目次

1.はじめに
2.短時間勤務制度の現状
3.子育て期の働く母親に対するアンケート調査概要
4.短時間勤務制度の利用実態
5.短時間勤務制度の利用意向
6.企業からみた短時間勤務制度の導入効果と問題点
7.まとめ

要旨

① 2009年の育児・介護休業法の改正により、3歳未満の子どもを養育する労働者に対し、短時間勤務制度(1日原則6時間)を設けることが事業主に義務付けられた。本稿では、小学生以下の子どもをもち働いている女性及び企業に対するアンケート調査結果を踏まえ、同制度が子育て期の働く女性のワーク・ライフ・バランスにどのように寄与するのか、その役割と効果を明らかにし、今後、両立支援策として定着するための課題を提示する。

② 短時間勤務制度の利用者に、制度を利用してよかった点をたずねたところ、「育児休業から復帰した後も正社員として仕事を続けられる」(75.0%)や「家事や子育てと両立をしながら正社員として働くことができる」(66.7%)と回答した人が7割前後であった。利用者の多くが継続就業ないし育児と仕事との両立ができるという点を評価している。

③ 他方、同制度の利用者のうち、約3割の人が人事評価でマイナスに働くことを、約半数の人が業務量や内容により所定の時間に帰れないことを挙げている。また企業側も、多くが業務負担の調整や人事評価の難しさ、職種や部門が限定されるとの問題点を指摘している。

④ 短時間勤務制度は、従業員の継続就業や子育てとの両立支援に寄与するものであり、ワーク・ライフ・バランスの実現のためにも広く定着を図ることが必要である。そのためには、マネジメントの工夫により、業務分担や人事評価のあり方を整え、業務内容や職種を問わず、同制度を利用したい人が利用できるような仕組みにしていくことが肝要である。

キーワード:短時間勤務制度、育児・介護休業法、ワーク・ライフ・バランス

1.はじめに

 2009年の育児・介護休業法の改正により、3歳未満の子どもを養育する労働者に対し、短時間勤務制度(1日原則6時間)を設けることが事業主に義務付けられた*1。

 これまでは、3歳未満の子どもを養育する労働者に対し、短時間勤務制度、フレックスタイム制度、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ、所定外労働をさせない制度、託児施設の設置運営、その他これに準ずる便宜の供与(ベビーシッターの費用を事業主が負担する等)、及び育児休業の制度に準ずる措置の中から1つを選択して制度を設けることが事業主の義務とされていた。今回の改正で、事業主に義務付けられる制度の中の選択肢の一つとしてではなく、3歳に満たない子を養育する労働者が希望すれば利用できる短時間勤務制度が単独で義務付けられたことになる。

 この法改正の目的は「働きながら育児をすることを容易にすること」である。短時間勤務制度の設置が事業主に義務付けられたことは、仕事と育児の両立の可能性を広げるという点で大きな進展である。

 このような中、本稿では短時間勤務制度に注目し、同制度が子育て期の働く女性のワーク・ライフ・バランスにどのように寄与するのか、その役割と効果について考える。具体的にはまず、短時間勤務制度の現状について踏まえ、次いで、小学生以下の子どもをもち働いている女性に対するアンケート調査結果から、正社員として働いている女性の短時間勤務制度の利用実態および意識を紹介する。また、同制度を導入している企業における評価も取り上げる。これらをもとに、今回の法改正の目的に適うよう、今後、短時間勤務制度が両立支援策として定着するための課題を提示する。

2.短時間勤務制度の現状

(1)短時間勤務制度の導入・利用状況

 企業における短時間勤務制度の導入割合は、2005年度には31.4%であったが、2009年度には47.6%、2010年度には54.3%と上昇している(図表1)。短時間勤務制度が義務化された改正法の施行日は2010年6月30日であり、2010年の調査(10月1日現在)は義務化直後の企業の実態を示している。

 短時間勤務制度を導入している企業における利用者の状況をみると、女性の育児休業からの復職者の35.5%(2010年度)が同制度を利用している(図表省略)。2005年度の30.8%から約5ポイント増えており、利用者も増えていることがわかる(厚生労働省「平成22年度雇用均等基本調査」2011年)。

