(本記事は、小嶌大介氏の著書『だから、失敗する!不動産投資【実録ウラ話】』ぱる出版、2018年9月25日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
戸建ての失敗は、致命傷にはならない
ここでは「戸建て」とひとくくりにしていますが、関西に多いテラスハウス(連棟式住宅)も含めて「戸建て」と呼んでいます。
僕の前著『50万円の元手を月収50万円に変える不動産投資法』(ぱる出版)で詳しく手法を解説していますが、100万円に満たないような安い物件をキャッシュで購入する。
もしくは身内に土下座して借りて購入する。不動産投資といっても、かなり敷居の低い投資手法です。
ある程度の貯金さえできれば、誰でも取り組めるのですが、じつは失敗者も増えています。
僕が考える戸建て失敗は、次の3つです。
(1)リフォームのやり方がわからない
(2)リフォームにお金をかけすぎた
(3)客付ができない(安く買っても入居者が決まらない)
1番目は安く買えたものの、どう修繕していいかわからないケースです。
安く売っている戸建ては、大抵ボロボロです。雨漏りやシロアリ、傾いていたり、柱が溶けていたり、様々な難点があります。
それをどう直していいかわからない。そこでストップしてしまう失敗です。
2番目は、どこまでリフォームしていいのか加減がわからず、思った以上にコストがかかってしまったケースです。
リフォームをどこまでするのかは、物件の状態にもよりますし、その地域のニーズもあります。
最低限の家賃で貸すのであれば、最低限を満たすリフォームで止めておくべきです。リフォーム業者に相談すると、基本的に必要以上のリフォームを行うようにアドバイスをされます。
「どこまで直すべきか」「いくらまでお金をかけるべきか」の判断はとても大切で、くれぐれも業者のいいなりになることはやめましょう。
3番目についていえば、賃貸物件が供給過剰でどうしても客付ができないエリアというものが存在します。
もしくは、その地域で満たすべき条件を満たしていないと客付ができない……ということもあります(例として、地方で駐車場がないなど)。
賃貸物件としては致命的ではありますが、共同担保として所有して、ほかの物件を購入するときに使うという手もありますから、そこまで悲観することはありません。
【事例】スカビュー戸建てを15万円で買って失敗 奥山シコ太郎さん(仮名)
奥山さんは愛知県に住む31歳のサラリーマンです。
仕事は安定的ですが時間に余裕のない毎日を送っています。密かに会社を辞めたいと思っており、それは家族に言っていません。
「平日朝起きて仕事に行って、帰ってくると夜22時頃です。週末は家族サービスを求められますから、自分の時間がつくれません。ものすごい激務ではないのですが、家族と仕事でいっぱいいっぱいなのです」
とのことです。不動産投資をしようと思ったのは昨年10月で、僕のセミナーがきっかけとなって行動を起こしました。
「それまで、なんとなく本を読んで勉強していました。じつは、親は不動産屋を経営しており恵まれた立場なのですが、親には『遅いよ。2年前ならよい物件があったのに……』と言われました」
そんな感じで、なんとなく活動していたところ、友人のサラリーマン投資家から「面白い物件あるから見に行かない?」との誘いに乗って見に行ったのが、このスカイビューの15万円戸建てだそうです。
スカイビュー物件とは天井が崩れて、空が見える物件を指します。一般的にはなかなか巡り合えませんが、100万円以下の物件となると、スカイ率が高くなります。
「価格欄には200万円と書いてありました。物件はザ・古民家といった感じ、中に入ると昔にタイムスリップしたような間取りで、これはこれで面白いと思いました。課題は屋根と水回りです。その時、仲介の担当者から、売主さんは1秒でも早く手放したい、マイナスにさえならなければいくらでも売るという話になり、そこで残置物撤去不要、確定測量不要の条件で10万円で買付を入れたところ、5万円戻されましたが、15万円で契約成立となりました」
と奥山さん。
補足として、契約日の前日に仲介から連絡があり、「役所で確認したところ、下水が入っていません。汲み取りです」と言われたそうです。
その時点では、なんとかもがいて上手いこと修繕してやるという気持ちで契約を進めたそうです。
・奥山さんの物件概要
愛知県T市 T駅徒歩18分 築83年木造戸建て 15万円 駐車場なし(近隣あり)
