4人に3人は人間関係で悩んだことがある。上司と部下の微妙なギャップ
第一生命保険相互会社(社長 斎藤 勝利)のシンクタンク、(株)第一生命経済研究所(社長 小山 正之)では、全国に居住する20~59 歳の会社員601 名を対象に、標記についてのアンケート調査を実施いたしました。
この程、その調査結果がまとまりましたのでご報告いたします。
職場でバレンタインデーチョコは配られるか ●職場でバレンタインデーに女性がチョコを配る習慣は約4割。 ●50 代男性がもっともバレンタインデーチョコをもらっている!?
職場の人間関係について ●4人に3人は職場の人間関係で悩んだことがある。 ●男性よりも女性の方が人間関係の悩みが多い。 ●男性は「同性の上司」、女性は「同性の同僚」に対する悩みが多い。 ●6割の人が職場の人間関係の希薄化を感じている。 ●職場の人間関係を深めたい人は約6割。 ●男性よりも女性は職場の人間関係についてドライ? ●部下から信頼されていると思う上司は7割、上司を信頼している部下は6割の微妙なギャップ。
職場の男女平等、セクハラ、パワハラ ●職場が男女平等とは全く思わない女性は2割近い。セクハラがある職場は4割弱。 ●パワハラがある職場は5割弱。 ●パワハラがある職場では、上司と言い合えるのは2割未満。
会社を辞めたいと思うか、仕事にやりがいを感じているか ●会社を辞めたいと思ったことがあるのは4人に1人。 ●20 代女性の6割強は、定年まで今の会社で働きたくない。 ●やりがいを感じている人は6割、会社に行くことが楽しい人は5割弱。
会社で出世をしたいか、目標とする役職、出世に必要なもの ●男性は出世をしたいが6割強。女性は出世をしたくないが5割。 ●社長になりたい男性は約8%。 ●出世に必要なものは「判断力」「業務知識」「コミュニケーション力」。
≪アンケート調査の実施概要≫
1.調査地域と対象 全国に居住する20 歳から59 歳の会社員の男女
2.サンプル数 700 名
3.サンプル抽出方法 第一生命経済研究所生活調査モニター
4.調査方法 質問紙郵送調査法
5.実施時期 2007 年2月
6.有効回収数(率) 601 名(85.9%)
7.回答者の属性
職場でバレンタインデーチョコは配られるか
職場でバレンタインデーに女性がチョコを配る習慣は約4割。50 代男性がもっともバレンタインデーチョコをもらっている!?
職場でバレンタインデーに女性がチョコを配る習慣があるかをたずねました。「(習慣が)ある」と回答した割合は41.8%でした。「以前はあったが、最近はない」が28.0%を占めており、職場における、いわゆる義理的なバレンタインデーチョコは少なくなってきていると思われます。
性別年代別にみると、男性女性ともに年代があがるにつれて「ある」という回答割合が減る傾向にありますが、男性50 代では「ある」という回答割合が反転し、全体の中で最も高くなっています。
職場の人間関係で悩んでいないか
4人に3人は職場の人間関係で悩んだことがある。男性よりも女性の方が人間関係の悩みが多い。
今までに職場の人間関係で悩んだことがあるかをたずねました。
全体の75.6%が悩んだことがある(「たくさんある」26.0%+「多少はある」49.6%、以下同じ)と回答し、悩んだことがないという回答は2.7%に過ぎません。
性別でみると、男性(72.9%)よりも女性(78.5%)の方が悩んだ経験が多く、女性の3割以上が悩んだことが「たくさんある」と回答しています。
性別年代別では、男性の30 代・40 代、女性の20 代・30 代で悩んだことがたくさんあるという回答が多く、女性の20 代・30 代は約4割を占めました。また、男性40 代と女性30代では悩んだことがあるが85%を超えました。
職場の人間関係、誰に対する悩みか
男性は「同性の上司」、女性は「同性の同僚」に対する悩みが多い。
