要旨

① 全国の小学生の母親を対象に、子どもの放課後生活と教育に関するアンケート調査を実施した。

② 以前より、今の子どもたちは友達同士、外で遊ばなくなった(もしくは遊べなくなった)と感じている人は約9割を占め、その理由の上位に「学習塾や習い事、クラブ活動などで忙しい」「地域が安全でなくなった」「電子ゲームをして過ごす子どもが増えた」ことが挙げられている。

③ 放課後の過ごし方別に、その頻度と母親の評価をみると、過ごし方の頻度が高く、かつ母親の評価も高いものは「自宅で勉強」であり、過ごし方の頻度が高いが、母親の評価は低いものは「電子ゲーム」である。また、あまり頻度は高くないが、母親の評価が高いものは「外遊び」等となっている。

④ 小学生の放課後生活のために必要なものとして、多くの母親が「子どもが自由に、安全に遊べるような広場や公園」を挙げている。多くの子どもたちが集まって遊べる安全な場所を確保することも、子育て環境の整備のために必要である。

1.はじめに

 地域の安全性や子どもの学力の低下など、子どもをめぐる社会環境の変化による様々な問題が指摘されている。このような中、政府は昨年度より、少子化対策の一環として「放課後子どもプラン」を打ち出した。これは、地域社会全体で子どもたちを見守り、有意義な放課後生活を確保することで、その健全育成を図ることをねらいとするものである。子どもの成長にとっては、学校教育のみならず、家庭や地域で過ごす放課後生活も重要である。「放課後子どもプラン」は、子どもの放課後生活の充実に焦点をあてた政策として斬新なものであり、その展開に関心が寄せられている。

 このように小学生の放課後生活のあり方が注目されていることを背景として、本稿では、小学生の母親に対して実施したアンケート調査結果をもとに、小学生の放課後生活の実態と、それに対し母親がどのような意識を持っているのか、また、子どもの成長にとって望ましいとされる放課後生活を過ごすためのニーズ等を考察する。

2.アンケート調査概要

(1)アンケート調査の概要と回答者の属性

 調査の概要は、図表1の通りである。

 回答者(小学生の母親)の年齢構成は、28~39歳が49.4%、40~52歳が50.0%、無回答が0.6%であり、平均年齢が39.7歳であった。

 また、調査対象となった小学生(回答者の家庭に小学生が複数いる場合には最も下の学年の小学生)について、性別にみると、男児374人(全体の47.9%、以下同様)、女児402人(51.5%)、無回答4人(0.5%)である。学年別にみると、1年生129人(16.5%)、2年生200人(25.6%)、3年生127人(16.3%)、4年生118人(15.1%)、5年生100人(12.8%)、6年生103人(13.2%)、無回答3人(0.4%)となっている。

小学生の放課後の過ごし方の実態と母親の意識
(画像=第一生命経済研究所)

3.親の子ども時代と比較した今の子どもの放課後生活

(1)外遊びが減って電子ゲームが増えた、今の子どもの放課後生活

 小学生の母親は、自分の子ども時代と比較して、今の子どもの放課後生活をどのようにみているのだろうか。

 図表2は、放課後の過ごし方として代表的なもの10 項目について、「自分の子ども時代と比較して、どのように感じているか」をたずねた結果である。対照的であるのは「公園や広場、校庭で友達と外遊びをする」(以下「外遊び」)と「電子ゲーム(テレビまたは携帯用)をする」(以下「電子ゲーム」)である。小学生の母親の多くは、今の子どもの放課後生活について、自分の子ども時代よりも「外遊び」が減って、「電子ゲーム」が増えたと感じているようだ。また、「習い事(水泳や音楽等)に通う」(以下「習い事」)や「学習塾(英語・そろばんを含む)に通う」(以下「学習塾」)、「一人でテレビやビデオ、音楽を視聴して過ごすこと」(以下「一人でテレビ」)も、半数以上が「今の子どもの方が多い」と回答している。

