第一生命保険株式会社(社長 渡邉 光一郎)のシンクタンク、株式会社第一生命経済研究所(社長 長谷川 公敏)では、全国の大学3年生987 名を対象に、標記についてのアンケート調査を実施いたしました。

 この程、その調査結果がまとまりましたのでご報告いたします。

≪調査結果のポイント≫

大企業に就職したいか
● 「大企業にこだわらずに就職したい」62.0%、「大企業に就職しても安心ではない」79.5%

企業規模へのこだわりの背景意識
● 「大企業に就職しても、安心ではない」「終身雇用されるかわからない」と考える学生の約7 割が「企業規模にこだわらずに就職したい」

働き方のこだわり
● 「正社員にこだわりたい」84.9%、「一つの会社に長期勤続するつもり」64.9%

大企業・大都市志向と転職志向・ワークライフバランス
● 「企業規模こだわりなし」の学生の76.3%、「首都圏・近畿圏以外で勤務したい」学生の78.4%がワークライフバランス重視の生活を希望

働く目的は?
● 「生活のためにお金が必要だから働く」が69.6%で最も多く、以下、男子は家族形成、女子は生きがいのためが多い

就職に伴う地域移動意識
● 「出身地で働きたい」41.3%、「出身地以外で働きたい」29.5%

就職に伴う地域移動は大都市志向か
● 「出身地である現在の居住地に留まって働く」の約4割、「出身地に戻って働く」の8割以上の学生が大都市圏以外での就職を望んでいる

出身地で就職しようと思う理由
● 第1位は「地元が好きだから」

出身地以外で就職しようと思う理由
● 上位は「志望企業があるから」「企業数や求人数が多いから」

≪調査の実施背景≫

 少子高齢化により生産年齢人口の減少が進む中、わが国の経済の維持発展のため、若年層の効果的な活用が不可欠です。しかし近年、わが国を取り巻く厳しい経済情勢を背景に、大学生のいわゆる「就職難」が長期化し、安定的な職業に就けない若者を多数生み出しています。

 「就職難」の背景の一つとして、学生の大企業・大都市志向などに伴う雇用ミスマッチが指摘されていますが、当研究所では企業と学生との情報や意識ギャップを縮小させる方策を考えるために、2012 年11 月に大学3年生に対するアンケート調査を実施しました。

 ここでは、厳しい社会状況に置かれている大学生が、職業生活への移行を前にして「働く」ということをどのように考えているのか、主に大学生の就職にあたっての企業規模や地域選択などについての意識を紹介します。

≪調査の実施概要、回答者の特性≫

1.調査地域と対象
アンケート調査の対象は株式会社クロス・マーケティングのモニターから抽出した全国の大学3年生987 人です。
対象者の抽出にあたっては、文部科学省「平成24 年度学校基本調査」を参考として、性別、居住地別に学生数の割付をおこないました。

2.調査方法
株式会社クロス・マーケティングに委託してインターネット調査により実施。

3.実施時期
2012 年11 月22 日~28 日

大学3年生987名に聞いた『大学3年生の就職に関する取組や意識に関する調査』
(画像=第一生命経済研究所)

大企業に就職したいか

「大企業にこだわらずに就職したい」62.0%
「大企業に就職しても安心ではない」79.5%

大学3年生987名に聞いた『大学3年生の就職に関する取組や意識に関する調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 就職を目の前に控えた大学3年生は、どのような企業でどのように働きたいと思っているのでしょうか。

 まず、就職先として考えている企業規模については、「大企業に就職したい」と思っている(「Aに近い」と「どちらかといえばAに近い」の合計、以下同様)学生よりも、「企業規模にこだわらずに就職したい」と思っている(「Bに近い」と「どちらかといえばBに近い」の合計、以下同様)学生の方が多くなっています(図表1)。「大企業に就職したい」の回答割合を性別でみると男子は44.8%、女子は29.8%であり(図表省略)、大企業志向は女子よりも男子の方が強い傾向がみられます。

 大企業への安心感をたずねた結果をみると、「大企業に就職すれば、一生安心だ」と考える学生の割合は20.5%に過ぎず、「大企業に就職しても、安心ではない」が79.5%を占めています