(2)短時間勤務制度の最長利用可能期間

 2010年10月1日現在において企業が導入している短時間勤務制度は、子どもが何歳まで利用できるものであるか。短時間勤務制度の最長利用可能期間の状況をみると、「3歳に達するまで」が最も多く61.7%、次いで「小学校就学の始期に達するまで」が22.1%となっている(図表2)。短時間勤務制度を導入している企業の約6割は「3歳に達するまで」であるが、3歳以上でも利用可能としている企業も約4割を占めている。

 このように短時間勤務制度は、法律で義務化される前から比較的導入率の高い制度であり、その利用者も増加傾向にある。他方、同制度の利用対象者についてみると、子どもが3歳に達するまでとしている企業が大半を占めている。こうした短時間勤務制度に対し、子育て期の働く母親及び企業はどのように認識しているのか。次に、短時間勤務制度に関するアンケート調査結果により、同制度の利用実態や評価などについて紹介する。

育児のための短時間勤務制度の現状と課題
(画像=第一生命経済研究所)
育児のための短時間勤務制度の現状と課題
(画像=第一生命経済研究所)

3.子育て期の働く母親に対するアンケート調査概要

(1)アンケート調査概要

 子育て期の働く母親に対するアンケート調査の概要は図表3の通りである。調査は株式会社クロス・マーケティングに委託して、インターネット調査により実施した。なお、子どもが複数の場合は、最年少の子どもについて回答してもらった。

 回答者の年齢は、20歳代が40人(5.0%)、30歳代が439人(54.9%)、40歳代が307人(38.4%)、50歳代が14人(1.8%)であり、30~49歳が9割以上を占めている。平均年齢は38.2歳(最年少21歳、最高齢55歳)であった。

育児のための短時間勤務制度の現状と課題
(画像=第一生命経済研究所)

(2)本稿の分析対象

 本調査では、次のような説明文をつけた上で、短時間勤務制度の認知状況をたずねた。「育児・介護休業法では、3歳未満の子どもがいる労働者について、労働者が希望すれば利用できる短時間勤務制度(1日原則6時間)を設けることが義務付けられています(ただし常時100人以下の労働者を雇用する事業主は2012年7月1日から義務付け)。あなたは、こうした短時間勤務制度をご存知ですか」というものである。

 その結果、就業形態別に「知っている」の回答割合をみると、正社員では72.0%、パートでは32.8%であった(図表省略)。そもそもパートとして働いている人は、正社員よりも勤務時間が短い場合が多く、短時間勤務制度を利用する必要性が低い*2。こうした事情が同制度の認知度の差に現れていると思われる。また、勤務時間の現状を踏まえると、正社員の方が短時間勤務制度に対する関心も高いと思われる。したがって本稿では以下、正社員に焦点を絞って分析を行うこととする。

4.短時間勤務制度の利用実態

(1)利用状況

 短時間勤務制度を「知っている」と回答した人を対象に、勤務先における短時間勤務制度の有無をたずねた結果をみると、「ある」と回答した人は76.7%であった(「ない」16.3%、「わからない」.9%)(図表省略)。以下では、勤務先に短時間勤務制度が「ある」と回答した人の利用実態や意識をみる。

 勤務先に短時間勤務制度が「ある」と回答した221人の利用状況については、「利用対象者であり利用している」が32.6%、「利用対象者であるが利用していない」が32.1%、「利用対象外なので利用できない」が34.4%であり、それぞれ約3割ずつとなっている(図表4)。

育児のための短時間勤務制度の現状と課題
(画像=第一生命経済研究所)

 「利用対象者であり利用している」と回答した人(以下「利用者」)について、子どもの年齢別構成割合をみると、0~2歳が51.4%、3~5歳が26.4%、小学1~3年生が18.1%、小学4~6年生が4.2%であり、子どもが3歳未満の人が半数以上を占めている(図表省略)。

 ちなみに、「利用対象者であるが利用していない」という人は、なぜ利用しないのか。「利用しない理由」を複数回答でたずねたところ、「収入が減るから」(35.2%)、「仕事内容・量が変わらないので短時間勤務ができないから」(29.6%)、「保育所や学童保育を利用できるので短時間勤務の必要がないから」(22.5%)といった理由が上位を占めた(図表省略)。短時間勤務の必要性がないということよりも、収入減や仕事内容及び量を理由とする回答が上回っている。

