第一生命保険相互会社(社長 斎藤 勝利)のシンクタンク、(株)第一生命経済研究所(社長 石嶺 幸男)では、東京郊外に居住する30~54 歳の既婚男女480 名を対象に、標記についてのアンケート調査を実施いたしました。

 この程、その調査結果がまとまりましたのでご報告いたします。

目次

≪アンケート調査の実施概要≫

■ 雇用不安の現状
■ 家庭の生活設計の状況
■ 雇用不安が生活設計に与える影響
■ 雇用不安と夫婦のストレスの関係
■ 夫の年代別にみる共働状況
■ 妻が働いていない理由
■ 無職の妻の就労意向
■ 夫婦間のソーシャル・サポートとストレスの関係
■ 職場ネットワークとストレスの関係
■ 研究員のコメント

※ この冊子は、当研究所隔月発行の調査報告書、「ライフデザインレポート」9月号、及び11 月号をもとに作成したものです。「ライフデザインレポート」をご希望の方は、右記の広報担当までご連絡いただくか、または下記のホームページよりお申し込みください。

≪アンケート調査の実施概要≫

1.調査地域と対象  東京郊外に居住する30~54 歳の既婚男女

2.サンプル数   1,500 名

3.サンプル抽出方法   無作為抽出

4.調査方法   質問紙郵送調査法

5.実施時期   2003 年10月

6.有効回収数(率)   480 名(32.0%)

7.回答者の属性

30~54 歳の既婚男女に聞いた 『仕事と家庭生活に関するアンケート調査結果』
(画像=第一生命経済研究所)

雇用不安の現状

夫の勤め先の現在の業績は、約半数が「悪い」と回答。
4人に1人が、今後の業績は「現在よりも悪化する」と考えている。

30~54 歳の既婚男女に聞いた 『仕事と家庭生活に関するアンケート調査結果』
(画像=第一生命経済研究所)

 雇用不安の現状をみるために、夫および妻の勤め先の「現在の業績」「今後の業績の展望」「雇用制度(終身雇用か否か)」「リストラの実施状況」について尋ねました。

 夫についてみると、現在の業績が悪い(「悪い」+「どちらかといえば悪い」)と答えた割合は45.6%で、約半数の人の勤め先は業績が悪い状況です。今後の業績の展望についてみると、「今後悪くなりそうである」は25.1%で、現在よりも悪化すると考えている人は少ない結果となりました。終身雇用制度についてみると、終身雇用である(「そう思う」+「どちらかといえばそう思う」)と答えた割合は70.0%で、今回の対象者をみる限り勤め先が終身雇用である人は比較的多いようです。現在リストラを実施中である割合は33.0%、リストラを計画中という割合は23.1%で、両者を合わせると過半数にのぼり、リストラは広く実施・計画されています。



家庭の生活設計の状況

「万一の死亡」「病気・ケガ」への備えは比較的できているが、「老後の生活費用」「要介護状態」「失業・給与低下」への備えはできていない。

30~54 歳の既婚男女に聞いた 『仕事と家庭生活に関するアンケート調査結果』
(画像=第一生命経済研究所)

 家庭の生活設計の現状を、「自分や配偶者が万一死亡したときの備え」から「自分や配偶者の失業・給与低下への備え」までの6項目について、「備えができている」から「備えはできていない」までの4件法で尋ねました。

 その結果、比較的備えができているという回答(「備えができている」+「どちらかといえば備えができている」)が多いのは、「自分や配偶者が万一死亡したときの備え」(76.6%)、「自分や家族のケガや病気に対する備え」(78.9%)でした。

 一方、備えができていると回答した割合が低いのは、「自分たち夫婦の老後費用の準備」(31.4%)、「夫や妻が要介護状態になったときの備え」(19.5%)、「自分や配偶者の失業・給与低下への備え」(24.4%)でした。

 多くの家庭では、「老後の生活費用」や「失業・給与低下」への備えはできていないといえます。



雇用不安が生活設計に与える影響

夫の勤め先の「今後の業績の展望」と「終身雇用の状況」は、就労者の生活設計を大きく左右する要因になっている。

30~54 歳の既婚男女に聞いた 『仕事と家庭生活に関するアンケート調査結果』
(画像=第一生命経済研究所)

