少子高齢化により人口減が確実な日本。総務省統計局の「住宅・土地統計調査結果」(平成25年版)によると、2013年の空き家数および空き家率は年々増加しており、13.5%に達している。空き家問題は深刻で、2033年には空き家率が30.4%まで上昇するという推計もある。こうした中、不動産のだぶつきが懸念される日本ではなく、経済成長・人口増加が著しい海外市場での不動産投資を加速する動きが出てきた。

海外不動産投資のメリット

Malaysia
(写真=wong yu liang/Shutterstock.com)

海外不動産投資のメリットはなんといっても、成長率の高い国に投資ができることだろう。日本の国内総生産(GDP)は1%台だが、中国や東南アジアに目を向ければ、5~7%台という国はざらにある。こうした国々は若年人口が多く、人口ボーナス期のメリットを享受している。若い人が多ければ当然不動産需要も活発で世界から投資が集まる。

こうした国に投資することで、資産のポートフォリオを拡大できるのだ。また、アジアの新興国では、不動産価格が日本に比べて手頃だ。日本不動産研究所の調査(2018年4月現在)によると、東京の高級住宅価格を100とした場合、マレーシア・クアラルンプールは26.0、インドネシア・ジャカルタは20.1、タイ・バンコクが25.6と4~5分の1程度。日系企業の進出が著しいベトナム・ホーチミンにいたっては、9.7という割安感だ。

海外不動産投資のデメリット1:不確実性

ただ、海外不動産投資にはデメリットも多くある。1つは不確実性だ。家賃収入というインカムゲインを目的とする日本国内の不動産投資とは違い、多くの海外不動産投資は値上がりを見込んでのキャピタルゲインを目的とする。成長率の高いアジアの新興国には政治的、地政学的なリスクが付きまとう。例えば、軍政によるクーデターがたびたび引き起こされるタイは、「アジアの優等生」と呼ばれていた。

2018年に初めての政権交代を迎えたマレーシア、2019年4月に総選挙が実施されるインドネシアなどだ。特に近年、経済力を武器に中国人による海外不動産投資が活性化しており、多くの国が神経をとがらせている。例えば、マレーシアとシンガポールの国境で進められていた「フォレストシティー」というプロジェクトがある。

中国不動産開発大手の碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)が主導する事業で、親中派とされたナジブ前首相のイニシアチブで推進された。人工島4つを造成して、オフィスビルやホテル、高級住宅、インターナショナルスクール、会議場などを建設するという総工費1,000億ドルの巨大プロジェクトだ。最終的には、居住者数70万人の一大都市を建設する計画となっている。

シンガポールまで目と鼻の先という立地もあり、購入者はシンガポール人も多いとされているが、中国資本のデベロッパーだけに、大半は中国人だ。中国本土から直行便を飛ばし、中国からのバイヤーを無料招待して不動産見学ツアーを行っているという評判もあった。

5月の政権交代で、13年ぶりに首相の座に返り咲いたマレーシアのマハティール首相は、このフォレストシティー事業をやり玉にあげ、「外国企業がマレーシアで、地元住民が到底購入できないような価格の外国人向け住宅を建設するのはおかしい」と発言。「同地区で不動産を購入した外国人には、長期滞在のためのビザを発給しない」とも述べた。

中国人不動産投資家の多くは、将来的な移民の可能性も考えて不動産を購入する。長期ビザが発給されないのであれば、不動産を買ってもうま味がないということで、巨大プロジェクトの先行きに暗雲が漂う。このように、新興国では政治変動に伴って政策が変更される可能性が高い。また、リーマンショックから10年経ち、米中経済摩擦も解決の見通しが経たない中で、世界的なリセッションを警戒する声も出ている。いまは好調な新興国の経済も、世界金融危機の引き金が引かれれば崩れかねないのだ。

海外不動産投資のデメリット2:現地の物件を見られない

また、海外不動産投資は現地の物件を見ずに購入するケースが多いのもリスクだ。日本の不動産投資なら、現地調査や周辺の不動産会社への聞き込みを欠かさない人でも、海外投資となると勝手が違い、おざなりになってしまうケースもある。もし海外投資をするなら「ハワイが好きだからハワイに物件を買ってみようか」くらいの意識で、よく知っているエリアに投資することがおすすめだ。

また、海外ならではの商習慣の違いで物件価格を現金で一括決済したり、工事進捗ごとに払うプレビルド形式をとったりする。融資を受けて他人資本で投資ができる日本の不動産投資に比べて、効率的な投資ができているとはいいがたい。このように、海外不動産投資も全てがバラ色ではない。メリットだけでなくデメリットも冷静に考えて判断すべきだろう。(提供:百計ONLINE

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