目次

1.研究の背景・目的と調査概要
2.職場環境の実態
3.職場に対する考え方とストレス
4.職場におけるメール利用の評価
5.ヒアリング調査・自由回答より
6.考察

要旨

① メディア環境の変化や職場コミュニケーションについての関心が高まる中、電子メールの普及に伴う職場のインフォーマルコミュニケーションの変化について調査研究を実施した。

② 職場で飲みに行く機会については、6割以上が「職場に必要である」と考えており、職場での飲み会を「楽しい」と考えている割合は7割近くに及んだ。職場で飲みに行く機会やイベントへの参加状況についてみると、小学生以下の子どもがいる女性で「参加したいが参加できない」と回答する割合が高かった。

③ 職場でコミュニケーションが十分とれている人は、メールの普及により職場のコミュニケーションが「活発・親密化」「効率化」するといったプラスの作用を認めている。一方で、職場のコミュニケーションが活発でない職場にいる人では、メールの普及によって職場が「希薄化」ないし「不安・病理化」するといったマイナスの作用を指摘する人が多い。

④ さらに、職場におけるメールの普及の影響としては、「メール利用に関する感覚的ギャップの拡大」「利己的な関係」「情報過多と多忙化」「職場の雰囲気の不可視化」「ワークスタイルの多様化への非対応」などが指摘された。

⑤ メールには、従来型の電話コミュニケーションのような暗黙の「利用ルール」が存在しないが、職場での利用上の秩序がないと、業務の非効率化や人間関係の二極化を助長する可能性がある。

キーワード:職場コミュニケーション、人間関係、メール

1.研究の背景・目的と調査概要

 この10 年間で、「コミュニケーション」のあり方は激変した。最大の変化は、電子メール(以下「メール」)が普及し、リアルタイムに近い形で「電子的」に「文字メッセージ」が交換されるようになったことである。特に携帯電話を使ったメールは、電話の「即時性」と手紙の「保存性」「可搬性」の要素を持ち、「いつでもどこでも(時間的・空間的自由)」「複数の相手に同時に(同報性)」メッセージを交換できる。こうしたコミュニケーション環境の変化に伴い、若者を中心としたメールの利用行動や対人関係の変化が注目されてきた。

 一方、職場についてはIT 化による業務効率の向上や経済効果などが注目されてきたが、パソコンの普及やネットワーク化によりメールが及ぼす「職場でのインフォーマルなコミュニケーション」、すなわち業務の合理化・効率化ではなく、職場の人間関係にかかわるコミュニケーションへの影響にはあまりスポットが当てられてこなかった。

 社会経済生産性本部のメンタル・ヘルス研究所(2007)によると、近年増加傾向にある「心の病」は、「職場のコミュニケーションが減った」と感じられている職場において特に強い点が指摘されている。職場ストレスの原因としても「人間関係」は上位にあげられる。また、国民生活白書(2007)でも職場のつながりがもたらす効果とその重要性が指摘されるなど、職場コミュニケーションへの注目が高まっている。

 これらの点を受け、本稿では職場のインフォーマルコミュニケーションとメール利用の関係について探る。職場でメールを利用することにより、会議が減ったり、隣席の人ともメールでコミュニケーションをするなど、対面コミュニケーションが減少し、コミュニケーション不足を招いているのではないかと指摘されている。また、携帯電話のメールを多用するなどのモバイル文化で育った若者たちについて、「つきあいが悪い」「飲みに誘ってもこない」など、職場におけるイベントに非積極的であるとの指摘もなされている。しかし、本当にメールの普及で職場コミュニケーションは希薄化しているのだろうか。これらの点を検証しつつ、現代の職場コミュニケーションにおける問題点を探り、今後の職場コミュニケーションのあり方について模索することを本研究の目的とする。

 調査の方法と概要は図表1のとおりである。

職場のインフォーマルコミュニケーションとメール
(画像=第一生命経済研究所)

