第一生命保険株式会社(社長 渡邉 光一郎)のシンクタンク、株式会社第一生命経済研究所(社長 矢島 良司)では、全国の18~69 歳の男女7,256 人に対して「今後の生活に関するアンケート調査」を実施し、その分析結果を元に『ライフデザイン白書 2015 年』を発刊いたしました。本リリースでは、その結果の一部をご紹介します。
≪調査結果のポイント≫
第1章 家族
子どもに関して心配していること ●第1子が中学生・高校生の親は「将来の進路」が1位。 ●第1子が未就学・小学生の親では「いじめ」も上位にあがっている。
子どもの進路についての地域差 ●中学生・高校生の親は、都市規模にかかわらず、半数以上が「子どもには地元で働いてほしい」。 ●しかし、都市規模が小さいほど、地元には進学先や就職先が少ないと思っている割合が高い。
第2章 地域
近所づきあいの状況 ●あいさつ以上の近所づきあいがある人は8割以上。 ●近所づきあいをしている人は大都市より郡部で多い。
近所の人に対して困った・不快に思った経験 ●近所づきあいをしていない人で「騒音問題」の経験が多い。 ●近所づきあいの有無により困った・不快に思った経験の内容が異なる。
第3章 消費
経済的ゆとり ●子育てが一段落した人で経済的ゆとりが高い。 ●「独身」より「夫婦のみ」で経済的ゆとりが高い。
増やしたい消費項目・減らそうと思っている消費項目 ●増やしたい項目は「貯蓄など財産づくり」「趣味・娯楽費」「耐久消費財」。 ●減らそうと思っている項目は「外食費」が最多、「特にない」も多い。
第4章 就労
働く理由 ●「生計を維持するため」が男女ともに1位。 ●男性の2位は「将来に備えて貯蓄をするため」、女性の2位は「自分の自由になるお金をえるため」。
現在身につけている能力 ●男女とも正社員の半数以上は「専門分野における知識・技術・技能」を身につけていると回答。 ●パートは男女とも半数以上が「特にない」としている。
第5章 健康・介護
傷病によって生じた状況 ●「今後の人生や万が一のことについて深く考えた」が約3割、「収入が減った」は約2割。
家族の介護時に困ったこと ●介護経験者の4人に1人が「先の見通しが立たなかった」と回答。
第6章 人生設計
人生設計の実施状況 ●人生設計について、「現在考えているところ」と答えた人が38%で最多。
人生設計について考えるために、あるとよい機会 ●男性では年代にかかわらず、「高校の授業を通じて」が最多。 ●男性の50~60 代では「勤め先の研修等で」が2位。
人生設計の効果 ●人生設計が、ほとんどできている人では、自分の万が一(死亡)や老後への不安が低い。
※ 本リリースは、厚生労働省記者クラブ、日銀記者クラブに配布しています。
≪ライフデザイン白書について≫
少子高齢化による人口構造の変化は、人々の生活にも様々な変化をもたらしています。こうした社会環境の変化に対応するため、人々はどのようなライフデザインを考えているのでしょうか。
『ライフデザイン白書』は、生活者の意識と行動の変化を捉えるべく、ライフデザイン研究所(現 第一生命経済研究所)が1995 年に第1回目を発表して以来、97 年、99 年、2001年、03 年、05 年、10 年と長期にわたり調査・発刊してきたものです。
調査開始から8回目、ちょうど20 年の節目を迎えた今回は、時代の変化に合わせ、調査方法をこれまでの訪問留置法からインターネット調査に変更しました。
構成については、ライフデザインを形成する6つの領域、「家族」「地域」「消費」「就労」「健康・介護」「人生設計」といった、人々が生活していくための基本的な分野を網羅し、その現状をまとめています。
≪「今後の生活に関するアンケート」の概要≫
調査対象 全国の満18~69 歳の男女個人
調査実施期間 2015 年1月29 日~30 日
抽出方法 調査機関の登録モニター約118 万人から国勢調査に準拠して
地域 (10 エリア)×性・年代×未既婚別にサンプルを割付
調査方法 インターネット調査
