第一生命保険相互会社(社長 斎藤 勝利)のシンクタンク、(株)第一生命経済研究所(社長 小山 正之)では、全国に居住する20~59歳の会社員800名を対象に、標記についてのアンケート調査を実施いたしました。

 この程、その調査結果がまとまりましたのでご報告いたします。

≪調査結果のポイント≫

職場での交流の実態
●上司・部下や同僚と飲みに行く機会に「よく参加」するのは1割未満。
●年代が上がるにつれて、職場で飲みに行く機会は「かなり減った」と感じている人が多い。
●職場で飲みに行く機会を「必要」と考えている人は6割強、「楽しい」と考えている人は7割弱。

職場の人間関係上のコミュニケーション満足度
●職場のコミュニケーションについて、7割近くが「まあ満足」。
●男性20・30代と管理職で「満足」が多い。

職場でのメール利用
●メールは「気軽に送れる」反面、「真意が伝わっているか心配」など、利点欠点が混在。

職場環境の現状
●もめごとや仲の悪い関係ありは約34%、いじめ・仲間はずれ・無視ありは約14%。
●女性が多い職場ほど、もめごともいじめも多い。

職場ストレス
●職場でのストレスは、仕事そのもの、責任感、組織風土、人間関係、昇進地位の順で高い。
●信頼性やチームワークがある職場ではストレス得点が低く、権威的職場や競争の激しい職場では高い。

≪アンケート調査の実施概要≫

1.調査地域と対象   全国に居住する20歳から59歳の会社員の男女

2.サンプル数   800名

3.サンプル抽出方法   第一生命経済研究所生活調査モニター

4.調査方法   質問紙郵送調査法

5.実施時期   2007年9月

6.有効回収数(率)   763名(95.4%)

7.回答者の属性

全国の20~59歳の会社員800名に聞いた 『職場のコミュニケーションに関する アンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

*本稿で「職場」という場合は、「勤め先の中で、主に一緒に仕事をしている部・課」を指しています。

職場で飲みに行く機会・昼食・イベントへの参加

上司・部下や同僚と飲みに行く機会に「よく参加」するのは1割未満。
運動会や社員旅行などの大きなイベントには「参加したくない」が多め。

全国の20~59歳の会社員800名に聞いた 『職場のコミュニケーションに関する アンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 職場の人たちと飲みに行く機会や昼食、イベントや旅行について、どの程度参加しているかについてたずねました。飲みに行く機会について、上司・部下、同僚ともに「よく参加する」としたのは1割未満でした。昼食では上司・部下とは42.9%、同僚とは57.8%が「よく参加する」と回答しています。イベントについてみると、送別会や歓迎会などについては約6割が「いつも参加する」と答えましたが、運動会やスポーツ大会などは「そういう機会がない」が4割~5割を占めました。

 いずれの項目についても、小学生以下の子どもがいる母親では、「参加したいが参加できない」とする回答が多くなっています(図表省略)。



飲みに行く機会の増減

年代が上がるにつれて「かなり減った」と感じている人が多い。
特に減ったと感じているのは「官公庁」勤務者。

全国の20~59歳の会社員800名に聞いた 『職場のコミュニケーションに関する アンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 「現在の職場の人たちと飲みに行く機会は、以前と比べて増えましたか、減りましたか」という問に対して、32.8%が「かなり減った」、18.7%が「少し減った」としており、半数以上が「減った」と感じていることが明らかになりました。年代が上がるにつれて「減った」と感じている人が多くなっており、50代では6割近くに達しています。

 従業員規模別にみると、「官公庁」勤務の人で最も「減った」と感じている人が多くなっていました。



職場で飲みに行く機会の必要性と評価

飲みに行く機会を「必要」と考えている人は6割強。
飲みに行く機会を「楽しい」と考えている人は7割弱。

全国の20~59歳の会社員800名に聞いた 『職場のコミュニケーションに関する アンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 職場で飲みに行く機会をどのように考えているかについてたずねたところ、そうした機会を「楽しい」ととらえている人は全体の69.8%でした。また、そうした機会を「必要である」ととらえている人は61.1%でした。

 性・年代別にみると、男性に比べて女性では「楽しい」と感じている人も「必要である」と感じている人も少なくなっています。一方、職種別にみると管理的職業では「楽しい」と感じている人も「必要である」と感じている人も多いという結果となりました。



職場における人間関係上のコミュニケーション満足度

職場のコミュニケーションについては7割近くが「まあ満足」。
男性20・30代と管理職で「満足」が多い。

全国の20~59歳の会社員800名に聞いた 『職場のコミュニケーションに関する アンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 「職場でのコミュニケーションのうち、業務に直接関係しない人間関係上のコミュニケーションについて、あなたご自身は満足していますか」という問に対し、「非常に満足している」と回答した人は4.6%、「まあ満足している」と回答した人は68.2%となっていました。

