全国の男女3,376 名に聞いた40・50 代の不安と備えに関する調査より
第一生命保険株式会社(社長 渡邉 光一郎)のシンクタンク、株式会社第一生命経済研究所(社長 矢島 良司)では、全国の40 代・50 代の男女3,376 名を対象にマネー・ヘルス・タイムのそれぞれの分野でどのような不安を抱き、どのような備えをしているのかアンケート調査を行いました。この中から、老後に向けた経済的不安と就労意識についての調査結果を紹介します。
本稿は、ホームページ(URL:http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi/ldn_index.html )にも掲載しています。
≪調査結果のポイント≫
公的年金だけで生活できるか ● 正社員・正職員として働く40・50代の61.6%が老後、「公的年金だけでは生活できない」
老後の生活のためにどのような準備をしているか ●老後の生活のための準備は「預貯金」57.9%、「私的年金(民間の個人年金など)への加入」36.7%、「生命保険への加入」27.8%
老後の生活のための準備をしていない理由 ● 老後の準備をしていない理由の第1位は、「現在の生活だけで精一杯で、老後資金の準備のための余裕資金がないから」(64.2%)
経済的な分野で不安に思ってること ● 「老後、生計維持のために必要な就労ができなくなること」79.9%、 「老後、生活費用が支払えなくなること」79.8%
何歳まで働きたいか ● 働くのは50 代までという人が約1 割、60 代前半まで働きたい人が約3割、65 歳を過ぎても働きたい人が約6割
60 歳以降も働く理由 ● 60 歳以降も働く理由の第1位「生計を維持するため」75.3%、第2位「家計を補助するため」26.9%
60 歳以降の希望する働き方 ● 60 歳以降の希望する働き方は「今の勤務先でフルタイムで働く」が42.4%、勤務先は問わず「短時間勤務で働く」も約4割
≪調査実施の背景≫
2000 年の年金制度改正により、男性は2025 年度以降、女性は2030 年度以降、支給開始年齢が65 歳からとなります。公的年金の支給開始年齢の引き上げは、受給できるまで収入を確保しなければならないなど、人々の生活設計に大きく影響します。
さらに、賃金体系の変化による収入の低下や、年金・医療・介護等の社会保険料の負担増などにより、現役時代に貯蓄の積み増しができず、老後を迎えるまでに資産形成ができないままに退職を迎える人が増加する可能性もあります。
現在の現役世代は、このような社会・経済環境の厳しい変化に対応しながら自らの生活を維持し、老後に向けての準備をおこなうことが求められています。
こうした背景から、当研究所では「老後」が視野に入りつつある40・50 代の男女を対象として、この年代の人々が「老後」をどのように捉え、生活のために必要な準備をしているのかを明らかにするために、アンケート調査を実施しました。
本リリースでは、この中から老後に向けた経済的不安と就労意識についての調査結果を紹介します。
≪調査概要≫
1. 調査対象 全国の40・50 代男女3,376 名
2. 調査方法 株式会社クロス・マーケティングのモニターを用いたインターネット調査
3. 調査時期 2013 年11 月
4. 分析対象 本ニュースリリースでは、このうち、正社員・正職員として働いている男女1,353 人を対象にした分析結果を使用しています。
5. 分析対象の主な属性 ①婚姻状況(性別)
公的年金だけで生活できるか
正社員・正職員として働く40・50 代の61.6%が老後、「公的年金だけでは生活できない」
「老後、公的年金(厚生年金、国民年金等)しか生活資金がなかったとして生活できると思うか」とたずねたところ、正社員・正職員の6割以上が「公的年金だけでは生活できない」と回答しており、公的年金だけでは老後の生活を維持できないとする意見が大勢を占めていました(図表1)。
性別、年代別にみると、「公的年金だけでは生活できない」と回答している人の割合は、男性よりも女性の方が、また男女とも50 代よりも40 代の方が高く、特に女性40 代では7割を超えています。