小学生の放課後の過ごし方の実態と母親の意識
(画像=第一生命経済研究所)

(2)以前に比べ子どもたちが友達同士、外で遊ばなくなった理由

 図表2のように、「外遊び」について、今の子どもよりも、自分が子ども時代の方が多くおこなっていたと回答している人が約9割を占めていたが、さらに、こうした「外遊びの変化」について別の質問項目をたて、具体的にたずねた。

 すなわち、「以前に比べて、今の子どもたちは友達同士、外で遊ばなくなった(もしくは遊べなくなった)と思うか」とたずねた結果、そのように「感じている」と回答した人の割合は回答者全体の87.9%であった。

 さらに、「以前に比べて子どもたちが外で遊ばなくなった」と感じている人に対して、その理由をたずねた結果、「学習塾や習い事、クラブ活動などで忙しいため」が83.7%、「不審者や犯罪等、地域が安全でなくなったから」が80.3%、「電子ゲーム(テレビや携帯用)をして過ごす子どもが増えたから」が77.8%であり、これら上位3項目は約8割の回答となっている(図表省略)。以下、「公園や広場で『ボール遊び禁止』等、外遊びが制限されるようになったから」が42.1%、「公園や広場の数が減ったから」が38.6%、「子どもの数が少なくなったから」が31.0%、「車の交通量が多くなったから」が25.2%、「子ども同士の友達関係が希薄になったから」が24.6%と続く。

 このような結果から、地域の安全性への不安も影響しているであろうが、放課後は習い事に行ったり、電子ゲームで遊ぶことを優先する子どもたちが多いために、外遊びが減ったと思っている人が多いようだ。

 以上が、小学生の放課後の過ごし方について、自分の子ども時代と比較しての母親の意識である。次に、今の小学生の過ごし方の実態をみてみよう。

4.放課後の過ごし方

(1)放課後の過ごし方別にみた「頻度得点」

 小学生の放課後の過ごし方として代表的なもの10項目(図表2と同じ項目)を挙げて、その頻度をたずねた結果が図表3である。「ほとんど毎日」の割合が最も高いのは、「自宅で勉強をする」(以下「自宅で勉強」)であり、次いで「電子ゲーム」「一人でテレビ」と続いている。「自宅で勉強」の頻度が高いのは、学校から出される宿題が含まれているからと思われる。

 また、過ごし方の頻度を比較するために、各項目について、「ほとんど毎日」に5点、「週に3回程度」に3点、「週に1回程度」に1点、「まったくない」に0点を与えて得点化した(以下「頻度得点」)。その平均値を図表3に示した(「評価得点」については後述する)。

 「ほとんど毎日」等の高頻度を示す回答割合が高いため、「自宅で勉強」が最も高い。次いで「電子ゲーム」「外遊び」「一人で読書(マンガを含む)をして過ごす」(以下「一人で読書」)の順となっている。

 こうした過ごし方の「頻度得点」を学年別にみると、「外遊び」は学年が上がるにつれて得点が低くなるが、反対に「クラブ活動」や「学習塾」、「電子ゲーム」は、学年が上がるにつれて得点が高くなる(図表省略)。

 先に、今の小学生の外遊びが少なくなった理由として、多くの母親が、「地域への不安」の他に、「学習塾や習い事、クラブ活動などで忙しくなったこと」や「電子ゲームをして過ごすことが多くなったこと」を挙げたことを述べた。実際に過ごし方の頻度を図表3でみると、確かに電子ゲームは高頻度でおこなわれているようだが、学習塾や習い事、クラブ活動の頻度は、必ずしも上位ではない。それでも外遊びが減った理由の上位に挙げられたのは、「頻度」のみでなく、「参加」状況も影響していると考えられる。