(2)利用評価

 利用者は、勤務先の短時間勤務制度に対し、どのような評価をしているか。

 まず、人事評価についての意識をみると、「就労時間が減った分の給与は減るが、人事評価は仕事内容に応じてなされている」と回答した人が半数以上を占めており、人事評価について前向きに捉えている人が多いようだ(図表5)。その一方、「就労時間が減った分の給与が減り、人事評価も通常勤務者と比べて低くなっている」と回答している人も約3割である。短時間勤務制度を利用したために、低い人事評価がなされているとの不満を持っている人も少なからずいることがわかる。

育児のための短時間勤務制度の現状と課題
(画像=第一生命経済研究所)

 また、短時間勤務制度の利用に関する意識として、「自分は短時間勤務でも、実際には職場の雰囲気で所定の時間に帰れないことがある」に肯定的な回答をした人(「あてはまる」と「どちらかといえばあてはまる」の合計、以下同様)が30.6%、否定的な回答をした人(「あてはまらない」と「どちらかといえばあてはまらない」の合計)が69.4%である(図表6)。その一方、「自分は短時間勤務でも、実際には業務量が多くて、あるいは業務の性質上、所定の時間に帰れないことがある」に肯定的な回答をした人は48.6%である。職場の雰囲気で所定の時間に帰れないという人は少数派であるものの、仕事の量や内容により所定の時間に帰れないという、同制度のいわば運用面での課題を指摘する人が約半数にのぼっている。

 他方、短時間勤務制度の利用者に、同制度を利用してよかった点をたずねたところ、「育児休業から復帰した後も正社員として仕事を続けられる」(75.0%)や「家事や子育てと両立をしながら正社員として働くことができる」(66.7%)と回答した人が7割前後である(図表7左側)。利用者の多くが継続就業ないし育児と仕事との両立ができるという点を評価していることがわかる。

育児のための短時間勤務制度の現状と課題
(画像=第一生命経済研究所)
育児のための短時間勤務制度の現状と課題
(画像=第一生命経済研究所)

5.短時間勤務制度の利用意向

(1)利用希望者の割合

 これまでは短時間勤務制度の「利用者」の利用状況をみてきたが、次に、利用していない人*3の利用意向をみる。

 短時間勤務制度の利用を希望するか否かをたずねた結果、「利用したい」(以下「利用希望者」)が35.0%、「利用したくない」が8.9%、「利用する必要がない」が56.0%であった(図表8)。こうした利用意向は、子どもの年齢によって大きく異なる。実際、子どもの年齢別に利用意向をみると、子どもが0~2歳の人は、サンプル数が少ないのであくまでも参考値であるが6割以上が「利用したい」と回答している。今回の法改正で短時間勤務制度が義務化された対象年齢は3歳未満であるが、やはりこの層の多くは同制度の利用意向が高いといえる。他方、子どもが3~5歳、及び小学1~3年生の人の約4割が「利用したい」と答えている。子どもが3歳未満の層には及ばないものの、3歳以上の人でも利用を希望している人は少なからずいることがうかがえる。

育児のための短時間勤務制度の現状と課題
(画像=第一生命経済研究所)

(2)子どもが何歳まで利用を希望するか

 前述したように、今回の法改正により義務化された短時間勤務制度では3歳未満の子どもがいる労働者を対象としており、また、短時間勤務制度を導入している企業の大半が、同制度の最長利用可能期間を「3歳に達するまで」としている(図表2)。実際、本調査においても、利用者の中で子どもが3歳未満の人が半数以上を占めていた。子どもの年齢が「3歳」を区切りとして利用を制限されることが多いのが同制度の現状のようである。他方、利用していない人の利用意向をみると、子どもが3歳以上の人でも「利用したい」と回答した人が少なからずいる。おそらく利用者の中にも、子どもが3歳を過ぎても利用を希望している人もいるのではないか。そこで、短時間勤務制度の利用にあたり、子どもが何歳になるまで利用したいと思っているかをみる。同制度の利用者、利用希望者ともに、子どもが小学校を過ぎても利用を希望している人が8割以上を占めている(図表9)。子どもが3歳を過ぎても多くの人が、短時間勤務制度を必要としていることがうかがえる。

