」があなたの生産性を下げる

そして最後は、「不要・不適・不快」を基準に捨てていく。 

「不要とは、『あれば便利で使えるけれど、なくても困らないモノ』のこと。たまにしか使わない参考資料をいつまでも持っている必要はありません。必要なときになければ、誰かから借りればいいのです。

不適は、『今の自分にはふさわしくないモノ』です。たとえば、20代で使用していたネクタイが、40代の今の自分には若々しすぎる。そう感じるのならば、捨てて今の自分に合ったネクタイを買うべきです。

不快は、長年使っているけれど、違和感や不快感があるモノです。たとえば、履き心地の悪い革靴などを無理に履き続ける必要はありません。捨てて新しい靴に履き替えましょう」

それでも、「いつか使うかもしれない」と考えると、なかなか捨てられないことも。

「たとえば、もう終わったプロジェクトに関する書類を、『いつか必要になるかも』と考えて、ずっと持っている人がいますよね。でもその『いつか』は本当に来るのでしょうか。

未来は不確定なものです。人は不確定なものに不安を感じ、『いつか』に備えようとします。しかし、そもそも未来は何が起きるか不確定なわけですから、備え出せば切りがありません。その結果、自分の周りには『いつか』に備えた『不安の証拠品』でいっぱいになり、それを目にするたびに、起きるかどうかわからない『いつか』にさらに怯えるようになります。

今、必要なモノ以外は捨てていい。必要になったときは、そのとき考えればいいのです」

分類する必要なし!「断捨離的収納術」

最終的には、どれくらいまで不要なモノを捨てればいいのだろうか。

「引き出しでいえば、開けたときにどこに何があるか、ひと目でわかるぐらいにまで断捨離すべきでしょう。およその目安でいえば、引き出しの中にあるモノの8割は不要です」それだけのモノを捨てれば、

「整理整頓」すら不要になるという。

「管理するモノが少ないので、一番上の引き出しは文房具、真ん中は電卓や電子辞書の類い、一番下は書類といった具合に、大まかに分類しておけば十分。これを、『ゾーニング』と呼びます。細かな保管場所を覚えずとも、ほしいモノはすぐに取り出せ、すぐにしまうことができます。

モノが少なくなることで集中力が増し、さらには探し物に時間がかからない。これで仕事の生産性が上がらないはずありません。主婦層に断捨離は浸透しつつありますが、ビジネスマンこそ取り組んでほしいものです」

まずは引き出し一個からでいい。そこから、徐々に断捨離の範囲を広げていき、快適なオフィス環境を作っていこう。

やましたひでこ(やました・ひでこ)クラター・コンサルタント
東京都出身。早稲田大学文学部卒。学生時代に出逢ったヨガの行法哲学「断行・捨行・離行」に着想を得た「断捨離」を日常生活の「片づけ」に落とし込み、誰もが実践可能な自己探訪メソッドを開発。その実践的メソッドは、年齢、性別、職業を問わず、圧倒的な支持を得ている。デビュー作『新・片づけ術断捨離』(マガジンハウス)以来、多くの書籍を出版。最新刊は『人生を変える断捨離』(ダイヤモンド社)、『心を洗う断捨離と空海』(かざひの文庫)。≪取材・構成:長谷川敦 写真撮影:まるやゆういち≫(『The 21 online』2018年5月号より)

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