前日については、臨時閣議で英国とEUが暫定合意したEU離脱協定案を承認したことにより、懸念されていた閣僚の辞任問題ですが、早速大物であるラーブ・EU離脱担当相の辞任が公表されました。同氏を含め、既に6名の辞任が報じられており、今後は、当面メイ英首相の不信任投票を求める動きが強まる可能性がありそうです。ただ、現時点では、例え不信任投票が行われても、メイ英首相は十分な支持を得られるため、残留する可能性が高いと考えられます。メイ英首相が、声明にて断言こそ避けたものの、ラーブ・EU離脱担当相の辞任が示す内容は英国の大幅譲歩以外に考えられません。草案への抗議の意味が今回の辞任には込められていると考えられ、今後の議会承認は難しく、本当の意味で「合意なき離脱」が現実味を帯びてきたと考えられそうです。

今後は、EU離脱担当相の後任問題になりますが、前日のメイ英首相の会見後に「ゴーブ・英環境相はEU離脱担当相のポストを拒否した」との報道が流れ先行き不透明感が市場心理を悪化させ、ポンド売りが加速しました。その後に、「ゴーブ英環境相は今晩辞任へ」との一部報道が流れ、ポンドはパニック売りに近い動きとなりました。ラーブ・EU離脱担当相の辞任報道によりポンドドルでは1.3020ドルから1.2780ドル付近まで、メイ英首相の声明、および、ゴーブ・英環境相関連の報道で1.27251ドルと前日の安値を付ける動きとなりました。シナリオ通りであれば、メイ英首相は残留こそするものの、不信任投票は行われ、メイ政権の不安定さを露呈し、ポンドはもう一段安に向かいそうです。

ドルについては、ロス米商務長官が「米国は依然として来年1月に対中関税を25%に引き上げる」と述べ、米政府高官の話として「G20では中国との通商問題において大きな進展は望めない」と伝わると上値が重くなる場面もありましたが、ライトハイザーUSTR代表が一部の産業界首脳に対し対中関税の追加適用を保留すると発言したこともあり、下値は限定的になっています。段階的な利上げプロセスがほぼ構築されつつある通貨であるため、ドルに関しては、余程のネガティブサプライズがない限りは、上値を拡大する方向に向かいそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

引き続き、ポンドの動きがマーケットを牽引することになりそうです。当面の課題としては、ラーブ・EU離脱担当相を筆頭に多くの閣僚を辞任に追い込んだ閣議承認後の議会承認、ここを乗り切るには大きな壁があり、この壁を乗り越えない限りは、マーケットは「合意なき離脱」を織り込む動きになりそうです。不信任投票があってもメイ英首相は支持を得られる公算ではありますが、与党・保守党の議席数は過半数を割り込んでおり、北アイルランドの民主統一党の協力を得て、何とか運営している状況に変わりはありません。わずかの造反者が出ても、議会承認が危ういことを考えると、現段階では「合意なき離脱」の可能性の方が高いと考えられそうです。

一方、ユーロについては、一時はポンド以上に状況が悪化していると見られていましたが、来年度予算案を巡り、コンテ伊首相が制裁回避のために欧州委員会と取り組む姿勢を示したとの報道がマーケットに伝わりました。既に、民営化や公共投資などについては一部修正、不動産の売却などの歳入拡大策を提示しており、更なる政策をEU側が好感すれば、ユーロについては思わぬ大逆転があるかもしれません。

ライトハイザーUSTR代表の発言で、一旦は米中通商協議への不安が取り除かれた格好になりましたが、ロス米商務長官が通商協議においてタカ派なスタンスを継続していることはG20までに様々な憶測を呼ぶ可能性があります。もともと、トランプ大統領発信のTweetにより米中通商協議においてもポジティブな内容として考えられていたため、ここにきてネガティブな報道が出る可能性が出てきたことはドルにとってマイナス要因ではありますが、ドル円に関しては112.80-113.10円付近では買い戻し意欲が強くなると考えています。

ポンドドル、ユーロドル以上にショートのバイアスがかかってきた

ポンドの下落に連れるかと思いましたが、イタリアの予算案問題が想定外にプラスに転じていることで1.1350ドルでの損切りになりました。ユーロ以上にポンドの方にショートのバイアスがかかってきているので、ユーロドルからポンドドルの戻り売り戦略に変更したいと思います。ポンドについては、急落した反動で多少の反発が想定されるため、1.2850ドル付近までの戻りがあればショートのポイントになると考えています。損切りについては、1.2920ドル、利食いについては1.2650ドル付近を想定しています。

海外時間からの流れ

きちんとした声明はメイ英首相からは出てきませんでしたが、閣議承認の内容はおそらく北アイルランドに特化したバックストップ案での合意の可能性が高そうです。その他にも、英国が譲歩している部分が多数あると考えられるため、議会承認を通過するのは難しいと考えた方がよさそうです。11月25日の臨時サミット、12月10日の議会投票まではある程度ポンドの買い戻しがあるかと思いましたが、状況によってはこのままポンドの独歩安の動きがあるかもしれません。

今日の予定

本日の経済指標としては、ユーロ圏・10月消費者物価指数・確報値、米・10月鉱工業生産などが予定されています。要人発言としては、エバンス・シカゴ連銀総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。