目次

1.はじめに
2.就労者の生きがいと仕事
3.就労者の生きがいのタイプと健康管理、ネットワーク、生活満足度
4.まとめ

要旨

①現代の平均的なライフサイクルにおいて、40・50代は家族形成・成長期や働き盛りの時期にあたる。本稿ではこの年代の就労者の生きがいのタイプによって、健康管理や周囲の人とのネットワーク、生活満足度にどのような違いがみられるのかを考察する。

②40・50代就労者のうち、「仕事に打ち込んでいるとき」に生きがいを感じている人は26.7%を占める。この割合は、「趣味に熱中しているとき」(53.3%)や「旅行に行っているとき」(37.6%)、「家族だんらんのとき」(35.3%)、「食事やお酒を楽しんでいるとき」(30.7%)に次ぐ第5位である。仕事をもつ人の精神面での支えとして、仕事以外のことを楽しんだり、家族などと過ごす私的な時間の重要性がうかがえる。

③40・50代就労者の生きがいをタイプ化した場合、最も多いのは仕事以外の時間が生きがいの『仕事以外』タイプ(63.2%)で、仕事と仕事以外の時間の双方に生きがいを感じている『仕事+仕事以外』タイプ(25.1%)がこれに続く。生きがいを感じるときが「特にない」と答えた『生きがいなし』タイプは10.1%、生きがいが「仕事に打ち込んでいるとき」だけの『仕事だけ』タイプは1.6%である。

④生きがいのない就労者では、自分・家族の健康管理に関する行動や、周囲の人とのネットワークを維持・形成するための行動を十分実行できない生活を送っている可能性がある。40・50代就労者の生活満足度やワーク・ライフ・バランスを考える上で、生きがいをもつことは重要であり、老後生活に向けては、現在の仕事だけでなく、それ以外にも生きがいをもつことを意識した就労生活を送ることの重要性が示唆された。

キーワード:就労者、生きがい、人生設計

1.はじめに

(1)平均的なライフサイクルからみた40・50代

 平成24年版の厚生労働白書には1920年、1960年、2009年という3つの時代における平均的なライフサイクル表が掲載されている(図表1)。同白書が指摘するように、近年では、価値観の多様化等により人生の選択肢が増えて、このようなライフサイクルに合致しない人生を送る人も増えている。しかし、この表からうかがえるのは、子どもの誕生、子どもの結婚や初孫の誕生、夫の引退といったライフイベントを経験する人々の平均的な年齢が、時代とともに大きく変化してきたことだろう(北村 2013)。とりわけ注目されるのは、子どもの数が減少し、平均寿命が伸びて、夫が引退して以降の期間が格段に長くなったことである。

就労者が仕事以外にも生きがいをもつことの重要性
(画像=第一生命経済研究所)

 この表に基づいて、2009年の平均的なライフサイクルで40・50代がどのような時期にあたるのかをみると、夫40.5歳、妻38.7歳で末子が小学校に入学し、夫56.5歳、妻54.7歳で末子が学校を卒業する。つまり、結婚して子どもをもった男女の平均的なライフサイクルをみると、この年代は、末子が小学校に入学して最終の学校を卒業する前後までの家族形成・成長期にあたる。一方、職業生活という視点から2009年の平均的なライフサイクルをみると、夫は結婚後、65歳で引退するまで働き続けることが想定されており、これにしたがえば、40・50代は人生設計において働き盛りのライフステージということになる。ただし、近年ではこの年代の人々が多くのストレスや悩みを抱え、心身の健康維持が課題になりやすい傾向があるとの指摘もなされている(小谷 2013)。その背景には、企業等の経営環境の変化を受けて、40・50代の就労者とその家族が、人生設計やキャリア・デザインの方向性に見直しを迫られている状況もあると考えられる(北村 2013)。

 このようななか、本稿では40・50代就労者の生きがいに注目し、生きがいのタイプによって、就労者自身やその家族の健康管理、人的ネットワークの維持・形成行動、生活満足度等にどのような違いがみられるのかを考察する。

(2)使用するデータ

 本稿で使用するデータは、第一生命経済研究所が2013 年に実施した『40・50 代の不安と備えに関する調査』の回答者3,376 名に関するものである。この調査の概要は、図表2の通りである。