今までに職場の人間関係で悩んだことがあると回答した方(「たくさんある」「多少はある」と回答した方)に、誰に関する悩みかをたずねました。全体では、「同性の上司」という回答が58.1%で最も多く、「同性の同僚」が48.5%で続きました(図表3)。上司、同僚、部下のいずれも異性よりも同性に対する悩みの経験が多くなっています。
男性では「同性の上司」について76.5%と群を抜いて高い回答となりました。男性の「同性の上司」に対する悩みについて細かくみると、30 代・40 代では8割を超える回答となっています(図表4)。
女性では「同性の同僚」(57.7%)、「異性の上司」(45.9%)、「同性の上司」(38.6%)の順で高く(図表3)、「同性の同僚」については30 代以上でいっきに多くなり、6割以上で悩んだ経験がありました(図表4)。
職場の人間関係が希薄化していないか
6割の人が職場の人間関係の希薄化を感じている。
職場の人間関係が希薄化しているかをたずねました。
全体では60.6%が人間関係が希薄化している(「とても希薄化」13.0%+「どちらかといえば希薄化」47.6%、以下同じ)と感じていました。性別では大きな違いはありません。
性別年代別にみると、希薄化しているという回答は、男性女性ともに20 代と30 代以上とでは10 ポイント以上の差があり(20 代男性39.5%、30 代男性56.3%。20 代女性50.0%、30 代女性63.3%)、30 代以上の約3人に2人が希薄化していると感じています。
職場の人間関係を深めたいか
職場の人間関係を深めたい人は約6割。男性よりも女性は職場の人間関係についてドライ?
次に、職場の人間関係を深めたいかをたずねました。
人間関係を「とても深めたい」は5.3%に過ぎませんが、「ある程度は深めたい」(54.7%)を加えると、全体の6割が人間関係を深めたいと考えていました。
性別では、男性の7割弱が人間関係を深めたいと考えており、女性(約5割)よりも高い回答割合となりました。
性別年代別にみると、男性では40 代でやや低下するものの、全年代で6割以上が人間関係を深めたいと考えていました。一方、女性は20 代で約7割が人間関係を深めたいとしていますが、30 代以降は低下し続け、50 代では逆に深めたくない(「全く深めたくない」+「あまり深めたくない」)と考える人の方が過半数を占めています。
職場の人間関係の構築については、男性と女性でまったく異なる傾向となりました。
上司部下の微妙な信頼関係
部下から信頼されていると思う上司は7割、上司を信頼している部下は6割の微妙なギャップ。
部下に対する信頼について、上司に「部下を信頼しているか」をたずねたところ、7割強が信頼していると回答しました(「とても信頼している」8.4%+「ある程度信頼している」65.6%)(図表7)。逆に、部下に「直属の上司から信頼されていると思うか」とたずねたところ、信頼されているという回答が6割強(「とても信頼されている」6.7%+「ある程度信頼されている」58.9%)となり(図表9)、上司と部下で1割弱のギャップがありました。
今度は、上司に対する信頼について、上司に「部下から信頼されていると思うか」とたずねたところ、約7割が信頼されていると回答しました(「とても信頼されている」4.5%+「ある程度信頼されている」65.6%)(図表8)。逆に、部下に「直属の上司を信頼しているか」をたずねたところ、信頼しているという回答が約6割(「とても信頼している」12.0%+「ある程度信頼している」49.4%)であり(図表10)、こちらも上司と部下で1割弱のギャップがありました。
上司部下の信頼関係は、上司自身が思うほど部下はそう思っていない、といえます。
職場は男女平等か、セクハラはあるか
職場が男女平等とは全く思わない女性は2割近い。セクハラがある職場は4割弱。
職場が男女平等だと思うかをたずねました。全体では約5割(「とても思う」9.7%+「どちらかといえば思う」41.4%)が平等だと思うと回答した一方で、「全く思わない」が1割以上いました(図表11)。男性よりも女性の方が平等だと思わない人が多く、「全く思わない」が男性では1割未満であるのに対し、女性では2割近くになりました。
