第一生命保険株式会社(社長 渡邉 光一郎)のシンクタンク、株式会社第一生命経済研究所(社長 長谷川 公敏)では、全国に居住する20~60代の会社員900 名を対象に、標記についてのアンケート調査を実施いたしました。

 この程、その調査結果がまとまりましたのでご報告いたします。

≪調査結果のポイント≫

現在の会社でずっと働きたいと思っているか
●女性管理職は男性管理職よりも「働きたい」とする人が多い。

現在の仕事に満足しているか
●女性管理職は現在の仕事への満足度が高い。

職場の雰囲気
●女性管理職は職場の雰囲気の現状について肯定的な意見が多い。

職場でのコミュニケーション
●女性管理職は職場でのコミュニケーションについて肯定的な意見が多い。

職場における性別についての意識
●男性管理職の64%はセクハラに配慮、女性管理職では32%。

職場の人間関係についての意識と現状
●女性管理職は「気配り」への意識が強い。女性一般職は考え方がドライ。

職場における各種ストレスの度合い
●人間関係や組織風土に関するストレスは女性一般職で最も高い。

職場における飲み会の必要性と楽しさ
●「職場に必要」53.4%、「参加が楽しい」66.2%、特に女性管理職は楽しいとする人が多い。

会社組織に対する考え方と実態
●女性管理職は組織に対する考え方が肯定的・好意的である。

会社外の人や友人・知人、地域のネットワーク
●管理職や高年代の人、子どものいる人で社外ネットワークが広い。

性別と管理職・一般職のギャップ
●「上司が女性」だとコミュニケーションが難しいと感じる一般職が多い

≪調査実施の背景≫

 2008 年3 月、政府の男女共同参画会議がまとめた「第2次男女共同参画基本計画」では、2020 年までに管理職などの指導的立場にある女性の割合を30%程度にするとの目標が設置されました。既にノルウェーでは2008 年に「株式上場会社は2008 年から、国営会社は2004 年から、その取締役会に両ジェンダーが少なくとも40%いなければならない」(会社法6条―11a)とした法律(取締役クオータ制)が施行されており、女性管理職の割合が高くなっています。このように、女性が企業の管理職や役員として活動することは、国際的な流れとなっています。

 日本においても、女性が企業に(同一企業とは限らなくとも)長期間在籍することで女性長期賃金労働者、すなわちキャリア女性が増加し、女性が管理職や役員に昇進するというライフコースはこれからますます拡大していくと考えられます。しかし従来型の雇用システムやモデルは、男性仕様となっている点は否めません。男性において雇用者に占める正社員の割合は8割であるのに対し、女性の正社員割合は約45%にとどまっており、パートやアルバイト、派遣社員や契約社員、嘱託職員など、非正規が過半数を占めているなど、女性の働き方は非常に多様となっています。また、女性の場合、未既婚の別や子どもの有無などのライフスタイルが仕事に及ぼす影響が、まだまだ男性に比べて大きいのが現状です。

 こうした中で、今後、女性管理職が増加していくにあたり、大きな課題として考えられるのが社内でのコミュニケーションとネットワーク形成です。現在の女性管理職自身が社内でのコミュニケーションをどのように感じているかに関するデータは多くありません。そこで今回、ネット調査の特性を活かし、女性管理職サンプルを300 名確保し、男性管理職200 名、一般職員男性200 名、一般職員女性200 名との比較を行うことで、現代の女性管理職が社内でのコミュニケーションやネットワーク形成においてどのような状況下にあり、周囲からどのようにとらえられているのかについて探りました。

* なお、本稿では「管理職」を課長職以上とし、それ以外の職員(正社員)を「一般職」と表記しています。

* また、図表中で「職位」として比較しているものは、本稿で扱う「管理職」か「一般職」かをさしています。

≪調査の実施概要≫

1.調査地域と対象  全国の企業に勤める20~60 代の男女正社員900 名

2.サンプル  インターネット調査会社である株式会社クロス・マー ケティングのモニター 900 名

20~60 代の男女管理職・一般社員900 名に聞いた 『女性管理職と職場コミュニケーション』
(画像=第一生命経済研究所)

3.調査方法  インターネット調査(株式会社クロス・マーケティングに委託)

4.実施時期  2010 年9月調査(9月27~28 日)

5.回答者の属性

20~60 代の男女管理職・一般社員900 名に聞いた 『女性管理職と職場コミュニケーション』
(画像=第一生命経済研究所)

現在の会社でずっと働きたいと思っているか

女性管理職は男性管理職よりも「働きたい」とする人が多い
年代が高いほど「ずっと働きたい」が多いが、20 代でも過半数が希望

20~60 代の男女管理職・一般社員900 名に聞いた 『女性管理職と職場コミュニケーション』
(画像=第一生命経済研究所)

