要旨

取締役会評価
(画像=PIXTA)
  • コーポレートガバナンス・コードが求める取締役会の実効性評価には、評価を全て自社内で行う自己評価と、第三者から支援を受ける外部評価がある。日本の現状を、日経平均構成企業225社の直近のコーポレートガバナンス報告書を確認してみると、実際に約4分の1の企業が何らかの形で外部コンサルタント等を活用している。

  • 重要なのは、どのような取締役会を目指すのかという本質的検討があって、その上で適した手法を選択することである。取締役会は、まず自己評価の目的と手法の十分な検討を経て、客観性の補強という観点から、(数年に)一度、外部評価を導入して既存の自己評価を検証してみることが、現時点の日本企業における現実的な対応といえるのではないだろうか。

取締役会評価の手法

コーポレートガバナンス・コード(以下、コード)が求める取締役会の実効性評価(原則4-11③)には、評価を全て自社内で行う自己評価と、第三者から支援を受ける外部評価がある。但し、外部評価の場合でも、取締役会が最終的な評価の主体であることから自己評価に含まれるという見方もできる(1)。自己評価は比較的容易に実施できることから、各国ではまず自己評価が実施され、続いて外部評価を行う企業が増えていくという経過をたどっている(2)。1992年からコーポレートガバナンス改革に取り組んでいる英国では、2010年のコード改訂以降、少なくとも3年に一度の外部評価を求めているだけでなく、客観性を担保するため、外部評価者との利害関係の有無について会社に開示させるところまで進んでいる(3)。

外部評価を活用すれば、客観的な視点から、専門的な知見・ノウハウを活用した支援を受けられるという利点がある。具体的には、評価目的の掘り下げから対象の設定にわたる支援、質問項目の作成、アンケートやインタビューの実施、課題の分析、評価レポートの作成といった内容である。ただ、外部評価を活用しても、評価全体を指揮し活用する主体はあくまで取締役会であるから、現状と課題を踏まえた評価目的と実務設計の大枠については、取締役会が主体的に決める必要がある。

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(1)高山与志子「取締役会評価の実際と課題」証券アナリストジャーナル2015年11月号pp.41-42
(2)高山与志子「取締役会評価とコーポレート・ガバナンス ―形式から実効性の時代へ―」旬刊商事法務2043号(2014)P.16
(3)これまで英国のコードは評価結果の開示は要求していなかった。概要とはいえ日本のコードが先行していた結果の開示について、2019年から適用となる英国の改訂コードではアニュアル・レポートに結果を開示するように求めた。The UK Corporate Governance Code (2018), Provision 23 参照。
https://www.frc.org.uk/getattachment/88bd8c45-50ea-4841-95b0-d2f4f48069a2/2018-UK-Corporate-Governance-Code-FINAL.PDF

主要企業の現状

日本の現状を、日経平均構成企業225社の直近のコーポレートガバナンス報告書から確認してみよう。図表1は、質問票の作成など何らかの形で外部コンサルタント等を活用したケースを「外部評価」とした全体像である。コード導入から3年余りが経過し、外部評価を検討する企業は増えているとされており、主要企業では実際に約4分の1が外部評価を導入している。外部評価を担うのは主として専門のコンサルタントのようであるが、弁護士も一部手掛けている。尚、今回の対象企業には、外部評価者との利害関係について開示した例は見当たらなかった。

取締役会評価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

企業が実際に外部コンサルタント等を活用している内容をいくつかの開示例から見てみよう。

  • 取締役会事務局は、外部専門家の助言を参考にして、アンケートの作成およびその結果のとりまとめを実施
  • アンケートの回答収集および集計は外部機関に依頼し、集計後のデータは取締役会事務局が分析
  • アンケートは回答が社内担当者の目に触れないよう回答先を外部の法律事務所とし、集計結果のとりまとめおよび分析を委託
  • 外部機関による評価プロセスの調査、評価、改善提案、評価結果の点検等を3年に1回実施、外部機関は、当社の過去の評価方法、評価の決定プロセス、各取締役の評価、最終評価等を分析の上、制度およびその運用について指導・助言

といったようにレベル感は様々であり、費用と時間等のコストも勘案し、自社の実情に即した現実的な活用が既に行われていると見られる(4)。

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(4)現状では手掛けるコンサルタント等が少ないことから外部評価の料金は高いとされており、費用対効果も十分に検討が必要になるだろう。

外部評価活用の考え方

外部評価は、取締役会評価のプロセスを向上させる次の一手として企業側の関心が高く、実際に導入も進みつつある。取締役会評価という経験のない実務に取り組む際に陥りやすいのは、まず手法の検討に注力してしまうことである。重要なのは、どのような取締役会を目指すのかという本質的検討があって、その上で適した手法を選択することである。実際に、ガバナンスの先進企業でも、取締役会評価に着手した段階の議論で、取締役・監査役から「まずは自分たちは何を求められているのか、そしてそれができているのかを話し合った方が良い」という指摘がなされ、当社にとっては「コンサルタントが推奨する評価方法は、少し形式に寄りすぎるおそれがある」として、「外部機関を使う前に、自分たちでやるべきこと、できることがあるのではないか」という結論にその時点では至ったという例もある(5)。自社がどのような取締役会を目指すのかを取締役会で議論することは、取締役会評価における評価基準の設定でもある。いずれにしても外部評価は自己評価全体の一部に過ぎない。取締役会は、まず全体にわたる評価の目的と手法の十分な検討を経て、客観性の補強という観点から、(数年に)一度、外部評価を導入して既存の自己評価を検証してみることが、現時点の日本企業における現実的な対応といえるのではないだろうか。

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(5)杉山=三笘「取締役会実効性評価をめぐる各社の取組み(1) 監査役会設置会社・花王の取組み」旬刊商事法務2106号(2016)P.19

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江木聡(えぎ さとし)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

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