 本稿の分析対象者は、回答者のうち、調査時点での就労形態について「正社員・正職員」、「契約社員・嘱託社員」・「アルバイト・パート(学生を除く)」(以下、「非正社員」)、「自営業・自由業」と答えた2,348 名とした。

 分析対象者の性・年代、就労形態等に関する内訳は図表3の通りとなっている。

就労者が仕事以外にも生きがいをもつことの重要性
(画像=第一生命経済研究所)

2.就労者の生きがいと仕事

(1)仕事に生きがいを感じている就労者の割合

 今回の調査では、「あなたが現在、生きがいを感じるのは、どのようなときですか」という設問文を用いて、生きがいの内容を複数回答でたずねた。その結果、40・50代 就労者が最も多くあげたのは「趣味に熱中しているとき」(53.3%)であり、全体の半数を超えた(図表4)。「旅行に行っているとき」(37.6%)、「家族だんらんのとき」(35.3%)、「食事やお酒を楽しんでいるとき」(30.7%)がこれに続いている。

 また、「仕事に打ち込んでいるとき」に生きがいを感じると答えた人は26.7%と、第5位であった。なお、「家族だんらんのとき」または「夫婦で過ごしているとき」をあげた人の割合(家族だんらん・夫婦で過ごしているとき計)を算出すると、39.2%となる。仕事をもつ人の精神面での支えとして、趣味など仕事以外のことを楽しんだり、子どもや配偶者など家族で過ごす私的な時間の重要性がうかがえる。

就労者が仕事以外にも生きがいをもつことの重要性
(画像=第一生命経済研究所)

 生きがいの内容を性別に比較した場合、「仕事に打ち込んでいるとき」をあげた人の割合は男性(24.7%)より女性(29.7%)で高い。男性では「趣味に熱中しているとき」(56.0%)をあげた人が最も多く、家族だんらん・夫婦で過ごしているとき計(40.4%)がこれに次ぐ割合を占めるが、女性では最も多くあげられた「趣味に熱中しているとき」(49.5%)に次いで「旅行に行っているとき」(42.9%)があげられている。女性では男性より仕事に生きがいを感じる人が多く、男性では女性より家族や夫婦で過ごす時間に生きがいを感じる傾向が強いことがわかる。

 また、「仕事に打ち込んでいるとき」をあげた人の割合は、男性では年代による差がほとんどみられないのに対し、女性では50代(34.3%)が40代(25.4%)を10ポイント近くも上回っている(図表5)。女性では性・世帯形態別に比較した場合にも単身世帯(36.0%)が2人以上世帯(27.5%)を10ポイント近く上回っており、40代より50代で、また2人以上世帯より単身世帯で、「仕事に打ち込んでいるとき」に生きがいを感じている人が多い点が注目される。

就労者が仕事以外にも生きがいをもつことの重要性
(画像=第一生命経済研究所)

(2)就労者の生きがいの多様性

 続いて、就労者が生きがいを感じるときとしてあげた項目の数の平均値と、生きがいがない人の割合から、就労者の生きがいの多様性についてみる。

 図表6のように、40・50代就労者が生きがいを感じるときとしてあげた項目は、平均3.5項目であった。平均値は男性(3.2)に比べて女性(4.0)で高く、男性より女性の方が生きがいを感じるときが多様だと考えられる。男性の場合、40代や単身世帯、非正社員の人では平均値が低く、生きがいがない人の割合も高い。これに対して女性の場合、年代や世帯形態による傾向の違いは男性と共通するが、非正社員において平均値の低さや生きがいがない人の割合が高い傾向はみられない。また、自営業・自由業の女性では生きがいを感じるときを6項目以上あげた人が3割弱を占め(図表省略)、平均値も4.5と他のグループに比べてきわめて高かった。

就労者が仕事以外にも生きがいをもつことの重要性
(画像=第一生命経済研究所)

 参考までに非就労者についてみると、無職男性(2.6)では就労男性(3.2)に比べて平均値が低く、生きがいがないと答えた人も約2割と高くなっている。一方、女性の場合、このような傾向は男性ほど顕著ではない。無職女性の平均値は3.8で、就労女性(4.0)にはわずかに及ばないものの、就労男性(3.2)を上回る水準である。無職女性で生きがいがない人の割合(8.7%)も、就労女性(8.3%)との差は小さく、無職男性(19.7%)と比べれば半分以下であった。これらの結果から、女性に比べて男性の方が、同居家族がいないこと(家族を形成しないことや家族と別居すること)、正社員・正職員の仕事に就いていないこと、あるいは仕事そのものに就いていないことと、生きがいが少ないことの結びつきが強いと考えられる。