有効回答数 7,256 サンプル
調査機関 株式会社マクロミル
≪回答者の主な属性≫
第1章 家族子どもに関して心配していること
第1子が中学生・高校生の親は「将来の進路」が1位。第1子が未就学・小学生の親では「いじめ」も上位にあがっている。
高校生以下の子どもがいる人は、子育てにあたり、どのようなことを心配しているのでしょうか。全体では、「将来の進路」「学力」「教育に対する経済的負担」などが上位を占めていました(図表省略)。
これを第1子の学齢別にみたものが図表1です。第1子が中学生、高校生の親は「将来の進路」「受験、進学」を多くあげています。他方、第1子が未就学、小学生の親では中学生、高校生の親に比べて「いじめ」をあげる割合が高いです。子どもが集団生活を経験し、成長するにつれて交友関係が徐々に広がる中、不安に感じる親が多くなるものと思われます。
子どもの進路についての地域差
中学生・高校生の親は、都市規模にかかわらず、半数以上が「子どもには地元で働いてほしい」。しかし、都市規模が小さいほど、地元には進学先や就職先が少ないと思っている割合が高い。
中学生・高校生をもつ親が、自分の子どもの進路についてどのように考えているのか、都市規模別にみたものが図表2です。「子どもには地元で働いてほしい」への回答割合は半数以上であり、都市規模別でみても大きな差はみられません。他方、「地元には子どもの進学先が少ない」と「地元には子どもの就職先が少ない」と思うと回答した人の割合は、都市規模が小さいほど高く、地元で就職や進学をすることが難しいと思っています。
第2章 地域近所づきあいの状況
あいさつ以上の近所づきあいがある人は8割以上。近所づきあいをしている人は大都市より郡部で多い。
近所づきあいの状況についてみると、12.3%が「親しくつきあっている」と回答しており、全体の8割程度はあいさつ以上のつきあいがあるとしました(図表3)。
性別にみると男性より女性で「親しくつきあっている」とする人が多いことがわかります。また、性・ライフステージ別にみると男女ともに「独身(39 歳以下)」「夫婦のみ(39歳以下)」「子どもはいない(40 歳以上)」とする人では近所づきあいが多くありません。
都市規模別にみると、都市規模が大きいほど近所づきあいが少ない傾向がみられました。
近所の人に対して困った・不快に思った経験
近所づきあいをしていない人で「騒音問題」の経験が多い。近所づきあいの有無により困った・不快に思った経験の内容が異なる。
近所の人に対して困った・不快に思った経験についてみると、上位にあげられたのは「ペットの問題(ペットの飼い方や臭い、鳴き声、排泄物、えさやり、危険動物など)」「ゴミ出し・衛生上の問題(曜日や分別などのルール違反、汚物の蓄積や臭いなど)」でした(図 表省略)。
これを近所づきあいの状況別にみると、「子ども・ペット以外の騒音問題」「ゴミ出し・衛生上の問題」「自動車・自転車の問題」「子どもの問題」「タバコの問題」については近所づきあいをしていないほど困った・不快に思った経験が多くなっています(図表4)。他方で、「ペットの問題」「土地・境界線・設置物の問題」「地域・組織運営の問題」については、近所づきあいがあるほど困った・不快に思った経験が多くなっています。
近所づきあいがないことによるトラブルと、近所づきあいがあることでかえって生じるトラブルがあることがうかがえる結果です。
第3章 消費経済的ゆとり
子育てが一段落した人で経済的ゆとりが高い。「独身」より「夫婦のみ」で経済的ゆとりが高い。
経済的ゆとりについてみると、「ゆとりあり」(「かなりゆとりがある」と「ある程度ゆとりがある」の合計、以下同じ)とした人は44.9%でした(図表省略)。
性・ライフステージ別にみると、男女ともに「夫婦のみ(40 歳以上)」「夫婦のみ(39 歳以下)」「末子が短大・大学・大学院生」「末子が就学終了」「夫婦のみ(40 歳以上)」で、「ゆとりあり」とする人が多くなっています(図表5)。
また、独身にくらべると夫婦のみでは、「ゆとりあり」が高い傾向があります。特に、男性の「独身(40 歳以上)」で「ゆとりあり」とする割合が最も少ないことも確認されました。
増やしたい消費項目・減らそうと思っている消費項目
増やしたい項目は「貯蓄など財産づくり」「趣味・娯楽費」「耐久消費財」。減らそうと思っている項目は「外食費」が最多、「特にない」も多い。
今後、経済的ゆとりができた場合に支出を増やしたい項目と、支出を減らそうと思っている項目についてたずねたものを性別にみると、増やしたい項目・減らそうと思っている項目ともに、女性より男性で「特にない」とする割合が高いことがわかりました(図表6)。増やしたい項目についてみると、「貯蓄など財産づくり」「衣料費」「学習活動、習いごとのための費用」については女性が男性を5ポイント超上回っているのに対し、男性では「自動車や電化製品などの耐久消費財」で女性を上回っています。
一方、減らそうと思っている項目については、男女ともに「外食費」が最も多く、「特にない」とする人も多くなっています。性別にみると、女性で「衣料費」「外食費」「食費(外食費は除く)」とした人が多く、男性を上回っています。
第4章 就労働く理由
「生計を維持するため」が男女ともに1位。男性の2位は「将来に備えて貯蓄をするため」、女性の2位は「自分の自由になるお金をえるため」。
実際に働いている人が何のために働いているのかについて、性別に2005 年から時系列でみたものが図表7です。
男性はこれまで同様、「生計を維持するため」(以下「生計維持」)が1位であり、2015 年では86.1%です。女性も「生計維持」が1位であり2015 年では7割を超えています。
男女ともに「生計維持」への回答割合が年々高くなっており、女性も男性と同じように家計を担う意識で働く人が増えていることがわかります。
現在身につけている能力
男女とも正社員の半数以上は「専門分野における知識・技術・技能」を身につけていると回答。パートは半数以上が「特にない」としている。
働いている人に、現在身につけていると思う能力をたずねた結果、男女ともに就労形態によって回答傾向が異なっています(図表8)。
正社員・正職員に注目すると、男女ともに「専門分野における知識・技術・技能」を身につけているとしている人が半数以上にのぼっています。一方、グローバル化が進み、語学力の必要性が高まっていますが、「英語などの語学力」を身につけていると回答した人は1割にも達していません。
また、男女ともパート・アルバイトとして働いている人の半数以上は現在身につけている能力が「特にない」と回答しています。今後、労働人口が減少する中、わが国の経済成長のためには、幅広い人材の能力向上を図り、生産性を高めていくことが必要です。
第5章 健康・介護傷病によって生じた状況
「今後の人生や万が一のことについて深く考えた」が約3割、「収入が減った」は約2割。
過去5年間に入院または手術を伴う傷病(病気やケガ)を経験した人(全体の12.7%)に対し、その傷病をしたことによってどのような状況になったか(または現在なっているか)をたずねました。
最も割合が高かったのは「今後の人生や万が一のことについて深く考えた(考えている)」です(図表9)。傷病の経験が人生設計を考える上でのきっかけのひとつになることがわかります。次いで「収入が減った」や、収入減の要因にもなりうる「働き方を変えざるを得なかった」「仕事を辞めざるを得なかった」という仕事に関係する項目があがっています。
家族の介護時に困ったこと
介護経験者の4人に1人が「先の見通しが立たなかった」と回答。
これまでに家族を介護したことがある人(全体の21.5%)に対し、介護の際に困った(または困っている)ことをたずねました。最も割合が高かったのは「先の見通しが立たなかった(立たない)」です(図表10)。次に「自分以外に家族や親戚で介護できる人がいなかった(いない)」という介護の担い手の問題や、「本人が望む介護の方法がわからなかった(わからない)」「本人が介護サービスを受けることを嫌がった(嫌がっている)」という介護される側の意向にかかわる問題があがっています。