また、職場においてセクシャルハラスメント(以下、セクハラ)があるかをたずねたところ、「頻繁にある」という回答が約4%ありました(図表12)。「多少はある」(25.6%)を含めると、約3割の職場においてセクハラがあることになります。セクハラがあるという回答は男性よりも女性の方が多く、女性全体では約4割弱があると回答しています(「頻繁にある」5.4%+「多少はある」31.4%、以下同じ)。性別年代別にみると、女性の20 代30 代の5割近くが、セクハラがあると回答していました。
パワハラはあるか、意見は言い合えるか
パワハラがある職場は5割弱。パワハラがある職場では、上司と言い合えるのは2割未満。
職場でパワーハラスメント(以下、パワハラ)があるかをたずねました。
全体でパワハラがあるという回答は5割弱(「頻繁にある」9.0%+「多少はある」37.6%、以下同じ)で、半数近くにのぼりました。
男性女性での違いはほとんどありませんが、性別年代別にみると、男性40 代が突出して高く、6割がパワハラがあると回答しました(図表省略)。
パワハラの有無別に、職場の上下関係に関係なく言い合えるかの回答を比較してみました。パワハラがある場合、言い合えるという回答は2割未満(「何でも言い合える」1.0%+「ある程度は言い合える」17.6%、以下同じ)であるのに対し、パワハラがない場合では3割強となります。
パワハラがない職場では、パワハラがある職場の約1.7 倍、意見が言い合えるという結果になりました。
会社を辞めたいと思うか
会社を辞めたいと思ったことがあるのは4人に1人。20 代女性の6割強は、定年まで今の会社で働きたくない。
会社を辞めたいと思ったことがあるかをたずねたところ、全体では4人に1人が会社を辞めたいと思うことが「よくある」(24.8%)と回答しました(図表15)。これに「多少はある」(51.2%)を加えると、会社を辞めたいと思ったことがあるのは4人に3人ということになります。性別にみると、女性の約3割が「よくある」と回答しており、「多少はある」を加えると約8割が辞めたいと思ったことがありました。
定年まで今の会社で働きたいかの質問を性別年代別にみると、「働きたい」という回答は、男性の20 代30 代で約2割、女性の20 代30 代で約1割程度にとどまります(図表16)。特に20 代女性では働きたくないという回答が6割強(「どちらかといえば働きたくない」16.7%+「働きたくない」47.6%)も占めていました。
現在の仕事にやりがいを感じているか
やりがいを感じている人は6割、会社に行くことが楽しい人は5割弱。
現在の仕事にやりがいを感じているかをたずねたところ、全体ではやりがいを感じているが6割強(「とても感じている」15.5%+「多少は感じている」48.4%、以下同じ)となりました(図表17)。なお、男性の30 代40 代のみ、やりがいを感じている方が6割を下回ります。30・40 代男性は、会社に行くことは楽しいかという質問においても、楽しい(「とても楽しい」+「どちらかといえば楽しい」)という回答割合が低くなっています(図表18)。
会社で出世をしたいか
男性は出世をしたいが6割強。女性は出世をしたくないが5割。
会社で出世をしたいかたずねました。
全体では約5割の方が出世したいと回答しました(「絶対にしたい」7.3%+「ある程度はしたい」41.1%、以下同じ)。男性では6割強が出世したいのに対して、女性は3割強に留まり、むしろ出世したくないと考える方が約5割を占めます(「絶対にしたくない」8.9%+「あまりしたくない」40.4%)。
性別年代別にみると、男性で出世を「絶対にしたい」と思うのは20 代で約2割、その後30 代40 代までが約1割を維持します。一方、女性は20 代で1割を超えるものの、その後は3分の1以下に減少します。
目標とする役職、出世に必要なもの
社長になりたい男性は約8%。出世に必要なものは「判断力」「業務知識」「コミュニケーション力」。
