健康のためにジョギングをしたり、仲間と野球やサッカーをしたり、会社の付き合いでゴルフをしたり……というように、社会人になってからもスポーツを楽しむ人は多いが、スポーツに伴うリスクへの備えは十分だろうか。スポーツ保険は、自分のケガはもちろん、相手への賠償責任についても補償を受けられる保険。安心してスポーツを楽しむためにも、その補償内容と選ぶポイントについて理解しておきたい。

様々なリスクが潜むスポーツ 賠償額が300万円を超えるケースも

スポーツ保険,傷害保険,賠償責任保険,個人賠償責任補償特約
(画像=Zurijeta/Shutterstock.com)

スポーツには、様々なリスクが潜んでいる。以下の事例のように、思わぬ事故により多額の賠償義務を負ってしまうこともある。

・野球の練習中に受け取りそこなったボールが車道に飛び出し、避けきれなかったバイクを横転させ運転手にケガを負わせ、バイクも破損させた(賠償額321万636円)。
・野球の練習中、ボールがソーラーパネルを直撃して破損させた(賠償額180万1800円)。
・ソフトバレーの練習試合中、ボールが屋内消火栓に当たり配管を破損させた(賠償額47万9430円)。

スポーツ保険の基本的な補償内容は自身の傷害と対人・対物の賠償

スポーツ保険は主に、「傷害保険」と「賠償責任保険」により構成されている。傷害保険では、自身がケガをした場合に約定の死亡保険金・後遺障害保険金・手術保険金・入院保険金・通院保険金が支払われる。一方、賠償責任保険では、対人・対物賠償につき約定の保険金支払限度額を限度として補償を受けられる。

また商品によっては、スポーツ中に突然死した場合に葬儀費用が補償されるものや、携行品に損害が生じた場合に補償を受けられるものもある。

特定のスポーツに特化した保険も

損害保険の中には、ゴルフ保険やスキー保険など特定のスポーツに特化したものもある。例えばゴルフ保険では、自身の傷害や他人への賠償責任保証はもちろん、ゴルフ用品の盗難やクラブの破損・曲損があった場合に損害額が支払われたり、ホールインワンやアルバトロスの際にお祝い金がもらえたりするなど、手厚い補償を受けられるものがある。

特定のスポーツのみ嗜むという人は、この種の保険も一度検討してみるといいだろう。

スポーツ保険選びの2つのポイント

スポーツ保険は補償内容の他に、加入形態や保険期間などについてもいくつかの選択肢がある。そのため選ぶ際は、以下の2点に留意したい。

個人で加入するのか団体で加入するのか

スポーツ保険は、個人で加入する商品と団体で加入する商品に分けられる。

団体で加入するスポーツ保険としてメジャーなのが『スポーツ安全保険』だ。これは公益財団法人スポーツ安全協会が加入取りまとめ機関となっているもので、4名以上から加入することができる。64歳以下の大人の場合は年間1850円という割安な保険料で補償を受けられるため、野球やバレーなどを仲間と楽しむだけで個人的にスポーツをすることはほとんどない……という人は、団体での加入を検討するのもひとつの選択肢であろう。

個人でスポーツ保険に加入する場合、様々な商品の中から自分に合ったものを選択することになる。個人加入型のスポーツ保険は、団体で加入する保険に比べて保険料が高くなるというデメリットはあるものの、補償内容や補償範囲については個々のニーズに合わせて自由に選択できる。スポーツ保険の補償範囲には「本人型」「夫婦型」「家族型」というようにいくつかの種類があるため、配偶者や子供もスポーツを楽しむ人は補償範囲の広い夫婦型・家族型のスポーツ保険に加入するといいだろう。

保険期間はニーズに合わせて選択可能

スポーツ保険の保険期間は、ニーズに合わせて自由に選択できる。中には1日300円で入院・通院補償や賠償責任補償、携行品損害補償を受けられるなど、1日単位で加入できる商品もあるため、仕事や学校、保護者同士の付き合いなどでたまにしかスポーツをしない人は、この手の保険に加入しておくのもいいだろう。

多くのスポーツ保険は、インターネット経由でいつでも手軽に加入できる。たまのスポーツの場合には、必要に応じて前日までに保険の加入手続きをする習慣を身に着けておくと、安心してスポーツを楽しめるだろう。

補償内容の重複に注意!加入済の保険の「個人賠償責任補償特約」を確認

スポーツ保険に加入する前に、既に加入している保険契約の補償内容を確認してみよう。契約内容によっては補償が重複する部分があるからだ。その際、注目したいのが日常生活における偶発的な事故により損害賠償責任を負った場合に、約定の保険金額を限度として補償を受けられる「個人賠償責任補償特約」だ。この特約を既存の保険に付保している、あるいは付保すれば、スポーツ保険に新規加入せずともスポーツ保険同等の補償をまかなえる。

「個人賠償責任補償特約」を付保できる損害保険に既に加入している人

自動車保険や火災保険、傷害保険といった個人賠償責任補償特約を付加できる損害保険に加入している場合、特約を付保すればスポーツ中に生じた事故による損害賠償責任についてはカバーすることができる。スポーツ保険のうち賠償責任保険部分については既に用意できているため、自分がケガをした場合の補償について検討すれば事足りるのだ。既存の損害保険の特約を付保したうえで、傷害保険、医療保険、生命保険への加入や見直しを検討してみるのもいいだろう。

障害保険や医療保険、生命保険に既に加入している人

傷害保険や医療保険、生命保険に加入している場合、スポーツ中の事故により自分がケガをした場合の備えについては既に用意できている。そうすると検討すべきは、スポーツ中の事故に起因する損害賠償責任への備えで十分ということになる。自動車保険や火災保険、傷害保険など個人賠償責任補償特約を付加できる損賠保険にも加入している人は、この特約の付保を検討もしくは、新たに特約を付保した損害保険に入るというのもひとつの手だろう。

「スポーツの秋」はスポーツ保険を検討する絶好のタイミング

秋は定期的にスポーツをしている人はもちろん、こどもの運動会に出場するなど、普段スポーツをしない人でも運動する機会が多い時期。安心してスポーツを楽しむためにも自分に合ったスポーツ保険を選びたい。その際、加入済み保険の内容を考慮しつつ、必要十分な補償を用意することが大切だ。

文・曽我部三代(保険業界に強いファイナンシャルプランナー)/MONEY TIMES

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