前週末金曜日に発表された米雇用統計では、非農業部門雇用者数が市場予想20.0万人増に対して25.0万人増と非常に強い数字を弾き出し、平均時給においても、結果は市場予想通りだったものの9年半ぶりの水準になっており、労働市場の堅調さを改めて認識する内容になりました。今週の焦点としては、6日(日本時間7日)に予定されている米中間選挙です。既に上院は共和党、下院は民主党が優勢である旨は報道されていますが、トランプ政権が労働市場をここまで押し上げた功績を考えると、「ねじれ議会」になったとしても、重要法案を既に通過させている状況を考えると、株式市場が下落するなどの場合は、共和党の意見が反映されやすいとも考えられます。

ユーロについては、引き続きイタリアの予算案問題に加え、ドイツの政権不安が追加された状況に変わりありません。ただ、週末の報道として「欧州中央銀行(ECB)は新たな貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)を検討している」とのヘッドラインが出ており、新たなユーロ売りの材料が出てきています。ポンドについては、「合意なき離脱」が現実味を帯びてきたところから、週末には英サンデータイムズ紙が「北アイルランドのハードボーダー(厳格な国境管理)を避けるため、英国が関税同盟に残ることでメイ英首相に譲歩した」との報道が出るなど、ブレグジットの進展期待が徐々に強まってきています。ポンドについては、上窓を空けてのスタートになっており、余程のネガティブ報道がない限りはポンドの買い戻しが強まるのではないでしょうか。

米中貿易摩擦については、トランプ大統領は中国製品に追加関税をかける可能性がなくなったわけではないと述べており、対中制裁関税第4弾(約2,570億ドル規模)の可能性は払拭されたわけではないものの、トランプ大統領が「米国は貿易問題で中国と合意するだろう」などと述べており、中間選挙前のデモンストレーションかもしれませんが、目先は貿易摩擦は回避の方向で進んており、リスクオンの材料であると考えられそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

今週は、日本時間7日に行われる米中間選挙が最重要指標として意識されそうです。特に米中間選挙は投票率が低く、前回4年前の中間選挙の投票率は36.4%という数字になっています。前回の大統領選でトランプ大統領が勝利した要因の一つに投票率の低さが挙げられていましたが、今回もその追い風が吹く可能性は大いに考えられそうです。上院については、共和党51、民主党49と共和党が2議席差で多数派であり、民主党が多数派を奪還するのは、51議席(50対50の場合、副大統領が1票入れることになるため、50の場合は共和党が多数派を維持する)が必要になります。民主党は26議席を全部死守したとしても。さらに3議席を共和党から奪わないといけないため、上院が共和党有利と言われる所以はここにあります。逆に下院になると、共和党235対民主党193であり、42議席差もあるものの、トランプ政権が発足してからのジェネリックボート(2018年中間選挙に今日投票すればどちらの党の候補に投票するかというもの)では常に民主党が優勢になっており、本番でも同様の結果になると考えられています。

「ねじれ議会」になると、まず反応するのが株式市場です。過去を遡っても、まず株式市場が売られる動きになり易い傾向にあります。トランプ大統領が推し進めてきた方針で、NYダウは大きく上昇した経緯があるため、「ねじれ議会」になると、ネガティブインパクトは一層あるのではとの見方もありますが、税制改革案などの重要法案は既に通過させていることを考えると、ファーストアクションはリスク回避に傾く可能性はありますが、影響は限定的となり、その後は再度株価も立て直しつつドル買いに回帰する見通しです。

今週は米中間選挙に加え、FOMC政策金利発表も予定されています。市場コンセンサスでは2.25%に据え置き予想ですが、中間選挙の内容次第では金利の動向がさらに注目度を増すため、引き続き注目材料として意識されそうです。

中間選挙前で無理をする必要はないが、ポンド買いに妙味ありか

英サンデータイムズ紙が「北アイルランドのハードボーダー(厳格な国境管理)を避けるため、英国が関税同盟に残ることでメイ英首相に譲歩した」との報道でポンドは上窓スタートになりましたが、一部で英首相府はこの報道を憶測として否定したと報じられています。ただ、この報道でもポンド売りにならないことから、それ以上に進展期待が強まっており、今は正式な発表以外の報道は、ポンドによって有利な報道の方が市場は強く反応する傾向にあるようです。ポンドドル1.2950ドル下抜けを損切りラインとし、1.2990ドルでのポンド買い戦略。利食いは1.3080ドル付近を想定します。

海外時間からの流れ

米雇用統計を順調に消化し、米中貿易摩擦についてもポジティブな報道が続いています。ドルの焦点としては、やはり中間選挙ということになりそうです。ただ、中間選挙までは動きづらいと考えることもできるため、ドルの取引は中間選挙後、それまでは方向感の出ている通貨(今であればポンド)の取引を優先した方がプラスになるのではないでしょうか。

今日の予定

本日は、トルコ・10月消費者物価指数、英・10月サービス業PMI、米・10月ISM非製造業景況指数などの経済指標が予定されています。要人発言としては、デギンドス・ECB副総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。