「気乗りのしない誘い」。断りたいけど、嫌われたくない

話す,人間関係
(画像=The 21 online)

「取引先に『できません』と返事をしなければならない」
「ママ友からのたびたびのお茶会のお誘い……。子ども同士の関係が悪くならないように、うまく断りたい」

こうした「言いにくいこと」「できれば言いたくないこと」をラクに伝えられたらいいのに。

そんなふうに思ったことはないだろうか。

『「言いにくい」をハッキリ伝えても、なぜか好かれる話し方』が好評発売中の夢実現応援家(メンタル・コーチ)の藤由達藏氏は、ちょっとしたコツで言いにくいことがなくなり、人間関係は劇的にうまくいくと説く。この連載では、「断っても、叱っても、面倒なお願いをしても、なぜか好かれる」。そんな話し方について藤由氏に解説をしてもらった。

悩みの9割は、対人関係が原因!?

少し前に「伝え方」というテーマが話題を呼び、ちょっと前には「雑談」が、そして、最近では「語彙力」というキーワードが注目を浴びているようです。

これらのキーワードに共通しているのは「コミュニケーション」です。

アルフレッド・アドラーは「人間の悩みはすべて対人関係の悩みだ」と喝破しました。

拙著『結局、「すぐやる人」がすべてを手に入れる』の中でも書いたことですが、私たちは、難局を打開するために6つの他力を利用することができます。

1.人
2.モノ
3.カネ
4.知識・情報
5.スキル・ノウハウ
6.その他

その筆頭にあげられるのが「人」です。

人との関係さえうまくいけば、いかなる難局も打開して、人生を切り開くことができます。

ところが、その人間関係こそが、私たちの悩みになることも。

どうして悩むことになるのかというと、うまく意思疎通ができないからです。

断れない、頼めない、叱れない、「やめて」と言えない……

「言いにくいことを言えない」でいるうちに、すれ違いが始まり、誤解を生み、関係がぎくしゃくしてしまいます。そして他力として利用できるはずだった「人」が、今度は逆に「障壁」になってしまうのです。

「言いにくいこと」を伝えられる、しかも、嫌われず、好かれてしまう。そんな話し方ができたら良いですね。

では、周りを見回してみてください。言いにくいことを言っているはずなのに、少しも嫌われず、それどころか好感を持たれている人がいないでしょうか。

自分だったら、断り切れない誘いをいとも簡単に断っている人。

自分だったら言いにくい頼み事でも平気で頼み、頼まれたほうも喜んでその依頼を引き受けてくれているという人。

逆に、簡単な頼み事も嫌がられてしまう人もいないでしょうか。

理屈は正しいのに、みんなから煙たがられて協力を得られにくい人。

頭の回転が速く、優秀なのはわかるけれど、人望がない人。

言いにくいことを伝えて、なぜか好かれる人、嫌われる人――こうした違いは、どこから生まれるのでしょうか。その違いについてこれからお話していきたいと思います。

連載第1回目は「話し方」と「人間関係」について、多くの方が誤解している3つのことにお伝えします。

【誤解1】「ものの言い方」を変えれば、すべてうまくいく!

話し方が人間関係を改善するというのはその通りです。

話し方について、世の中には様々なアドバイスがあります。それらの中には「ものの言い方」、つまり、どのような言葉を使うかに着目しているものもあります。言葉を変えることで、コミュニケーションがうまくいくと説いているのです。

「お疲れさま。最近遅くまで頑張ってるね。今、忙しいよね? そうだよねえ。そんなあなたに本当に申し訳ないんだけど、ちょっとだけ聞いてくれる? いいかな? 実は、この件はあなたしか頼れる人がいなくてさ。もしもやってくれたらうれしいんだけど、お願いできるかな? できれば明日の午後イチまでにやってもらえたら助かるんだけど」

急ぎの仕事をお願いするときに、相手の自尊心に訴えかける伝え方をしています。かなり気を使っていて、相手が忙しいことについても理解を示しています。

伝え方としては合格点ではないでしょうか。

しかし、このセリフを、暗い表情をして、イライラしながら、相手の目も見ずに伝えたらどうでしょうか。「頼れるのはあなただけ」という言葉もむなしく、イライラしながら他のことを考えている様子で目も合わせないので、言われた相手も尊重されている気がしません。

