前日については、引き続きブレグジット交渉関連の報道を受け、ポンドが乱高下する動きとなりました。ほぼ事前予想通りに事が運んでおり、まずは臨時閣議で英国とEUが暫定合意したEU離脱協定案を承認しました。直前に、メイ英首相の不信任投票を英保守党幹部が求めると報じられたことによるポンドの下落分を一気に取り戻す動きとなりました。閣議後に予定されていたメイ英首相の声明発表が取りやめになったと伝わるとポンドが再度売られたものの、実際には予定通り同首相は声明を発表し、「英・EU離脱協定案は閣僚の了承を得られた」との発言で事前の下落分を再度取り返すという、まさに乱高下という言葉がぴったりの動きとなりました。
詳細については、本日15日にメイ英首相が英議会にて説明する予定ですが、ある程度の材料は出揃っていることもあり、余程のサプライズがない限りは動きは限定的になりそうです。今後の焦点としては、閣議合意はしたものの、予想通り全会一致でなかったことから、ここから議員の辞任が相次ぐ可能性があります。他には、昨日の閣僚承認を受け、EU臨時首脳会議で英国とEUが正式に合意した後、英国議会承認を通す必要がありますが、民主統一党(DUP)を筆頭とした反対派の支持を得るのはかなり難しいと考えられるため、依然として先行き不透明感が強いことには変わりがなさそうです。
イタリアの予算案問題については、イタリアの修正拒否を受け、EU側は制裁手続きの発動も視野にイタリアへの対応を見極めることになります。今後の予定としては、欧州委員会は21日(最長で30日)にイタリア予算案への最終的な判断を示すとされています。EUの財政ルール軽視を放置すれば、単一通貨ユーロの信認を揺るがしかねないとの警戒が強く、最大で国内総生産(GDP)比0.5%相当の制裁金を科すことにならば、ユーロはもう一段安を試す展開になりそうです。
今後の見通し
イタリアの姿勢としては、欧州委員会が求められていた修正を行うことはせず、政赤字見通しをGDP比2.4%、経済成長見通しを1.5%を維持しました。ただ、民営化や公共投資などについては一部修正している箇所があるため、この点を欧州委員会がどのように判断するのかに注目が集まりそうです。また、毎年の歳出抑制が欠かせない財政健全化への効果は限定的にはなりますが、不動産の売却などの歳入拡大策を欧州委員会に新たに報告するとの報道もあるため、制裁の規模が小さくなる可能性はありそうです。
ポンドについては、目先落ち着きを取り戻しそうですが、閣議承認は既に織り込まれていたため、議会承認が得られるかどうかがポイントになりそうです。現時点では、かなりの反発が予想されていますが、内容によっては反対派の姿勢が緩和される可能性もあり、メイ政権からの要人発言は当然ながら、最大の反対派と考えられるフォスター民主統一党(DUP)党首の発言などもマーケットを大きく賑わせそうです。ほぼサプライズはないとは思いますが、本日のメイ英首相の声明では、前日承認された離脱協提案の詳しい内容が説明される予定です。現時点では、詳細不明ではりますが、EU側に偏りすぎた条件による承認となれば、ポンド売りが再熱しそうなため、この点だけは押さえておく必要がありそうです。
ドルについては、前日発表された米・10月CPIにて前月比+0.3%とコンセンサス並みの結果となり、コアCPIも+0.2%と前月から0.1%ポイント上昇となっており、12月利上げに障壁となる内容にはなりませんでした。9月に弱かった中古車価格の予想以上の反発が主因で、10月の数字が押し上げられたのではないかとの見方もありますが、12月利上げコンセンサスに変更はないものと考えられます。
ユーロドル、何とかテクニカルポイントでは上値が抑えられた
臨時閣議で英国とEUが暫定合意したEU離脱協定案の報道で、ポンド買いに連れるようにユーロも上昇しましたが、テクニカルポイントである1.1350ドル上抜けには至っておらず、劣勢ではあるもののユーロドルのポジションはまだ保持しています。1.1290ドルでのショート、戦略に変更はなく利食い目途は1.1120ドル、損切りは1.1350ドル付近です。
海外時間からの流れ
一歩ずつではありますが、ブレグジット交渉が前進しています。ただ、北アイルランドに特化したバックストップ案での合意の可能性が高いため、民主統一党と離脱強硬派の双方の反対を招くことを防ぐためにも、共同モニタリングという形は避ける必要がありそうです。メイ英首相の声明において、合意内容がどのようなものになるのかにより、11月25日の臨時サミット、12月10日の議会投票までのポンドの動きが見えてきそうです。
今日の予定
本日の経済指標としては、トルコ・8月失業率、英・10月小売売上高指数、米・10月小売売上高、米・11月フィラデルフィア連銀景況指数、米・新規失業保険申請件数(前週分)、米・11月NY連銀製造業景気指数などが予定されています。要人発言としては、クオールズ・FRB副議長、パウエル・FRB議長の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。