育児のための短時間勤務制度の現状と課題
(画像=第一生命経済研究所)

(3)短時間勤務制度に期待すること

 次に、短時間勤務制度の利用希望者が、同制度にどのようなことを期待しているのかをみる。

 図表7の右側に、短時間勤務制度の利用希望者に対し、同制度に期待することをたずねた結果を示している。質問項目を、同制度の利用者に対してたずねた「利用してよかった点」についての項目と同じ構成にして、両者の比較ができるようにしている。結果をみると、利用者と同様、利用希望者においても、育児休業から復帰後の継続就業、及び子育てとの両立を短時間勤務制度に期待している人が多いことがわかる。

 一方、利用者に比べ、利用希望者の方が、「子どもの保育所や学童保育のお迎え時間が早くなる」や、「子どもの放課後が安心である」への回答割合が高い傾向がある。保育所や学童保育に迎えに行く時間が早くなる、ないし、子どもの放課後が安心できることを期待して、短時間勤務制度を利用したいと思っている人がいることが浮き彫りになった。

(4)子育ての負担や悩み

 ところで、同制度の利用者と利用希望者とでは、子育ての負担や悩みについて、どのような認識の違いがあるか。子育ての負担や悩みをたずねた結果をみると、利用者よりも利用希望者の方が、「子どもと過ごす時間が十分に作れない」「子どもの病気などのときに仕事を休みづらい」「子どもの学校行事などのときに仕事を休みづらい」「子どもの勉強を見てあげられない」といった項目への回答割合が高かった(図表10)。ただし、「自分の自由な時間が持てない」は利用希望者よりも利用者の方が回答割合が高い。これは利用者の方が子どもの年齢が低い人が多いことによるものと思われる。

 概して、利用者よりも利用希望者の方が、子どもと過ごす時間の確保など、子育てとの両立に関する悩みを抱えている人が多い。このような結果から、同制度の利用者が増えることによって、子育てとの両立に関する悩みを抱える人が減少する可能性があることが示唆される。

育児のための短時間勤務制度の現状と課題
(画像=第一生命経済研究所)

6.企業からみた短時間勤務制度の導入効果と問題点

(1)企業からみた導入効果

 これまでは働く母親の視点であったが、次は、人事部長に対してたずねた企業アンケート調査結果*4により企業の視点から短時間勤務制度をみる。

 まず、短時間勤務制度を導入している企業は、同制度の導入効果をどのように認識しているか。調査の結果、「女性が出産後も継続して働きやすくなる」が88.1%で第1位であった(図表11)。短時間勤務制度の効果について、多くの利用者が継続就業を挙げていたが、企業も同様であった。次いで「女性社員の勤労意欲の向上につながる」(54.1%)、「女性が働きやすい会社として社外にアピールができる」(40.4%)が続いている。ちなみに「その他」(自由記述)として、「効率的に働く姿をみて若手男性社員にとっても模範となりうる」との意見があった。同制度の効果は、女性社員のみでなく、男性社員にもおよぶという見方をしている企業もあるようだ。

育児のための短時間勤務制度の現状と課題
(画像=第一生命経済研究所)

(2)企業からみた導入にあたっての問題点

 また、企業アンケート調査により、短時間勤務制度の導入にあたっての問題点をたずねた結果をみると、「短時間勤務者の周りの従業員の業務負担が増えるので調整が難しい」への回答が77.1%で最も多く、次いで「人事評価が難しい」が42.2%、「短時間勤務制度が利用できる職種・部門が限られている」が39.4%である(図表12)。

育児のための短時間勤務制度の現状と課題
(画像=第一生命経済研究所)

 ちなみに、「その他」(自由記述)には、「短時間している者の評価が正しくされない」「<前略>正社員の時給が高いのはフルタイム勤務という労働条件があるからではないのか。休業、休職ならわかる。しかし、短時間勤務は他との就業形態と比べて、整理がつかないまま導入してしまったような気がする」といった意見があった。短時間勤務制度を人事評価や運用面でどのように整理をするのか。自由記述からも、こうした課題を認識している企業があることがわかる。他方、「賃金以外の労務コスト(福利厚生費用等)の負担が増える」への回答割合は1割以下と少ない。

