筆者が受けるFP相談のお客さまがご夫婦の場合、基本的にご夫婦で面談を受けていただくようにしている。もちろん、戸籍上の夫婦でなくとも、内縁関係や結婚予定のカップルであれば、それぞれのパートナーにお越しいただく。

そこでご夫婦と向き合っていると、同じ話をしていても、夫と妻(あるいは男と妻)で受け取り方がまったく違う場合があることを、以前から大変興味深いと感じていた。今回のコラムでは、その際に感じる夫婦、あるいは男女間の家計に対する考え方の違いについてご紹介しよう。

夫婦揃って専門家(FP)からアドバイスを受けるメリットとは?

夫婦,貯金
(画像=PIXTA)

ご夫婦で面談を受けるメリットとしては、次の3つが挙げられる。

(1) 専門家(FP)の意見・アドバイスをダイレクトに聞ける
専門的な知識のあまりない人が、お金のことをわかりやすく説明するのはなかなか難しい。時間が経過すると、微妙なニュアンスが異なる場合もある。聞き手も、話し手が身内となると、聴く態度もなおざりになってしまう。

(2)少なくとも面談中は、真剣に現在の家計状況について考えられる
お金のことを夫婦や家族で話し合う機会を持たない人は多い。毎日の忙しさに紛れて後回しになりがちだ。また、お互い相手も自分と同じ気持ちだと思い込んでいる場合も多いので、第三者を介することで冷静に話し合える。

(3)ライフプランやマネープラン、家計管理は夫婦の共同作業である
とりわけ支出を見直して貯蓄に励みたい場合など、夫婦や家族全員が気持ちを一つにして、協力しなければ目標額に達するものではない。片方がいくら蛇口を締めても、もう片方が蛇口を全開にしていては意味がないのだ。

夫婦で同じ話を聞いていても受け取り方は真逆だったりする

先日、Aさん夫婦(40代)が、2人の子どもの教育費と保険の見直しについてご相談にみえた。

面談終了後、「いかがでしたか?」という筆者の問いに対して、夫は、「はい。今後の見通しについて、具体的にどんな風に準備すれば良いのか分かって安心しました。そんなにあくせくしなくても、今の貯蓄ペースでも何とかなるかな、と思ってます」とちょっとほっとした様子だ。

一方の妻は、そんな夫の感想を聞いて、「えっ?ホントに!?私は、もっと節約して、パート収入も増やさないといけないと思ったけど……」とガックリ肩を落としている。二人とも同じキャッシュフロー分析を見て、筆者のアドバイスを聞いているハズなのにどうしてこんなことが起こるのだろうか?

お金に対して、男性は「ロマンチスト」で女性は「リアリスト」

筆者の個人的な見解を述べさせていただくと、おそらく、基本的に男性は「ロマンチスト」で、女性は「リアリスト」だからなのではないかと思っている。

例えば、男性は、趣味や自己投資などにお金を惜しまず、中長期的な視点で物事を捉えたり、お金の流れを把握したりすることができる人が多い。だから、現在のキャッシュフローの収支が赤字であっても、昇給・昇格、転職等のキャリアアップによって収入がアップすれば、家計は改善するという将来的な予測(理想?)の方を重視しているような気がする(結構、見通しが甘い方も少なくないのだが……)。

それに対して女性は、目先の利益というか、現時点で確実に入ってくるお金や、今ある貯蓄残高に重きを置き、一時的であってもキャッシュフローの収支にマイナスがあるとそれが心配で仕方がない。

家計改善や節約法についても、男性は、住宅ローンの金利や保険を見直ししたり、金融商品の動向を見ながら、資産運用を積極的に取り入れたりする方法を好むが、コンビニなどで、モノを定価で買うことに頓着しない。また、すでに同じようなモノを持っているのに、新商品が出るとつい買ってしまう。

女性は、食費や水道光熱費などコツコツと節約する労力は惜しまず、‘おひとりさま’の時は、美容費や被服費などを使っていた人でも、結婚すると家庭を守るために、堅実派に転換するケースも少なくない。その一方で、安いからと言って必要ないモノでも大量に購入してしまいがちだ。

お金について話し合っている夫婦ほど貯蓄ができる

念のため申し上げておくと、男女ともこういった傾向が強いと感じるだけで、すべての人に当てはまるわけではない。それに、夫婦で家計管理を行う上ではいずれの要素も欠かせない。要はバランスの問題なのだ。

注意したいのは、この感覚の違いをきちんと理解して意思疎通を図っているか否かである。楽天市場が、全国の既婚者400人を対象に行った「夫婦のお財布調査2018」によると、お金のことについて「よく話し合う」夫婦の方が「ほとんど話し合わない」夫婦より貯蓄に回す割合が10%高いという結果になった。

将来のためにできるだけ貯蓄に回したい妻と、貯蓄はできる範囲で良いのではと考える夫の間で隔たりがある。夫婦間で話合いをすることで、妻は夫の理解と協力を得られるし、夫は合意の上で貯蓄割合を決めることで、それ以外の金額は心置きなく自由に使えるという効果もある。お金について話をするということは、これからの人生に繋がることを知っておきたい。

黒田尚子
黒田尚子FPオフィス代表 CFP®資格、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CNJ認定乳がん体験者コーディネーター、消費生活専門相談員資格を保有。立命館大学卒業後、日本総合研究所に入社。1996年FP資格取得後、同社を退社し、1998年FPとして独立。新聞・雑誌・サイト等の執筆、講演、個人向けコンサルティング等を幅広く行う。2009年末に乳がん告知を受け、「がんとお金の本」(Bkc)を上梓。自らの体験から、病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。著書に「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)など。