 「終身雇用」に対しても、「企業に就職すれば、終身雇用されると思う」の回答者は21.5%に過ぎず、「企業に就職しても、終身雇用されるかわからない」の回答者は78.5%を占めています

 「大企業に対する安心感」や「終身雇用」に対し、懐疑的である学生が大勢を占めていることから、大学生の多くは就職しても必ずしも一生安定的に雇用されるわけではないと現実社会を厳しく捉えていることがわかります。

企業規模へのこだわりの背景意識

「大企業に就職しても、安心ではない」「終身雇用されるかわからない」
と考える学生の約7 割が「企業規模にこだわらずに就職したい」

大学3年生987名に聞いた『大学3年生の就職に関する取組や意識に関する調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 企業規模へのこだわりについて、大企業への安心感や終身雇用に対する意識との関係をみたものが図表2です。

 大企業への安心感については、「大企業に就職すれば、一生安心だ」の回答者のうち、78.3%が「大企業に就職したい」と答えているのに対し、「大企業に就職しても、安心ではない」の回答者では「大企業に就職したい」の回答割合は27.6%に過ぎず、「企業規模にこだわらずに就職したい」が72.4%となっています

 終身雇用については、「企業に就職すれば、終身雇用されると思う」の回答者の64.2%が「大企業に就職したい」と回答しているのに対し、「企業に就職しても、終身雇用されるかわからない」の回答者では「大企業に就職したい」の回答割合は30.8%に過ぎず、69.2%が「企業規模にこだわらずに就職したい」と回答しています

 雇用安定志向から大企業を選択する意向のある学生も一定の割合で存在しているものの、それは少数派であり、大企業に就職しても安心ではない、終身雇用されるかわからないとの意識から企業規模にこだわらずに就職を考えている学生が多くを占めています。



働き方のこだわり

「正社員にこだわりたい」84.9%
「自分に向かないと思っても、一つの会社に長期勤続するつもり」64.9%

大学3年生987名に聞いた『大学3年生の就職に関する取組や意識に関する調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 雇用形態についての意識をみると、「正社員にこだわりたい」の回答割合が84.9%、「正社員にこだわらず非正社員やフリーターでもよい」の割合が15.1%であり、大多数が正社員での就職を希望しています(図表3)。また、「自分に向かないと思っても、一つの会社に長期勤続するつもりだ」の回答割合が64.9%であり、「自分に向かないと思ったら、転職するつもりだ」の35.0%を大きく上回っています。終身雇用されるかわからないなど雇用環境の厳しさを自覚しながらも、就職したら正社員として働き、長期勤続をしようと思っている学生が多いことがわかります。

 勤務地については、「勤務地を限定せずに(転勤あり)働きたい」(35.1%)の割合よりも「ある一定のエリアで(勤務地限定・転勤なし)働きたい」(64.9%)の方が多くなっています。性別にみると、女子よりも男子の方が勤務地を限定せずに働きたいとの割合が高いものの、男子でも59.3%がエリア限定の働き方を望んでいます(図表省略)。

 就職後の生活については、「余暇を犠牲にしてでも、経済的に豊かな生活をしたい」の割合(27.6%)よりも「ほどほどの収入でも余暇を楽しむ生活をしたい」の割合(72.4%)の方が高く、また「家庭や趣味よりも、仕事を優先に生活をしたい」の回答割合(27.8%)を「仕事よりも、家庭や趣味を優先とした生活をしたい」の割合(72.1%)が上回っています。仕事優先というよりも、ほどほどの収入でもよいから家庭や余暇を大切に生活したいと考える学生が多く、しかもこの傾向は特に女子に強いようです(図表省略)。



大企業・大都市志向と転職志向・ワークライフバランス

「企業規模こだわりなし」の学生の76.3%、首都圏・近畿圏以外で勤務したい学生の78.4%がワークライフバランス重視の生活を希望

大学3年生987名に聞いた『大学3年生の就職に関する取組や意識に関する調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 働き方や生き方に関する意識の中でも、転職志向やワークライフバランスについて、企業規模へのこだわり別と希望する勤務地別にみたものが図表4です。

