中国人観光客の「爆買い」ブームは終わったとされるが、中国人富裕層の日本への不動産投資欲は依然高いといわれている。中には、不動産を購入するために日本を訪れる観光客もいるといい、最近では都心部だけでなく地方の別荘などでも中国人バイヤーによる購入が目立つ。今回は、世界中で不動産を購入する中国人富裕層が日本の不動産を好む理由をみていこう。

日本不動産のメリット、距離、信頼性、割安感

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(写真=Kzenon/Shutterstock.com)

まず、中国人が日本の不動産を好む理由として、距離的・心理的な近さがある。中国には「都市戸籍」を持つ人と「農村戸籍」しか持っていない人の間で大きな隔たりがある。都市部に住んでいる富裕層でも、「農村戸籍」であれば「子どもを地元の高校に行かせることができない」「手厚い行政サービスを受けられない」といった差別に直面する。

そこで、海外に不動産を買って子どもに教育を受けさせ、将来的には永住権や市民権を手に入れて移民していくのだ。中には、一族の中でそれぞれ別の国に移住し、世界中に人的ネットワークを拡大するケースもある。中でも日本は中国から距離的に近く、文化的にも共通点が多い。移民を考えた場合にもメリットがあるというのだ。

中国人はもちろん、中国国内の不動産にも投資しているが、基本的に中国では土地は政府のもの。また、人民元や中国政府そのものにも全面的な信頼を置いてはいない。その点、日本では外国人であっても不動産は自由に売買ができ、土地は永久的に自分のものになる。資産保全のためにも日本の土地を買うのだ。

そして、日本の不動産に割安感があるのも理由の一つだ。日本ではバブル崩壊後、不動産価格が低迷した。既に、北京や上海、香港、台湾、シンガポールなどと比べても割安感がある。日本の不動産価格は長期的に横ばい、良くいえば安定的であることも安心感につながっている。

各国で中国人を念頭に置いた外国人への不動産購入規制

一方、中国人投資家の不動産熱に、海外の国々も神経をとがらせている。ニュージーランド政府は2018年に入り、外国人の不動産購入を禁止する法令を出した。ニュージーランドでは不動産価格が高騰しており、首都ウェリントンの住宅価格は2017年、前年比18%増となったという。ニュージーランドでも不動産を購入する外国人の大半は中国人で、この政策も中国人投資家の流入に歯止めをかける狙いがあるとみられる。

また、中国人の移民先として人気のカナダ・バンクーバーも不動産価格が急騰したため、地元政府が外国人の不動産購入に対して課税を決定したが、「焼け石に水」だという。親中派のナジブ前政権による中国資本の投資誘致が活発化していたマレーシアでは、2018年5月、政権交代が起こり、15年ぶりにマハティール首相が政権をとった。

マハティール首相は、中国の不動産大手・碧桂園(カントリーガーデン)がマレー半島南部のジョホール州とシンガポールの国境に人工島を造成する巨大事業「フォレストシティー」を問題視。同地区で不動産を購入した外国人には長期ビザを発給しないと述べ、波紋を呼んでいる。このように、世界の国々で中国人を念頭に置いた外国人への不動産購入規制が始まっているが、日本はまだそうした措置はとられていない。

チャイナマネーで市場活性化も

中国人は、資産として不動産に執着する伝統がある。結婚を考える若い中国人男性は、まず相手の女性の親からマンションを持っているかどうか確認されるというほどだ。中国人投資家の不動産バブルを規制しようという動きもあるが、長らく低迷していた日本の不動産業界の中には、チャイナマネーを呼び込むことで、市場を活性化したいと歓迎する向きもある。東京オリンピックまで日本の不動産価格は上がると見込んでいる中国人投資家も多く、当面は中国人による不動産投資熱が継続しそうだ。(提供:百計ONLINE

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