米中間選挙の結果は、上院(共和党)、下院(民主党)と事前のコンセンサス通りの内容になったこともあり、マーケットの反応は限定的となりました。前日の東京時間では、共和党の優勢が伝えられ、ドル円は一時113.80円台まで続伸するものの、その後に一部メディア(FOX)が下院での民主党の過半数獲得を報道したことにより、結局は上昇起点となる113.00円の水準まで下落する動きとなりました。ただ、海外時間において、この「ねじれ議会」が一時的なリスク回避となる予想を覆し、NYダウは一時560ドル超の上昇となりました。米国の議会はこの「ねじれ議会」が通常運転ということもありますが、マーケットはこの「ねじれ議会」をネガティブ材料とは捉えなかったということになります。

トランプ大統領が開票後、「Tremendous success tonight. Thank you to all!(大成功でした)」とTweetし、数時間後には、セッションズ司法長官の事実上の更迭をTweetしました。トランプ大統領の腹心は謎ではありますが、Tweet後はリスク回避の円買い、ドル売りが主導しましたが、結果的には株高によるリスクオンの動きが先行しています。米30年債入札が低調だったこともあり、米長期金利が低下幅を縮めたこともドル買いを誘った一因ですが、マーケットはドル売り材料よりもドル買い材料を期待していることが、前日ではっきりしたのではないでしょうか。

過去の動きを考察すると、ねじれ議会に陥った場合はNYダウが下落基調を強めるのが通常の動きです。2010年のオバマ政権のねじれ議会では、翌年の債務上限引き上げと米政府機関閉鎖の駆け引きにより、先行き不透明感が強まったと判断されました。トランプ大統領においても、2019年度の1.3兆ドルの国債発行計画は債務上限という壁が立ちはだかるものの、マーケットがリスクオフではなくリスクオンの動きをとったということは先行き不透明感を感じている市場参加者が少ないということだと考えられそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

米中間選挙が終わり、息をつく間もなく今夜はFOMC政策金利発表が予定されています。市場予想は2.25%で据え置き予想になっており、12月の利上げが焦点になっていることで、今回の据え置きはほぼ間違いないでしょう。FRBは雇用最大化(2つの使命)に関しては、失業率が3.7%まで低下し、非農業部門雇用者数は月平均20万人程度の増加を既に達成してます。物価の安定の項目については、インフレ目標(前年比+2.0%)に到達していることで、利上げ路線の継続にはほぼ支障がない状況になっています。10月の平均時給が前年比+3.1%だったたことも、プラス材料として考えられるはずです。

今回、「ねじれ議会」に突入することにより、トランプ政権が推し進めていた減税策、特に財政拡張政策の審議が注目されます。利上げ路線から逸脱してしまうような材料ではないでしょうが、マーケットが利上げ継続を前提にドルを買い進める動きが小休止していることは事実です。FOMC声明にて、この部分が言及される可能性は低いと考えますが、逆に言及されなければ再度利上げ継続を織り込む形でドル買いが進むのではないでしょうか。

ドル買いが強まる一方、上値の重さが意識されるのがユーロです。本日は、欧州委員会によるユーロ圏の経済予測が公表されます。当然、イタリアの成長見通しがイタリア政府の見通しよりも低いことが確実視されており、イタリア政府が断固として拒否している2019年予算案の修正圧力がさらに強まることが予想されます。ヘッドラインなどでも混迷を強める発言がでてくるでしょうし、ユーロショートの流れは当面継続するのではないでしょうか。

FOMC後はドル買いでも面白いが、それまではユーロ売りが王道戦略

テクニカル面よりはファンダメンタルズ要素を考慮し、上述した理由にてユーロドルの戻り売り戦略とします。1.1500ドル上抜けを撤退目途(損切り)とし、1.1450-60ドルでの戻り売り戦略。利食いについては、1.1320ドル付近を想定します。

海外時間からの流れ

中間選挙後の動きとして、株高に振れたことはポジティブサプライズでした。ユーロはイタリアの予算案問題、ポンドはブレグジット進展期待、ドルは利上げ路線継続なるかが目先のポイントになりそうです。まだまだ不確定要素があるブレグジット進展について、「合意なき離脱」を回避できれば、ユーロ独歩安の動きになるかもしれません。

今日の予定

本日は、独・9月貿易収支/経常収支、米・新規失業保険申請件数(前週分)、米・FOMC政策金利発表などの経済指標が予定されています。要人発言としては、クーレ・ECB専務理事の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。