前日については、悲観的な見方が強まっていたブレグジット交渉にてポジティブサプライズがあったため、ポンドが急反発する動きとなりました。英BBCなど現地メディアが一斉に「事務レベルでは英・EU間で離脱合意文書の作成にこぎつけた」と報じたことで、じりじりとポンドの買い基調が強まり、メイ英首相が14日に特別閣議を開き「離脱合意案を議論する」と伝わると、ポンド買いが加速し、ポンドドルは1.2950ドル付近から1.3050ドル付近まで上昇しました。ただ、フォスター民主統一党(DUP)党首が「EU側が決めた北アイルランドに対する通商ルールは受け入れ難い」と発言しており、英議会内のEU懐疑派も反発していることから、合意に閣議や議会の承認が得られるかどうかは不透明との見通しが強まり、上昇起点となる1.2950ドル付近まで再度下落する動きとなりました。

ただ、本日東京時間では、一部で「英閣僚の一部がブレグジット草案を支持する意向を示した」と報じられており、ポンドドルは1.3030ドル付近まで上昇する場面が見られました。「ブレグジット交渉合意」「合意なき離脱」の報道を交互に繰り返しているものの、総悲観状態から今度は合意期待が強まっており、ポンドについては当面ブレグジット交渉のヘッドラインのみがマーケットを動かす材料になるのではないでしょうか。

あくまで推測ではあるものの、EUと合意した内容が北アイルランドに特化したバックストップ案の可能性が高く、またそのバックストップから出る方法が共同モニタリングの形になるのであれば、民主統一党と離脱強硬派の双方の反対を招くこととなり、最終合意においてこの2点にポジティブサプライズがなければ引き続き国内政局の厳しい状況は変わらない可能性は十分考慮する必要がありそうです。今後のタイムラインとしては、11月25日に臨時サミット、12月10日に議会投票となる可能性が高いと報じられています。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

本日については、上述したポンドは当然ですが、引き続きユーロへの注目も引き続き継続しそうです。ディマイオ副首相が、欧州委員会に提出する来年の予算案の主要項目全てに変更はないと発言しており、ここまでは市場コンセンサス通りではありますが、欧州委員会が制裁プロセスに踏み切るかどうかに注目が集まります。制裁措置の内容としては、最大で国内総生産(GDP)比0.5%相当の制裁金を科す可能性が指摘されています。

ポンドについては、本日14日現地時間午後2時(日本時間午後11時)に草案承認のために行われる臨時閣議が注目されそうです。閣議では半数の支持を得る必要がありますが、現段階の報道では、メイ英首相は半数以上の閣僚の支持を集める事が出来る見通しとなっています。ただ、同草案においてメイ英首相がEUに譲歩しすぎているとの批判も強い事から、投票後に閣僚が辞任する可能性があります。辞任が相次げば、政府内のメイ英首相の立場が不安定化する可能性があり、その際は上昇後に下落という、まさにヘッドライン相場になりそうです。また、離脱協定を英議会を通す必要があり、議会の支持を得る事はより困難と考えられるため、どちらに転んでも上昇後のポンドは一旦調整の売りが出やすい地合いになりそうです。

欧州委員会の制裁待ちのイタリア、とてもユーロを買う地合いではない

ポンドに主役の座を奪われたユーロではありますが、イタリアの予算案問題は何の変りもなく、淡々と欧州委員会が制裁を科すかどうかという状況になっており、引き続きユーロを積極的に買い進める可能性は低いと考えています。1.1290ドル付近でのショートは成立、昨日から戦略自体は変わりなく利食い目途は1.1120ドル、損切りは1.1350ドル付近とします。

海外時間からの流れ

ポンドが想定外に上昇の動きを見せ、ユーロについてもポンドに連れ高となりましたが、ユーロの状況を鑑みると、ユーロ単体で上昇するというケースは考えづらく、前日の上昇は一時的なものだと考えています。本日についても、ヘッドラインでポンドに連れ高する動きがありそうですが、引き続き影響は限定的だと思われます。

今日の予定

本日の経済指標としては、独・第3四半期GDP、英・10月消費者物価指数、ユーロ圏・第3四半期GDP(改定値)、ユーロ圏・9月鉱工業生産、 米・10月消費者物価指数などが予定されています。要人発言としては、クオールズ・FRB副議長の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。