 「現在の会社でずっと働きたいと思っているか」についてたずねたところ、女性管理職の42.3%が「働きたい」と回答しました。これに「どちらかといえば働きたい」をあわせると(以下「働きたい」と表記)、8割が「働きたい」と考えていることになります。

 これに対し、男性一般職は「働きたい」とする割合が63.5%、女性一般職では64.0%となっていました。

 年代別にみると、定年を目の前にした「50-59 歳」で82.2%と「働きたい」とする人が他の年代に比べて多くなっていました。ただし、20 代でも56.4%は「ずっと働きたい」と考えています。

現在の仕事に満足しているか

女性管理職は現在の仕事への満足度が高い
年代別にみると、40 代の満足度が最も高く、20 代が低い

20~60 代の男女管理職・一般社員900 名に聞いた 『女性管理職と職場コミュニケーション』
(画像=第一生命経済研究所)

 現在の仕事に対する満足度をたずねたところ、最も高かったのは女性管理職で、「非常に満足している」が17.7%となっており、「まあ満足している」をあわせると81.4%が「満足している」と回答しています。これに男性管理職の満足度(「まあ満足している」と「満足している」の合計、以下同じ)が75.5%で続いています。

 一方、一般職についてみると、男性一般職では満足度が59.0%、女性一般職で64.5%となっていました。

 年代別にみると、40 代での満足度が74.1%で最も高く、最も低かったのは20 代の63.0%でした。

職場の雰囲気

女性管理職は職場の雰囲気の現状について肯定的な意見が多い
男性一般職は温かみや信頼感への評価が低く、成果主義や競争への意識が他の属性より高い

20~60 代の男女管理職・一般社員900 名に聞いた 『女性管理職と職場コミュニケーション』
(画像=第一生命経済研究所)

 職場の雰囲気についてたずねたところ、性別や職位の違いによって、回答に大きくばらつきあることがわかりました。特に差が大きかったのは「管理者と部下の人間関係は、温かみや信頼感がある」で、管理職(特に女性)では「あてはまる」(「非常にあてはまる」と「まああてはまる」の合計、以下同じ)とした人が7~8割近くを占めたのに対し、一般職(特に男性)では6割前後にとどまりました。

 また、「わきあいあいと、にぎやかで活発な雰囲気がある」については、女性(特に管理職)で「あてはまる」とした人が多かったのに対し、男性は半数強でした。

 全体的にみて、女性管理職は職場の雰囲気の現状について肯定的な意見が多いのに対し、男性一般職は温かみや信頼感への評価が低く、他の属性に比べて成果主義や競争への意識が高い傾向が認められました。

職場でのコミュニケーション

女性管理職は職場でのコミュニケーションついて肯定的な意見が多い
対人関係問題は男女とも一般職で多い

20~60 代の男女管理職・一般社員900 名に聞いた 『女性管理職と職場コミュニケーション』
(画像=第一生命経済研究所)

 職場でのコミュニケーションについてみると、「お互いの状況をある程度把握しているなど、相互理解が図れている」「社員のチームワークがよい」について、女性管理職の回答が突出しているなど、職場でのコミュニケーションに肯定的な意見が目立ちます。

 一方で、女性一般職では「社員のチームワークがよい」や「飲み会などの付き合いや会合がよくある」「事前のアポイントなく『今日飲みに行こう』という飲み会に参加している」などの割合が他の属性に比べて低くなっています。「職場内での対人関係問題がある」とする割合は管理職より一般職で多く、特に女性一般職の23.0%が「ある」と回答していました。

 男女の差異も興味深いところですが、女性において管理職と一般職で意識に大きな違いがあることが明らかとなりました。

職場における性別についての意識

男性管理職の64%はセクハラに配慮、女性管理職では32%
職場における「女性」の位置づけは属性によってバラバラ

20~60 代の男女管理職・一般社員900 名に聞いた 『女性管理職と職場コミュニケーション』
(画像=第一生命経済研究所)

 職場においてどのような点で性別を意識しているかについてたずねたところ、最も目立ったのは男性管理職における「自分はセクハラについて、常に気を配っている」で、64.0%を占めました。これについては、男性一般職が51.0%で続いています。女性管理職では32.0%、女性一般職では22.5%と、女性管理職でも3割以上がセクハラについ て気を配っていると回答しました。

 また、大きな差が見られたのが「自分は異性と仕事をするより、同性と仕事をするほうが楽である」についてです。男性管理職の44.5%、男性一般職の42.0%が肯定しています。

 その他、「自分の職場では、女性よりも男性のほうが何かと有利だと思う」「自分の職場では、女性は男性よりも対外的に甘くみられがちだと思う」「自分の職場では、男性より女性のほうが考え方に柔軟性があると思う」「自分の職場では、男性は女性を『女の子』『女子』と見ていると思うことがある」などについても、興味深い結果が得られました。