 雇用不安が生活設計に与える影響をはかるために、夫の勤め先の業績等別に家族の生活設計状況を分析しました。

 夫の現在の業績についてみると、業績が悪いほど要介護状態になったときの備えや、自分や配偶者の失業・給与低下への備えの点数が低く、すなわちそれらへの備えができていない人が多くなっています。夫の今後の業績が与える影響はさらに大きく、今後の業績展望が悪いほど死亡や病気に対する備えができていなかったり、老後の生活費用の準備や失業・給与低下への備えもできなくなっています。また、終身雇用でないと、要介護状態になったときの備えや子どもの教育資金の準備等ができなくなる傾向がみられます。以上のことから、夫の勤め先の業績の悪化や終身雇用が崩れることは、総じて就労者の生活設計をしにくくしていることがうかがえ、中でも、夫の勤め先の「今後の業績の展望」と「終身雇用の状況」が生活設計を大きく左右する要因になっています。



雇用不安と夫婦のストレスの関係

夫の勤め先の「現在の業績が悪いこと」「今後の業績展望が悪いこと」は、夫のストレスのみならず、妻のストレスも高める。

30~54 歳の既婚男女に聞いた 『仕事と家庭生活に関するアンケート調査結果』
(画像=第一生命経済研究所)

 図表4は、夫の勤め先の業績等が夫と妻のディストレス(抑うつというストレス反応)に与えている影響を分析した結果です。夫の現在の業績が悪いほど、夫と妻双方のディストレスは有意に高くなり、今後の業績展望が悪いと、同じく夫と妻双方のディストレスも有意に高くなる傾向がみられます。また、勤め先でリストラが実施中あるいは計画されていると、夫のディストレスは高くなります。

以上の結果から、夫の勤め先の業績等が悪くなることは、そこに勤めている夫のディストレスのみならず、妻のディストレスも高くすることに影響することがわかりました。これに対し、妻の勤め先の業績等は夫婦のディストレスにほとんど影響を与えていませんでした(図表割愛)。



夫の年代別にみる共働状況

共働世帯は、全体の2割弱で少数派。
半共働世帯は、30 代はわずか13%、40-50 代は40%以上。

30~54 歳の既婚男女に聞いた 『仕事と家庭生活に関するアンケート調査結果』
(画像=第一生命経済研究所)

 夫の年代別に、夫婦の共働状況を尋ねました。

 全体の世帯分類をみると、多い順に、片働世帯45.9%、半共働世帯32.3%、共働世帯18.8%となっており、共働世帯は全体に占める割合が2割にも達しておらず、少数派であるといえます。

 年代別にみると、共働世帯は全ての年齢層で20%前後存在しますが、半共働世帯と片働世帯の割合は年代により大きく差が出ています。30 代のうちは片働世帯が64.8%と圧倒的に多いですが、40 代-50 代になると片働世帯は減少し、半共働世帯の方が多くなります。30 代で片働世帯が約3分の2を占めるのは、幼い子どもの世話をしながら共働することは難しいことを示唆しています。



妻が働いていない理由

「家にいる方が、子どものために良いから」が43.2%で最も多い。
「希望する仕事がみつからないから」はわずか14.9%に過ぎない。

30~54 歳の既婚男女に聞いた 『仕事と家庭生活に関するアンケート調査結果』
(画像=第一生命経済研究所)

 図表5のとおり、共働世帯は少ないのが現状ですが、今後こうした世帯は増える兆しをみせているのでしょうか、片働世帯の妻に対し、働いていない理由を尋ねました。

 働いていない理由として最も多いのは、「家にいる方が、子どものために良いから」(43.2%)となっており、片働世帯はどちらかといえば子どもの育児や教育のために主体的にそうしている世帯が多いといえます。他方、「希望する仕事がみつからないから」といった就労先がないからやむをえずという理由をあげた割合は14.9%にしか過ぎませんでした。

 これを妻の年代別にみると、30・40 代で多いのは、「家にいる方が、子どものために良いから」「子育ての負担が大きいから」となっており、50 代では、「家族が望まないから」「親や病気の家族の世話をするため」が上位になっています(図表割愛)。