 性・年代別にみると、男性において女性よりやや満足度が高い(「非常に満足している」と「まあ満足している」の合計)傾向があります。また、職種別にみると、管理的職業において満足度が高いことがわかりました。



メールの普及による職場への影響

メールは「気軽に送れる」反面、真意が伝わっているか心配も。
利点と欠点が複雑に混在しているのが実態。

全国の20~59歳の会社員800名に聞いた 『職場のコミュニケーションに関する アンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 メールを利用することで、職場内でどのような影響があるかについてたずねたところ、「非常にそう思う」と「まあそう思う」の合計で、「相手の時間や都合を気にしないでよいので、気軽に送れる」(83.4%)が最上位となりました。これに「メールの文言で、自分の真意がちゃんと伝わっているかどうか気になる」(79.0%)が続きました。以下、「メールで済むことは、直接会ったり電話をして話す必要がなくなる」(72.1%)、「部署や所属が変わるなど、会う機会が少なくなっても関係が途切れない」(61.0%)と続いています。

 一方で、「うつ病などの精神疾患が増える」(17.7%)や「職場のストレスが増大する」(20.2%)といった項目については非常に少ないものでした。

 上位下位ともに、利点と欠点が混在しており、一概に影響の良し悪しを問えない実態が浮き彫りとなりました。



職場におけるメールの返信のタイミング

業務上メール、特に上司から来たメールには6割が「すぐ返信」。
部下から来た非業務上メールは後回しにされる傾向あり。

全国の20~59歳の会社員800名に聞いた 『職場のコミュニケーションに関する アンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 職場におけるメールについて、相手・内容別にどのようなタイミングで返信をしているかについてたずねました。「メールに気づいたらすぐに返信することが多い」で最も回答が多かったのは「上司から来た報告・連絡・相談などの、業務用のメール」で、6割以上が「すぐに返信」と回答しました。上司に対しては、「飲み会の日程調整や雑談・交流などの、非業務上のメール」についても43.4%が「すぐに返信」としています。

 一方、部下からきた業務上のメールについては50.7%が「すぐに返信」としており、部下からの非業務上のメールについて「すぐに返信」としたのは33.9%となっていました。部下からの非業務上のメールについては、後回しにされる傾向があるようです。

 同僚からの業務上メールについては、部下からのメールとほぼ同じの50.9%が「すぐに返信」としていました。同じく非業務上のメールについて「すぐに返信」としたのは37.7%でした。



職場におけるもめごとや仲の悪い関係

「ある」(「とてもある」と「まあある」)は3割強。
女性比率が高くなるにつれて、もめごとや仲の悪い関係が増える。

全国の20~59歳の会社員800名に聞いた 『職場のコミュニケーションに関する アンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 職場において、業務以外でのもめごとや仲の悪い関係があるかについてたずねたところ、「とてもある」が7.6%、「まあある」が26.5%、「あまりない」が42.2%、「まったくない」が12.6%で、「わからない」が10.6%となりました。

 職場の男女構成別に比較をすると、「ある」とした割合(「とてもある」と「まあある」の合計)が、「男性のみ」では22.9%、「どちらかといえば男性が多い」では29.7%であるのに対し、「男女が同じくらい」では36.6%、「どちらかといえば女性が多い」では46.2%に上るなど、女性の比率が増えるにつれてもめごとや仲の悪い関係がある割合が高くなっている実態が明らかとなりました。



職場におけるいじめ・仲間はずれ・無視

4分の1以上の職場が、実態を「わからない」。
ここでも女性比率が高くなるにつれて、いじめや仲間はずれが増える。

全国の20~59歳の会社員800名に聞いた 『職場のコミュニケーションに関する アンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 職場において、いじめや仲間はずれ、無視などがあるかについてたずねたところ、「現在ある」が13.8%、「以前はあったが、現在はない」が15.5%、「これまでにないし、現在もない」が45.1%となりました。なお、「わからない」が25.6%を占めており、4分の1以上においていじめの有無がわからない状況であることが明らかとなりました。

 職場の男女構成別に比較をすると、「現在ある」とした割合は、「男性のみ」では4.8%、「どちらかといえば男性が多い」では10.7%であるのに対し、「男女が同じくらい」では16.1%、「どちらかといえば女性が多い」では22.5%に上るなど、女性の比率が増えるにつれていじめや仲間はずれ、無視のある割合も高くなっている実態が明らかとなりました。「以前あったが、現在はない」についても、「どちらかといえば女性が多い」で最も多くなっています。



