要旨

シェアリングサービス
(画像=PIXTA)

シェア経済が拡大している。内閣府の推計では2016年の市場規模は約5,000億円、うち6割が「モノ」のシェアだ。シェアが伸びる理由は消費者の節約志向で語られることが多いようだが、経産省の調査結果では「捨てるのがもったいない」「物の有効活用」「掘り出し物がある」「お店に売っていないものがある」など経済面以外の理由もある。

若い世代ほど非正規雇用者が増え、正規雇用者でも賃金カーブがフラット化するなど経済環境の厳しさが増しており、「できるだけ消費を抑えたい」という節約意識から、安いモノやサービスの利用意向が高まることは自然なことだ。

一方で、若い世代ほど消費社会の成熟化の恩恵を受けて、お金を出さずとも、かつてより質の高い消費生活を送ることができる。モノの所有欲が弱まり、消費がモノからサービスへと移る中で、モノを所有するよりも、必要な時に利用できればそれでよいという意識が高まっているのではないか。

モノの所有から利用へという意識には、社会貢献意識の高まりも影響しているだろう。「エシカル消費」や「サスティナビリティ」など、コスパばかりでなく地球環境や社会貢献など幅広い効用を求める消費態度が広がっている。日本では近年、災害も相次いでいることで、社会貢献意識は高水準で推移している。

特にスキルのシェアのサービス数が伸びているが、変容する人々の暮らしとの相性の良さがあるだろう。人口の偏在や単身世帯や核家族世帯、共働き世帯の増加が進み、地方部だけでなく、都市部でも家庭の中で人手不足の状況がある。働き方改革で柔軟な働き方に向けた環境整備が進められており、この流れは強まっていく。

また、シェア経済拡大の大前提として、情報通信技術の進化によって実現する手段が整ったことがある。ネットやスマホの普及で、これまで見えなかった個人のモノや空間などの資産やスキルに関する情報などをリアルタイムに不特定多数の個人で共有できるようなった。さらに、SNSの利用拡大により、信頼性に乏しかったネットの向こう側の個人等について、ある程度の信用度が可視化されるようにもなった。

実は従来サービスでもシェアと同様のものもある。違いは、ネットを介して不特定多数の個人とつながること、それにより価格は安くなり、サービス内容も多様となる。また、スマホワンストップの仕組みが整っていることで利便性も高い。

既存企業は消費者の価値観や暮らしの変化を十分に理解した上で、例えば、モノの転売を意識した商品戦略なども検討すべきだ。一方で既存企業がシェアに乗り出すという方向もあるし、やはり新品を買う楽しさを訴求するという方向もある。既存企業はシェア経済と共存しながら、いかに付加価値を生み出していくかが重要だ。