第一生命保険株式会社(社長 渡邉 光一郎)のシンクタンク、株式会社第一生命経済研究(社長 矢島 良司)では、首都圏・近畿圏で働く30 代・40 代の男女1,037 名を対象に、就業実態や両立支援に対する意識を明らかにするためにアンケート調査を行いました。

 ホームページ(URL:http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi/ldn_index.html )にも掲載しましたので、併せてご覧ください。

≪調査結果のポイント≫

育児休業中の不安
● 育児休業制度を利用した女性の約8割が「復帰後に育児と仕事との両立ができるか不安だった」

育児休業中の過ごし方
● 育児休業中に勤務先と「復帰時期や業務についての話し合い(面談)をした」が57.4%

育児休業利用者に対する復帰支援等に関する意識
● 女性の育児休業利用者の約9割が「育児休業中も、職場のことがわかるように情報提供が必要である」

継続就業の実態
● 女性非正社員の75%が「学校卒業後、正社員として働いていたが、一時仕事から離れた後、非正社員として就業している」

再就職の際に困ったこと
● 再就職の際に困ったことの第1位は、男女とも「希望する仕事内容がなかなか見つからなかった」

現在の勤め先を選んだ理由
● 現在の勤め先を選んだ理由の第1位は、男性は「仕事内容」、女性は「勤務時間や勤務日数が自分の生活に合っているから」

仕事のやりがい・やる気
● 女性では、「勤務時間や日数」から再就職先を選んだ人よりも、希望する「仕事内容」から選んだ人の方が仕事のやりがいもやる気も高い

女性が希望通り継続就業できるためには
● 女性非正社員の約4割が「一度辞めても、再就職をしやすくして欲しい」

※ 本リリースは、厚生労働省記者クラブ、日銀記者クラブに配布しています。

≪調査実施の背景≫

 少子高齢化が進む中、わが国は今、労働力を確保するため女性の活躍推進を目指しています。「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」(2013 年6月14 日閣議決定)では、2020 年までに「25~44 歳までの女性就業率73%」という目標が掲げられました。総務省「労働力調査」によれば、近年この年齢層の就業率は、2011 年66.8%、2012 年67.8%、2013年69.5%と徐々に上がっています。目標達成まであと3ポイントに迫っているとはいえ、仕事と育児等の生活を両立するための支援制度の普及を図ることで、さらに就業率を上昇させることが必要とされています。

 こうした中、当研究所では、両立支援の対象者が多く含まれる30~49 歳の就業実態と意識を明らかにするためにアンケート調査を行ないました。

 本リリースでは、「育児休業からの復帰支援」と「女性の再就職」に焦点を当て、それぞれの実態と意識についての調査結果を紹介します。

≪調査概要≫

1. 調査対象  30~49 歳で首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)と近畿圏(京都、大阪、兵庫)の都府県に住み、民間企業で働く男女1,037 人。性別と就業形態により、男性正社員332 人(サンプル全体の32.0%)、女性正社員328 人(同31.6%)、女性非正社員(パート・アルバイト、契約社員)377 人(同36.4%)としてサンプルの割付を行った。

2. 分析対象  育児休業からの復帰支援に関する実態と意識:正社員のうち、育児休業制度を利用したことのある女性108 人、育児休業制度が勤務先にあるが利用したことがない男女296 人(女性117 人、男性179 人)。
女性の再就職に関する実態と意識:子どものいる就業者707 人(男性正社員223 人、女性正社員216人、女性非正社員268 人)。

3. 調査方法  株式会社クロス・マーケティングのモニターを用いたインターネット調査

4. 調査時期  2013 年11 月

5. 調査対象の主な属性
①調査対象全体の年齢構成(性別、就業形態別)

首都圏・近畿圏で働く30・40 代男女1,037 名に聞いた 『女性の継続就業に関するアンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

②勤務先に育児休業制度がある正社員の年齢構成(性別、育児休業制度の利用の有無別)

首都圏・近畿圏で働く30・40 代男女1,037 名に聞いた 『女性の継続就業に関するアンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

③子どもがいる人の年齢構成(性別、就業形態別)

