「父親が住んでいる自宅の隣が空いているので子どもの夫婦が家を建てる」というケースを目にすることがあります。土地は父親が所有していて、建物は子どもの資金で建てますが、「土地を使わせてもらうために権利金や地代を父親に払う」ということはあまりありません。父親も子どもに対して地代を要求することはあまりないでしょう。

このようなケースの場合、子どもは無償で親の土地を使わせてもらっているわけですが、その対価として何か支払う必要があるのでしょうか。また、贈与税などの税金は発生するのでしょうか。今回は、親子間での土地の貸借について解説します。

一般的な土地の貸し借り

family
(写真=Syda Productions/Shutterstock.com)

まずは、一般的な土地の貸借について解説します。他人との間で貸し借りをする場合は、土地の賃貸借契約を結びます。一つの土地は、貸し主(地主)の持ち分である「底地」と、借り主の持ち分である「借地権」に分かれることが一般的です。借り主である「借地権者」は、借地権設定時にその対価として権利金を支払うことで土地を利用することができ、家を建てることができるようになります。あわせて、毎年土地の使用料として地代を支払っていくことが通常です。

一般的に借地権は、借り主側の権利が非常に強くなります。旧法と呼ばれる「借地法」によって設定された借地権は、地主側が土地を自分のために使いたいからといって借地権の更新を拒否することはできません。また、建物の明け渡しを求めたり、更地にして返還するように要求したりすることも、正当な理由がないとできないのです。

地主側にとっては、権利金や地代を受け取れる半面、自分の土地であっても自由に使うことができないというデメリットもあります。借り主側にとっては、土地を購入するよりも費用がかからないことが多く、毎年の固定資産税等の負担もありません。半面、建物を増改築するときなどは地主の承諾が必要となり、多くの場合、手数料を地主側に支払うことになります。

また、借地権を売却することもできますが、通常の土地と比べて資産価値が低くなるケースが多くなっています。このように他人との間での土地の貸借では、金銭のやり取りの他にさまざまな権利関係が発生するため注意が必要です。

親子間の土地の貸し借り

それに対して親子間での土地の貸借では、一般的には権利金の支払いも毎年の地代の支払いもありません。他人の場合には支払う権利金や地代、つまり借地権相当額を親から子どもへ贈与されたとして課税対象になるのではないかという考え方もできますが、結論からいえば、親子間の土地の貸借は「使用貸借」となり、贈与税をはじめ他の税金はかかりません。

使用貸借とは無償で物の貸し借りを行うことで、土地の他に車や本などの貸し借りもこれに当てはまります。利害関係がない親族間や親しい間柄で行われることが多い貸し借りとなります。借地権は、土地の利用料として金銭を支払うことになりますが、使用貸借の場合は金銭の授受はありません。そのため、さまざまな権利もないということになります。

極端な話ですが親子関係が悪化して「貸している土地を返せ」ということになった場合には、子どもは、その土地を使うことができなくなり、「自分が建てた家に住めなくなる」ということもあり得ない話ではありません。

その土地に相続が発生した場合の評価方法は?

では、親が子どもへ土地を使用貸借しているときに、親に相続が発生した場合、その土地はどのように評価するのでしょうか。他人に土地を貸している場合の評価方法と比較してみていきましょう。他人に貸していて借地権が設定されている宅地は「貸宅地」と呼ばれ、評価方法は下記となります。

自用地評価×(1-借地権割合)

借地権の部分だけ自身で使うことができないため、「その割合だけ評価額を下げます」という計算式になっています。それに対して使用貸借の土地は「自用地」、つまり自分で使用していた土地とみなされ、借地権割合のような評価額を下げるということはできません。このように同じ土地の貸借であっても、一般的な賃貸借と使用貸借では相続財産としての評価額も変わってきます。

親の土地に子どもが家を建てる場合には、子どもが土地の取得費などを負担しなくて良く、税金などもかからないというメリットがあります。子どもの生活設計をサポートするという一面もありますので、相続・贈与対策とあわせて検討してみても良いかもしれません。(提供:相続MEMO

【オススメ記事 相続MEMO】
必ずしも相続する必要はない。相続放棄とは?
相続税。遺産を相続できるのはどんな人?どんな割合?
相続税対策としての贈与を上手に活用しよう
相続対策にも有効!等価交換のメリットとは
遺言書があったらどうなる??その効力と扱い時の注意とは