会社で目標とする将来の役職をたずねたところ、男性では「社長」が約8%、「役員」「部長」がそれぞれ約10%、「次長・課長」が約17%であるのに対し、女性は「社長」「役員」「部長」がそれぞれ約2%、「次長・課長」が約9%と、相対的に低くなっています(図表20)。女性は「特にない」が7割以上を占めており、出世について消極的、もしくはあきらめの様子が見てとれます。
次に、会社で出世するために、絶対必要なものは何かをたずねたところ、男性女性ともにおおよそ似た回答となりました(図表21)。上位は、「判断力」「業務知識」「コミュニケーション力」と続きます。下位は「資格」や「語学力」となりました。
性別年代別でみると、男性で年代があがるにつれて「人間関係」と「行動力」を必要とする傾向がありましたが、他に特徴は見られませんでした(図表省略)。
≪研究員のコメント≫
会社員にとって、職場の人間関係の悩みは誰しも多かれ少なかれあるものです。今回の調査でも悩んだことがまったくないという回答は全体でわずか3%未満でした。男性女性ともに悩む相手として多いのはやはり上司でしたが、女性では上司以上に同性の同僚について悩んだことが多くなっていました。
上司と部下の信頼関係に関するアンケート結果からは、上司自身が思うほど部下はそう思っていないことがわかりました。自己評価が甘くなるということは、上司部下の関係に限ったことではありませんが、上下関係にとらわれず意見を言い合えるように、常に部下と向き合う心がけが大切ではないでしょうか。
さて昨今、職場の人間関係がドライになったといわれます。今回のアンケート結果でも、6割の方が職場の人間関係が希薄化していると答えています。一方、人間関係を深めたいかという質問に同じく6割の方が深めたいと回答しました。ここから、職場において人間関係が大切であると誰しも思っていることが見てとれます。
ただし、女性についてはやや状況が異なります。人間関係を深めることについて、女性は男性よりも消極的であり、その傾向は年代があがるにつれて強まります。その要因の一つとして、未だ職場が男性中心であることが考えられます。職場が男女平等とはまったく思わない割合は男女差が大きく、セクハラがある職場は女性の回答で4割弱もありました。また、女性の出世意欲は男性の半分程度であり、女性の7割以上が目標とする将来の役職を特にないと回答しています。さらに20 代女性の6割以上が定年まで今の会社で働きたくないと答えています。これらは女性が自らのキャリアビジョンを描けていないことを物語っています。少子化による労働力不足の一解決策として、女性の労働力に期待が集まっていますが、女性が働き続けたいと思える職場環境づくりが求められていると思われます。
一方、男性においても課題はあります。男性の30 代40 代では「人間関係の悩み」「仕事に対するやりがい」「会社に行くことが楽しいか」について否定的な回答が目立ちます。30 代40 代は年代的に職場の中堅的な存在であり、自分の上の世代と下の世代に挟まれながら仕事を進めていかなければなりません。また仕事の責任も増してきます。こうした背景の中で、人間関係に悩み、仕事のやりがい感やたのしさが色あせてしまうのでしょうか。
今回のアンケート調査では、上司と部下、男性と女性とでいくつかのギャップがありました。これらギャップを一つずつでも解決していくことが、職場の人間関係を良好にし、ひいては仕事の成果につながっていくものだと思います。上司は部下の、部下は上司の、男性は女性の、女性は男性の視点で少しでも考えてみると、互いにより良い関係作りにつながるのではないでしょうか。(提供:第一生命経済研究所)
研究開発室 副主任研究員 室井謙一
㈱第一生命経済研究所 ライフデザイン研究本部 研究開発室 広報担当(室井・新井) TEL.03-5221-4771 FAX.03-3212-4470 【アドレス】http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi