最近の医学部医学科の受験は昔と違うのでしょうか。実は医学科の受験状況は変化していて、定員数は増えていますが私立大医学科の難易度は上がっています。子供を医学科へ進学させるにあたり、最近の受験状況を把握しておくことは大切です(医学科の定員や倍率、偏差値は河合塾のデータを元にしています)。
近年の大学受験の基礎知識
医学科受験の状況を把握する前に、近年の大学受験の仕組みを簡単に紹介します。
国公立大学はセンター試験と2次試験の合計点で合否が判定されます。2次試験は前期、中期、後期と日程が分かれています。日程は大学によって異なり、「前期のみ」または「前期と後期」の日程を採用している大学が多い状況です。前期と後期の日程を採用している場合、定員は前期が多く、後期は少ないのが一般的です。
私立大学の入試はバラエティに富んでおり、大学によって様々です。私立大で一般的な3教科試験の他に、センター試験を利用した入試を行っている大学もあります。日程は前期や後期などで入試枠を分割している大学が多く、国公立大学と同様に前期のほうが後期に比べて一般的に定員は多くなっています。
医学科の定員数変化 定員数の増加は落ち着いている
医学科の定員について、近年の変化を確認します。医学科の定員数は2008年から地域の医師確保などの理由により増えています。
国公立大医学科の入学定員は2008年の4,688人から2018年には5,558人と約19%増加しています。私立大医学科の入学定員は2008年の2,900人から2018年には3,645人と約25パーセントの増加です。この10年で医学科の定員が大幅に増えたことが分かります。
前年の定員と比較すると、国公立医学科は2017年の5,571人から2018年は13人減っています。私立大医学科は前年の2017年は3,633人で、2018年は12人増えています。前年からはほぼ横ばいの状況であり、定員の増加は落ち着いたといえます。
大学別の倍率 国公立と私立の違いは?
医学科の倍率は、国公立と私立で違いがあるのでしょうか。
2018年の国公立大学医学科の一般入試の倍率を確認します。後期日程や地域枠などの定員が少なく倍率が高くなりやすい枠を除くと、岐阜大学(前期)の11.8倍、旭川医科大学(前期)の10.2倍、奈良県立医科大学(前期)の9.1倍などが高い結果となっています。全体的に地方大学の倍率が高い傾向にあります。
国公立大学の一般入試前期で倍率が低いのは、大阪大学(前期)と群馬大学(前期)の2.5倍、徳島大学(前期)と和歌山県立医科大学(前期)の2.8倍、九州大学(前期)などの2.9倍となっています。倍率が低い大学では、大阪大学や九州大学などの大都市部の大学と地方の大学が混在した結果となっています。
私立大学の一般入試で倍率が高い大学は、後期日程などの合格者が少ないものを除くと、帝京大学の52.8倍、東海大学(A方式)の38.0倍、金沢医科大学(前期)の29.9倍などです。国公立大学よりは難易度が低い私立大学の方が、高い倍率であることが分かります。
私立大学の一般入試で倍率が低い大学は、後期日程や地域枠などの合格者が少ない枠を除くと、東京慈恵会医科大学の7.5倍、藤田保健衛生大学の8.0倍、慶應義塾大学の8.5倍などです。難易度が高い慶應義塾大学や東京慈恵会医科大学の倍率が低めになっています。
大学別の偏差値
偏差値が高い大学は人気が高いという見方もできます。医学科の中で偏差値が高い大学と低い大学を確認します。
国公立の前期にて2018年度の医学部ボーダー偏差値が高い順では、東京大学と京都大学が72.5、東京医科歯科大学と大阪大学、奈良県立医科大学が70と続きます。逆に低い大学は、徳島大学や熊本大学の62.5です。
私立の一般入試にて2018年度の医学部ボーダー偏差値が高い順では、慶応大学が72.5、東京慈恵会医科大学や日本医科大学、順天堂大学などが70.0と続きます。偏差値が低い大学は、獨協医科大学や埼玉医科大学、北里大学などの62.5になります。親世代と違い私立大学医学科の難易度が上昇しており、医学科の中では偏差値が低い大学でも62.5となっています。
医学科進学で学力以外に必要なこと
医師になるのにふさわしい人間であるかどうかを、医学科の入試で確認する大学が増えています。東京大学理科三類では2018年度入試で面接が11年ぶりに再開されました。学力だけでなく、人間的成熟度、医学部への適正、コミュニケーション能力などを評価して、医療関係者としての適性をチェックしています。他の大学でも面接や集団討論、論文などにより、適性を確認しているところが多いです。
東進ハイスクールの調べでは、全国の医学科の合格者のうち現役合格者は39.6パーセントで過半数の60.4%が浪人生だそうです。入試での適正確認や私立大医学科の難易度の上昇など、医学科への進学は昔よりも難しくなっているという見方もできます。子供を医学科へ進学させるためには、学力だけでなく医師になるための人間力の向上も求められます。(d.folio)