首都圏・近畿圏で働く30・40 代男女1,037 名に聞いた 『女性の継続就業に関するアンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

育児休業中の不安

育児休業制度を利用した女性の約8割が「復帰後に育児と仕事との両立ができるか不安だった」

首都圏・近畿圏で働く30・40 代男女1,037 名に聞いた 『女性の継続就業に関するアンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 女性の活躍推進に向け、仕事や育児等との両立ができるよう職場環境の整備が進められています。例えば、両立支援のための代表的な制度である育児休業制度は、ほとんどの企業に設置され、在職中に出産した女性の8割以上が利用しています。

 育児休業制度を利用した女性は、職場復帰に向け、どのような意識で休業生活を過ごしているのでしょうか。

 図表1は、育児休業を利用したことのある女性正社員に育児休業中の不安の有無をたずねた結果を示したものです。「復帰後に育児と仕事との両立ができるか不安だった」に約8割(「Aに近い」と「どちらかといえばAに近い」の合計、以下同様)、「職場復帰できるか不安だった」に約6割の人が回答しています。

 育児休業から職場復帰できるかを不安に思っている人が過半数を占めていますが、それ以上に復帰後の両立生活ができるかどうかを不安に思っている人の方が多いです。こうした不安を軽減するために、一つには、育児休業利用者自身が復帰後の両立生活の見通しを立てられるよう休業中から準備をしておくことが必要です。

育児休業中の過ごし方

育児休業中に勤務先と「復帰時期や業務についての話し合い(面談)をした」が57.4%

首都圏・近畿圏で働く30・40 代男女1,037 名に聞いた 『女性の継続就業に関するアンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 図表2は、育児休業制度を利用したことのある女性正社員に、育児休業中の過ごし方をたずねた結果です。勤め先と「復職時期や復職後の業務についての話し合い(面談)をした」が57.4%、「勤め先から定期的に社内報の送付や電子メールなどにより連絡を受けた」が36.1%となっています。一方、自己啓発や会社による在宅研修を行った人は1割以下です。

 ここで、「復帰後に育児と仕事との両立ができるか不安だった」人と「不安はなかった」人で、育児休業中の過ごし方についての回答にどのような違いがあるかをみると、復帰後の両立生活に「不安だった」人よりも「不安はなかった」人の方が全ての項目について回答割合が高いことがわかります。育児休業中に利用者に対して会社が情報提供をしたり、利用者自身が自己啓発を実施したりすることは、復帰後の両立生活に対する不安意識に影響を与える可能性があることがうかがえます。

育児休業利用者に対する復帰支援等に関する意識

女性の育児休業利用者の約9割が「育児休業中も、職場のことがわかるように情報提供が必要である」

首都圏・近畿圏で働く30・40 代男女1,037 名に聞いた 『女性の継続就業に関するアンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 他方、育児休業制度の利用者を受け入れる側の職場の同僚(非利用者)は、育児休業利用者に対してどのように思っているのでしょうか。次に、育児休業制度の利用者と非利用者との比較を行いながら、育児休業からの復帰支援等に対する考えを紹介します。

 まず、「育児休業中も、職場のことがわかるように情報提供が必要である」に対し、女性利用者の9割近くが肯定的な回答(「あてはまる」と「どちらかといえばあてはまる」の合計、以下同様)をしています(図表3の①)。育児休業利用者で、社内報や電子メール等により連絡を受けた経験がある人は4割にも満たないのですが(図表2)、利用者のほとんどが情報提供を求めていることがわかります。 また、女性利用者で「育児休業中も、復帰に備えて自分でスキルアップに努めるべきである」に肯定的な回答をした人は約6割です(図表3の②)。復帰に備え、離職ブランクを縮小させるために休業中も自分でスキルアップを図ることの必要性を感じている人は多いにもかかわらず、実際に自己啓発や在宅研修を行なった人は1割にも満たない少数派です(図表2)。

 ただし、「育児休業からの復帰に備えて、会社が育児休業者に対しキャリア形成等の支援体制を整えるべきである」に肯定的な回答をした人が女性利用者の約7割を占めています(図表3の③)。多くの女性利用者は必要性を感じながらも自発的に在宅研修等を行うことは難しいと感じているとともに、会社からの支援も期待している様子がうかがえます。