2.職場環境の実態

(1)全体的な環境

1)職場風土
 まず、職場*1の雰囲気や環境について尋ねたところ、「職場では、事を荒立てないことが最優先とされる」が最多となっており、「非常にあてはまる」と「まああてはまる」の合計で73.2%を占めた(図表2)。以下、合計値の高かった順に「わきあいあいと、にぎやかで活発な雰囲気がある」(65.3%)、「管理者と部下の人間関係は、温かみや信頼感がある」(65.2%)と続いた。一般に指摘されがちな「若い社員と年配の社員の交流が少ない」(44.4%)や、「うつ病などの精神疾患が問題となっている」(28.0%)についてはそれほど高い割合を占めなかった。

職場のインフォーマルコミュニケーションとメール
(画像=第一生命経済研究所)

2)人間関係トラブルの有無
 続いて、業務以外での「もめごとや仲の悪い関係」と「いじめや仲間はずれ、無視」の有無についてみると、「もめごとや仲の悪い関係」については3分の1程度が「ある」としており、「いじめや仲間はずれ、無視」についても3分の1程度が「現在ある」ないし「以前あった」とした(図表3)。さらに「いじめや仲間はずれ、無視」については4分の1程度が「わからない」としており、実態が把握されにくい点が浮き彫りとなった。

 なお、「もめごとや仲の悪い関係」と「いじめや仲間はずれ、無視」に共通して、職場における女性の占める割合が多いほど「ある」ないし「あった」とする割合が高くなる傾向がみられた(それぞれp<0.01、p<0.001で有意)。

職場のインフォーマルコミュニケーションとメール
(画像=第一生命経済研究所)

(2)コミュニケーション環境

1)対面コミュニケーションの実態
 職場におけるインフォーマルな対面コミュニケーションの機会への参加状況を尋ねたところ、図表4のとおりとなった。同僚との昼食が最も多く、6割弱が「よく参加する」とした。また、旅行や運動会については、「機会がない」との回答が多かった。

職場のインフォーマルコミュニケーションとメール
(画像=第一生命経済研究所)

 女性について、小学生以下の子どもの有無別に比較を行ったところ、昼食以外の項目すべてにおいて、小学生以下の子どもがいる女性では「参加したいが参加できない」という回答が非常に多い結果となっていた(図表5)。

 なお、職場で飲みに行く機会については、32.8%が「かなり減った」、18.7%が「少し減った」と回答している(図表省略)。また、「減った」と感じる人は年代が上がるにつれて顕著に多くなっており、50代では6割近くに達している(図表省略)。

職場のインフォーマルコミュニケーションとメール
(画像=第一生命経済研究所)

 職場の人たちと飲みに行く機会については、6割以上が「職場に必要である」とした(図表6)。また、職場での飲み会は7割近くが「楽しい」と考えている。若者の付き合いが悪いといわれることが多い状況に反し、職場で飲みに行く機会の評価は20・30代の男性で最も「楽しい」ととらえている人が多く、「必要」と考えている人も多か った。

職場のインフォーマルコミュニケーションとメール
(画像=第一生命経済研究所)

2)メールコミュニケーションの実態
 上司・部下・同僚に対するメールの利用についてみたところ、特に20・30 代でメールの利用が多いわけではないことがわかった(図表7)。「主にメールで」を3点、「メールが多いが口頭(対面・電話もある)」を2点、「口頭(対面・電話)が多いがメールもある」を1点、「主に口頭(対面・電話)で」を0点として合算し、「メール利用得点」を作成した結果、平均は4.30 点で、20 代が3.54 点(n=46)、30 代が4.73 点(n=184)、40 代が3.93 点(n=153)、50 代が4.54 点(n=130)となった(図表省略)。

職場のインフォーマルコミュニケーションとメール
(画像=第一生命経済研究所)

 また、相手別・内容別にメールの返信のタイミングについても尋ねたが、業務上のメールについては過半数の人が「メールに気づいたらすぐ返信」しており、ほとんどの人が遅くともその日のうちには返信をすると回答した(図表省略)。メールは、機能的には相手の都合や状況に配慮せずに送れる「一方向コミュニケーション」だが、実際は「双方向コミュニケーション」的に直ちに返信する受信者が多い。

3.職場に対する考え方とストレス

(1)職場に対する感覚

 続いて、自分の職場の人間関係において、どのようなものを求めるのかについて、職場に対する感覚を尋ねた(図表8)。全体的にみて、職場では適度な距離を置きつつ、信頼関係を築いて楽しくやっていきたいという意向が読み取れる結果となっている。