 すなわち、習い事等の参加状況をたずねた結果では、何らかの習い事等に参加している割合が全体の9割以上となっている。したがって、たとえ習い事等に行く日が週に1回でも、その曜日が友達同士で異なると、遊ぶ約束をしようとしても一緒に遊べる曜日が限られる。また、図表は省略するが、学年別に習い事等の参加状況をみると、学年が上がるにつれて参加件数が多くなる傾向があり、そうなると、ますます遊べる日が限られる。これらのことが背景となって、母親からの回答として、外遊びが減った理由の第1位に「習い事等」が挙げられていると思われる。

 以上が、放課後の過ごし方の全体的な傾向である。次に、放課後の過ごし方の代表例の一つとして、放課後の過ごし方の上位に挙がっている「電子ゲーム」について、その遊び方の実態を紹介する。

小学生の放課後の過ごし方の実態と母親の意識
(画像=第一生命経済研究所)

(2)電子ゲームの利用状況

1)電子ゲームの所有率
 携帯用の電子ゲーム機やテレビゲーム機(以下、電子ゲーム)を「持っている(兄弟姉妹が持っており、それを使って遊ぶ場合も含む)」と回答した割合(以下「所有率」)は、全体の84.1%であった(図表省略)。

 性別にみても大差はなく、男子の所有率は86.4%、女子は81.8%であった。学年別に所有率をみると、1年生が74.4%、2年生が79.5%、3年生が83.5%、4年生が88.1%、5年生が94.0%、6年生が91.3%であり、学年が上がるにつれて高くなる傾向がみられる。

2)電子ゲームをするにあたっての家庭でのルール
 電子ゲームをするにあたって、家庭で何らかのルールを定めているかどうかをたずねたところ、電子ゲームを「持っている」という回答者の82.0%が「ルールを定めている」と回答している(図表省略)。「ルールを定めている」の回答者の割合は、学年別には差があまり見られなかったが、性別では、男子87.6%、女子76.6%と、男子のほうが高い。

 具体的なルールの内容をたずねたところ、「『1日に何時間』というように、ゲームをする時間を制限している」が76.0%、「宿題や勉強が終わってから、ゲームをすることにしている」が59.7%、「友達と遊ぶときは、なるべくゲーム以外で遊ぶようにしている」が33.6%、「友達とゲーム機やソフトの貸し借りをしないことにしている」が29.4%、「使わないときには親に預けるようにしている」が7.2%となっている(図表省略)。さらに、回答者が自由に記述する回答欄には、「休日だけ親と一緒にゲームをする」や「屋外(公園等)に持って行かない」などの記述が多くみられた。

5.母親の評価

(1)子どもの放課後の過ごし方に対する母親の「評価得点」

 これまでみてきた小学生の放課後の過ごし方について、小学生の母親はどのように思っているのだろうか。

 図表3で挙げた「小学生の放課後の過ごし方10項目」について、「現状よりも増やしたいか、それとも減らしたいか」を母親にたずねた結果を得点化したものが図表3の右欄にある「評価得点」である。すなわち、10種類の過ごし方それぞれについて、「増やした方がいい」と回答した場合は2点、「やや増やした方がいい」には1点、「現状のままでいい」には0点、「やや減らした方がいい」には-1点、「減らした方がいい」には-2点を与えた平均得点である。得点が高いほうが評価が高く、得点がマイナスの場合は、「減らした方がいい」と思っている割合が高いことを示している。

 結果をみると、多くの母親が「増やした方がいい」と思っている過ごし方の第1位は「外遊び」であり、以下「自宅で勉強」「クラブ活動」「家族と買い物や遊んだりして過ごす」(以下「家族と一緒」)等と続いている。他方、「減らした方がいい」と思っている過ごし方は、「電子ゲーム」や「一人でテレビ」である。

(2)放課後の過ごし方に関する「頻度得点」と母親の「評価得点」との関係

 このような放課後の過ごし方に関する母親の評価と、子どもの実際の過ごし方の頻度との関係についてみるために、「頻度得点」を横軸、母親の「評価得点」を縦軸としてプロットしたものが図表4である。