職場の人間関係についての意識と現状

女性管理職は「気配り」への意識が強い
女性一般職は「職場は仕事場と割り切る」「理解より衝突しない」「業務時間外の付き合いしたくない」など、意識がドライ

20~60 代の男女管理職・一般社員900 名に聞いた 『女性管理職と職場コミュニケーション』
(画像=第一生命経済研究所)

 女性管理職では「職場の人たちには、何かと気配りするように心がけている」「業務を円滑に進める上で、タイプの合わない人ともうまく付き合うべきだと思う」が他の属性に比べて高く、周囲との調和を意識している様子が目立ちます。一方で、女性の一般職では「職場での人間関係は、深入りしすぎないほうがよいと思う」「職場はあくまで仕事をする場所と割り切っている」「職場では『理解しあうこと』より『衝突しないこと』のほうが重要だと思う」などが目立ち、意識においてドライな面がうかがえました。

職場における各種ストレスの度合い

人間関係や組織風土に関するストレスは女性一般職で最も高い
昇進や地位に関するストレスが男性で女性より高い

20~60 代の男女管理職・一般社員900 名に聞いた 『女性管理職と職場コミュニケーション』
(画像=第一生命経済研究所)

 職場におけるいろいろなストレスについてそれぞれみたところ、最も差が顕著だったのは「昇進や地位に関するストレス」で、男性管理職では「ある」とした割合(「非常にある」と「まあある」の合計、以下同じ)が50.0%、男性一般職では54.0%だったのに対し、女性管理職では40.7%、女性一般職では35.0%となっており、男性は女性より高いことがわかりました。

 一方、女性で多かったものについてみると、特に女性一般職で「仕事の内容や仕事の量など、仕事に関するストレス」「職場の人間関係に関するストレス」「職場の方針ややり方など、組織構造や組織風土に関するストレス」などが他の属性より多くなっていました。女性管理職については、特に大きく目立った傾向は見られませんでしたが、「家族や自分自身など、プライベートな生活に関するストレス」や「ワークライフバランスに関するストレス」は他の属性、特に男性に比べると多い傾向があります。これについて、特に女性管理職だけで比較すると、子どもがいる人で特にこれら2つのストレスが高くなる傾向があります(図表省略)。



職場における飲み会の必要性と楽しさ

職場に「必要」と考える人53.4%、参加が「楽しい」と考える人66.2%
特に女性管理職は「楽しい」とする割合が73%と高い

20~60 代の男女管理職・一般社員900 名に聞いた 『女性管理職と職場コミュニケーション』
(画像=第一生命経済研究所)

 職場の飲み会について、「職場において必要だと思うし、参加するのが楽しい」「職場において必要だとは思うが、参加するのは楽しくない」「職場において必ずしも必要だと思わないが、参加するのは楽しい」「職場において必ずしも必要だと思わないし、参加するのも楽しくない」の4択で答えてもらい、「必要か否か」「楽しいか否か」を調べました。その結果、全体としては、「必要」と考える人が53.4%、「楽しい」と考える人が66.2%であるという結果を得ました。

 性・職位別にみると、「必要」という回答が最も多かったのは男性管理職(62.5%)で、他の属性は50%前後でした。

 また、「楽しい」という回答が最も多かったのは女性管理職(73.0%)となっていました。



会社組織に対する考え方と実態

管理職と一般職では会社組織に対する考え方が非常に異なっている
特に女性管理職は組織に対する考え方が肯定的・好意的である

20~60 代の男女管理職・一般社員900 名に聞いた 『女性管理職と職場コミュニケーション』
(画像=第一生命経済研究所)

 会社組織に対する考え方と実態についてたずねました。全般的にみて、上位にある「会社への貢献」「会社に感謝」「会社と自分の信頼関係」「会社への帰属意識」など、組織への考え方は管理職、特に女性管理職で高いことがわかります。一般職の男女を比べると、女性のほうが男性よりもやや会社に好意的・依存的である傾向が見られるのも特徴です。

会社外の人や友人・知人、地域のネットワーク

管理職や高年代の人で社外ネットワークが広い
男女とも、子どものいる人のほうが社外ネットワークが広い

20~60 代の男女管理職・一般社員900 名に聞いた 『女性管理職と職場コミュニケーション』
(画像=第一生命経済研究所)

 会社外のネットワークは、男女共に管理職で広いことがわかります。

 また、年代別でみると、年代が高いほどネットワークが広いと回答している人が多くなっています。

 これについて、性・子どもの有無別に比較をしてみました。その結果、男女ともに子どもがいる人のほうがネットワークが広く、特に「女性・子どもあり」という人ではネットワークが広いとする人が46.9%だったのに対し、「男性・子どもなし」の人では26.7%にとどまっていました。社外ネットワークの強弱に、子どもの有無が一役買っている点が確認された結果となりました。