職場のインフォーマルコミュニケーションとメール
(画像=第一生命経済研究所)

(2)職場ストレス

 職場で最も高いとされたストレスは、「仕事の内容や仕事の量など、仕事に関するストレス」となっていた(図表9)。以下、「組織内での自分の役割や、責任感に関するストレス」「職場の方針ややり方など、組織構造や組織風土に関するストレス」と続き、「職場の人間関係に関するストレス」が「ある」(「非常にある」と「まあある」の合計)としたのは54.9%だった。年代別に比較すると、人間関係ストレスは40代で最も「ある」とした割合が高く、62.1%を占めた(図表省略)。

職場のインフォーマルコミュニケーションとメール
(画像=第一生命経済研究所)

4.職場におけるメール利用の評価

 職場にメールが普及したことによってどのような影響が生じたのかについて尋ね、4つの尺度を作成した(図表10)。全体的に職場においては「効率化」が最も体感されている様子がみてとれる。また、「活発・親密化」と「希薄化」という相反する項目群については大きな差はみられず、評価が混在している様子がうかがえる。また、「不安・病理」に関するものについてみると、ストレス増大やうつ病の増加につながるといった見解に対しては否定的な傾向が強い。

 以上、これまで調査結果を概観してきたが、最後に職場でのメール利用評価(活発・親密化/希薄化/効率化/不安・病理化)を規定するものについて、A:職場環境、B:職場のコミュニケーション環境、C:個人的職場感、D:個人的要因の4側面から分析を行った。個別に行った分析からは、勤務先の規模や職種、業務形態といった「物理的環境・働き方」による影響はみられなかったので、ここでは除外した。

 まず、それぞれの尺度間と職場のコミュニケーション満足度との関係についてみたところ、活発・親密化得点が高いと希薄化得点が低く、効率化得点は高くなっており、さらに職場のコミュニケーション満足度も高いという結果を得た(図表11)。また、希薄化得点は不安・病理得点と正の相関がある。さらに、不安・病理得点と職場のコミュニケーション満足度には負の相関が認められた。また、職場のコミュニケーション満足度の高さと職場のメール利用による「活発・親密化」意識に、職場のコミュニケーション満足度の低さと「不安・病理化」意識にそれぞれ相関があることがわかった。

職場のインフォーマルコミュニケーションとメール
(画像=第一生命経済研究所)
職場のインフォーマルコミュニケーションとメール
(画像=第一生命経済研究所)

 これら4つの得点に作用する要因を探るべく、これまで作成してきた尺度や得点等を用いて、職場環境、職場のコミュニケーション環境、個人的職場感、個人的要因といった側面より重回帰分析を行った(図表12)。

 結果をまとめると、「活発・親密化」「効率化」など、職場のメール普及にポジティブなのは、対人関係においてオープンで相互理解的な関係を求めている人、さらに現在の職場のコミュニケーションが十分であると感じている人で多い。特に「効率化」については、「理解しあうより衝突しないことが重要」と考えている人、また男性より女性で感じられている。一方でネガティブなのは職場のコミュニケーションが活発でない環境下にある人で多いことがわかった。さらに、対人関係において孤独感・不安感が強い人で、メール普及により人間関係が「不安・病理化」すると考えられる傾向にある。ストレスの状況やイベントへの参加率、メール利用の多寡といった要因について、メールの評価への影響は今回みられなかった。

職場のインフォーマルコミュニケーションとメール
(画像=第一生命経済研究所)

5.ヒアリング調査・自由回答より

(1)職場コミュニケーションにおける感覚的ギャップ・障壁

 さらに、ヒアリング調査と自由回答からもいくつかの点が指摘された。

 まず、メールにおける文章の書き方や感覚、考え方や価値観などについてのギャップを指摘する声が多かった。メールは「すぐに返信すべき」という発信者主義的な考え方と、「読むタイミングは受け手次第」という受信者主義的な考え方が混在しており、明確なルールがない職場が多いため、フォーマル・インフォーマルを問わず、メールになかなか返信がなくて気をもんだり、情報が行き違いになるケースが少なくない。