世帯年収別にみると、年収の低い人ほど「公的年金だけでは生活できない」とする回答割合が高いです。実際、老齢厚生年金額は月収・賞与と厚生年金の加入期間によって決まるので、低い賃金の場合には受給できる年金額が相対的に少なくなります。将来受け取れるであろう年金額を現在の収入と関連づけて考えている人が多いことが示されました。
老後の生活のためにどのような準備をしているか
老後の生活のための準備は「預貯金」57.9%、「私的年金(民間の個人年金など)への加入」36.7%、「生命保険への加入」27.8%
正社員・正職員として働いている40・50 代に、老後の生活のために現在どのような準備をしているかをたずねた結果が図表2です。
「預貯金」をしていると回答した人が全体の57.9%でした。以下「私的年金(民間の個人年金など)への加入」36.7%、「生命保険への加入」27.8%の順です。「特に準備していない」とする回答者は23.4%ですので、対象者の多くは何らかの準備をしていることがわ かります。
世帯年収別にみると、現在の収入が低い人の方が「特に準備していない」とする割合が高い傾向があります。概ね、老後の生活の準備状況は、現在の収入状況と関連していることがわかります。
老後の生活のための準備をしていない理由
老後の準備をしていない理由の第1位は、「現在の生活だけで精一杯で、老後資金の準備のための余裕資金がないから」(64.2%)
老後の生活のために現在「特に準備をしていない」人に、その理由をたずねた結果が図表3です。「現在の生活だけで精一杯で、老後資金の準備のための余裕資金がないから」が64.2%を占めています。実際、老後の生活のための準備をしている人としていない人別に、現在の世帯金融資産残高をみると、「老後の生活に備えて準備をしていない」人は、「老後の生活に備えて準備をしている」人に比べて金融資産残高が少ない人が多く、特に「金融資産はない」が44.2%を占めています(図表4)。この人たちの中には住宅ローンなどの負債残高が高い人も含まれており(図表省略)、必ずしも所得水準の低さを表しているとは言えませんが、老後に備えるための余裕が十分ではないこともうかがえます。
経済的な分野で不安に思ってること
「老後、生計維持のために必要な就労ができなくなること」79.9%、「老後、生活費用が支払えなくなること」79.8%
現在の生活の中で、特に経済的な側面での不安意識をたずねた結果が図表5です。「非常に不安」と「やや不安」の合計割合をみると、最も高い項目は「老後、生計維持のために必要な就労ができなくなること」(79.9%)です。現在、正社員・正職員として働いている人の多くが、働けなくなることを不安に感じていることがわかります。また、「老後、生活費用が支払えなくなること」や「自分や配偶者の病気の治療費の負担が重くなること」といった、家計が苦しくなることへの不安も8割近くに達しています。
また、「自分や配偶者の介護費用の負担が重くなること」(76.7%)や「自分の親の介護費用を負担しなければならなくなること」(75.3%)といった、介護費用の負担を不安に思っている人も多くいます。
何歳まで働きたいか
働くのは50 代までという人が約1 割、60 代前半まで働きたい人が約3割、65 歳を過ぎても働きたい人が約6割
現在40・50 代で正社員・正職員として働いている人に、何歳まで働きたいかをたずねたところ、「60 歳未満」が9.1%、「60~64 歳」が30.2%、「65~69 歳」が41.6%、「70 歳以上」が19.0%でした(図表6)。
性別にみると、女性よりも男性の方が、65 歳以降も働きたいとする人が多いですが、女性でも半数以上が65 歳以降も働きたいと思っています。また、男女共に年代が高い方が65歳以降も働きたいと思っている人の割合が高く、50 代では6割に及んでいます。60 歳を目前にして、65 歳以降も働くことを現実的に考える人が多くなるのでしょうか。
老後生活のための準備をしている人は金融資産残高が多い傾向があることを図表4で示しましたが、働きたい年齢についても金融資産残高と関連がみられます。現在の世帯の金融資産残高が少ない人の方が65 歳以降も働きたい人の割合が高いです。現在、老後の生活のための準備を十分にしていない人では、65 歳以降も働き続けることで老後生活を支えようとしている人が多いことがうかがえます。
