第一生命保険株式会社(社長 渡邉 光一郎)のシンクタンク、株式会社第一生命経済研究所(社長 長谷川 公敏)では、全国の18~69 歳の男女3,000 名を対象に、「今後の生活に関するアンケート」(今回で7回目)を実施し、その結果を『ライフデザイン白書2011』(監修 加藤寛)としてまとめ、12 月12 日に刊行いたしました。
今回、調査結果の中からいくつかのポイントをまとめましたのでご報告いたします。
≪調査結果のポイント≫
【第1章 家族】親子関係 ●過去15年間で、父母とも、子どもと余暇や休日を一緒に楽しむ割合は高まっている。
【第1章 家族】子どもの教育上の悩み ●「将来の進路」「教育に対する経済的負担」「学校卒業後の就職」の悩みが増加している。
【第2章 地域社会】近所づきあいの変化 ●以前は深いつきあいがみられた郡部でも、近所づきあいが希薄化する傾向にある。
【第2章 地域社会】近所にいるさまざまなつきあいをする人 ●郵便や宅配便などをあずかってくれる人は全ての都市規模で大きく減少している。
【第3章 就労】仕事と家庭の両立についての悩み① ●最も多い悩みは「子どもや家族が病気になったときに、休みを取りにくい」23.9%。
【第3章 就労】仕事と家庭の両立についての悩み② ●男性はライフステージによって悩みに違いあり。 女性は全ライフステージを通じて「休みにくい」の割合が高い。
【第4章 消費】こづかい額 ●男性のこづかい額が大幅に減らされている。
【第4章 消費】消費と環境に対する考え方 ●「お金をかけなくても得られる満足感は多いと思う」と回答した人は75.5%と多い。
【第5章 健康】健康のために心がけていること ●「タバコを吸いすぎない・吸わない」の割合が30.2%と、1999 年調査に比べて高い。
【第5章 健康】家庭内での負担感 ●家庭内で女性に負荷がかかっている。 特に働く女性への負担はかなり大きく、男性との間に大きな開きがある。
【第6章 高齢期の生活】介護に関する問題点① ●介護時に困ったこと「自分の自由な時間がなくなる」50.5%、「経済的負担が大きい」38.2%。
【第6章 高齢期の生活】介護に関する問題点② ●介護サービスへの不安は全体的に若干減ったが、大幅には改善されていない。
【第7章 人生設計・リスクマネジメント】高齢期に一人になったときの望ましい居住形態 ●「子どもに関係なく、一人で暮らす」と答えた人が増加。一方、「子どもと同居する」「二世代住宅等に住む」と答えた人の割合は、減少傾向。
【第7章 人生設計・リスクマネジメント】人生設計を行わない理由 ●人生設計を行わない理由で多いのは、「現在の生活だけで精一杯だから」61.8%、「将来のことを考えても、しょうがないから」26.4%。
≪今後の生活に関するアンケートの概要≫
本調査は、当研究所が実施してきた生活定点調査であり、人々の生活実態と意識について、一部ではありますが時系列で把握できるように設計されたものです。調査はこれまでに1995 年、97 年、99 年、2001 年、03 年、05 年において実施し、今回は第7 回目となります。今回の調査方法は過去の調査と同様で、その概要は下記の通りです。
【第1章 家族】親子関係
過去15年間で、父母とも、子どもと余暇や休日を一緒に楽しむ割合は高まっている。
「第1章 家族」からは、まず親子関係の推移を取り上げます。「子どもとはよく会話をしている」「子どもと余暇や休日を一緒に楽しんでいる」「子どもの相談事は、いつも真剣に聞いている」「子どもに頼りにされている」の各項目について、父親と母親にそれぞれ4段階でたずねました。
そのうち「あてはまる」と「どちらかといえばあてはまる」の割合を示したのが図表1です。これらの項目の中で、「子どもと余暇や休日を一緒に楽しんでいる」について注目しました。父親では53.5%(1995 年)から68.4%(2010 年)へ約15%、母親は68.9%(1995年)から81.7%(2010 年)へ約13%、それぞれ増加しています。この15 年間で、父母とも、子どもと余暇や休日を一緒に楽しむ割合が高まっています。
【第1章 家族】子どもの教育上の悩み
「将来の進路」「教育に対する経済的負担」「学校卒業後の就職」の悩みが増加している。
