男女とも仕事にやりがいがあると思っている人のほうが職業能力向上に意欲的
『ライフデザイン白書 2015 年』調査より

 第一生命保険株式会社(社長 渡邉 光一郎)のシンクタンク、株式会社第一生命経済研究所(社長 矢島 良司)では、全国の18~69 歳の男女7,256 人に対して「今後の生活に関するアンケート調査」を実施し、その分析結果を元に『ライフデザイン白書 2015 年』を発刊いたしました。そのうち、本リリースでは、正社員・正職員の働く目的や職場環境評価、能力開発意識についての結果を紹介します。

 本リリースは、当研究所ホームページにも掲載しています。
URL http://group.dai-ichi-life.co.jp/cgi-bin/dlri/ldi/total.cgi?key1=n_year

≪調査結果のポイント≫

働く目的
● 「働くのは当然だから」の回答割合は、29歳以下では女性(42.2%)が男性(37.4%)を上回る

現在勤めている職場に対する評価 ● 男性同様女性も半数以上が「仕事の内容がおもしろい」と回答

現在身につけている職業能力
● 「英語などの語学力」以外、すべての項目で女性よりも男性のほうが身につけていると回答

今後新たに身につけたい能力、伸ばしたいと思う能力
● 「管理職としてのマネジメント能力」を身につけたい男性は25.6%、女性は12.6%

職場評価と職業能力との関係
● 男女にかかわらず、仕事にやりがいがあると思っている人のほうが、職業能力向上に意欲的

※ 本リリースは、厚生労働省記者クラブ、日銀記者クラブに配布しています。

≪調査実施の背景≫

 わが国は今、人口構造の変化に伴う労働力の減少を補うため、女性の活躍を推進し経済成長を目指しています。しかし、出産後も働き続ける女性は未だ多くないばかりでなく、職場において指導的な立場に就く女性も少ない状況が続いています。

 女性の活躍を促進させるためには、継続就業のための両立支援策とともに、女性が自らのキャリア形成を意識しながら意欲を持って働き続けることを促す取組も重要と思われます。

 こうした背景から、本リリースでは、第一生命経済研究所が実施した「今後の生活に関するアンケート」調査から、正社員・正職員として働いている2,325 人を分析対象として、女性の働く目的や職場環境評価、能力開発意識などについての結果を紹介します。

※本リリースで使用するデータは、当研究所が『ライフデザイン白書 2015 年』を発行するにあたって実施した「今後の生活に関するアンケート」調査のデータです。『ライフデザイン白書 2015 年』については、最終頁にご案内があります。また、調査結果の一部は以下でも紹介しております。
ニュースリリース「『ライフデザイン白書 2015 年』の概要」2015 年7月
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/ldi/2015/news1507.pdf

≪「今後の生活に関するアンケート」の概要≫

調査対象  全国の満18~69 歳の男女個人

調査実施期間  2015 年1月29 日~30 日

抽出方法  調査機関の登録モニター約118 万人から国勢調査に準拠して

地域 (10 エリア)×性・年代×未既婚別にサンプルを割付

調査方法  インターネット調査

有効回答数  7,256 サンプル

調査機関  株式会社マクロミル

≪分析対象者の主な属性≫

働く女性の能力開発に対する意識
(画像=第一生命経済研究所)

働く目的

「働くのは当然だから」の回答割合は、29 歳以下では女性(42.2%)が男性(37.4%)を上回る

働く女性の能力開発に対する意識
(画像=第一生命経済研究所)

 図表1は、働く目的をたずねた結果を性別、性・年代別にみたものです。

 性別にみると、多くの項目で男性よりも女性のほうが回答割合が高いです。「将来に備えて貯蓄をするため」「自分の自由になるお金をえるため」「家計を補助するため」など、生活のためというよりは補助的な意識で働くことを示す項目に女性の回答割合が高いですが、それらばかりでなく、「仕事を通じて達成感をえたいから」や「自分の能力や可能性をためしたいと思うから」など、仕事にやりがいを見出すことを求める項目も女性のほうが高いことがわかります。

 また、「働くのは当然だから」のように、性別では男性のほうが上回っている項目でも、年代別にみると29 歳以下では女性のほうが高くなっています。働く目的は、その後のキャリア意識と関連すると思われます。女性の中でも、特に若い女性で、社会的意義のある仕事をしたいと思っている人が多いことをみても、職業生活の始期は女性も男性と同等か、それ以上に意欲を持って働こうと思っていることがわかります。

現在勤めている職場に対する評価

男性同様女性も半数以上が「仕事の内容がおもしろい」と回答

働く女性の能力開発に対する意識
(画像=第一生命経済研究所)

 図表2は、現在勤めている職場についてどのように評価しているかを性別にみたものです。回答割合の差が10 ポイント以上開いている項目はなく、男女で回答傾向に大きな違いはみられません。

 「能力がいかせる」「仕事の内容がおもしろい」といった、仕事のやりがいを示す項目への回答割合をみても、男性と同様に女性も半数以上があてはまる(「あてはまる」と「まああてはまる」の合計)としています。

 このように、正社員・正職員として働く女性の、働く目的や職場評価から推察される仕事に対する意欲は男性とあまり変わらないことがうかがえます。

現在身につけている職業能力

「英語などの語学力」以外、すべての項目で女性よりも男性のほうが身につけていると回答

働く女性の能力開発に対する意識
(画像=第一生命経済研究所)