これでは、せっかくのセリフが台無しなのです。

この例は、極端かもしれません。しかし、言いにくいことを言うときに、とても言いにくそうに言う人がいませんか。

「大変申し上げにくいことなのですが……」

泣き顔みたいに顔をゆがめて、もじもじしながら、怒られるのを恐れているような様子です。言われた相手は、「そんなに言いにくいということは、よほど大変なことがあるのだろう」と身構えるかもしれません。

お願いするほうは、すんなり受け入れてほしいと思っているのに、わざわざ受け入れにくい気分を相手の中につくり出してしまっていることに気づいていません。これは多くの人が、無意識のうちにやってしまっていることです。

【誤解2】「論理的」であれば相手は動く

たとえば、あなたが商品本部の担当者で、ある商品の全国の販売実績をとりまとめる責任者だとします。全国の営業担当者に自分の担当する商品をたくさん売ってもらうことを考えなければなりません。

そのときに、その商品が「高利益率」「機能・デザインが優れている」「この商品の売上金額が営業担当者自身の評価につながる」という理由を挙げて、「この3つの要素があるのだから、あなたは売ってあたりまえです。売れていないのは努力が足りないからではないですか。先月よりも今月の行動量が減っていませんか? この商品を拡販すればそれだけ評価も高まります。売らない理由がないはずです」と言ったとします。

こんなふうに論理的に相手を言いこめると、どうなるでしょうか。

きっと、相手は動かないでしょう。

仕事でも家庭でも論理的に正しければ、みんなが納得するというわけではありません。感情的にも受け入れることができなければ、物事は動きません。

論理的に話す力は大切ですが、日常生活の中で相手を動かすには、それだけでは足りないのです。

【誤解3】いい声で話すことが、相手に好感を与える

「話し方の改善」というと、アナウンサーやボイストレーナーのように、発声法や滑舌をよくするということをイメージされる人もいるでしょう。たしかに、魅力的な声で、滑舌よく話すことができたらそれは素晴らしいことです。

ただし、声がよければコミュニケーションが円滑にいくかといえば、必ずしもそうでもありません。昔から「巧言令色(こうげんれいしょく)鮮(すく)なし仁(じん)」といわれて、口が達者な人は信用ならないという見方もあるくらいです。

声だってよいに越したことはありませんが、そもそもどんな声をよいとするのか、どんな声が好きかは人それぞれです。どんな声だって個性的で魅力的なものです。私は色々な人の声に魅力を感じます。何がよいとも悪いとも思いません。好きだなあと思う声がいくつもあるだけのことです。

滑舌をよくしよう、声をよくしようと努力することは大いに結構ですが、それだけで、コミュニケーションが円滑になるというわけではありません。

言いにくいことをズバズバ言っても、なぜか好感を持たれる人、相手にとって耳の痛いことをずけずけ言っても嫌われない人というのは、必ずしも言葉遣いが巧みだとか、論理的だとか、声がよいというわけではありません。

では「言いにくいこと」をハッキリ伝えても、なぜか好かれる人の話し方は、何が違うのでしょうか。

答えを言ってしまうと、なぜか好かれる人の話し方で、もっとも重要なこと、それは「気分」のコントロールです。

とはいえ、「気分」のコントロールと言われてもピンとこないかもしれませんね。

「なぜ気分が大切なのか」それを次回、連載第2回でお伝えします。楽しみにお待ちください!

藤由達藏(ふぢよし・たつぞう)〔株〕Gonmatus 代表取締役。夢実現応援家
モットーは「人には無限の可能性がある」。経営者から学生まで幅広い層の個人を対象に夢実現応援の対話(コーチング)を提供するとともに、企業に向けた研修や講演も提供。1967年生まれ。1991年、早稲田大学第一文学部卒業後、プラス〔株〕に入社。営業、企画、新規事業設立等に携わる。2009年、全プラス労働組合中央執行委員長に就任。労働組合運動にコーチングを取り入れる。2013年9 月、コーチとして独立。コーチングを核として、各種心理技法や武術、瞑想等の経験を統合し、夢実現応援対話技法を確立。2015年7月、『結局、「すぐやる人」がすべてを手に入れる』(青春出版社)の出版を機に作家活動を開始。著者累計40万部を突破。2016年9 月、〔株〕Gonmatus を設立。夢実現応援事業、出版プロデュース、動画制作等の事業を展開。(『The 21 online』2018年05月25日 公開)

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