60歳以降も働く理由
60 歳以降も働く理由の第1位「生計を維持するため」75.3%、第2位「家計を補助するため」26.9%
60歳を過ぎても働く意向のある人に、60歳以降も働く理由をたずねた結果をみると、「生計を維持するため」と回答した人が75.3%で第1位、「家計を補助するため」が26.9%で第2位でした(図表7)。60歳以降も働く意向のある人の多くは、家計のために働くとしています。
一方、現在の働く理由としても「生計を維持するため」と回答した人が84.8%で第1位、以下「将来に備えて貯蓄をするため」「働くのは当然だから」が続き、いずれも60歳以降も働く理由より上回っています。しかしながら、「家計を補助するため」や「世帯収入の低下に備えるため」は、現在の働く理由よりも60歳以降も働く理由の方が上回っており、60歳以降も働く場合には、働くことで、将来不足するであろう老後の生活費用を補おうとしている人が多いことがわかります。
60歳以降の希望する働き方
60 歳以降の希望する働き方は「今の勤務先でフルタイムで働く」が42.4%、勤務先は問わず「短時間勤務で働く」も約4割
60 歳以降の希望する働き方をたずねたところ、「今の勤務先でフルタイムで働く」が42.4%、「今の勤務先で短時間勤務で働く」が22.0%、「別の勤務先で短時間勤務で働く」が17.7%です(図表8)。「今の勤務先でフルタイムで働く」が最も多いですが、「今の勤務 先」と「別の勤務先」を合わせると「短時間勤務」で働きたい人も、それと同じくらいの割合です。性別にみても、同じような回答傾向であり、男性でも4割近くが、勤務先を問わず「短時間勤務」を希望しています。世帯の金融資産残高別にみると、金融資産残高が少ない人の方が「今の勤務先でフルタイムで」働きたい人が多いです。60 歳以降も現在と同じように働くことで、老後の生活を維持しようとしている人が多いことがうかがえます。
≪研究員のコメント≫
調査結果から、現在40・50 代の現役世代は、公的年金だけでは老後の生活を維持できないと思っている人が過半数を占めており、不足する老後生活費用に備え、預貯金や個人年金などに加入していることがわかりました。
他方、現在の所得水準では公的年金の給付を十分に期待できないと思っている人が多く、その中には現在の生活だけで精一杯で、将来に備えて貯蓄を行う余裕がない人も多いようです。まさに老後生活の準備状況は、現在の家計状況と大きく関連していることが示されました。
こうした中、大多数の人は老後生活を支えるには「就労」が重要であることを認識しており、60 歳を過ぎても働き続けることで老後の生活を維持しようとしています。ただし60歳以降は、現在の働き方にこだわらずに、自分の健康状態や生活環境などに合わせ、就業時間や場所、雇用形態などを選択して働き続けることを望んでいる人も少なくありません。
これから老後を迎える人々の生活は、賃金体系の見直しや非正規雇用者の増加などの雇用環境の変化や、年金・医療・介護といった社会保険料負担の増加など、経済社会情勢の様々な変化によって大きな影響を受けると思われます。現役時代にできるだけ貯蓄をすることも重要ですが、それには限界もあるでしょう。
したがって、一人ひとりが60 歳を迎える前から、現在の勤務先や勤務時間にこだわらず、どこでどのように働くのかを考え、自ら準備しておくことが必要です。こうした個人の努力と共に、高齢者雇用の受け皿として、企業にも、正社員フルタイムとしてのみでなく、短時間勤務など多様な働き方が可能となるような選択肢の整備を行うことが求められます。(提供:第一生命経済研究所)
(研究開発室 上席主任研究員 的場康子)
㈱第一生命経済研究所 ライフデザイン研究本部 研究開発室 広報担当(津田・新井) TEL.03-5221-4771 FAX.03-3212-4470 【URL】http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi