前日の欧州時間には、売られすぎていたイタリア株などが買い戻されたことによりユーロは買い戻しの動きが強まりましたが、キリスト教民主同盟(CDU)を率いるメルケル独首相が2021年の任期満了をもって首相の職を退くと発表し、今年12月の党首選に出馬しない意向も明らかにしました。28日の独地方選で大敗を喫したことが決め手になったものだと考えられますが、イタリアの予算案問題に加え、ブレグジットについても依然として出口が見えておらず、12月の党首選においてドイツ政権までもが不安定になるではないかとの懸念もあり、メルケル独首相の前日の報道については、ネガティブサプライズだったと考えられます。
前日の株価上昇の要因としては、「中国当局は自動車購入にかかる税率の引き下げを計画」との報道によるものですが、NY時間に入ると米メディアが関係者の話として「米中首脳会談が不調だった場合、米国は新たな対中関税を発動する計画がある」と報じたことが嫌気され、一気にリスクオフの動きとなりました。NYダウについては、一時350ドル超まで上昇していたものの、今度は560ドル超下落の水準まで下落するなど、ヘッドラインにふらされる展開になりました。しかし、前日の株価下落の要因が米中貿易摩擦の懸念であったものの、トランプ大統領が本日の東京時間で「対中貿易で素晴らしい取引を見込んでいる」と発言したこともあり、日経平均株価が大きく買い戻されており、ドル円は112.70円付近まで反発しています。海外時間においても株価反発の動きが継続するようであれば、本日はドル円を筆頭としたクロス円は上値追いの動きになりそうです。
今後の見通し
本日は、ユーロ圏・第3四半期GDP(季調済)が発表されます。先週発表されたユーロ圏のPMIの結果は市場コンセンサスよりも弱く、前期比年率1.6%成長と整合的となった事から、本日発表される第3四半期GDPの結果が注目されています。イタリアの予算案問題が解決策を見出せないまま不安定な欧州の環境に、メルケル独首相の退任報道があり、ここにきて経済不安までもが意識されるようであれば、マーケットのユーロ売りはさらに加速するのではないでしょうか。
前日の動きで、特徴的だったのはメキシコペソです。祝日で休場であったトルコリラが堅調に推移しているなか、メキシコペソについては5.8円付近から5.6円付近まで大きく下落しました。ロペス・オブラドール次期メキシコ大統領が選挙公約の一つとされていた「メキシコシティ新空港の建設中止」に着手したことが要因です。政権と経済界との軋轢が表面化したこともあり、リスク回避の動きでメキシコペソは売られました。政権への不信感が各国でフォーカスされていることもあり、状況によってはペソ売りが加速する可能性がありそうです。
ユーロ円ショート戦略は連続成功、引き続き戦略はユーロ円戻り売り
ユーロ円のショート戦略については、128.20円のほぼ狙い通りの水準でのショートメイクでしたが、本日の東京時間の反発によりほぼ持ち値付近の水準まで上昇しています。ただ、メルケル独首相の退任を筆頭に、イタリアの予算案問題もありユーロは下落の材料には事欠きません。引き続き、ユーロの上値は重いとの考えにより、ユーロショートの戦略は継続します。損切りは128.70円上抜け、利食いに関しては126.70円付近を想定しています。
海外時間からの流れ
週末に雇用統計が控えていることもあり、様子見地合いが強まるかと思われましたが、メルケル独首相の退任報道に加え、再び米中貿易摩擦がクローズアップされており、株価主導でドル円を筆頭としたクロス円は大きく動きました。米中通商協議不調懸念が前日のネガティブ要因でしたが、トランプ大統領が本日の東京時間で「対中貿易で素晴らしい取引を見込んでいる」との発言をしており、一気にリスク回避の巻き戻しの動きになっています。海外時間においても、株式市場が反発するようであればクロス円は上値を拡大する動きになりそうです。
今日の予定
本日は、独・雇用統計、ユーロ圏・第3四半期GDP(季調済)、米・10月CB消費者信頼感指数などの経済指標が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。