土地 72.72平米 建物108.75平米(建ぺい容積率オーバー)
おまけ:告知事項あり(風呂にて孤独死)。セットバックで再建築は可能。
「購入したものの、結局何にもしていません。小嶌さんに教えてもらったアデランス工法(既存の瓦屋根に波板を造作して貼るインチキ工法)で修繕したいのですが、自分で業者に指示できません。見積もりをお願いした業者からは200万円かかると言われ、別の業者さんを探しているうちに5ヵ月放置してしまいました」
僕に言わせてもらえば、お昼休みに電話で手配をするだけのこと。僕は今日も屋根の手配をしていました。
せっかく15万円で手に入れたスカイビュー物件も、気持ちがなかったら無理です。
お宝物件をお宝にできる人がいれば、ゴミのまま持つことしかできない人もいるのですからもったいない話です。
「これじゃいけないと先月残置物の片付けにいきました。室内になぜか壺がたくさんあったので、『ジモティー』で売ってみたところ、10個以上あった壺が2000円で売れました。中には1メートルくらいある壺もあったのですが、買ってくれた人は壺で金魚を飼うという話でした。とりあえず、これから残置物を片付けていって、そのノウハウをシェアしていきながら頑張っていきたいです」
奥山さんは、それこそ僕の本を読んで、スカイ物件を15万円で買ってきて、なんとか頑張ろうとしたのです。
しかし、現実はうまく安く修繕する方法を見つけられなくて、やる気をなくしてしまいました。ようやく少しずつ動き出してはいるようですが、まだまだ先は長そうです。
この失敗事例は(1)のパターンです。
(1)のままリフォームを進めると(2)の失敗になる可能性もあります。いずれにしても、今は止まっている状態からゆっくり動き出したというところでしょうか。
このような移り気なサラリーマン投資家というのは結構いるものです。結局のところ、現状に満足しているから、行動を起こせないパターンのようにも思えます。
どういうことかといえば、現実がそうイヤではないから、余裕がある人だからこそ、がんばる気持ちが沸かないのです。それはある意味幸せな生活を送っている証拠なので、そこまで悲観する必要はないでしょう。
そう考えると15万円で買った物件は、何も手を加えないのが彼にとっては正解かもしれません。共同担保用に持っているか、もしくは倉庫にしてブルーシートでも敷いておけばいいのではないでしょうか。
もしくは手放したいのであれば、現状で屋根を直すための見積もりがあるのですから、見積もりをセットにして50万円程度で売るのが現実的だと思います。
続いての事例も、(1)(2)のリフォームに関係する失敗です。
【事例】2年間、戸建てのDIYを続けた男 中出良夫さん(仮名)
続いては失敗から復活した30代の中出くんです。彼は大阪で自営業をしています。
不動産投資開始は2016年で、大阪府下にテラスを購入して、ずっと1人でDIYしていたそうです。
「知り合いに薦められてボロい空き家を買って1人でコツコツと直してました。DIYは、1人でやってるとモチベーションが上がらないんです。すごく孤独な作業でもう一生終わらないのではないかと思っていました」
と中出くん。業者に頼めば速やかにできるし、職種的にそのルートもあるはずです。
それなのに、ずっと1人でペンキを塗っていたそうです。すべて自己流で適当に塗ったため、時間をかけたわりに仕上がりはキレイではありません。
これも初心者にありがちなことで、期間を定めず何となくDIYしていると、いつまで経っても終わらないことがあります。リフォーム中は当然のごとく家賃を生みません。
これを機会ロスといいます。
僕自身がDIYをしたのは最初の1戸目だけでしたが、自己資金が少ない状況では、歯をくいしばってDIYをやるべきだと思っています。
もちろん、初心者ですから時間がかかるのも仕方ありません。それでも、それが1年以上かかるとなると話は別です。
どこかで切り上げて商品化しなくてはいけません。
そのため中出くんのケースは失敗とまではいえませんが、商品化が著しく遅れてしまっているので、小さな失敗といえるでしょう。
結果的には仲間ができて手伝ってもらえてあっという間に完成して、利回り18%貸し出すことができているのですから大成功です。
その後の彼は勢いがついて、去年の秋から、あれよあれよという間に1棟(12室)+テラス3戸を購入。
最近では、客付が難しいと言われる大阪府下の物件の客付にも成功しています!