職場ストレス

仕事そのもの、責任感、組織風土、人間関係、昇進地位の順で高い。
人間関係についてのストレスは、正社員も非正社員も同様。

全国の20~59歳の会社員800名に聞いた 『職場のコミュニケーションに関する アンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 職場のストレスについて、「仕事の内容や仕事の量など、仕事に関するストレス」「組織内での自分の役割や、責任感に関するストレス」「昇進や地位に関するストレス」「職場の人間関係に関するストレス」「職場の方針ややり方など、組織構造や組織風土に関するストレス」の5項目でたずねました。その結果、「仕事そのもの」「責任感」「組織風土」「人間関係」「昇進地位」の順でストレスあり(「非常にある」と「まあある」の合計)が多くなっていました。人間関係以外のストレスについては、女性より男性で、非正社員より正社員で多くなっていますが、人間関係のストレスについてはそうした属性による差がないのが大きな特徴です。



職場の雰囲気とストレス得点

ストレス得点低群では、信頼性やチームワークあり。
ストレス得点高群では、交流不足や権威主義の傾向あり。

全国の20~59歳の会社員800名に聞いた 『職場のコミュニケーションに関する アンケート調査』
(画像=第一生命経済研究所)

 10ページのストレス5項目を得点化※1してストレス得点を作成し、高群・低群に分けて職場の環境との関係を探りました。その結果、職場について「管理者と部下の人間関係は、温かみや信頼感がある」「わきあいあいと、にぎやかで活発な雰囲気がある」「社員のチームワークがよい」と評価した人は、ストレス高群の人より圧倒的にストレス低群の人で多いことがわかりました。

 逆に、「若い社員と年配の社員の交流が少ない」「他人に対して無関心な人が多い」といったコミュニケーション不足を示す項目や、「社員間の競争が激しい」「過程よりも結果を重んじる『成果主義』である」といった項目、さらに「職場では、事を荒立てないことが最優先とされる」「立場が上の人の意見には、意を唱えにくい雰囲気がある」「ルールや決まり、慣習等に厳しい」といった閉鎖的・硬直的な点を示す項目については、ストレス低群の人よりストレス高群の人で回答が多くなっていました。

 ※1:「非常にある」を3点、「まあある」を2点、「あまりない」を1点、「まったくない」を0点とし、5つのストレス項目の回答の得点を合計したもの

≪研究員のコメント≫

 調査から、職場で飲みに行く機会が減少している一方で、そうした機会は「必要」で、「楽しい」と感じている人も多いことがわかりました。職場の飲み会やイベントに「参加したくない」という意見は多くありません。一方、職場における人間関係上のコミュニケーションについて、「非常に満足」と回答した人は多くありませんでした。職場のコミュニケーション環境の悪化を指摘する際に、しばしば引き合いに出されるメールの普及についての評価としては、肯定的なものと否定的なものが混在しており、一概に功罪は問えませんでした。一方、もめごとやいじめについては、女性の比率が高まるほど出現率が高いことがわかりました。職場のストレスと職場環境の関係をみると、「コミュニケーション不足」「競争」「閉鎖的・硬直的」なキーワードを含む項目については、ストレス高群の回答が多くなっています。

 近年の職場を取り巻く環境変化の要因として、多忙化や働き方の多様化、メールの普及によるコミュニケーション形態の変化、女性の就業率の高まり、中途採用の増加等があげられます。今日、こうした環境の多様化に、職場のコミュニケーションの変化が追いついていない実情があるようです。そもそもコミュニケーションには世代間格差があるものですが、定年延長によりこうした格差もさらに拡大するでしょう。職場のコミュニケーション不全が悪影響をもたらすことは、本調査結果からも示唆されています。

 これらへの打開策としては、職場において積極的にコミュニケーションの機会を設け、社員間の信頼性を高めることにより、社員の心の安定を図ることが大切です。従来、それらは「飲みニケーション」という形で行われてきましたが、ライフスタイルや働き方が多様化する中、職場のコミュニケーションも多様化を図っていく必要があります。ヒアリング調査からも、育児中の母親のように「飲みニケーション」に参加したくても参加できない人は、業務とも非業務ともいえない部分でのコミュニケーションから取り残されていく不安を抱えていることが明らかになっています。

 コミュニケーションの多様化の一端を担うものとして期待されるメールですが、職場のコミュニケーションにおけるメールの導入は、業務上の合理性・効率性追求という点で大きなメリットをもたらしていますが、かならずしも「人間関係」というインフォーマルな部分まではカバーできていません。メールで用件が済むからといって対面コミュニケーションを削いでいったり、対面で済むことまであえてメールにするといった行動は、表面的には合理的・効率的に感じられるかもしれませんが、コミュニケーションを阻害する要因ともなりかねません。

 大切なのは、「様々な形でのコミュニケーション機会と手段」を用意し、一人一人が多様な形でそういうものに参加していくことではないでしょうか。(提供:第一生命経済研究所

研究開発室 副主任研究員 宮木由貴子

㈱第一生命経済研究所 ライフデザイン研究本部
研究開発室 広報担当(室井・新井)
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FAX.03-3212-4470
【アドレス】http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi<