前日の海外時間では、注目のFOMCが開催され、政策金利は市場の予想通り2.00%-2.25%に据え置きました。焦点となる声明では、失業率の低下と設備投資の増加を反映した変更がありましたが、非常に軽微なもので、重要な「労働市場が引き締まり続け、経済活動が力強い速度で拡大している」との表現は維持し、「さらなる緩やかな利上げは経済活動の持続的な拡大、力強い労働市場の状況、中期的に委員会の対称的な目標である2%に近いインフレ率と整合する」との表現も変わらず維持しました。次回12月の利上げについては、この内容であれば特段弊害はないものと考えられるため、ドル円は一時114円台を回復する動きとなりました。
ドルについては、市場の期待と見通しに合致する動きとなりましたが、完全に市場の期待を裏切ったのがポンドです。ブレグジット進展期待がメディアからの発信により日に日に強まっていましたが、「英国の交渉上の立場を決める閣議が来週に延期された」との一部報道が先行き不透明感を強め、まずはポンドドルで1.3100ドルを下抜け、止めは英政府高官による「ここ数日で英国のEU離脱交渉が合意する可能性との報道については話半分に聞くべき」との見解です。FOMCにてドル買いが強まっていたことも要因としては挙げられますが、目先のポンド上昇期待は完全に剥落したと考えられます。
ユーロについては、欧州委員会によるユーロ圏の経済予測が公表され、やはりというべきかもしれませんが、イタリアの成長見通しがイタリア政府の見通しよりも低いことが指摘されました。予測としては、「19年のイタリア財政赤字が対GDP比で2.9%、20年が3.1%まで拡大する」と発表されており、イタリア政府が断固として拒否している2019年予算案の修正がより混迷を深める可能性が高そうです。ユーロについても、ポンドと同じくFOMCのドル買いの動きにより1.1400ドルを下抜け1.1360ドル付近まで下落しています。
今後の見通し
米中間選挙が終わり、通常であれば「ねじれ議会」への突入は株安への入り口になるのですが、一時的に株安に傾くときは米長期金利が上昇した時くらいで、昨日も10ドルほどではありますが前日比プラスとなり、NYダウは4日連続続伸という動きになりました。やはり、オバマ政権の時と現トランプ政権の違いは株価に直に反映されていると考えられそうです。12月7日に期限を迎える米国のつなぎ予算後の米議会での駆け引き、ここまではドルの底堅さはそれなりに保証されたと考えられそうです。
本日早朝のヘッドラインにて、安倍首相とトランプ大統領が電話会談を行う旨の報道があり、先日対日貿易赤字を批判したことが再びクローズアップされることが懸念されていましたが、特段波乱なくドル円も113円台後半で堅調に推移しています。ドル買いがこのまま目先は継続しそうな点、さらには「ねじれ議会」が株安の材料にはならなそうな点を踏まえると、次の焦点が今月末の米中通商協議に目が向かうので、間が開いてしまうこともあり、久々に『原油』が為替動向において意識されそうです。
実際にカナダドルを筆頭とした資源国通貨については、原油価格の下落とドル高の影響で上値の重い地合いになっています。米国のシェールオイルの生産が増加している点、原油在庫の積み増し圧力が強まっている点などが意識され61ドルの水準を割り込んでいます。60ドルを割り込んでくると、投機的な売りも入りやすいこともあり、この60ドルのラインが維持できるかどうかが重要なラインですが、米国による制裁要件の緩和によって、イランの生産減少が限定的なものにとどまるとの見方が優勢であり、60ドル割れは通過点となり資源国通貨の上値は一旦重くなることが考えられます。
やはりユーロ売りが王道戦略だった
欧州委員会によるユーロ圏の経済予測というユーロ売りがほぼ確定のようなイベントにおいても、やはり市場がユーロショートに傾くということはまだまだ下落余地があるものと考えられます。1.1460ドル付近であれば理想的ではありましたが、1.1440ドル台でのユーロドルのショート、利食いの目途は1.1320ドルから変わりはありません。損切りレベルは1.1500ドルから1.1400ドルに引き下げて、利食いの逆指値という形にしたいと思います。
海外時間からの流れ
ポンドのブレグジット進展期待が剥落したことは、かなりのネガティブサプライズでした。ユーロはイタリアの予算案問題を抱え、上値追いの動きにはならないだろうとの思惑がありましたが、ドル高、ユーロ安、ポンド安の動きだと1か月前の動きに逆戻りしただけになります。マーケットを動意づかせるには、上昇要因がどこにも見当たらないユーロ独歩安の展開になることが重要になりそうです。
今日の予定
本日は、英・統計局9月度GDP月次推計発表、英・9月貿易収支、米・11月ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)などの経済指標が予定されています。要人発言としては、クオールズ・FRB副議長の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。