 また、セクシャル・ハラスメントやパワー・ハラスメントが取りざたされることの多い今日、異性間や上下間のコミュニケーションも難しいものとなっている。特に職位の違いと性差が重なると、より難しくなるようである。過敏になりすぎて職場の人に気軽に声をかけられないという、インフォーマルコミュニケーション上の萎縮が生じている職場も散見された。

(2)利己的な人間関係

 また、職場における人間関係上の選択的行動も指摘された。これまで、「仕事上の付き合い」として割り切ってきた「対面で話したくない人」との関係において、対面コミュニケーションや会話を極力避け、メールでのみコミュニケーションをとることで付き合いを最小化できたとの意見が多々見られた。これにより、仲の良い人とはより親密に、仲の悪い人とはより疎遠に、といった助長や二極化の傾向が生じている。

 また、コミュニケーションの無秩序化も指摘された。「メールは相手の都合を考慮しなくてよい」という暗黙の前提により、業務上の案件もプライベートな相談ごともメールで行うため、特定の人にメールが集中し、負担を増加させている。休日などでもプライベートな携帯電話に業務上のメールが送られてきたり、極めてインフォーマルな相談事のメールを朝一番に読むことになったりといったケースもみられた。

(3)情報過多と多忙化

 さらに、安易に同報メールで情報共有を試みたり、報告・連絡の既成事実を作るためにあえて口頭でなくメールで伝えるなど、必須でないメールコミュニケーションが増加した。その結果、返信を期待した「(暗黙の)双方向コミュニケーション」と単なる情報提供としての「一方向コミュニケーション」が混在する状況を招いている。これらのメールに埋もれて肝心なメールが読み飛ばされたり、報告の有無に関する“伝えた/伝えていない”の責任逃れが生じたりと、本来コミュニケーションや情報共有を効率化させるべきメールが業務を増加させ、コミュニケーションを阻害するといった弊害を生じさせている。「重要なことはメールではなく電話を用いる」「メールを読んだかどうかを電話で確認する」といった行動も見られた。

 また、メールは「通話」のようなリアルタイムのコミュニケーションツールではないので、送受信のタイミングが自己中心的になりがちだが、実際には多くのメールが受信から短時間のうちに返信されている。「いつでもどこでも自分の都合で」というメールコンセプトについては、職場において再考の余地がありそうである。

(4)「職場の雰囲気」の不可視化

 社内・社外とのやりとりが電話等で行われると、必然的に同僚や上司などの周囲が会話の内容を共有し、口調や顔色で暗黙のうちに理解される社内・社外関係が、メールに代替されたために不透明になり、わからないがゆえに不信感を抱く傾向が指摘された。職場の「雰囲気」という情報が、情報化によって見えなくなったともいえる。

 また、職場メールがモニタリングされていることに対する不満も多々見られた。社員のメールのモニタリングは、一般に職務専念義務の監視や機密情報保持を目的としてなされる。これについては、予め職員に告知されているものの、これにより組織に不信感を抱く職員も少なくない。職場の雰囲気が見えなくなった上に「監視されている」という意識が強くなり、職場に対する不満や不信が募っている人が散見された。

(5)ワークスタイルの多様化とコミュニケーション

 調査から、育児期の女性において、職場のコミュニケーションに十分参加できていないという意識が強い点が確認された。いわゆる従来型の夜の「飲みニケーション」はワーキングマザーのコミュニケーションの場になりにくく、職場のインフォーマルコミュニケーションにおいて立ち遅れることを懸念する女性は少なくない。しかしこれは育児期の女性に限った話ではない。在宅勤務を初めとする、フレキシブルな働き方をしている人は、職場の人との必然的な対面機会が少なく、「飲みニケーション」以外の立ち話や雑談といったインフォーマルコミュニケーションの機会が損なわれている。今後、ワーク・ライフ・バランスを提唱し、働き方の多様性を高めていく上で、職場のコミュニケーションをどう図るかについては、検討すべき重要な課題である。

6.考察

 調査結果から、本稿冒頭で示した「メールの普及で職場コミュニケーションが希薄になった」「メール文化に慣れた若者は職場イベントへの付き合いが悪い」といった、一般にいわれがちな言説は検証されなかった。分析からは、年齢や性別によるメールのとらえ方の差異は確認されたものの、職場のコミュニケーションの状態の方がメールの作用についての意識を左右する点が明らかになった。具体的には、コミュニケーションが良好である職場ではメールの普及がインフォーマルコミュニケーションにプラスに作用し、コミュニケーションが良好ではない職場ではマイナスに作用するという、「二極化」の傾向が示唆された。新しい通信メディアの利用による従来の関係性の助長と二極化は、筆者のこれまでの研究(宮木 1999他)においても指摘してきた点であるが、この点が職場のインフォーマルコミュニケーションにおいてもいえることが確認された。

 ただ、直接的にメールが職場コミュニケーションを希薄にする点は確認されないものの、メールという周囲に見えにくい通信ツールによって個人が閉鎖的なコミュニケーションをとることにより、職場の雰囲気や全体像の把握が難しくなった点は否めない。この「見えにくさ」が職場に不要な不信感を増大させ、疑心暗鬼に陥ることにより、他人の行動をネガティブに解釈させる一因となっている部分がある。これらのストレスにより自らが不安定な状態になっても、業務量が重く、競争社会化や成果主義が推進される中で、組織内で誰かに相談することは査定や業績評価において不利な結果を招くのではないかという疑念が生じる。組織構造がフラット化して細かい上下関係がない場合には、誰に相談してよいかもわからないという事態も生じている。こうして職場への信頼感を十分に持てない従業員が、ストレスや悩みを解消する時間や機会も逸し、結果としてメンタル面でのバランスを崩している可能性がある。

 このように考えると、職場におけるメール利用の是非を問う以前に、組織構造のあり方を含めた職場のコミュニケーションそのものについて考えていく必要がある。職場のコミュニケーションが良好であればメールはインフォーマルコミュニケーションないし人間関係の構築・維持の面でプラスに作用し、その結果として業務の円滑化や効率化を期待できる一方で、職場のコミュニケーションが良好でなければメールは職場にとってマイナスに作用し、業務自体にも悪影響を及ぼすと考えられるからである。

 また、今後の職場コミュニケーションのあり方について考えていくにあたり、ヒアリングや自由回答から得られた知見は重要な課題を提示している。メール利用における感覚的なギャップや不透明化、ワークスタイルの多様化等に関する点は、放置すれば職場におけるメール利用のメリットの部分を縮小させ、職場コミュニケーションの不全化などのデメリットを肥大化させていく可能性がある。

 今後、メールによるコミュニケーションの効用を最大化し、情報社会化とワークスタイルの多様化の中でいかに職場コミュニケーションを図るかについて検討していく必要がある。多種多様なコミュニケーションツールの「正の部分」と多様化したワークスタイルや価値観との統制をうまく図れた職場が、「良好な職場コミュニケーション」を実現する。ビジネスでは、とかく「効果」や「効率化」という視点に陥り、コミュニケーションは明確かつ簡略化されることが善しとされがちである。そうした中、あえて「対面コミュニケーション」の機会を設けたり、新たなコミュニケーション機会を創出するなどして、職場全体のまとまりや統制感を築き、職場におけるメールコミュニケーションを積極的に「プラスに作用させる」姿勢が、結果として組織の長期的な成長の糧となるといえるのではないだろうか。(提供:第一生命経済研究所

【注釈】
*1  本稿では、職場を「お勤め先の中で、主に一緒に仕事をしている部・課など」として、「勤め先」と区別している。

【参考文献】
・社会経済生産性本部 メンタル・ヘルス研究所『産業人メンタルヘルス白書』2007年版.
・ 内閣府『平成19年版 国民生活白書』.
・ 宮木由貴子,1999,「青年層の通信メディア利用と友人関係」『LDI REPORT(1999年7月号)』:27-51.
・ 「デキるあなたに忍び寄る『うつ』」『週刊エコノミスト(2007.8.28号)』:18-37.
・ 「『人付き合い』革命」『PRESIDENT(2007.7.16号)』:35-55.

研究開発室 副主任研究員 宮木 由貴子