 転職志向については、大企業志向の人もそうでない人も、また希望する勤務地が大都市の人も地方の人も、転職よりも長期勤続をするつもりとの回答割合が高くなっています

 ワークライフバランスについて、まず勤務地限定志向に関する意識をみると、大企業志向の人よりも企業規模へのこだわりなしの人の方が、また首都圏・近畿圏の大都市圏で働きたい人よりもそれ以外の地域で働きたい人の方が「ある一定のエリアで(勤務地限定・転勤なし)働きたい」と思っている人の割合が高いです。仕事と家庭・趣味のどちらを優先とした生活をしたいかについてみると、勤務地限定意識と同様、大企業志向の人よりも企業規模へのこだわりなしの人の方が、また首都圏・近畿圏の大都市圏で働きたい人よりもそれ以外の地域で働きたい人の方が「仕事よりも、家庭や趣味を優先とした生活をしたい」と思っている人の割合が高いことがわかります



働く目的は?

「生活のためにお金が必要だから働く」が69.6%
男子は家族形成、女子は生きがいのためが多い

大学3年生987名に聞いた『大学3年生の就職に関する取組や意識に関する調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 働く目的をたずねた結果をみると、「生活のためにお金が必要だから働く」と答えた学生は69.6%となっており(図表5)、多くの学生が「生きるために働く」という意識を持っています。第2位以下は「生きがいを見つけるために働く」が21.9%、「自分の自由になるお金がほしいから働く」が19.3%などとなっています。

 性・文理別にみると、性や文理別にかかわらず第1位は「生活のためにお金が必要だから働く」ですが、第2位以下は性によって回答傾向が異なります。文系理系ともに、男子の第2位は「自分の家庭を築くために働く」、女子の第2位は「生きがいを見つけるために働く」となっています。文理別にかかわらず男子は就労と家族形成を結び付けている学生が多く、女子は生きがいとして働くことを考えている学生が多いようです。

 性・企業規模へのこだわり別にみると、「規模こだわりなし」では男女ともに「生活のため」の他、「自分の自由になるお金のため」や「将来に備えて貯蓄をするために働く」が相対的に高く、大企業志向の学生よりも経済的動機が強いことがうかがえます。



就職に伴う地域移動意識

「出身地で働きたい」41.3%、「出身地以外で働きたい」29.5%

大学3年生987名に聞いた『大学3年生の就職に関する取組や意識に関する調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 大学生は就職をするにあたって、今住んでいる地域から移動をすることを考えているのでしょうか。これをたずねた選択肢の中で最も多かったのは「今住んでいる地域(出身地と同じ)で働くつもりだ」(以下「A.出身地である現在の居住地に留まって働く」)の34.0%でした(図表6)。また「今住んでいる地域(出身地と異なる)で働くつもりだ」(以下「C.出身地でない現在の居住地に留まって働く」)と回答した人は12.7%であり、これらを合計すると現在の居住地が出身地か否かにかかわらず、「今住んでいる地域で働くつもり」と考えている学生の割合が46.7%でした。多くの学生は現在の住まいから地域移動を伴う就職を考えていないようです。

 次いで「今住んでいる地域にこだわらずに(出身地以外で)働くつもりだ」(以下「D.出身地以外へ移動して働く」)の回答割合は全体の16.8%、「今住んでいる地域から出身地に戻って働くつもりだ」(以下「B.出身地に戻って働く」)は7.3%となっています。ただし「わからない」が29.2%を占めており、就職先が決まらないと判断できない学生も多いようです。

 性・文理別にみると、男子は、文系・理系ともに「わからない」の回答割合が最も高く、この他の項目についても文理別で特筆すべき差は見られません。他方、女子は文理別で若干の回答傾向による違いがみられます。女子の文系では「A.出身地である現在の居住地に留まって働く」の回答割合が41.7%と他に比べて高い割合を示していますが、理系は「B.出身地に戻って働く」や「D.出身地以外へ移動して働く」の割合が相対的に高くなっています