 一方、育児休業利用者に対する会社による情報提供(図表3の①)やキャリア形成支援(図表3の③)の必要性について、男女問わず非利用者も7割前後は肯定的な回答をしています。会社が復帰支援をおこなうことで、休業者の離職ブランクを縮小させ、育児休業後に即戦力として働けるように促すことは、共に働く上で歓迎すべきことと捉えている人が少なくないことがうかがえます。

 しかし、これらの項目(会社による情報提供やキャリア形成支援の必要性)について、女性利用者の回答割合と比較すると、女性利用者ほどには男女問わず非利用者は感じていないことがわかります。また、女性利用者よりも女性非利用者の方が、「育児休業中も、復帰に備えて自分でスキルアップに努めるべきである」と思っている人の割合が高いことから、非利用者の中には「自分で復帰準備を行うべき」と思っている人が少なくないことがうかがえます。会社内で、利用者と非利用者間の意識ギャップが垣間見られます。

 こうした意識ギャップの存在は、職場内で両立支援を進めるにあたりブレーキになる恐れがあります。実際、「同じ部署の人が育児休業を取得すると仕事に支障をきたす」への肯定割合は、男女問わず非利用者が女性利用者を大きく上回っています(図表3の④)。非利用者は、育児休業利用者に対する復帰支援のみならず、制度を利用することに対しても厳しい見方をしています。

 以上から、今後、育児休業制度の普及にあたって、育児休業利用者と非利用者間の意識ギャップを縮小させ、利用しやすく、また利用を受け入れやすくする職場環境づくりも必要と思われます。

 しかし、女性の活躍推進を支えるための両立支援策は、育児休業制度ばかりではありません。実際には、育児休業を取得しないで出産退職を選択し、数年後に再就職をする女性が多いのが現状です。そこで次に、再就職を前提とした女性の活躍をいかに図るかという視点も両立支援の取組として重要であるとの観点から、女性の再就職の実態と意識について紹介します。

継続就業の実態

女性非正社員の75%が「学校卒業後、正社員として働いていたが、一時仕事から離れた後、非正社員として就業している」

首都圏・近畿圏で働く30・40 代男女1,037 名に聞いた 『女性の継続就業に関するアンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 学校を卒業してから現在までの継続就業の実態を性別、就業形態別、従業員規模別にみたものが図表4です。男性正社員は学校卒業後から就業中断せずに働いている人(図表4の①と②の合計、以下同じ)が9割以上を占めています。ただし従業員規模別にみると、300 人未満企業に勤めている人では65.9%が「②勤務先は変更」と回答しているのに対し、300 人以上の企業に勤めている人では72.5%が「①勤務先も同じ」と回答しています。

 女性正社員は、学校卒業後から就業中断せずに働いている人が約6割であり、学校卒業後「③一時仕事から離れた後も正社員として就業」している人が26.4%を占めています。男性正社員に比べ、継続就業をしている人の割合が低く、就業中断をした人(図表4の③)の割合が高いです。従業員規模別では、上記男性正社員の場合と同様、現在の勤め先の従業員規模が大きい人の方が、勤務先も変わらずに働いている人の割合が高くなっています。

 女性正社員の場合、現在300 人未満企業に勤めている人の37.2%が「③一時仕事から離れた後も正社員として就業」しています。女性が一時仕事から離れた場合の正社員としての再就職先は、従業員規模が小さい企業が多いという実態が示唆されています。

再就職の際に困ったこと

再就職の際に困ったことの第1位は、男女とも「希望する仕事内容がなかなか見つからなかった」

首都圏・近畿圏で働く30・40 代男女1,037 名に聞いた 『女性の継続就業に関するアンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 図表4で、学校卒業後から就業中断せずに勤務先も変わらずに継続就業をしている以外の項目を回答した人(図表4の②~⑥、以下「再就職経験者」)に、仕事を辞めた後、再就職をするにあたって困難を感じたことがあるかをたずねた結果が図表5です。