 子どもがよく放課後におこなっていて、かつ母親の評価も高いもの(増やした方がいいと思っているもの)が「自宅で勉強」である。子どもがよくおこなっているが母親の評価は低いもの(減らした方がいいと思っているもの)は「電子ゲーム」である。反対に、あまり子どもたちがおこなっていないが、母親は増やした方がいいと思っているものは「外遊び」や「家族と一緒」等となっている。

小学生の放課後の過ごし方の実態と母親の意識
(画像=第一生命経済研究所)

6.放課後の過ごし方に必要なもの

 以上のように、小学生の放課後の過ごし方の実態と、その母親の評価をみてきた。最後に、こうした評価に合わせ、母親が望ましいと思う放課後生活を子どもが過ごすために、どのようなものが必要であると思っているのか、母親のニーズをみてみよう。

 回答結果をみると、「子どもが自由に、安全に遊べるような広場や公園」が75.0%で最も多く、次いで、「子どもが自由に、安全に遊べるような児童館や公民館等の屋内施設」(44.4%)、「公園や広場の監視員や見回り活動」(32.4%)、「学校の敷地内で行う多彩なクラブ活動」(32.1%)となっている(図表5)。

小学生の放課後の過ごし方の実態と母親の意識
(画像=第一生命経済研究所)

 こうした結果からも、多くの母親は、今の子どもたちには「電子ゲーム」というよりは、安全が確保された上で、「もっと外で遊んでほしい」と思っていることが伺える。

7.まとめ

-子どもが安心して外遊びができるようになるために-

 すでに各方面で指摘されている通り、本調査結果からも、子どもの外遊びが少なくなっていることが明らかとなった。その代わり、習い事や学習塾に通ったり、電子ゲームをして過ごすことが多くなっている。また、地域の安全に対する不安も、外遊びが少なくなった理由の一つに挙げられている。アンケート調査における自由記述欄においても、「外で遊ばせることが怖いので、家で過ごさせると、どうしても電子ゲームに夢中になってしまう」「外で遊ばせるよりも、習い事に行ったほうが、安全だし、友達もできる」といった意見が散見された。このように、多くの子どもたちが家で電子ゲームをして過ごしたり、習い事に通ったりするので、「放課後、外で遊ぼうと思っても、友達がなかなか見つからない」という意見もあった。まさに、外遊びができない悪循環になってしまっている。

 しかしながら、小学生の多くの母親はこのような状況に満足しているわけではない。やはり、多くの母親は、放課後、子どもに外で遊んでほしいと思っており、電子ゲームに夢中になることを望んでいない。

 子どもたちが、のびのびと外遊びができるようになるためにはどうしたらいいのか。主に低学年の母親の中には、「子どもたちの外遊びに付き添っている」という人も多い(1年生の母親の39.5%、2年生は20.5%、3年生は18.9%が、「子どもが公園で遊ぶ時には一緒に付き添うことにしている」と回答している)(図表省略)。しかし、付き添うことができる人ばかりではない。子どもの放課後生活のために必要なものとして、「子どもが自由に安全に遊べるような広場や公園」が第1位に挙げられたが、自由記述欄には、具体的な場所として、学校の校庭の放課後開放を望む声が多く寄せられた。すでに校庭開放を実施しているところが多いものの、地域によっては「安全管理の都合」上、放課後開放をしていないところもあるようだ。また、校庭の放課後開放をおこなっているという地域でも、放課後、サッカーチームなどの練習に使われていたりすると、一般の子どもたちが自由に遊べないということもあるという。

 少子化で子ども数が減っている中、子どもたちが少人数でいろいろな公園や広場で分散して遊ぶよりも、ある程度の人数が集まって遊ぶほうが子どもの安全確保のためにも安心である。「公園や広場の監視員や見回り活動」に対するニーズもあることも踏まえると、校庭のみならず、地域ごとに主要な公園をいくつか選択し、そこに監視員や見守り活動を取り入れる等、多くの子どもたちが集まって遊べる安全な場所を確保するための環境整備を図っていくことも、少子化対策として重要であると思われる。(提供:第一生命経済研究所

研究開発室 主任研究員 的場 康子