性別と管理職・一般職のギャップ

「上司が女性」だとコミュニケーションが難しいと感じる一般職が多い
女性はキャリアのために犠牲がつきものと考える傾向が強い

20~60 代の男女管理職・一般社員900 名に聞いた 『女性管理職と職場コミュニケーション』
(画像=第一生命経済研究所)

 男性管理職・女性管理職・一般男性職員・一般女性職員に対し、それぞれ性別や職位別に感じるギャップや意識についてたずねました。その結果、男性管理職において「自分の部下が男性だと、コミュニケーションが難しいと感じる」割合は9.0%であるのに対し、「自分の部下が女性だと、コミュニケーションが難しいと感じる」割合は25.0%となっていました。また、女性一般職の20.0%が「自分の上司が男性だと、コミュニケーションが難しいと感じる」としていますが、男女ともに「自分の上司が女性だと、コミュニケーションが難しいと感じる」とする割合が「自分の上司が男性だと、コミュニケーションが難しいと感じる」とする割合より高いのが特徴です。女性管理職からみると、部下は男性でも女性でもコミュニケーションの難しさにはあまり差がみられませんでした。また、管理職・一般職ともに、女性は「キャリアを積むためにはいろいろと犠牲にしなければならないと思う」とする割合が男性より高い点も特徴です。

≪研究員のコメント≫

 当初、現在の女性管理職は社内のネットワークやコミュニケーションにおいて、難しい立場にあるものと想定していました。しかし、実態をみると、女性管理職は周囲との調和やコミュニケーションを非常に重視し、飲み会への参加を「楽しい」と感じている人も他の属性より多いなど、充実した会社生活を送っている人が多いようです。また、現代の女性管理職は、会社への貢献意識や感謝の気持ち、信頼関係、帰属意識等が他に比べて非常に高く、「会社に大切にされてきた」「上司に恵まれてきた」といった意識も男性管理職より高いなど、全般的に会社に対して肯定的な見解を示していました。さらに、職場におけるストレス度合いとしても、「家庭や自分自身など、プライベートな生活に関するストレス」や「ワークライフバランスに関するストレス」が、他の属性に比べて若干高いほかは特に高いものはなく、むしろ他の属性と比べると最も低いもの(「仕事の内容や仕事の量など、仕事に関するストレス」「職場の方針ややり方など、組織構造や組織風土に関するストレス」「職場の人間関係に関するストレス」)が目立ちました。

 今回の調査結果から課題として浮上したのは、むしろ管理職と一般職の意識差であるといえそうです。一般職は男女とも仕事への満足度が管理職に比べて低く、管理者と部下の人間関係としても、温かみや信頼感があると回答した人は管理職よりかなり低くなっています。また、社内コミュニケーションとしても、相互理解やチームワーク、飲み会参加率が低い一方で、職場での対人関係問題についての指摘は管理職よりも多いことがわかりました。さらに、職場への貢献意識や感謝、信頼関係、帰属意識などは男女管理職に比べるとかなり低く、将来的に管理職を目指したいとする人は男性一般職で34.5%、女性一般職で20.5%となっていました。

 一方、男女間で見られた特徴的なギャップは、性別意識でした。男性は、女性と仕事をするよりも男性と仕事をするほうが楽であると考える人が4割以上を占めています。その背景には、セクハラへの配慮も少なくないようです。一方、女性は「女性のほうが考え方が柔軟」と考える一方で、職場では「女の子」「女子」と見られていると感じている人も少なくありません。

 このように、管理職か非管理職か、男性か女性かという違いは、いまや複雑に交錯しており、「男性管理職と男性部下」「男性管理職と女性部下」「女性管理職と男性部下」「女性管理職と女性部下」といった4パターンのコミュニケーションケースごとに様々な意識のギャップや問題が生じているようです。さらに、こうした状況にさらに「年代」という要素が加わり、いわゆる「世代間ギャップ」も大きくかかわってきています。既に年代と職位がリンクしなくなってきた今日、例えば「年下の女性上司」の部下となる男性・女性など、従来型の「男性上司-男女部下」というモデルとは異なるケースがますます多く出現していくでしょう。職場での対人関係ストレスや人間関係の問題が取り沙汰される中、このように社内コミュニケーションは今後ますます複雑化していくと考えられます。(提供:第一生命経済研究所

(研究開発室 副主任研究員 宮木由貴子)

㈱第一生命経済研究所 ライフデザイン研究本部
研究開発室 広報担当(田代・新井)
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