 男性正社員の場合、半数以上が「特にない」と回答しています。女性の方が男性よりも再就職の際に何らかの困った経験をしている人の割合が高いことがうかがえます。

 具体的に困ったことの内容をみると、男性正社員、女性正社員、女性非正社員ともに、最も多い回答は「希望する仕事内容がなかなか見つからなかった」です。300 人以上企業に勤める男性正社員を除き、「給料」よりも「仕事内容」にこだわって勤務先を探している人が多いようです。

 ただし、男女正社員について現在の勤め先の従業員規模別にみると、男女ともに300 人未満の企業に勤めている人の方が「希望する勤務地での再就職は難しかった」への回答割合が高いです。大規模企業に勤めている人よりも小規模の企業に勤めている正社員の方が、再就職にあたり「勤務地」へのこだわりが強い傾向があることがうかがえます。

 ちなみに女性の場合、正社員、非正社員ともに「子どもがいることを理由に断られたことがある」に約1割が回答しています。男性では回答者がいません。子どもがいるために再就職が阻まれた経験がある女性がいるという現実も示されました。

現在の勤め先を選んだ理由

現在の勤め先を選んだ理由の第1位は、男性は「仕事内容」、女性は「勤務時間や勤務日数が自分の生活に合っているから」

首都圏・近畿圏で働く30・40 代男女1,037 名に聞いた 『女性の継続就業に関するアンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 再就職経験者は、どのような理由で再就職先を選んだのでしょうか。

 男性正社員についてみると、従業員規模にかかわらず「希望する仕事内容だから」に約半数が回答しています(図表6)。

 女性は正社員、非正社員ともに「勤務時間や勤務日数が自分の生活に合っているから」や「自宅から近いから」の回答割合が高いです。

 再就職先を選ぶにあたり、男性は「仕事内容」を重視するのに対し、女性は「勤務時間や勤務日数」「勤務場所」など自分の生活との両立を重視しているようです。ちなみに、学校卒業後から勤務先も変わらず継続就業をしている男女正社員(図表4の①)が、現在の勤め先を選んだ理由の第1位は「希望する仕事内容だから」(男性50.5%、女性37.3%)でした(図表省略)。女性正社員も新卒時には「仕事内容」から勤め先を選んだ人が多いです。

 再就職を経験した女性の多くは、様々な障壁を感じながらも、「希望する仕事内容」より現在の自分の生活を優先して、再就職先を選んでいるようです

仕事のやりがい・やる気

女性では、「勤務時間や日数」から再就職先を選んだ人よりも、希望する「仕事内容」から選んだ人の方が仕事のやりがいもやる気も高い

首都圏・近畿圏で働く30・40 代男女1,037 名に聞いた 『女性の継続就業に関するアンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 では、仕事のやりがいや仕事のやる気について、再就職経験者はどのように考えているのでしょうか。「仕事のやりがいに満足している」人の割合は、男女正社員、女性非正社員ともに6割以上です(図表7)。また「現在の仕事にやる気がある」の回答割合をみると、7割前後が肯定的な回答をしています。

 他方、現在の勤務先を選んだ理由として「希望する仕事内容だから」(以下「希望する仕事内容」)を選択した人と、「勤務時間や勤務日数が自分の生活に合っているから」(以下「勤務時間等」)を選択した人とで、「仕事のやりがいに満足している」や「現在の仕事にやる気がある」への回答割合に差がみられました。

 特に女性正社員と女性非正社員では、現在の勤務先を選んだ理由として「希望する仕事内容」を選択した人の方が、「勤務時間等」を選択した人より、「仕事のやりがいに満足している」と回答した人の割合も、「現在の仕事にやる気がある」と回答した人の割合も10ポイント以上高いです。

 図表6でみたように女性の多くは再就職先を選んだ理由として「勤務時間等」をあげていましたが、女性の場合、勤務時間等の条件よりも、希望する仕事内容で勤務先を選べることの方が、仕事のやる気を高め、就労意欲につながることがうかがえます。