 男女ともに、文系よりも理系の学生の方が地域移動を伴う就職を考えている学生が多いようですが、その傾向は特に女子の方が強いことがうかがえます。



就職に伴う地域移動は大都市志向か

「出身地である現在の居住地に留まって働く」の約4割、「出身地に戻って働く」の8割以上の学生が地方での就職を望んでいる

大学3年生987名に聞いた『大学3年生の就職に関する取組や意識に関する調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 地域移動意識の4タイプごとに、出身地、現在の居住地、希望勤務地について、「首都圏・近畿圏」(以下「大都市圏」)と「左記以外」(以下「地方」)の道県の分布をみたものが図表7です。

 「A.出身地である現在の居住地に留まって働く」ことを考えている学生についてみると、大都市圏出身者がその地で学生になって、そのままその地で働きたいと考えている層が約6割、地方出身者がその地で学生になり、そのままその地で働きたいと考えている層が約4割となっています。

 「B.出身地に戻って働く」ことを考えている学生の86.7%は地方出身者です。そのうちの30.8%が大都市圏で学生になり、そのほとんどが地方に戻って就職することを考えています。また残りの69.2%は地方の中で移動して学生となり再び地元に戻って働くことを考えているようです。13.3%の大都市圏出身者については、地方に移動して学生になり、再び大都市圏に戻って働くことを考えるパターンの他、大都市圏の中で移動して再び地元に戻って働くことを考えているパターンの学生もいるようです。

 「C.出身地でない現在の居住地に留まって働く」ことを考えている学生も、「B.出身地に戻って働く」と同じように、8割近くが地方出身者です。そのうちの約6割が大都市圏で学生となり、そのほとんどが大都市で就職することを考えています。

 「D.出身地以外へ移動して働く」ことを考えている学生も59.7%は地方出身者です。そのうちの25.7%が大都市圏で学生となるために移動しており、そのほとんどが大都市で働くことを考えています。出身地にかかわらず、現在の居住地が地方の学生であっても、そのほとんどが大都市圏での就職を考えていることがこのパターンの特徴です。

 以上から、「B.出身地に戻って働く」の回答者を除き、大都市圏出身者でなくても大都市圏で就職をすることを考えている学生が多く、大学生の就職にあたっての大都市志向がみてとれます。しかし他方、「A.出身地である現在の居住地に留まって働く」の回答者の約4割、「B.出身地に戻って働く」の回答者では8割以上が大都市圏以外での就職を望んでいることも明らかであり、必ずしも大都市志向の学生ばかりではないこともうかがえます。



出身地で就職しようと思う理由

第1 位は「地元が好きだから」

大学3年生987名に聞いた『大学3年生の就職に関する取組や意識に関する調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 「A.出身地である現在の居住地に留まって働く」と「B.出身地に戻って働く」ことを考えている学生に出身地で就職しようと思う理由をたずねた結果、いずれも第1位は「地元が好きだから」であり、特に後者は77.8%に及んでいます(図表8)。また「B.出身地に戻って働く」の回答者は「地元に貢献したいから」も38.1%であり、「A.出身地である現在の居住地に留まって働く」の回答者の割合を大きく上回っています。概して出身地に戻って働くことを考えている学生は、地元に対する愛着心や貢献意識が強く、そのことが地元での就職を考える理由になっていることがうかがえます。

 ただし、同じ「A.出身地である現在の居住地に留まって働く」と回答した学生でも、その「出身地」の地域特性によって、その地で就職しようと思う意識も異なると思われます。そこで、「出身地」が大都市圏の学生と、それ以外の学生とで、出身地で就職しようと思う理由を比較してみると、大都市圏出身者は「就職後の生活が経済的に楽だと思うから」や「志望企業があるから」「就職活動をするにあたり、企業数や求人数が多いから」といった項目への回答割合が地方出身者より高くなっています。他方、地方出身の学生は「地元が好きだから」や「地元に貢献したいから」等の回答割合が高いことが目立っており、「B.出身地に戻って働く」ことを考えている学生と似たような傾向が示されています。