 先に、利用者から「業務の量や性質上、所定の時間に帰れない」ことや、「短時間勤務制度を利用することで人事評価が下がる」など、同制度の運用面や人事評価に関する問題点が挙げられていることを示したが、企業も同じ認識のようである。業務量の調整などの運用面や、同制度の利用者の処遇、人事評価面における課題を解決し、利用を希望する人が利用しやすい制度にすることが必要である。

7.まとめ

(1)短時間勤務制度の効果と課題

 以上、調査結果から、短時間勤務制度の利用者の多くは、継続就業や、子育てとの両立のために同制度は有効であるとの認識であり、利用にあたりおおむね満足していることがわかった。企業側も、同制度の導入によって、女性社員の継続就業や子育てとの両立を可能とし、ひいては勤労意欲の向上や人材確保のための社外アピールにつながることなどが期待できるとしている。

 しかし他方、勤務先に導入されていなかったり、子どもの年齢によって利用が制限されているなど、利用したくても利用できない人も多い。現行法において、同制度は3歳未満の子どもをもつ労働者を対象としているが、3歳以上の子どもがいる人の利用ニーズも高いことも明らかとなった。また、同制度の利用者の中には人事評価でマイナスに働くことや、業務量や内容により所定の時間に帰れないことを挙げた人もいる。さらに企業側も、その多くが業務負担の調整や人事評価の難しさ、職種や部門が限定されるといった問題点を指摘している。

(2)短時間勤務制度の定着を図るために

 短時間勤務制度は、従業員の継続就業や子育てとの両立支援に寄与するものであり、ワーク・ライフ・バランスの実現のためにも広く定着を図ることが必要である。そのためには、まずは、現行法において定められている対象者の中で、業務内容や職種を問わず、同制度を利用したい人が利用できるような仕組みに整えることが肝要である。

 例えば、人事評価について、短時間勤務者が短縮された時間内でフルタイム勤務者と同じ成果を挙げた場合、短時間勤務者を高く評価するという企業や、短時間勤務者の周りの従業員の業務負担増への対応として周りの従業員の評価を加点する企業、あるいは代替要員を採用するという企業もある(厚生労働省「短時間正社員制度導入企業事例」http://tanjikan.mhlw.go.jp/detail/case/index.html )。このようなマネジメントの工夫により、同制度の利用者と非利用者のバランスを図り、業務分担や人事評価のあり方を整え、利用したい人が利用できるような制度にしていくことが必要である。

 このようにして同制度の社会的定着を図った上で、子どもが3歳以上の人でも利用希望者が少なくなかったことを考慮して、年齢制限のあり方を見直し、将来的には同制度の利用対象者をさらに広げる方向で制度が充実されることが望まれる。(提供:第一生命経済研究所

【注釈】
1 同制度は2010年6月30日施行された。なお、常時100人以下の労働者を雇用する事業主については2012年7月1日の施行である。
2 本調査により、就業形態別に1日の平均的な労働時間をたずねた結果をみると、正社員では「7時間以上」の回答者が約9割を占めるが、パートは「7時間未満」の回答者が約8割である。
3 本調査における利用していない人とは、短時間勤務制度を知らない(112人)、また、同制度を知っていても勤務先に同制度がない(47人)、わからない(20人)、さらに、同制度があっても利用対象外で利用できない(76人)、わからない(2人)と回答した人(合計257人)である。なお「利用対象者であるが利用していない人」(図表4)は除外している。
4 アンケート調査名は「企業における仕事と子育ての両立支援に関するアンケート」であり、同調査は全ての上場企業2,100社の人事部長に対し、2010年9月8日~10月1日に郵送により実施された(松田茂樹「企業における両立支援の転換期―進展、効果、課題、新たな方向性―」『Life Design Report』(Summer 2011.7)参照)。なお、回答企業すべてが従業員数101人以上であり、法律上、子育てのための短時間勤務制度を義務付けられていることになる。

研究開発室 主任研究員 的場 康子