次に親にとっての子どもの教育上の悩みをたずねました。1995 年からの推移をまとめたものが図表2です。2010 年調査では、「将来の進路」をあげた割合が52.6%で最も高く、以下、「健康」「教育に対する経済的負担」などが続いています。時系列でみると、上位5項目は、近年ほど悩みとしてあげる割合が高くなってきています。
「将来の進路」や「学校卒業後の就職」の悩みが増加する背景に、若い世代の雇用が悪化し、安定した職につくことができる人が減少していることが影響していると思われます。また子どもの教育費の負担の高まりが、親にとって「教育に対する経済的負担」に対する悩みを増やすことにつながっています。
【第2章 地域社会】近所づきあいの変化
以前は深いつきあいがみられた郡部でも、近所づきあいが希薄化する傾向にある。
「第2章 地域社会」からは、近所づきあいを取り上げます。近所づきあいの程度をたずねたところ「あいさつをする程度」の人が最も多く、1999 年から増加していました(図表3-1)。「親しくつきあっている」人は24.7%にとどまり、1999 年(31.6%)よりも減少しています。
1999 年から2010 年にかけて、いずれの都市規模でも「親しくつきあっている」人は減少し、「あいさつをする程度」の人が増加しています(図表3-2)。特に郡部では、「親しくつきあっている」が45.5%から33.0%に減少しています。大都市や中都市に比べると、小都市や郡部の方が「親しくつきあっている」人は多いのですが、郡部でも近所づきあいは十分とはいえない状況です。この背景には、郡部をはじめとした地方での高齢化や過疎化の進行により、近所づきあいがしづらくなっているためと考えられます。
【第2章 地域社会】近所にいるさまざまなつきあいをする人
郵便や宅配便などをあずかってくれる人は全ての都市規模で大きく減少している。
次に、つきあいの内容別に近所の人とのつきあいをみると、「世間話をする人」(52.3%)が最も多く、1999 年からほとんど変化がありませんでした(図表4-1)。1999 年から2010年の間には、「郵便や宅配便などをあずかってくれる人」(48.1%→23.7%)や「一緒に遊びやレジャーなどを楽しむ人」(29.1%→20.1%)の減少が目立ちます。
続いて都市規模別にみてみると、「世間話をする人」がいる割合は、都市規模別で変化はみられませんでしたが、「郵便や宅配便などをあずかってくれる人」は、すべての都市規模で減少していました(図表4-2)。「何かあったときに相談できる人・頼れる人」は郡部(48.4%→39.9%)のみで大きく減少しています。従来は近所づきあいが形成されていた郡部において、近所づきあいが希薄化しています。
【第3章 就労】仕事と家庭の両立についての悩み①
最も多い悩みは「子どもや家族が病気になったときに、休みを取りにくい」23.9%。
「第3章 就労」からは、仕事と家庭の両立についての悩みを取り上げます。仕事と家庭の両立についての悩みをたずねたところ「上記のようなことはない」、すなわち事実上「悩みなし」という回答が半数以上を占めていました(図表5)。
具体的な悩みの中で、最も多い悩みは「子どもや家族が病気になったときに、休みを取りにくい」でした。ついで「仕事のために自己啓発や勉強が後回しになる」と「子どもの遊び相手をしたり、勉強をみる時間がない」が同率でした。「子育て」「自己啓発」「家族」のための時間等、両立の悩みは人によって様々です。
【第3章 就労】仕事と家庭の両立についての悩み②
男性はライフステージによって悩みに違いあり。女性は全ライフステージを通じて「休みにくい」の割合が高い。
続いて図表5の項目のうち「子どもや家族が病気になったときに、休みを取りにくい」(以下「休みにくい」)と「仕事のための自己啓発や勉強が後回しになる」(以下「自己啓発が後回し」)について、性・ライフステージ別にみてみました(図表6)。
男性はライフステージによって悩みに違いがみられました。末子が未就学から末子が小・中学生までの子どもが小さい間は、「休みにくい」の回答割合が6割前後と高くなっていました。その回答割合は女性よりも高く、男性の方が休みにくさを強く感じています。