(3)就労者の生きがいのタイプ

 次に、「生きがいの有無」と「仕事に打ち込んでいるとき」に生きがいを感じているかどうかで就労者の生きがいのタイプを次の4つに分類した。

就労者が仕事以外にも生きがいをもつことの重要性
(画像=第一生命経済研究所)

 まず、生きがいを感じるときとして「仕事に打ち込んでいるとき」を選択し、それ以外の項目も同時に選択した人を『仕事+仕事以外』、それ以外の項目は選択しなかった人を『仕事だけ』とした。次に、「仕事に打ち込んでいるとき」を選択せず、それ以外の項目を選択した人を『仕事以外』、それ以外の項目を選択しなかった人を『生きがいなし』とした。

 図表7は、これらの内訳を示したものである。40・50代の就労者2,348名において、生きがいのタイプで最も多かったのは『仕事以外』(63.2%)であり、以下『仕事+仕事以外』(25.1%)、『生きがいなし』(10.1%)がこれに続いた。仕事に打ち込んでいるときだけに生きがいを感じると答えた『仕事だけ』の該当者は、40・50代就労者のわずか1.6%だった。

 図表8は、これらの内訳を、主な属性別に比較したものである。性別や年代、世帯形態や就労形態にかかわらず、最も多いのは『仕事以外』タイプで、どのグループでも最大の割合を占めた。『仕事+仕事以外』タイプがこれに次いで多い点も、すべてのグループに共通している。ただし、自営業・自由業で働く女性の場合、『仕事+仕事以外』(43.2%)の占める割合がかなり高く、『仕事以外』(49.0%)に近い水準となっている。『仕事だけ』タイプの人が占める割合をみると、女性(0.9%)より男性(2.1%)で高く、男性のなかでも40代(2.6%)や単身世帯(3.2%)、自営業・自由業の人(2.6%)で特に高くなっていることがわかる。一方、『仕事+仕事以外』タイプの人が占める割合は、男性(22.6%)より女性(28.8%)で高く、女性のなかでも50代(32.6%)や単身世帯(35.2%)、自営業・自由業の人(43.2%)で特に高くなっている。

就労者が仕事以外にも生きがいをもつことの重要性
(画像=第一生命経済研究所)

 なお、『仕事だけ』と『仕事+仕事以外』の合計割合は、生きがいを感じているときとして「仕事に打ち込んでいるとき」をあげた人の割合を意味する。この割合を100%とした場合に、『仕事だけ』タイプが占める割合は女性(3.0%)より男性(8.5%)で高く、男性のなかでも40代(10.7%)や単身世帯(13.3%)で特に高い。仕事だけに生きがいを感じているこのような男性では、それ以外の人に比べて、例えば労働時間が長いなど、仕事以外に生きがいを感じる時間をもちにくい生活をしているのかもしれない。

3.就労者の生きがいのタイプと健康管理、ネットワーク、生活満足度

(1)自分・家族の健康管理

 続いて、図表7でみた生きがいのタイプによって、自分・家族の健康管理に関する行動や周囲の人とのネットワークの維持・形成行動、生活のさまざまな側面に関する満足度等にどのような違いがあるのかをみる。

 はじめに、自分自身の健康管理や、家族の健康への配慮に関する行動の実行度を生きがいのタイプ別に比較する。自分の健康管理については、①バランスのとれた食生活をする、②適度に運動をする、③十分な睡眠・休養をとる、④規則正しい生活を送る、⑤検診を定期的に受けるという5つの側面を、また、家族の健康への配慮については、⑥配偶者の健康に気を配る、⑦子どもの健康に気を配る、という2つの側面を比較した。図表9は、これら7つの側面に関する行動の実行度(「できている」+「ある程度できている」の合計割合)を生きがいのタイプ別に示したものである。

 分析の結果、自分自身の健康管理や、家族の健康への配慮に関する行動の実行度には、生きがいのタイプによってすべての項目で違いがみられた。生きがいのタイプが『仕事だけ』や『生きがいなし』の就労者では、『仕事+仕事以外』や『仕事以外』の人に比べて、自身の健康管理や家族の健康への配慮に関する行動の実行度がどの項目でも低い傾向がみられた。仕事だけに生きがいを感じている就労者や生きがいがない就労者では、それ以外の就労者に比べて、自身の健康管理や家族の健康状態への配慮に関する行動を十分できていない人が多いと考えられる。

 なお、サンプル数は限られるが、生きがいのタイプが『仕事だけ』の男性では、子どもや配偶者の健康に気を配ることができていないと感じている人が特に多かった(図表省略)。また、生きがいのタイプが『仕事+仕事以外』の人では、ほぼすべての項目で実行度が『仕事以外』の人を上回り、そのような傾向は、男性に比べて女性で特に顕著にみられた(図表省略)。

就労者が仕事以外にも生きがいをもつことの重要性
(画像=第一生命経済研究所)

(2)周囲の人とのネットワーク維持・形成

1)ネットワークを良好に保つための行動
 次に、周囲の人とのネットワークの維持・形成をめぐる行動の実行度を生きがいのタイプ別にみる。いわゆるネットワークには多様な側面があるが、本稿では周囲の人との関係を良好に保つための行動、及び多様なネットワークを維持・形成するための行動という2つの側面に注目した。

 図表10は、家族・親族や近所の人など、周囲の人との関係を良好に保つための行動の実行度を生きがいのタイプ別に比較したものである。これをみると、生きがいのタイプが『仕事だけ』の人では、配偶者や子どもと良好な関係を保つための行動ができている人の割合が他のグループに比べて低く、とりわけ子どもに関しては44.4%にとどまった。サンプル数は限られるものの、このような傾向は『仕事だけ』の男性で特に顕著にみられた(図表省略)。『生きがいなし』の人も、『仕事+仕事以外』や『仕事以外』の人に比べれば家族と良好な関係を保つことができている人の割合が低いが、『仕事だけ』の人に比べれば配偶者に関しては15ポイント以上、子どもに関しては20ポイント以上も高い。ただし、親族や近所の人との関係については、生きがいのタイプが『仕事だけ』の人の評価が『生きがいなし』の人を上回った。

 なお、『仕事+仕事以外』と『仕事以外』の人では、これらの行動の実行度にそれほど顕著な差はみられなかった。

就労者が仕事以外にも生きがいをもつことの重要性
(画像=第一生命経済研究所)

2)多様なネットワークを形成するための行動
 次に、多様なネットワークを維持・形成するための行動の実行度を生きがいのタイプ別にみる(図表11)。ネットワークの多様性に関しては、①仕事上の人脈を広げる、②仕事以外の友人をもつ、③自分より年上の友人をもつ、④自分より若い友人をもつ、⑤できるだけ多くの友人をもつ、⑥地域に友人をもつ、⑦異性の友人をもつ、というネットワークの質と量に関する7項目についてみた。

 4つのタイプのうち、『生きがいなし』の人では、多様なネットワークを維持・形成するための行動に関する多くの項目で実行度が最も低かった。生きがいがない就労者では、①仕事上の人脈を広げるといった仕事にかかわる側面だけでなく、②仕事以外の友人や④できるだけ多くの友人など、ネットワークの質や量にかかわる行動についても、他のタイプに比べて実行度が低い。就労者にとって生きがいがないことは、多様な人間関係を形成したり、それらを維持するための行動ができない生活につながっている可能性がある。

 一方、4つのタイプのうち、多くの項目で実行度が最も高かったのは『仕事+仕事以外』の人であり、どの項目でも男性の評価を女性が上回っていた(図表省略)。

就労者が仕事以外にも生きがいをもつことの重要性
(画像=第一生命経済研究所)

(3)生活満足度

 最後に、生きがいのタイプ別に、家庭生活や職業生活、余暇・レジャー、交流といった生活のさまざまな側面に関する満足度を比較する。

 図表12は、これら4つの分野それぞれについて満足している人の割合(満足している+どちらかといえば満足している)を生きがいのタイプ別に示したものである。これをみると、『仕事だけ』や『生きがいなし』の人では、『仕事+仕事以外』や『仕事以外』の人に比べて、家庭生活や余暇・レジャー、交流などの側面で満足している人の割合が低い。例えば家庭生活についてみると、生きがいのタイプが『仕事だけ』の人では満足している人が36.8%、『生きがいなし』の人では33.3%であるのに対し、『仕事+仕事以外』の人では67.1%、『仕事以外』の人では59.8%と20ポイント以上高い。このような傾向は、余暇・レジャーや交流に関しても共通する。ただし、職業生活に関しては『仕事だけ』の人(42.1%)が『仕事以外』の人(39.4%)を上回るが、その割合は『仕事+仕事以外』の人(59.0%)には及ばない水準であった。