 図表3は、現在身につけていると自覚している職業能力についてたずねた結果を性別、性・年代別に示したものです。性別にみると、「英語などの語学力」「特にない」を除くすべての項目において、女性よりも男性の回答割合が上回っています。図表2で示したように女性も男性同様、意欲を持って働いている人が多いものの、仕事上必要な能力を身につけていると認識している人は男性のほうが多いようです。

 ただし、29 歳以下について性別にみると、「社内の人脈・ネットワーク」「社外の人脈・ネットワーク」「英語などの語学力」の回答割合は女性のほうが男性より高いです。語学力は僅差ですが、人脈づくりについては6ポイント以上の差があります。30 代以降は逆転する傾向にあるものの、20 代の入職期にあっては、女性のほうが人脈づくりに積極的であるようです。

今後新たに身につけたい能力、伸ばしたいと思う能力

「管理職としてのマネジメント能力」を身につけたい男性は25.6%、女性は12.6%

働く女性の能力開発に対する意識
(画像=第一生命経済研究所)

 図表4は、今後新たに身につけたい、あるいは伸ばしたいと思う職業能力を複数回答でたずねた結果を性別、性・年代別に示したものです。性別にみると「専門分野における知識・技術・技能」「英語などの語学力」「特にない」を除くすべての項目において、女性よりも男性の回答割合が上回っています。

 年代別にみても、29 歳以下では「特にない」を除くすべての項目で、女性よりも男性のほうが高いです。特に「管理職としてのマネジメント能力」の29 歳以下の回答割合が男女で20 ポイント以上差があり、40 代まで男女差が大きく開いています。

 わが国は今、女性の活躍推進のために女性管理職を増やすことを目指していますが、管理職として必要なマネジメント能力を身につけたいとする女性は男性に比べて少ないようです。女性の活躍推進を目指すにあたり、女性がこうしたキャリア形成に関する意識を変えていくことも必要と思われます。

職場評価と職業能力との関係

男女にかかわらず、仕事にやりがいがあると思っている人のほうが、職業能力向上に意欲的

働く女性の能力開発に対する意識
(画像=第一生命経済研究所)

 図表2の職場評価に関する項目のうち、仕事のやりがいを示す「能力がいかせる」「仕事の内容がおもしろい」「自己啓発や研修、勉強会などの能力開発がしやすい」といった項目への回答状況別に、現在身につけている職業能力及び今後新たに身につけたい職業能力いずれにも上位5位内に入った「専門分野における知識・技術・技能」「管理職としてのマネジメント能力」「社外の人脈・ネットワーク」と、「特にない」の回答割合を性別にみたものが図表5です。

 全体的に、自らの職場について「能力がいかせる」などにあてはまるとしている人のほうが、あてはまらないとしている人よりも、現在身につけている職業能力、今後新たに身につけたい職業能力いずれの項目(「特にない」を除く)の回答割合も高いです。その傾向は男女とも同様であり、男女にかかわらず仕事にやりがいがあると思っている人のほうが、職業能力向上のために意欲的であることがわかります。

≪研究員のコメント≫

 以上、働く目的や能力開発の意識等をみてきましたが、働く意欲のある女性は決して少なくはないことが明らかとなりました。女性も男性同様に多くが生計維持のために働くとしていますが、仕事を通じて達成感を得たいと思っている人は男性よりも女性のほうがむしろ多いです。

 しかし、職業能力を積極的に身につけている、ないしは身につけようとしている女性は男性に比べて少ないようです。両立支援策の普及によって継続就業率が高まり、職場に定着する女性が徐々に増えていますが、能力開発に対する積極性が薄いことは、女性の昇進意識が消極的であることとも関連しているように思われます。

 おりしも、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(女性活躍推進法)が2015年8月28 日に成立しました。同法は、従業員301 人以上の企業や国、地方公共団体に対し、「採用した労働者に占める女性労働者の割合、男女の継続勤務年数の差異、労働時間の状況、管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合」などの数値目標を設定し、その目標達成のための取組内容などを盛り込んだ「行動計画」を作成して外部に公表することを義務づけています。法的枠組みを構築することで、女性管理職割合など活躍度合いの「見える化」を行い、多くの女性が活躍できる社会の早期実現を目指そうとしています。

 現状、女性管理職割合が指標の一つとなっていますが、昇進意欲のある女性は多くないことから、それを短期間で増やすことは難しいと思われます。女性管理職割合を高めるためには、まずは、両立支援策の普及により職場に定着する女性を増やすことが必要です。その上で、女性自身も積極的にキャリア形成意識を持って働くことが必要であるとともに、企業がモチベーションを維持できるような仕事内容や能力開発の機会を提供することによって、多くの女性が意欲を持って働けるような職場環境を整えることにも力を入れるべきです。このようにして、男性とともに女性も自らの能力を発揮できるようになることで、女性の活躍推進の真の目的である、経済成長に必要な人的資源の強化につながると思われます。(提供:第一生命経済研究所

(研究開発室 上席主任研究員 的場康子)

働く女性の能力開発に対する意識
(画像=第一生命経済研究所)

㈱第一生命経済研究所 ライフデザイン研究本部
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