 出身地で就職を考える学生の中でも、特に地方に住み、就職を考えている学生は、大都市居住の学生よりも地元への愛着心や貢献意識が強いことがうかがえます。

出身地以外で就職しようと思う理由

上位は「志望企業があるから」「企業数や求人数が多いから」

大学3年生987名に聞いた『大学3年生の就職に関する取組や意識に関する調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 他方、「C.出身地でない現在の居住地に留まって働く」並びに「D.出身地以外へ移動して働く」と考えている学生は、いずれも出身地にこだわらずに働きたいと思っているという点で共通しています。また、この考えの学生の多くは図表7で示したように、大都市圏以外の出身かつ大都市圏での就職を希望する傾向があります。これらの学生に出身地以外で就職しようと思う理由をたずねた結果が図表9です。

 「C.出身地でない現在の居住地に留まって働く」と「D.出身地以外へ移動して働く」の第1位の項目はそれぞれ異なるものの、第2位と第3位はいずれも「志望企業があるから」と「就職活動をするにあたり、企業数や求人数が多いから」となっています。特に「D.出身地以外へ移動して働く」の回答者については、多くが大都市圏で働きたいと思っていることからも、職を求めて移動するという意識が強い傾向がみてとれます。



≪研究員のコメント≫

 本調査結果から、多くの学生は、終身雇用されるかわからない、大企業に就職しても安心できないなど、雇用の先行きが不透明であることを実感していることがわかりました。一方、就職後は仕事優先というより、ほどほどの収入でも家庭や趣味など余暇を楽しむ生活をしたいと考えている学生も多いようです。厳しい経済情勢に直面している今、大学生は半ば諦観しつつ生計の維持のために企業規模にこだわらずに就職し、自身のワークライフバランスを重視した働き方を望んでいることがうかがえます。

 また就職を機に、多くの企業が集中している大都市に就職先を求め、地域移動をすることを考えている学生が多くを占めています。しかし他方、Uターンなど出身地に戻って働くことを考えている学生を中心に、地元への貢献意識をもって働きたいと思っている学生も少なからずいることも明らかとなりました

 こうした調査結果を踏まえて、大学生がスムーズに職業生活へ移行し、若者人材の効果的な活用を図るための課題について以下に示します。

 一つは、「企業規模にこだわらずに就職したい」という意向への対応です。実際、大企業が新規採用を絞り込んでいるということもあり、大学卒業予定者の「中小企業への就職希望者数は徐々に増加している」(中小企業庁 2012)といわれています。採用意欲のある中小企業にとっては好機であるともいえます。他方、中小企業は大企業に比べ人材獲得のための情報発信力が弱く、そのことが新卒採用を困難にしているとの指摘もあります。本アンケート調査の自由記述にも「中小企業のPRが足りない」「アプローチの仕方がわからない」等の意見が多数ありました。求人情報や企業活動等を就職希望者に適切に伝えることができるよう、中小企業も自ら地域の大学と連携を図り、インターンシップなどの取組を実施し、情報発信力を高める努力が求められます

 もう一つは、Uターン就職や地方で就職をしたいという意向への対応です。このような意向のある学生は地元貢献意識が高いことから、彼らの定着により地方経済を支える人材を供給することにつながると思われます。しかしながら、「自分の望むような仕事が地元でできるか不安」(自由記述)といった意見が示すように、地域によっては経済活力の低下により、大学生が希望する職種の雇用があるかが懸念されています。すでに2003 年から内閣に「地域再生本部」が設置され、産業や雇用など様々な面からの対策が講じられていますが、大学生の地方就職を支えるためにも、企業努力のみならず行政支援により地域経済の活性化を図ることが求められます。また、大学側も学生の広域的な求職活動を援助する方向で、就職支援を充実させることが必要です。特にUターン就職を考えている学生の就職活動の場面において「大学の授業との両立の困難さ」や「大学での企業説明会の増加を望む」意見(自由記述)が目立っていたことからも、広域的に地方企業も呼び込んだ大学内就職説明会の実施など、学生の地方就職に対する支援の工夫を図ることが望まれます

 このように、企業、行政、大学の連携によって新卒採用市場を活性化させ、今後のわが国経済を担う若者人材を効果的に活用する方策を模索し続けることが、現在の厳しい経済環境を克服する一つの道でもあると思われます。(提供:第一生命経済研究所


(研究開発室 上席主任研究員 的場康子)

㈱第一生命経済研究所 ライフデザイン研究本部
研究開発室 広報担当(津田・新井)
TEL.03-5221-4771
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