 また、「4分野満足」は、家庭生活、職業生活、余暇・レジャー、交流という4分野のすべてに満足している人の割合を示したものである。この割合が最も低かったのは生きがいのタイプが『仕事だけ』の人(7.9%)であり、『生きがいなし』(10.1%)、『仕事以外』(17.2%)、『仕事+仕事以外』(22.9%)の順でこれに続いた。バランスという側面からみた場合にも、生活のすべての領域に関して満足している人の割合が最も高いのは『仕事+仕事以外』タイプの人であることがわかる。

就労者が仕事以外にも生きがいをもつことの重要性
(画像=第一生命経済研究所)

4.まとめ

 分析の結果、就労者のうち、生きがいがない人や仕事だけが生きがいの人では、自身や家族の健康管理に関する行動や、周囲の人とのネットワークを維持・形成するための行動を十分実行できない生活を送っている可能性があることがわかった。注目されたのは、仕事だけに生きがいを感じている人が、例えば子どもとの関係を良好に維持することなど、項目によっては生きがいのない人に比べても実行度が低かったという点である。

 会社員の場合、仕事そのものが生きがいにつながることは、雇用者、および被雇用者の双方にとって望ましいことでもある。しかしながら、本稿の分析結果から浮かび上がったのは、就労者が仕事以外にも生きがいをもつことの重要性であった。なお、自分やその家族の健康管理に関する行動や、家族を含めた周囲の人とのネットワークを維持・形成するための行動を実行したり、生活のさまざまな分野について満足している人の割合が最も高かった就労者は生きがいのタイプが『仕事+仕事以外』の人であった。これは、就労者の生活や精神的な支えとして、仕事に加えて仕事以外にも生きがいをもつこと、また、そのような時間をもてるような働き方ができることが重要であることを強く示唆している。

 時代とともに人々の平均的なライフサイクルが大きく変化してきたことによって、40代はちょうど、人生の折り返し地点ともいえるライフステージになった。このため、40・50代の就労者は長い老後生活に向けて、現役時代から仕事だけでなく、仕事以外にも生きがいをもつことの重要性を意識した生活を送ることが重要になる。ただし、企業等の経営環境の変化や公的年金制度の持続可能性等をみれば、個人の経済的な人生設計において、一定の年齢で就労生活からは完全にリタイアし、以降は悠々自適の生活を送るというシナリオを描くことは次第に難しくなってきている。実際、企業等で正社員・正職員として働く40・50代の多くは老後の経済面での厳しさを自覚しており、その備えとして働き続けることの重要性を認識している(的場 2014)。

 このような環境の変化をふまえれば、趣味をはじめとする生きがいをもち、多様な人とのネットワークの維持・形成に努めることは、老後に向けて、現在の仕事や職場だけに捉われないキャリア・デザインを考えたり、定年や引退といった概念に縛られない多様な働き方を意識していくことにもつながる面があるのではないだろうか。(提供:第一生命経済研究所

【参考文献】
・北村安樹子,2013,「何を『標準』とするか」『Life Design Report』(Spring 2013.4).
・北村安樹子,2012,「“リタイア移行期”と高齢期の居場所」『Life Design Report』(Summer 2012.7).
・年金シニアプラン総合研究機構(2013)『サラリーマンの生活と生きがいに関する研究~過去20 年の変化を追って~』.
・小谷みどり,2013,「働き盛りはお疲れ世代」『Life Design Report』(Spring 2013.4).
・松田茂樹,2008,「柔軟な働き方はワーク・ライフ・バランスを改善するのか」『Life Design Report』(2008.7-8).
・的場康子,2014,「40・50 代の老後不安と就労意識-40・50 代の不安と備えに関する調査より」『Life Design Report』(Autumn 2014.10).

主任研究員 北村 安樹子
(研究開発室 きたむら あきこ)