第6章 人生設計人生設計の実施状況
人生設計について、「現在考えているところ」と答えた人が38%で最多。
「人生設計を経済計画だけでなく、仕事や学業、家庭生活、余暇生活、老後の生活などすべての面を含んだ『自分の生涯総合計画』と意味づけると、あなた自身は現在人生設計を立てていると思いますか」という設問文で人生設計の実施状況をたずねました。その結果、今回の調査では「ほとんど設計ができている」と答えた人が1.7%、「ある程度設計ができている」が17.4%であり、あわせて19.1%の人が「できている」(「ほとんど設計ができている」「ある程度設計ができている」の合計)と答えました(図表11)。
今回の調査で最も多かった回答は「現在考えているところである」であり、38.4%を占めています。これまでの調査では「気にはしているが、あまり考えていない」が最も多かったのですが、今回の調査では「現在考えているところである」がこれを上回りました。
人生設計について考えるために、あるとよい機会
男性では年代にかかわらず、「高校の授業を通じて」が最多。男性の50~60 代では「勤め先の研修等で」が2位。
図表12 は、人生設計について考えるために、どのような機会があるとよいと考えているのかをたずねた結果です。
男性では年代にかかわらず「高校の授業を通じて」をあげた人が最も多くなっていますが、女性の場合、40 代以下では「高校の授業を通じて」、50~60 代では「テレビの番組で」がそれぞれ最も多くなっています。また、男性の50~60 代では「勤め先の研修等で」が2位にあげられています。性別や年代によって、人生設計について考える機会を得られる場への期待が異なっていることがわかります。
人生設計の効果
人生設計が、ほとんどできている人では、自分の万が一(死亡)や老後への不安が低い。
図表13 は、人生設計の実施状況別に、自分の万が一(死亡)や老後に対する不安意識をみたものです。
例えば、『自分の万が一(死亡)』に対する不安意識をみると、人生設計について「ほとんど設計できている」と答えた人では42.4%、「ある程度設計ができている」と答えた人では56.7%、「現在考えているところである」と答えた人と「気にはしているが、あまり考えていない」と答えた人ではそれぞれ64.5%と60.8%を占めています。人生設計が、ほとんどできている人では、それ以外の人に比べて「自分の万が一(死亡)」への不安意識が低くなっています。このような傾向は、「自分や配偶者の老後費用」や「自分の老後の介護問題」においても共通しています。
人生にはときに、思いがけない出来事が起こることがあります。しかし、人生設計を行ったり、人生設計について考えることは、将来のさまざまな不安を低減させる上で一定の効果があると考えられます。
≪新刊書籍のご案内≫
【編:第一生命経済研究所】『ライフデザイン白書2015』 『ライフデザイン白書2015』(編:第一生命経済研究所、発行:ぎょうせい)を発刊しました。本書は、第一生命経済研究所が独自に実施している全国規模のアンケート調査をもとに、生活者の視点で生涯設計を考え、人々の生活実態や生活意識を時系列で分析したものです。今回の白書も、図表を多く取り入れ、よりわかりやすく見やすい内容にしております。
高校や大学における社会科・家庭科・ライフデザイン学科の学習教材であると共に、記事などの裏づけ資料としてもご活用できる一書となっています。皆さまの生活に役立つ内容が盛り込まれていますので、ぜひご一読願います。
㈱第一生命経済研究所 ライフデザイン研究本部 研究開発室 広報担当(津田・新井) TEL.03-5221-4771 FAX.03-3212-4470 【URL】http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi