前日の海外時間では、本日13日にイタリア政府から欧州委員会への新予算案の提出期限を迎える中でユーロの上値が意識されましたが、ユーロドルはあっさりと1.13ドルを割り込み、年初来安値を更新しました。一時1.12161ドルまで下値を拡大しており、本日の予算案提出にてイタリア政府がEU側の条件に合意するような展開にならない限りは、ユーロの買い戻しという流れにはならない公算です。事前報道においてもポジティブな報道が一切ないことを踏まえると、欧州委員会による制裁が現実味を帯びてきそうです。制裁措置の内容としては、最大で国内総生産(GDP)比0.5%相当の制裁金を科す可能性が考えられます。
ポンドについては、引き続きブレグジット交渉についてのヘッドラインで一喜一憂する動きとなりました。合意目前から、一気に合意なき離脱への可能性が取り沙汰されているブレグジット交渉ですが、前日も有力紙であるFTが、バルニエ首席交渉官が離脱協定について「主要項目が13日にも英内閣に示される準備が整った」と伝えたことにより、ポンドドルは1.2870ドル付近から1.2930ドル付近まで反発しましたが、すぐさま英首相報道官が「バルニエ首席交渉官ついてのFT紙報道には懐疑的」と発言しており、ポンドはすぐさま反落、先行き不透明感も一層強まっています。メイ英首相は「ブレグジット交渉は現在、大詰めを迎えている」といつも通りの発言をしているものの、ここにきて「交渉は極めて厳しい」との文言を追加しており、状況の悪化を如実に表していると考えられます。
NYダウは暴落、世界経済が不透明になっているなか、アップル向けに顔認証技術を提供している部品メーカー・ルメンタムが業績見通しを引き下げたことで、iPhoneなどの需要が振るわないとの懸念が広がりアップル株が急落したことが主な要因です。NYダウは一時640ドル超下落したほか、ナイト・セッションの日経平均先物が440円下落し、本日の日経平均株価においても700円超の下落幅となっており、本日の欧州委員会とイタリアの動向次第では海外時間の株式市場も下落の一途をたどるかもしれません。
今後の見通し
本日については、やはり欧州委員会とイタリアの軋轢がどれだけマーケットへ影響を及ぼすかという点になりそうです。既にユーロドルで年初来安値を更新していることから、マーケットの目線はユーロ売りに傾いています。もちろん、ポジティブサプライズがあれば一気にユーロの買い戻しが強まる可能性はありますが、現実的に考えると、ユーロはどこまで下値を拡大するのかという点の方に注目すべきでしょう。本来であれば、ここで悪材料出尽くしという流れによりユーロが買われる動きが活発化しそうですが、今回においては、これから制裁が発動される懸念があるため、まだまだ下落余地はあると考えられます。1.17ドル半ばから1.12ドル前半までの下落が、イタリアの予算案問題によって引き起こされたユーロ売りです。ある程度織り込まれているかとは思いますが、1.10ドルを割り込むかどうかという水準までは下落する可能性がありそうです。
ブレグジット交渉においては、EU側が11月の臨時EU首脳会議を開催しようとすれば、明日14日の通知がぎりぎりの期限だと言われていましたが、この点においてはほぼ不可能と考えた方がよさそうです。12月13-14日の開催に向けて、英国側がどの程度明確な提示と説明ができるのかが焦点になりそうです。言い換えると、12月半ばまではポンドの売り材料がずっと残っているということになります。一時ブレグジット交渉については、楽観的な見方が強まりましたが、既にこの見方はする向きは今後はないでしょう。落としどころとしては、ブロードベントBOE副総裁が述べている「英国がEUと移行期間で合意した上で来年の3月29日に離脱する」、ここに落とし込むことができれば、一旦はポンドが落ち着きを取り戻しそうです。
ドルについては、昨日のNYダウの暴落があっても下値が限定的となっており、良く言うと底堅い動き、悪く言うと完全にレンジ内での動きになっています。10月に就任したばかりのデーリー・サンフランシスコ連銀総裁(FOMCの投票権有り)においても「緩やかな利上げ政策を継続すべき」との考えを示しており、緩やかなドル高基調は今後も継続するものと考えられます。
年初来安値更新、イタリア次第ではもう一段安の可能性
ユーロドルについては、年初来安値をイタリアの予算案問題を待たずして更新しました。テクニカル的にもファンダメンタルズ的にもユーロを買い進める動きは限定的であり、どこで売るのかというところがポイントになりそうです。昨日のトレードとしては、1.1350ドル付近までの戻りがあれば良かったのですが、1.13ドル割れにより追随のショート、利食い目途であった1.1220ドルでこのトレードも手仕舞です。1.13ドルのラインがレジスタンスになることを想定し、1.1290ドル付近での戻り売り戦略。ただ、前日同様に1.12ドルを割り込んでしまうようであれば追随ショートも検討します。利食い目途は1.1120ドル、損切りは1.1350ドル付近とします。
海外時間からの流れ
ユーロドルはあっけなく年初来安値を更新しましたが、ポンドドルについては昨日注目ラインと寄稿した1.2950ドルのラインを回復することはできませんでした。バルニエ首席交渉官の発言でポンド買い戻しの場面でも1.2930ドルで上値を抑えられており、1.2950ドルのラインを明確に上抜けるまでは、ポンドショートの考えで問題ないと考えています。
今日の予定
本日の経済指標としては、英・雇用統計、独・11月ZEW景況感調査、ユーロ圏・11月ZEW景況指数などが予定されています。要人発言としては、カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、ブレイナード・FRB理事の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。