・中出くんの物件一覧
(1)大阪府N市 木造テラス310万円 DIYで利回り18%
(2)大阪府M市 重量鉄骨造アパート 5000万円 初の1棟物件 満室稼働中 利回り15%
(3)大阪府D市 木造テラス 65万円 DIYで利回り35%
(4)大阪府M市 木造テラス 250万円 利回り20%
(5)大阪府O市 木造テラス 320万円(物件150万円+リフォーム170万円) 大工さんがかっこよくリフォームして利回り25%想定
「DIYしていたら近所のおばちゃんが見にきたので『ここ、住まへん?』って聞いたらOKしてくれました。今住んでいるところよりキレイで家賃も安いというのが決め手です。リフォーム中に入居が決まってホントにラッキーでした!」
そうして物件も増えてかつ高稼働してフローも出るようになってきました。
「先月には市内H区にある築100年のテラスハウスのリフォームが終了しました。10人兄弟の大工さんがかっこよく仕上げてくれました。利回りは25%を想定しています。これで、もうすぐ目標CF月額50万円が達成できます」
と、中出くん。
無理な目標を立てたら無理しなくちゃいけない。だから、無理しなくていい小さな目標を立てて、なるべく早く達成する。これは良い考え方です。
彼はまた新たな目標を立ててがんばるそうです。
大きいだけが成功ではありません。
小さいものでも積みあげればきちんとお金を生みます。こうした少額でできる投資は融資を受けなくてもできますから、中出くんのような自営業者でもハードルが低くはじめられるのも特徴です。
意外と再現性のある廃屋「戸建て」再生投資
僕がやっているような激安戸建ての再生はそこまで簡単ではないですが、命を取られるようなことはありません。
いろいろな人の失敗を見てきましたが、戸建ての失敗は総じて小さくて、致命傷になることはほとんどないです。
むしろ失敗を経験するチャンスです。このことから不動産投資で最初にやってみるなら、ぜひ戸建て投資をオススメします。
失敗の原因は戸建てそのものにもありますが、戸建ての投資を通して自分の中のアクが出ます。
そこから「自分が不動産投資に向いている・向いていない」ということが判断できるのです。ここで止める人がいたら、それはそれで正解なのです。
それが小さい物件で早めにわかったほうがいいと思います。
とりわけ関西であれば、テラスハウスという小さくて安い廃屋と戸建ての間のような物件があるから手を出しやすいです。
もちろん、激安の廃屋が存在するのは関西だけじゃありません。
全国を見渡せば、何かしら見つかります。
どこかの田舎、山奥や海のそばかもしれません。
最初から激安で売られていることはあまりないですが、価格交渉の末に100万円以下で買える物件が何となく転がっていたりするものです。
あなたもぜひマイ廃屋を見つけて欲しいと思います。
それが大阪であれば小さいテラスハウスになるけれど、場所によっては100平米のだだっ広い家のケースもあるでしょう。
田舎でもニーズがない場所はNGですが、その地域ならではの需要がつかめたらこっちのものです。
僕自身もはじめて関東に「田舎の戸建て」を150万円で買ってみました。雨漏りはありましたが、ちゃんと屋根や壁があって、崩れていなかったので驚きました。
そうやって戸建てで修行を積んでから、1棟物件の再生に進むのも良し、戸建てをたくさん買い集めたい人もいるでしょうし、速水くんのように廃屋が崩れたら新築へ転向しても良いでしょう(再建築不可の場合、崩れたらアウトなので、気をつけてください)。