また独身(39 歳以下)、夫婦のみ(39 歳以下)、子どものいない人(40 歳以上)は「自己啓発が後回し」が約4割を占めています。男性の場合は、それぞれの立場によって悩みが多様化していることがうかがえます。
女性は子どものいない人(40 歳以上)を除き、全ライフステージを通じて「休みにくい」の回答割合が高く、5割前後となっています。
【第4章 消費】こづかい額
男性のこづかい額が大幅に減らされている。
「第4章 消費」からは、こづかい額を取り上げます。実際に毎月自分のこづかいとして自由に使えるお金はいくら程度なのかについてたずねました。その結果、平均で月額2.9万円となっており、2001 年調査の3.1 万円より下がっていました(図表7)。
性別にみると、女性では2001 年調査と変わらず2.2 万円だったのに対し、男性のこづかい額が4.1 万円から3.7 万円に減少しており、男性のこづかい額が大幅に減らされた様子がよくわかります。飲みに行く頻度が減ったなど、会社帰りの「おつきあい」の減少が指摘される今日、その背景にはふところ事情が大きく影響しているようです。こづかい額が最も多かったのは60 代の男性で、4.1 万円となっていました。女性は、子育ての時期あたりに大きくこづかい額が減少するようです。
【第4章 消費】消費と環境に対する考え方
「お金をかけなくても得られる満足感は多いと思う」と回答した人は75.5%と多い。
続いて消費と環境に対する考え方についてみてみました。「お金をかけなくても得られる満足感は多いと思う」と回答した人が多く、「あてはまる」(「あてはまる」と「どちらかといえばあてはまる」の合計、以下同じ)の割合は75.5%を占めています(図表8)。また、「高くても、良質で長く使えるモノを選ぶ」や「エコロジーや環境保護、リサイクルについて、日常的に意識している」とする人も7割近くを占めています。
一方、「あてはまる」とした人が少なかったのは「あまり使わないものはレンタルしている」で、17.7%となっていました。
【第5章 健康】健康のために心がけていること
「タバコを吸いすぎない・吸わない」の割合が30.2%と、1999 年調査に比べて高い。
「第5章 健康」からは、健康のために心がけていることを取り上げます。健康のために心がけていることとしては、「睡眠や休暇を十分とる」「栄養や食事内容に気をつけて食事をとる」と回答した人が4割を超えており、「睡眠、食事」が健康維持の二大ポイントだといえます(図表9)。
年代別でみると、60 代の回答率は男女ともに高いのですが、30 代以下では回答率の低い項目が多くなっています。なかでも男性の40 代以下では、「特に何もしていない」人が2割程度おり、若い世代では健康に対する意識が低い様子がうかがえます。
1999 年と比較すると、「タバコを吸いすぎない・吸わない」「お酒を飲みすぎない・飲まない」と回答した人が大きく増加しています。
【第5章 健康】家庭内での負担感
家庭内で女性に負荷がかかっている。特に働く女性への負担はかなり大きく、男性との間に大きな開きがある。
次に家庭内での負担感についてきいてみました。家庭内での負担が大きすぎると感じている人(「よくある」「時々ある」の合計)は、女性が男性を17.6 ポイントも上回っており、男女で大きな差があります(図表10)。
負担が大きすぎると感じている人の割合は、特に共働き家庭の女性で半分近くにのぼり、専業主婦家庭の女性を16.4 ポイントも上回っています。一方、男性では妻の就労形態でそれほど差がなく、共働き家庭では、男女で30 ポイント近い差があります。
【第6章 高齢期の生活】介護に関する問題点①
介護時に困ったこと、「自分の自由な時間がなくなる」50.5%、「経済的負担が大きい」38.2%。
「第6章 高齢期の生活」からは、介護に関する問題点を取り上げます。介護経験のある人が介護時に困ったこととしては、「自分の自由な時間がなくなる」「経済的負担が大きい」など、時間やお金の面での負担があげられています(図表11)。
介護保険が導入されて間もない頃(2001 年)と比較すると、「福祉サービスの量が少ない」以外の困ったことの割合はやや減少しました。
【第6章 高齢期の生活】介護に関する問題点②
介護サービスへの不安は全体的に若干減ったが、大幅には改善されていない。
次に介護サービスへの不安をたずねました。介護サービスに対する不安で最も多いのは、「サービスの利用料が高そうである」(47.9%)というお金の面での不安です(図表12)。
そのほか、「満足のいくサービスが受けられるか不安である」(42.5%)、「利用の手続きが複雑で分かりにくそうで不安がある」(32.4%)、「ホームヘルパーなど外部の人が家庭に入ることに抵抗感がある」(31.2%)もあげられています。
2001 年と2010 年を比べると、上位3項目ではわずかに割合が減少しています。介護保険が始まって10 年が過ぎ、介護に関して困ることや不安なことは若干減っていますが、大幅には改善されていないといえます。
【第7章 人生設計・リスクマネジメント】高齢期に一人になったときの望ましい居住形態
「子どもに関係なく、一人で暮らす」と答えた人が増加。一方、「子どもと同居する」「二世代住宅等に住む」と答えた人の割合は、減少傾向。
「第7章 人生設計・リスクマネジメント」からは、高齢期に一人になったときの居住形態を取り上げます。高齢期に一人になったときの望ましい居住形態をたずねた結果、「子どもに関係なく、一人で暮らす」と答えた人は2010 年調査において3割近くを占めており、「子どもと同居する」(8.8%)や「子どもと同じ敷地内の二世代住宅等に住む」(7.3%)、「子どもの近隣に住む」(12.2%)と答えた人をいずれも大きく上回っています(図表13)。「子どもと同居する」「子どもと同じ敷地内の二世代住宅等に住む」と答えた人の割合は、減少傾向にあります。一方で、近年では、「老人ホーム等の施設に入る」と答えた人が増加傾向にあります。高齢期に子どもと同居、あるいは近居したいと考える傾向は、弱まっていると考えられます。
【第7章 人生設計・リスクマネジメント】人生設計を行わない理由
人生設計を行わない理由で多いのは、「現在の生活だけで精一杯だから」61.8%、「将来のことを考えても、しょうがないから」26.4%。
次に人生設計を行わない理由を取り上げます。人生設計について「気にはしているがあまり考えていない」または「まったく考えていない」と答えた人について、人生設計を行わない理由についてたずねました。2010 年調査で最も多かったのは「現在の生活だけで精一杯だから」(61.8%)という理由であり、「将来のことを考えても、しょうがないから」(26.4%)、「何をしていいかわからないから」(23.8%)をあげる人がこれに続いています(図表14)。
過去と比較してみると、これらの上位3項目の順位には変化がみられない一方で、「将来のことを考えても、しょうがないから」や「何をしていいのかわからないから」と答えた人の割合が2001 年に比べて微増傾向にあります。不透明な社会経済状況が続く中で、将来のことを考える意欲を失っている人や、自らの人生をどのように設計したらよいのかわからないと感じている人が増えているようです。(提供:第一生命経済研究所)
≪新刊書籍のご案内≫
【編:第一生命経済研究所】『ライフデザイン白書2011』表とグラフでみる日本人の生活と意識の変化
『ライフデザイン白書2011』(編:第一生命経済研究所、発行:ぎょうせい)を刊行しました。本書は、第一生命経済研究所が独自に実施している全国規模のアンケート調査をもとに、生活者の視点で生涯設計を考え、人々の生活実態や生活意識を時系列で分析したものです。2006 年まで隔年で計6回刊行していましたが、読者の方からの強い要望により5年ぶりに発行しました。今回は図表を多く取り入れて用語解説を加えるなど、よりわかりやすく見やすい内容にしております。
研究者、大学生のみならず、中高生における社会科・家庭科・ライフデザイン学科の学習教材としても最適な資料集です。皆さまの生活に役立つ内容が盛り込まれていますので、ぜひご一読願います。
㈱第一生命経済研究所 ライフデザイン研究本部 研究開発室 広報担当(田代・新井) TEL.03-5221-4771 FAX.03-3212-4470 【アドレス】http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi