<企業で働く女性への関心の高まり>
女性の就業比率が高まり、働く女性が仕事と家事や育児のバランスをいかにしてとるかが大きな関心事となって久しい。その一方で、日本は先進諸国内において女性管理職が極めて少ないという実態がある。これに対し、政府は男女共同参画基本計画において、2020年までに政界や企業で指導的地位に占める女性の割合を30%にしようという目標を掲げている。また、安倍首相が上場企業に対し積極的な女性の管理職・役員への登用を要請するなど、女性の就業とキャリアアップについては、近年特に関心が高まっている。
こうした動きの中、日本ヒーブ協議会において継続的に実施されている「働く女性と暮らしの調査」の第9回調査結果が公表された。日本ヒーブ協議会とは、企業の消費者関連部門に働く女性が生活者と企業のパイプ役として活動する一般社団法人である。本調査は、当協議会会員企業にフルタイム勤務する女性715名に対して行われたインターネット調査であり、筆者も調査票の設計や分析に関与した。本稿ではこの中から、現在フルタイムで働いている女性が生活上のどういった領域に不満を持ち、ライフスタイルにおいてどのような工夫を行っているかについて概観する。
<働く女性における「仕事」と「プライベートや日常生活」の意識配分>
まず、働く女性が仕事とプライベートの意識配分をどのようにとらえているかについてみる。「全体を10とした場合に仕事と仕事以外の生活やプライベートがそれぞれどのくらいの意識を占めているか」との設問で現状と希望をたずねたデータをみると、「仕事:プライベートや日常生活」の現状の配分の平均値は5.9:4.1となっていた。これに対して、希望についての平均値は4.7:5.3となっており、現状では仕事がプライベートや日常生活を上回っているのに対し、希望としては仕事の占める割合を下げたいと考えている人が多いことが明らかとなった。
<働く女性における日常生活の満足度>
続いて、日常生活の満足度について領域ごとにたずねた結果をみる。全体的に満足度が高かったのは、上位から順に「家族とのコミュニケーション」(70.9%)、「洗濯」(67.1%)、「家族以外とのコミュニケーション」(66.2%)となっていた。一方で満足度が低かったのは「介護」(33.8%)、「運動・美容・健康管理」(36.6%)、「掃除」(36.8%)となっている。休息・睡眠時間や料理など、日常生活のマネジメントに関わるものの満足度も50%を下回っている。
これについて、図表1で示した仕事とプライベートの意識配分を元に、仕事の比重が高い人とそうでない人との比較をすると、総じて仕事の比重が高い人で満足度が低いとの結果を得た(図表省略)。特に値の差が大きかったのが「休息・睡眠時間」(29.1ポイント差)、「ストレス解消」(19.2ポイント差)、「運動・美容・健康管理」(18ポイント差)となっていた。
<働く女性における生活マネジメント型家電・外部サービスの利用>
仕事と家庭の両立のために、生活マネジメント型の家電・外部サービスを利用しているかについてみたものが図表3である。「非常にあてはまる」とした割合が最も多かったのは、「食器洗浄機」であり、18.7%が「日常的に利用している」、6.9%が「たまに利用している」と回答しており、両者をあわせた25.6%が利用していることになる。「利用したことはないが今後利用したい」とする割合は30.1%となっており、現在利用している人を含めると55.7%の人に利用の意思があることがわかった。一方、「利用したことはなく、今後も利用するつもりはない」とする割合は36.5%だった。
また、現在の利用状況の割合は低いものの、今後の利用意向が高かったのが「ロボット型自動掃除機」(44.8%)と「清掃の専門業者」(37.1%)である。図表2で、働く女性における掃除の満足度が低いとの結果を示したが、この状況を反映しているものととらえられる。
一方、「利用したことはなく、今後も利用するつもりはない」とする割合が高かったのが「家政婦・家事代行サービス」(76.6%)と「食事の定期的な宅配サービス」(71.3%)となっていた。
<まとめ>
今回の調査では、仕事をする理由として「生計維持」が1985年の調査開始以来最多の59.7%を占め、「職業を持つのがあたりまえ」(25.6%)と考える人が過去最多となった(図表省略)。こうした中で、働く女性では仕事と生活の意識配分の現状と希望にギャップがあり、日常生活において行き届いていないと感じる領域が多々あるものの、家電等ではそれらを補いきれておらず、特に外部のマンパワーに頼るにはコスト面や意識的な抵抗もあってか、ギャップを埋めるには限界がある点が確認された。
仕事と家庭を両立しようと多忙な毎日を送る女性について、さらにその活躍の場を広げるべく管理職や役員に登用するのであれば、女性自身がさらなる対策や工夫を行う必要があることに加え、社会や企業もより一層の制度・風土を改革し、女性の両立支援を進めていく必要があるだろう。(提供:第一生命経済研究所)
研究開発室 宮木 由貴子