長時間労働などにより男性の家事・育児への参加が少ないことが、少子化の原因の一つに挙げられている。女性の就労が進み、共働き家庭が増える中、家事・育児の負担が女性に偏ったままであると、結婚や出産が敬遠され、出生数の減少につながるためとされている。

 そのため少子化対策としても、また女性の活躍推進のためにも、長時間労働を是正し、男性の育児のための休暇取得を促進させることが求められている。

 2015年12月25日に閣議決定された「第4次男女共同参画基本計画」では、2020年までに男性の育児休業取得率を13%とするという目標が定められた。現状は2.3%であるので(厚生労働省「平成26年度雇用均等基本調査」)、この数年間に大幅に引上げなければならない。

 そこで本稿では、男性の育児のための休暇取得の実態を概観し、休暇取得の促進に向けての課題を考える。

<男性の育児を目的とした休暇の取得状況>

 厚生労働省「平成27年度仕事と家庭の両立に関する実態把握のための調査」により、末子出産時の出産・育児を目的とした男性正社員の休暇取得状況をみると、「育児を目的とした休暇取得なし」と回答した割合は52.4%である(図表1)。約半数が休暇を取得していないとしているが、残り「育児を目的に年次有給休暇制度のみ取得」(23.5%)と「育児を目的に年次有給休暇制度以外の休暇を取得(年次有給休暇をあわせて取得した層も含まれる)」(24.2%)を合わせると、末子出産時に何らかの休業を取得した割合は47.7%である。育児休業の取得という体裁をとらなくても、約5割の男性は育児のために休暇を取得しているという結果である。

 「育児を目的に年次有給休暇制度以外の休暇を取得(年次有給休暇をあわせて取得した層も含まれる)」した男性が、どのような休暇制度を利用したかをみたものが図表2である。この結果から次の3つのことがわかる。

 一つは、年次有給休暇制度以外の休暇を取得した男性の中でも、年次有給休暇制度も合わせて取得している人が6割以上である。図表1の「育児を目的に年次有給休暇制度のみ取得」の回答者を合わせると、男性が育児目的の休暇を取得する際、年次有給休暇制度が最も多く利用されているということである。

 二つ目は、「配偶者出産休暇制度」の回答割合が8割以上と高いことである。同制度は、年次有給休暇制度以外の休暇で、配偶者の出産の際に、病院の入院、退院、出産等の付き添いなどのために男性に与えられる休暇制度である。これは企業が任意で設置しているものであるが、設置されている企業に勤めている男性正社員には、年次有給休暇制度とともに広く利用されていることがわかる。

男性の育児のための休暇の取得促進に向けて
(画像=第一生命経済研究所)
男性の育児のための休暇の取得促進に向けて
(画像=第一生命経済研究所)

 そして三つ目は、「育児休業制度」の利用者は相対的に少ないことである。「育児休業制度(連続取得)」では約2割、「育児休業制度(再取得)」では約1割と少数派であり、年次有給休暇制度や配偶者出産休暇制度よりも利用割合が低い。男性の育児休業の場合、妻の産後に上の子どもの世話をしたり、妻の職場復帰後に生まれた子の世話をしたりするなど、そのタイミングは家庭の状況に応じて様々である。仕事の都合も合わせると、可能な限り臨機応変に取得できることが望ましい。しかし育児休業制度には取得可能な回数と申請期限に制約がある。原則として、1人の子どもにつき1回連続したひとまとまりの期間として取得するものであり(ただし子どもが生まれて8週間以内に育児休業を取得した男性の場合に限り再取得が可能)、しかも育児休業を開始しようとする日の1か月前までに取得申請をしなければならない。手続きに1か月の時間を要し、取得したいときにすぐに利用ができないことも、育児休業制度の男性利用者が少ない理由の一つであると思われる。

 これらのことから、男性の育児のための休暇の取得促進にあたっては、育児休業制度や年次有給休暇制度といった既存の法定休暇制度とともに、配偶者出産休暇制度のような育児を理由として取得できる法定外の休暇制度にも注目し、幅広く整備することの必要性がうかがえる。次に、こうした育児のために利用できる法定外の休暇制度の導入状況をみる。

<育児を理由として取得できる休暇制度の導入状況>

 厚生労働省「平成26年度雇用均等基本調査」では、育児休業制度や年次有給休暇制度といった法定休暇制度以外に、配偶者出産休暇や失効年次有給休暇(いわゆる未消化の年次有給休暇で、労働基準法に規定する消滅時効(2年間を経過)により失効した年次有給休暇)など、育児を理由として取得できる任意の休暇制度(以下「育児参加のための休暇制度」)について調査している。

 これによると、「育児参加のための休暇制度」がある事業所(事業所規模5人以上)の割合は18.3%である(図表3)。育児休業制度は74.7%であるので、これに比較して導入率は低い。

 「育児参加のための休暇制度」も育児休業制度と同様、事業所規模が大きくなるほど規定がある割合が高いが、500人以上の規模の事業所でも半数程度の導入状況である。

<男性の家事・育児参加のための多様な休暇制度の普及>

 現状では「育児参加のための休暇制度」を導入している企業は少ないが、男性の場合、導入されていれば、その利用率は育児休業制度より高いものもある。育児休業として必ずしも長期間連続して休みを取得できなくても、こうした制度があれば、これを利用し、育児のために休暇を取得する男性が少なくないことがうかがえる。また、年次有給休暇を育児のために利用している男性も多いことが示されている。

  女性の活躍推進により共働き家庭が増える中で少子化の流れを変えるためには、男性は仕事さえしていればよく、家事・育児は女性に任せればよいとの意識を一人ひとりが見直し、男性も家庭責任を果たすことが求められる。そのために、育児休業や年次有給休暇制度のみでなく、多様な休暇制度を整備し、休み方の選択肢を広げ、休みやすさにつなげることが必要である。(提供:第一生命経済研究所

男性の育児のための休暇の取得促進に向けて
(画像=第一生命経済研究所)

第一生命経済研究所 ライフデザイン研究本部
研究開発室 的場 康子
(まとば やすこ 上席主任研究員)