みなさんこんにちは。
相続税専門の税理士法人トゥモローズです。

相続税申告において、弊社では、亡くなる前5年間から10年間の被相続人の通帳を確認することとしています。
通帳の確認に際し、使徒が不明な出金があった場合には相続人のその使徒を確認するのですが、数百万円、数千万円の使徒でたまにあるのが「自宅のリフォームにかかった支出です」という回答です。

このリフォーム費用の相続税上の取扱いはどうすればよいでしょうか?
今回はこのリフォームについて、わかりやすく解説します。

増築しなければ評価の必要なし?

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(画像=税理士法人トゥモローズ)

まず、基本中の基本として、相続税における家屋(建物)の評価についてです。
家屋は、固定資産税評価額にて評価します。正確には、固定資産税評価額×倍率ですが、この倍率は、下記の通り「1.0」となっています。

家屋の固定資産税評価額に乗ずる倍率(東京都)

それでは、リフォームをした場合、この固定資産税評価額は改訂されるのでしょうか?
実際には、リフォームをしても固定資産税評価額は改訂されないことがほとんどだと思います。役所もリフォームに気付かないためです。
役所が明らかに気付くケースとしては、増築した場合です。役所は、3年に一度、航空写真等で調査をします。前回の調査と比べ屋根が増えている家屋については、固定資産税評価額を改訂するのです。すなわち、増築していないただのリフォームについては役所が気付きづらいのです。

話を元に戻しますと、相続税上、家屋は固定資産税評価額で評価するといいましたが、増築を伴わないリフォームが施された家屋についてはリフォーム前後で固定資産税評価額が変わりません。ということは、相続税においてもリフォームは一切加味しなくても良いということでしょうか?
財産評価基本通達にもリフォームをした場合の家屋の評価については言及されていません。

結論は、増築を伴わないリフォームもちゃんと相続税評価に加味する必要があります。
上記の「家屋の固定資産税評価額に乗ずる倍率(東京都)」の(注)書きを確認してみてください。
財産評価基本通達5項(評価方法の定めのない財産の評価)を根拠として加味する必要があるのです。 下記質疑応答事例にも同様の解説がされています。
増改築等に係る家屋の状況に応じた固定資産税評価額が付されていない家屋の評価

具体的な評価方法

① 原則

「そのリフォームに係る家屋と状況の類似した付近の家屋の固定資産税評価額を基として、その付近の家屋との構造、経過年数、用途等の差を考慮して評定した価額」で評価します。
ただし、実際にはこのような価額の把握は困難です。したがって、実務上は下記②によって評価することとなります。

② 実務上

家屋の評価方法
(画像=税理士法人トゥモローズ)

なお、「死亡日までの償却費」は下記のように計算します。

■ リフォーム費用×90%×経過年数(※1)/耐用年数(※2)

(※1)経過年数とは、リフォーム日から死亡日までの年数で1年未満の端数は切り上げます。
(※2)減価償却資産の耐用年数等に関する省令による耐用年数で計算します。

Q&A

① 通常の維持修繕についても加味する必要ある?

Q 亡くなる数ヶ月前に壊れてきた屋根を補修して300万円くらいかかったのですが、この場合も300万円の70%相当で評価しなければいけませんか?

A 質疑応答事例等で具体的なリフォームの範囲が規定されていないので確定的なことは断言できませんが、私見では、その屋根の改修が元の屋根より価値の高いものになっていないような通常の維持修繕である場合には70%評価の必要はないと考えています。

② 70%評価だと高すぎるので何か対策はあるの?

Q リフォームの70%相当が相続税の対象となるなんて高すぎると思います。例えば、30年前に3,000万円で建築した家屋で今の固定資産税評価額が200万円くらいで、その家屋に2,000万円のリフォームを施すと、1,600万円(200万円+2,000万円×70%)になるということですよね?元の家の固定資産税評価額に比べると高すぎて不条理な気がします。

A お亡くなりになる前であれば、役所の固定資産税課に行って、リフォームをした旨を伝え、固定資産税評価額を見直してもらうべきです。
1,600万円よりもかなり低い金額で固定資産税評価額が改訂されるはずです。毎年の固定資産税は増えるかもしれませんが、相続税の負担よりは影響が少ないケースも多いと思います。
また、亡くなった後であっても申告期限までに固定資産税評価額が改訂されればその固定資産税評価額を使用できますので是非検討してみてください。

③ 親の家に子供がリフォームした場合は?

Q 親の家に子供の負担でリフォームしたのですが、相続税の計算はどうなりますか?

A 子のリフォームにより親の家の価値が増加したと考えられるため上記2同様に評価することになります。なお、家屋の所有者とリフォーム費用負担者が違う場合の税金上の注意点は親の持ち家に子がリフォームをする場合の記事を参照してください。(提供:税理士法人トゥモローズ)