女性が希望通り継続就業できるためには

女性非正社員の約4割が「一度辞めても、再就職をしやすくして欲しい」

首都圏・近畿圏で働く30・40 代男女1,037 名に聞いた 『女性の継続就業に関するアンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 最後に、女性が育児をしながら希望通り継続就業できる社会の実現のためには何が必要であるか、国に対する要望をたずねた結果をみます。

 女性正社員では「希望すれば利用できる短時間正社員制度を企業に義務付けて欲しい」(以下「短時間正社員制度」)や「保育所を増やして欲しい」への回答割合が高いですが、男性正社員や女性非正社員では「一度辞めても、再就職をしやすくして欲しい」への回答割合もこれらの項目と同じくらい高いです(図表8)。また、「育児休業制度を3年間取得できるようにして欲しい」よりも、「希望すれば利用できる再雇用制度を企業に義務付けて欲しい」への回答割合の方が男女正社員、女性非正社員ともに高くなっています。

 女性の継続就業のためには、労働時間の柔軟化や保育所の整備とともに、就業中断を選択した人に対する再就職支援も必要であると思っている人も少なくないことが示されました。

≪研究員のコメント≫

(1)育児休業からの復帰支援の推進を

 育児休業制度の利用者に支給される「育児休業給付金」がこれまで休業開始前賃金の50%でありましたが、2014 年4月の雇用保険法の改正により、2014 年4月1日以降に開始する育児休業から67%(ただし育児休業開始から180 日目まで。181 日目からは従来通り休業開始前賃金の50%)に引上げられました。経済的理由から育児休業制度の利用を躊躇していた人も利用しやすくなると思われます。

 このような育児休業制度の利用促進策により、今後さらに同制度の利用者の増加が見込まれます。こうした中、スムーズに職場復帰して生産性の高い働きができるよう、育児休業中も両立生活に向けた様々な準備を行うことの必要性を利用者自身だけでなく、共に職場で働く非利用者の中にも感じている人がいることも浮き彫りになりました。

 今後は、育児休業制度の利用促進策のみならず、休業による離職ブランクを解消し、復帰後の両立生活への見通しを立てやすくすることにも着目し、利用者自身に自発的な復帰準備を促すとともに、各職場において利用者に対する情報提供や在宅研修等を行うことの合意形成を図ることなど、復帰支援の取組を推進させることも必要です。また、育児休業利用者と非利用者間の意識ギャップを縮小させ、利用しやすく、また利用を受け入れやすくする職場環境をいかにつくるかという視点も、今後さらに両立支援を進める上で重要と思われます。

(2)再就職支援の充実を

 子どものいる30~49 歳の女性は再就職を経験している人が多いことから、再就職を前提とした女性の活躍をいかに図るかという視点も、両立支援の取組として重要であることが浮き彫りになりました。

 実際、多くの女性は再就職にあたり様々な「壁」を経験していますが、中でも「希望する仕事内容」で再就職先を選ぶことの難しさを感じています。新卒時には女性でも「希望する仕事内容」から勤め先を選ぶ人が多いですが、再就職を経験している女性の多くは希望する仕事内容よりも両立のしやすさから勤め先を選んでいます。再就職の際には、希望する仕事内容をあきらめて、両立のしやすさを優先することにしている人もいるのではないでしょうか。

 しかし、「希望する仕事内容」から再就職先を選んだ人は、「勤務時間等」で選んだ人よりも、仕事のやる気もやりがいへの満足度も高いという結果が示されました。労働者の能力を最大限に発揮するには、働く意欲を高めることも重要です。希望する仕事内容と両立のしやすさが女性にとってトレードオフの関係ではなく、多くの女性が希望する仕事内容から職業選択をして、両立できる働き方が可能な再就職ができることが求められます。

 女性の活躍推進のためには、両立支援制度の設置促進のみならず、希望する仕事に就き、意欲を持って働くという視点を含めた幅広い就労支援が必要です。その一つとして、就業中断をしても働き続けるための「再就職支援」にも光をあて、行政や企業等が検討を重ね、充実させていくことが望まれます。(提供:第一生命経済研究所


(研究開発室 上席主任研究員 的場康子)

㈱第一生命経済研究所 ライフデザイン研究本部
研究開発室 広報担当(津田・新井)
TEL.03-5221-4771
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