近頃「iDeCo(イデコ)」という言葉がちまたに広まっているのをご存じでしょうか。この記事にたどり着いたなら、おそらく将来の備えに対して感度の高い方だと思います。改めて資産形成の初心者向けにイデコのメリット、はじめ方についてご紹介したいと思います。
特集◆老後破綻しないためのじぶん年金のつくり方・STEP7
メリットだらけ!じぶん年金「iDeCo」のやさしいはじめ方
わたしの備えは大丈夫?意外に少ない公的年金
老後の生活を支える公的年金があることは知っていますよね。毎年、ねんきん定期便で年金額のお知らせが届いているはずです。
この公的年金と同じくらい将来の支えとなるのが個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)。これは個人が備えることのできる私的年金で、「イデコ」という言葉は、愛称として広められました。
このイデコのメリットを紹介する前に、「公的年金があるのに、さらに個人が備える必要性ってあるの?」と疑問を感じる人もいますよね。そこで公的年金について説明します。
公的年金は会社員、公務員、自営業やフリーランス(個人事業主)、学生、専業主婦など働き方の違いはあっても、20歳以上のすべての人が加入しなければなりません。
公的年金の種類は国民年金(基礎年金)、厚生年金、国民年金があり、会社員として働いていた人でシングルなら月14万6,000円、妻が専業主婦の元会社員夫婦は月21万1,000円、自営業、フリーランスで働いていたシングルの人は6万5,000円、自営業で働いていた夫婦は月13万円が支払われ、老後の主な収入となります。いかがですか。現役時代の収入に比べると、少ない印象ですね。
月々の掛金は会社の制度や職業により変わる
そこで、この公的年金を補うことができるイデコの出番というわけです。
イデコは、自分自身が選んだ投資信託や定期預金などに、公的年金の保険料にあたる「掛金」を毎月5,000円以上、1,000円単位で積み立てて、60歳以降に受け取ることができる私的年金制度です。
しかも現代は、会社員→転職→フリーランス→会社員と働き方を変える人もいて、年金の種類も変更せざるを得ませんが、そんなとき「ポータビリティ」と呼ばれる払った掛金を、移った先の確定拠出年金に移動して、同じように運用し続けることができるのが、イデコの特徴。便利と言えそうです。
イデコは国民年金や厚生年金に加入している人ならほぼ誰でも入れますが、会社員の場合、会社にある企業年金制度の内容で、掛金の上限額が変わります。
ちなみに企業年金とは、企業が従業員の老後の生活を支えるため、公的年金に加えて設けられている年金のこと。企業年金がない場合の掛金の上限は月2万3,000円、企業年金がある場合は月1万2,000~2万円です。
また、公務員などは月1万2,000円、専業主婦(主夫)は月2万3,000円、自営業などの人は付加保険料や国民年金基金保険料と合算して月6万8,000円です。
自営業などの人は、イデコ、国民年金基金、そしてこの両方で備えるという3つの選択肢があり、多くの額を積み立てることができます。
節税効果が将来の年金を後押し。会社員なら約120万円の節税に
ところで私たちがやっぱり一番気になることは、「イデコで将来、いくら増えるの?」でしょう。
イデコの正式名称の個人型確定拠出年金から想像できますか。イデコは拠出額(掛金)が確定しているけれど、給付額(将来受け取れる年金額)は、運用結果によって加入者個人ごとに変わるものなので、いくらと具体的には言えません。
ただイデコは運用でお金が大きく増える可能性に加えて、加入期間中の節税メリットも大きな魅力。イデコの掛金の全額が所得控除になるからです。
節税のシミュレーションしてみましょう。
課税所得300万円の会社員(27歳)が毎月1万5,000円の掛金を積み立てるとします。年間所得控除は18万円。節税効果は年間3万6,000円。60歳になるまでの33年間では118万8,000円です。
また課税所得800万円の自営業(43歳)の人が毎月6万8,000円の掛金を積み立てると年間所得控除は81万6,000円。節税効果は26万9,280円となり、60歳になるまでの17年間ではなんと457万7,760円にも。
この節税効果分を積立元金と運用益に上乗せすれば、会社員に比べて公的年金が少ない自営業の人も安心感が高まります。
メリットの大きいイデコですが、中途解約はできません。事情により毎月の掛金の支払いを休止はできますが、60歳になるまで掛金で積み立てたお金を引き出すことはできません。そこが逆に、老後に向けた資産形成を強制的にできるため、メリットとも言えますね。
イデコはどうやってはじめる?
イデコをはじめるとき、その窓口となるのは証券会社や銀行、保険会社の金融機関です。その中から任意で1社を選びます。
このとき、どの金融機関を選ぶべきなのでしょうか。
実は金融機関により特徴や取り扱う運用商品、加入時や毎月の口座管理などに掛かる手数料などが異なります。手数料のようなコストはできるだけ低いほうがいいので、運営管理手数料0円を目安にしてはいかがでしょうか。ただし運営管理機関以外で掛かる手数料については各社共通です。
また給与振込口座のある金融機関である必要はなく、ネット証券ではウェブサイトから申し込みができるので、窓口へ出向く手間が省けますね。
イデコの運用商品は投資信託がオススメ
次にイデコは運用商品として、元本確保型と呼ばれる満期時に元本と利息が確保される安全性の高い商品と、元本変動型と呼ばれる運用状況に応じて元本が変動する商品を選べます。
元本確保型は「定期預金」などの商品で安心感が高いのですが、ゼロ金利時代の今は利息がほとんどつかず、差し引かれる手数料のほうが負担になるかもしれません(節税効果は得られます)。
一方、元本変動型の「投資信託」は元本が変動する可能性があるからこそ、一方で運用次第で元本を大きく増やせる可能性があります。だからイデコにピッタリな商品と言え、運用商品は途中で自由に組み替え、変更することができます。
・初心者はバランス型
投資経験がまったくなく、まずは運用を投資信託(投信)にお任せしたいという人は、国内外の株式や債券など、複数の資産に分散投資する「バランス型」を選ぶといいでしょう。
また退職年齢を目標として投資対象を変える「ターゲットイヤー型」もオススメです。ターゲットイヤー型の投信は退職年齢が近づくにつれて株式の組み入れ比率を緩やかに縮小させる一方で、債券の比率を高くして、安定的な運用を目指すタイプです。
例えば20代から30代前半の人なら、2050年をターゲットイヤーにした商品を選ぶと、2050年(60代)に近づくにつれて、安定的な運用に切り替わっていくというものです。
・若年層は株式中心でポートフォリオを組んでも
まだ60歳までに十分な時間があるという若手・中堅世代は、株式中心のポートフォリオを組んで増やすことを意識して運用することもできます。イデコで運用する投信は複数選べるので、投資になれてきたら自分なりのポートフォリオを組んで、リスク分散をしながら、大きな成長を狙うという方法も考えられます。
イデコのまとめ
イデコは「じぶん年金」をつくる手段として、もっともオススメできる制度。
イデコは、証券会社や銀行、保険会社の金融機関にイデコの口座を開設してはじめることができます。
働き方が変わっても持ち運びができて、節税効果が高く、投信や定期預金で積み立てることができます。ゼロ金利の現在は、投信をうまく活用すれば、積み立てた金額を大きく上回る年金となって、老後を豊かにしてくれることが期待できます。
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篠田 尚子(しのだ しょうこ)
楽天証券経済研究所 ファンドアナリスト
慶應義塾大学法学部卒業、早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。国内銀行で資産運用関連業務に従事後、ロイター傘下の投信評価機関リッパーで市場分析担当、ファンドアナリストとして活躍。2013年より現職。
(提供=トウシル)
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