前日については、米中間選挙を控え様子見ムードが広がるなか、イタリアが予算案を修正しなければ、欧州委員会は21日の会合で制裁措置に乗り出す可能性が高いとの一部報道を受け、ユーロドルは1.1350ドル台まで急落したものの、モスコビシ欧州委員が「21日にイタリアへ制裁を科すという報道はフェイクニュース」との発言を行い、1.1400ドルを回復する動きとなりました。ユーロについては、イタリアの予算案問題がクリアになってくるまでは、このようなヘッドラインに一喜一憂するマーケットになりそうです。

ユーロと正反対に、ポンドは非常に堅調な推移を維持しています。英サンデータイムズ紙が「英国のEU離脱を巡る交渉で、アイルランド国境問題を含めて合意が近い」と報じたことで、合意締結期待からポンド買いが入りやすい地合いになっており、ポンドドルは1.3000ドルを回復しています。また、本日早朝にアイルランドを巡る国境問題に関して「欧州連合(EU)側が英国に妥協案を準備している」との一部英紙の報道がさらなるポンド買いを誘発し、1.3060ドル台まで続伸しています。

ポンド以上に、堅調な推移を見せているのがトルコリラです。米国がトルコのソイル内務大臣とギュル法務大臣への制裁を解除したことをきっかけに、トルコリラの上昇が強まりましたが、米国が5日に発動したイラン産原油の禁輸などエネルギー分野を対象とした経済制裁の制裁除外国にトルコが指定されたことで、米国とトルコの関係改善がより確実なものになったとの判断から買い安心感が出ているのかもしれません。トルコリラ円については、21.30円付近まで上昇しており、もう一段高も十分考えられます。

◆今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

いよいよ、明日米中間選挙の投開票が行われます。メインシナリオとしては、共和党が上院で過半数を維持し、民主党が下院で過半数を奪還するケースです。ただ、このケースに関しては既にマーケットでは織り込まれている可能性が高く、為替に対する影響は限定的となりそうです。一方、市場に大きな影響を与える可能性があるのは、共和党が上下両院で過半数を維持するか、過半数を失うパターンが考えられます。

共和党が上下両院で過半数を維持する場合は追加減税等の政策に対する期待からリスクオンとなり、株価上昇に繋がりやすいでしょう。この場合は、ドル円を筆頭にクロス円が上値を拡大するものと考えられます。ただ、リスクオンの地合いではあるものの、ドル買いが強まることが想定されるため、エマージング通貨については売られる可能性がありそうです。最後のシナリオとしては、 共和党が上下両院で過半数を失う場合です。この場合は、リスクオフとなり、株価は下落、ドル円などのクロス円は下落する見通しです。また、このケースはあまり想定されていないこともあり、マーケットへの影響は非常に大きなものになりそうです。この場合は、エマージング通貨は対ドルで買われやすい状況にはなりますが、株安から上値は重く、今回の中間選挙イベントはエマージング通貨については、「辛抱」のイベントになりそうです。

上記シナリオの影響度合いとしては、上院共和党、下院民主党の場合はドル円は112.00~114.50、上院下院共和党の場合は、113.50~115.50、上院下院民主党の場合は110.00~112.00円がコアレンジとなる動きを想定しています。

◆ポンドロングは一旦利食い、本日は中間選挙前で様子見

前日の東京時間にて唯一方向感の出ていたポンドですが1.2990ドルでのポンドドルの買い戦略は、綺麗にワークしました。1.3080ドル付近での利食いが理想ではありましたが、1.3060ドルで一旦は手仕舞です。明日に中間選挙を控えており、本日の海外時間は動意薄な展開が予想されます。大きな動きになりずらいため、狭いレンジでのジョビング(スキャルピング)取引が本日は機能しそうです。もしくは、ユーロドルが1.1450ドル付近まで戻りがあればショート戦略でも面白いかもしれません。

◆海外時間からの流れ

米中間選挙前で様子見地合いが強まってはいましたが、米国との関係改善が如実に出ているトルコリラ買い、ブレグジット進展が期待されているポンド買いが突出して目立つマーケットになりました。中間選挙次第では、株価に大きく影響を与えることもあり、本日についてはこの2通貨の動きも限定的になりそうです。本日マーケットを動かす材料が出てくるとすれば、ユーロのネガティブヘッドラインのみではないでしょうか。

◆今日の予定

本日は、ユーロ圏・10月サービス業PMI(確報値)、ユーロ圏・9月生産者物価指数(前月比/前年比)、米・9月JOLT労働調査などの経済指標が予定されています。要人発言としては、プラート・ECB専務理事、ラウテンシュレーガー・ECB専務理事の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。