相続対策として生命保険の活用を検討するケースがあります。生命保険には「500万円×法定相続人の数」の額を上限に非課税限度額があるため、限度額の範囲内であれば相続人が非課税で死亡保険金を受け取ることが可能です。ただし、限度額を超えた死亡保険金については「みなし相続財産」として課税対象となり、他の相続財産と合わせて「課税遺産総額」が決まります。

死亡保険金の額によっては、この遺産総額が大きくなり、高い税率で相続税を支払うことになる可能性があるのです。そこで、今回は遺産総額を増やさないように、生命保険を活用して相続対策を行う方法について解説します。

保険料の原資を贈与する

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(写真=Dmytro Zinkevych/Shutterstock.com)

父親の相続対策で生命保険に加入する場合、「契約者(保険料負担者):父親 被保険者:父親 受取人:子ども」という契約形態をとれば、子どもが受け取った死亡保険金は相続税の課税対象となり非課税限度額が活用できます。上記の契約形態の場合は、保険料は父親が払っていますが、今回紹介するのは子どもが保険料を支払う方法です。

しかし、子どもに保険料の支払い能力がない場合もありますので、父親から子どもへ現金を毎年贈与して、その現金を原資として保険に加入するという流れになります。現金を贈与すれば父親の財産が減ることになりますので、相続税の圧縮効果も見込めます。

どのような契約形態をとればよいのか

では、どのような契約形態をとれば良いのでしょうか。いくつかの方法がありますので順にお伝えしていきます。

・「契約者(保険料負担者):子ども 被保険者:父親 受取人:子ども」

こちらが基本的な契約形態です。父親が死亡した場合は、子どもが死亡保険金を受け取れます。この場合の死亡保険金は相続税ではなく一時所得として「所得税・住民税」の対象です。一時所得は受け取った保険金から支払保険料を差し引き、50万円の特別控除をさらに差し引き、その金額の2分の1が所得税の対象となります。

そのため、相続税・所得税どちらの課税対象で受け取ったほうが税負担として少なくなるのかを加入前に試算したうえで、贈与する金額や保険金額を決めることが必要です。生命保険は、被保険者となる人の健康状態によっては加入できない場合がありますので、父親が加入できない場合には母親を被保険者とすることで、2次相続対策として保険を活用することもできます。

また、他の相続人の遺留分が侵害されている場合には、受け取った死亡保険金を代償分割のための資金として活用することも可能です。

・「契約者(保険料負担者):子ども 被保険者:子ども 受取人:子どもの子ども(孫)」

父親や母親が加入できない場合には、子ども自身の相続対策として生命保険を活用することができます。贈与で父の財産を圧縮しながら子どもの相続対策を行うことで、孫も恩恵を受けることができます。

・「契約者(保険料負担者):子ども 被保険者:子ども 死亡保険金受取人:子どもの子ども(孫) 満期保険金/年金受取人:子ども」

毎年の贈与を受けながら、セカンドライフ資金や教育資金を準備する方法です。養老保険のような満期金のある商品や、年金保険のように毎年一定額が受け取れる商品に加入をすれば、贈与を受けた額以上の資産を将来のために残すこともできます。

以上、代表的な契約形態を紹介しましたが、複数の子どもに贈与したり孫に贈与したりすることでさまざまな対策を立てることができるでしょう。なお、贈与を受けた現金のうち、相続発生前3年以内の額については相続財産に含める必要があります。

いわゆる「連年贈与」「定期贈与」には該当しないのか?

贈与にあたっての注意点もありますので解説します。贈与契約書は毎年作成し双方が保管し、贈与税がかかる場合には申告書を作成・提出をします。贈与は金融機関の口座間で行い履歴を残しておいたほうが賢明です。また、毎年の生命保険料控除は贈与をした父親ではなく贈与を受けた子どもなどの契約者が行います。

なお、「毎年行う贈与がいわゆる『連年贈与』『定期贈与』に該当しないのか?」という疑問があるかもしれません。結論からいえば該当しません。例えば、「毎年100万円を10年にわたって贈与する」という契約をしている場合には「定期金給付契約」になり贈与税がかかることになります。しかし、毎年100万円の贈与を結果として10年間行った場合はこれに該当しません。

生命保険は、被保険者が亡くなった時点で保険料の支払いも終了しますので、保険料の支払期間が不確定という点からみても該当することにはなりません。以上、今回は贈与と生命保険を組み合わせた相続対策を解説しましたが、まずは自身や家族にはどのような対策が必要なのかを考えたうえで、活用を検討されてみてはいかがでしょうか。(提供:相続MEMO

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