貯蓄と収入にゆとりがあっても、多額の住宅ローンは家計を圧迫してしまいます。理想の住宅を手に入れつつ無理なく返済していくために、借入額や返済計画はどうやって決めていけばいいのでしょうか。住宅ローンを利用する際の、頭金とローンの比率や、借入可能額について考えてみましょう。
住宅ローンは物件価格の何割が目安?
住宅ローンを利用する際、多くの人が頭金を用意しています。頭金なしでもローンを組むことはできますが、ローン利用の額が増えるほど総支払額が大きくなりますし、頭金の割合が低く融資率が高いと比例して金利も高くなってしまいます。返済の負担を減らしたい場合には避けたほうがいいでしょう。現在住んでいる賃貸住宅の賃料と将来の毎月のローン返済額を同程度にしたいのであれば、自己資金(頭金)とローンの比率は重要な要素になります。
国土交通省が毎年行っている「住宅市場動向調査」によると2017年に土地を購入して注文住宅を建てた人の場合、自己資金の比率は28.8%という結果でした。さらに同調査にて、住宅の購入資金は自己資金とローン利用額を合わせて年収の6倍、返済期間は約33年が平均となっています。
平均値に合わせて返済額を計算してみましょう。
●年収1,000万円のAさんの場合
- 土地と住宅の合計額6,000万円
- 自己資金は29%1,740万円、借入額は4,260万円
- フラット35で返済期間33年
- 元利均等で金利は1.5%
- ボーナス増額ありの場合ボーナスの比率は15%
毎月の返済額 | ボーナス月加算額 | 総返済額 | |
---|---|---|---|
ボーナス増額なし | 13.7万円 | 0万円 | 5,404万円 |
ボーナス増額あり | 11.6万円 | 12.4万円 | 5,406万円 |
Aさんの場合、平均値で考えると自己資金が1,740万円と高額です。しかしその分、毎月の返済額は抑えられています。
●年収1,000万円のBさんの場合
同じく年収1,000万円のBさんですが、自己資金として使える貯蓄は700万円でした。貯蓄をすべて使い切ると引越し後の生活に不安があったため、土地と住宅を合わせて6,000万円の代金の内400万円を頭金として残りをローンにしました。
- 土地と住宅の合計額6,000万円
- 自己資金は400万円、借入額は5,600万円
- フラット35で返済期間33年
- 元利均等、融資率が9割超えで金利は1.9%
- ボーナス増額ありの場合ボーナスの比率は15%
毎月の返済額 | ボーナス月加算額 | 総返済額 | |
---|---|---|---|
ボーナス増額なし | 19.1万円 | 0万円 | 7,543万円 |
ボーナス増額あり | 16.2万円 | 17.2万円 | 7,546万円 |
頭金を減らしたBさんでは、総返済額と毎月の返済額ともに大きく増加しています。
毎月の返済は手取りの何割だと無理がないのか
次に、毎月の手取りからローンの返済計画を立ててみましょう。住居費は手取りの20~30%が目安とされています。年収1,000万円で毎月の手取りは50万円、ボーナスは70万円ほどだった場合、住居費の目安は10~15万円となります。ボーナス月の加算は14~21万円ほどにしておくといいでしょう。
このくらいの額ならもう少し住宅ローンに回しても大丈夫、と思われがちですが、住宅は建てた後にもお金がかかります。固定資産税や都市計画税の支払い、リフォーム資金の積立ても必要です。
購入資金の20~30%も自己資金を用意できないという場合には、毎月の返済額から借入額を決め、住宅に使える金額を割り出すという方法で計算してみましょう。
・毎月の返済額が10万円
毎月10万円の返済に加えてボーナス時には20万円を加算して返済、35年固定で金利1.5%、元利均等方式の場合、借入可能額は約4,350万円です。他にローンが何もなければ、返済負担率は16%になります。返済負担率とは年収に対する年間返済額の割合のことです。
返済負担率は20~25%、できれば20%を目指すと無理のない返済ができるでしょう。この場合、20%以下ですので健全な数値といえます。
・毎月の返済額が15万円
金利などが上記と同じ条件で、毎月の返済が15万円、ボーナス時に20万円加算して返済したとすると、借入可能額は約6,000万円です。他にローンがなければ返済負担率は22%でこちらもそれほど無理のない返済計画となるでしょう。
金融機関が提示する「借入可能額」の最大値は、返済負担率30~35%となっています。これを鵜呑みにしてローンを利用すると、毎月の家計を圧迫する恐れがあります。
ゆとりあるローン返済のために考えたいこと
このように、住宅ローンは用意できる自己資金と毎月の返済可能額からおおよその借入額を考えることができます。物件価格の20~30%の自己資金を必ずしも用意する必要はありません。毎月の返済に無理のない金額のローンを利用して、それに自己資金を加えた価格が土地と住宅に使える金額です。
将来的に必要になるリフォーム資金や子どもの進学費用、老後の蓄えなども考えて、ゆとりのある返済プランを立てていきましょう。(提供:MORIZOU online)
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