無職の妻の就労意向

「すぐにでも働きたい」妻は少数で、過半数が「将来は働きたい」。
「すぐにでも働いてほしい」夫は少数で、「専業主婦でいてほしい」意見も多い。

30~54 歳の既婚男女に聞いた 『仕事と家庭生活に関するアンケート調査結果』
(画像=第一生命経済研究所)

 片働世帯の妻の今後の就労意向はどうなっているのか、妻本人、夫それぞれに尋ねました。

 妻本人の意識についてみると、「フルタイムですぐにでも働きたい」(1.4%)、「パート・アルバイトなどですぐにでも働きたい」(12.2%)の回答割合のとおり、いますぐに就労する意向がある人は少数です。特に、フルタイムですぐ働く意欲がある人は1.4%と皆無に近く、最も多い意見は、「パート・アルバイトなどで将来は働きたい」(45.9%)でした。

 一方、夫の妻に対する就労意向をみても、すぐに妻の就労を希望する人は少数で、夫も「パート・アルバイトなどで将来は働いてほしい」という回答が最も多い結果(47.7%)となりました。

 夫と妻の意見が大きく異なるのは、妻が「働くつもりはない」と答えている割合と、夫が「働いてほしいとは思わない」と答えている割合です。両者の値を比べると、夫の方が妻に専業主婦でいてほしいという意見が多くなっています。

 以上から、今の片働世帯が近い将来共働化するという可能性は低いと考えられます。



夫婦間のソーシャル・サポートとストレスの関係

夫婦間のソーシャル・サポートは、夫のストレス軽減には効果的ではない
が、妻の場合はサポートが強ければ強いほどストレスを軽減する。

30~54 歳の既婚男女に聞いた 『仕事と家庭生活に関するアンケート調査結果』
(画像=第一生命経済研究所)

 図表4のとおり、夫の勤め先の業績展望が悪いと、夫と妻のストレスは高まります。それでは、夫婦間のソーシャル・サポート(相談等の情緒的な面のサポート)はそのストレスを軽減できるでしょうか。

 夫婦間のソーシャル・サポートの3つの項目に、「あてはまる」(4点)から「あてはまらない」(1点)を与えて合計することでソーシャル・サポート得点表を作成し、これを得点の高い方から「高」(11 点以上)、「中」(9-10 点)、「低」(8点以下)と区分しました。ストレスの程度は、心理的抑うつ症状の測定指標であるディストレス尺度を用いており、得点が高いほどストレスが高くなっています。

 分析結果では、夫婦間のサポートがディストレスを減らす効果は、夫ではみられませんでした。一方、妻の場合は、今後の業績展望が良い場合にも悪い場合にも夫婦間のサポートが高いほどディストレスは低くなっています。

 以上から、夫婦間のソーシャル・サポートは、夫のストレス軽減には効果的ではありませんが、妻のストレス軽減には有効であることがわかります。



職場ネットワークとストレスの関係

緊密な職場ネットワークに囲まれて仕事をすることは、男性にとってはストレス軽減につながるが、女性には効果的ではない。

30~54 歳の既婚男女に聞いた 『仕事と家庭生活に関するアンケート調査結果』
(画像=第一生命経済研究所)

 続いて、職場ネットワークがストレスにどのような影響をもたらしているかをみてみます。表中には各々の変数を使用した単回帰分析の結果のうち、各変数の偏回帰係数を掲載しており、係数が正であればディストレスは高まり、負であれば低下することを示しています。

 分析結果をみると、男性正社員では、同部署割合が高くなるほどディストレスが低くなる傾向がみられ、これは同じ部署内で完結している業務およびそれに伴う人間関係の方がストレスが少ないことを意味していると考えられます。部門間にまたがる業務と人間関係の方が、仕事の調整などでストレスを生みやすいのでしょう。また、ネットワークの密度が高いほどディストレスは低くなる傾向がみられます。ネットワークの密度は、個人が左右するというよりも職場全体のまとまりや雰囲気といったもので決まる要素が大きく、緊密な職場ネットワークを築くこと、そうしたネットワークに囲まれて仕事をしていることが、男性正社員のストレスを軽減することにつながっています。

 これに対して、女性の職場ネットワークの効果は、男性のそれとは大きく異なり、女性正社員・派遣社員等では職場ネットワークとディストレスの間に明確な関連はみられませんでした。女性パート・アルバイトに至っては、職場ネットワークが密である方がかえってディストレスが高く、男性正社員とは正反対の結果になっています。



研究員のコメント

 本調査では、雇用不安に伴って生じる本人およびその家族の問題を明らかにするとともに、そうした問題に対処するための方法を調べました。具体的に取り上げた問題は、雇用不安としては「勤め先の業績」「終身雇用制度」「リストラ状況」であり、家族に生じる問題は「生活設計」と「ストレス」です。また、本人および家族の対処方法としては、「夫婦の共働化」と「人的なサポート資源の活用」という方法を取り上げました。

 分析からは、次のようなことが明らかになりました(図表10 参照)。まず、勤め先の業績や雇用状況についてみると、正社員で働く夫の約半数が業績の悪化やリストラの実施・計画に遭遇していました。夫の勤め先の雇用不安等は、家庭の生活設計をしにくくしています。ちなみに、働いている妻の職場でも雇用不安等が高まっていますが、家庭の生活設計に影響を及ぼしているのは夫の側の職場の雇用不安でした(妻の職場の雇用不安の図表は割愛)。また、夫の勤め先の業績・雇用状況の悪化が、夫のみならず妻のストレスも高めていることが明らかになりました。勤め先の業績悪化やリストラで男性就労者のストレスや心労が高まっていることが問題視されていますが、実はその妻に対しても同様にストレスがかかっているようです。

 こうした雇用不安が家族に与える影響に対処する方法としては、まず夫婦共働化があげられます。夫一人が稼ぐ片働世帯に比べて、収入源が夫婦両方にある夫婦世帯は収入のリスクを分散できているため、雇用不安が生活設計をしにくくするのを防ぐことができるようになります。ただし、雇用不安が、現在の片働世帯を共働世帯へ向かわせる力にはあまりならないようです。片働世帯の妻のうち、フルタイムかパート・アルバイトかは問わずすぐに働きたいと考えている者は8人に1人に過ぎません。夫の勤め先の現在業績および今後の業績展望が悪いと妻の就労意向は高くなるものの、その多くは将来パート・アルバイトで働きたいというものであり、夫婦共働化を志向しているわけではありません。夫の勤め先が終身雇用でなくても、リストラ中であっても、妻の就労意向は高まるわけではないようです。このため、現在既に共働化している夫婦は雇用不安に対処する力が強いといえますが、そうでない夫婦は雇用不安が来そうだから共働化するというわけではなく、現状の片働世帯等のままでこの状況を乗り切ろうとしている様子がうかがえます。

 また、人的なサポート資源の活用としては、妻のストレス緩和には夫のソーシャル・サポート(相談等の情緒的な面のサポート)が有効です。ただし、雇用不安で高まった夫のストレスは、妻のサポートでは緩和しないようです。また、夫のストレス緩和には職場で密なネットワークを築くことが大切であることが明らかになりました。夫と妻で有効な対処方法が異なるという結果が得られたことは興味深いことです。

 本分析の結果からは、雇用不安がもたらす“生活設計をしにくくするという影響”と“ストレスを高めるという影響”といった異なる2つの問題に対処するためには、それぞれ異なる方法、すなわち生活設計の問題には夫婦共働化、ストレスの問題には夫婦間のサポートや職場ネットワークの活用が求められるということがわかりました。先述したように、昨今の雇用環境の変化から生じているこうした問題に対して、個人や家族の側からも、一例ではありますが、ここにあげた対処行動などをとって耐性を高めておくことが必要な時代になってきていると考えられます。(提供:第一生命経済研究所

30~54 歳の既婚男女に聞いた 『仕事と家庭生活に関するアンケート調査結果』
(画像=第一生命経済研究所)

研究開発室  副主任研究員 松田 茂樹

株式会社 第一生命経済研究所
ライフデザイン研究本部 研究開発室
広報担当:丹野・新井
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