保険の代理店が「外貨建て保険」を勧めるケースが増えている。多種多様な円建て保険があるにも関わらず、あえて為替リスクのある外貨建て保険を勧めるのはなぜなのか。外貨建て保険を検討する際は、その仕組みやリスクについて理解しておかなければならない。

保険代理店が外貨建て保険を勧める2つの理由

外貨建て保険,円建て保険
(画像=g-stockstudio/Shutterstock.com)

外貨建て保険に魅力がないわけではないが、勧める理由の中には以下のようなものもあることは知っておきたい。

円建ての貯蓄型保険を売りにくくなったから

低金利状態が続いている現在、円建て保険の返戻率(へんれいりつ=戻り率)はかなり低く、契約時の年齢や保険金額にもよるが、低いものでは1%前後、高いものでも4~5%前後しかない。この点、外貨建て保険の返戻率を算定する際はその国の金利が考慮されるため、円建て保険に比べて返戻率を高く設定できる場合が多い。返戻率を比較したときの「見栄え」がいいため、代理店としても外貨建て商品のほうが売りやすいのだ。

そもそも保険会社は預かった保険料を運用しており、金利が下がるとその運用益が減少するため、かつてのような高い返戻率を維持できなくなっているのだ。保険代理店でよく使われていた従来のセールストーク「銀行に預けるよりもお得」が通用しなくなっている。

また保険には、長期間キャッシュを拘束されるというデメリットもある。そのため現在は、以前ほど円建ての貯蓄型保険を売りにくくなっているのだ。

代理店手数料率が高いから

保険の手数料は、「保険料×手数料率」により算出されるが、一般に外貨建て保険は円建て保険に比べて手数料率が高い。同じくらいの保険料ならば、外貨建て保険を販売したほうが代理店にとっては得なのだ。

手数料に関する事情も、代理店が外貨建て保険を勧める理由の一つだろう。

外貨建て保険はリスクが高い?メリットとデメリットとは?

保険の代理店が上述のような理由から外貨建て保険を勧めたとして、加入を検討する価値が全くないのかというと、そうとも言い切れない。

3つのメリット……為替によっては受取額が増える ほか

外貨建て保険は満期保険金が外貨で設定されているため、以下のことが言える。
(1) 為替相場の状況によっては受取額が増える可能性がある。
(2) 円以外で資産形成をすることは、リスクの分散にもつながる。
(3) 保険料の割引率(予定利率)は海外の金利を考慮して算出されるため、これが日本の金利よりも高い場合は保険料が安く設定されることもある。

2つのデメリット……手数料次第ではマイナスになる ほか

外貨建て保険は「外貨」ベースで満期保険金を設定しているため、以下のケースが考えられる。
(1) 円高が進むと受取額が少なくなり元本割れを起こす可能性がある。
(2) 保険金の受取りにあたって外貨を円に替える際は手数料が発生するため、多少の為替差益はあるものの、手数料を考慮するとマイナスになってしまう。

外貨建て保険に向いている人・向いていない人

以下に該当する人は、外貨建て保険への加入を検討してみてもいいだろう。
・リスクについてしっかり理解し、それでも積極的な資産運用をしたい人
・海外赴任の予定があり、外貨を増やしておきたい人
・投資に充てる余裕資金がある人

逆に、以下に該当する人には、外貨建て保険はあまりおすすめできない。
・元本割れは絶対に回避したい人
・投資のリスクや外貨建て保険の仕組みについてまだ理解できていない人
・余裕資金がない人
・子供の学費など、将来絶対に必要になるお金を保険で貯めようとしている人

外貨建て保険は「投資性の強い」生命保険であり、一定のリスクが伴う。そのため「返戻率が高いから」という点だけでなく、為替リスクなどについてもしっかり考慮したうえで検討することだ。

文・曽我部三代(保険業界に強いファイナンシャルプランナー)/MONEY TIMES

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